後書き―完売御礼

 本作を手にとって下さり、誠にありがとうございます。この版は、第二版になります。初版は二〇一八年三月二十一日の東京のイベントにて、予約・取り置き分を除き完売し、翌二〇一九年九月八日のイベントにて、それらも全て、読者さまの手に渡りました。

 本著は再販の予定は無かったのですが、本作を手に取れなかった読者さまからの熱いご要望に添いまして、再販に至りました。思えば遠くに来て、そして予想以上の方々に愛されてきました。


 「カリオテの男」の初稿は、私がまだ十代の時です。本になる十年近く前でした。


 私は幼いころから、キリスト教三大異端の信者である祖母に、二世となるための教育を受ける傍ら、それに反発し、私を守ろうとする母の間で育ちました。

 母はキリスト教に関しては無知で、それが故に、明確に自身の「正しい」キリスト教に近い教会に通いました。それは多くのキリスト教の識者に「過激派」「異端一歩手前」と言われる様な教会です。

 彼らは、私に神に従うことの大切さを教える一方、神に逆らうこと、信じないことの恐ろしさや罪深さを徹底して教えました。通信教育の作文のテストに、「神様を信じているかどうかわからないことが、最近の悩みです」と書いたという笑い話は本当の事なのです。

 プロテスタントは、クリスマスをより重要視します。

 その故に、私は幼いころから、「死んでくださってありがとうございます」という祈りの文言に非常に戸惑っていました。命が生まれるという喜びを讃美歌で歌うのに、その喜びには常に、拷問死が付きまとうのです。

 そしてその拷問死は、イスカリオテのユダがいなければ成り立たなかったものであるのに、私たちはイエスが死んだことを喜ぶのに、イエスが死ぬ手伝いをしたユダを敵視し、呪う信仰を教えました。私は幼いころから、「神様の命令に従っても、地獄に行くのかもしれない」という恐怖の中にいました。イスカリオテのユダがそうだったからです。

 後に母教会となるカトリック矢追教会に来たとき、私はポール神父に一番に「なぜホサンナと迎え入れたその日の内に、群衆は十字架につけろと言ったのか」「なぜ、ユダは地獄に落ちなければならなかったのか」などと様々な問いを投げかけました。ポール神父は、「人の弱さの成せる業」「カトリックは地獄に堕ちたという公式見解は一度も出していないが、教皇がキレて地獄に堕ちるぞと脅したことはある」という答えを返しました。そしてたくさんの質問をフムフムと聞いた後、力強く「知らん!」と言いました。

 一見無責任に見えるこの答えに、私は非常に救われました。

 「聖書は神様からのラブレター」と教わると同時に、その御意志を完遂することが、信仰なのだと教わってきました。その故に私にとって、聖書に知らないことが書いてあるのは恐怖でしたし、それを問うことも怖かったのです。そうすれば私は、神様について知らないことがあると告白することになるので、「神を本当に信じていない」と言われてしまうからです。

 そしてポール神父はこうも言いました。「聖書に書いていないことは、好きに想像していい」「バチカンのローマ教皇の考えに即さなければならない決まりはない」と。

 つまり私は、聖書を読んでいて理不尽と感じたことは理不尽と言ってよいし、その救済策を小説として表現してもよいし、自分の信仰を他人に決められることもない、という、これは解放の言葉なのです。

 私はそれから、ずっと気になっていたイスカリオテのユダの話を書くことにしました。

 それが「カリオテの男」の初稿です。私はこの頃、骨林(当時「友人代理」と表記)と出会いました。

 骨林と私の関係は少し複雑なので省略しますが、骨林は同じく小説を書く者として、非常に「カリオテの男」を評価してくれ、言われるがままに別サイトにアカウントを作り、そこで発表しました。

 しかしターゲット層が悪かったのか、「ガリラヤってなに?」「ヨルダン川ってなに?」というあまりにも他に説明のしようがない質問に辟易し、私はひっそりと聖書小説を書くことにしました。

 同人誌にしたときも、骨林ですら、売れるかどうかは大勝負でしたが、結果として「刺さった」方は深々と刺さり、ヘビーユーザーになってくださいました。毎回地道に売れていき、一年半で完売することが出来ました。ひとえに骨林の行動力と、祖母をはじめとした過激派からの英才教育、矢追カトリック教会での数多の学者との出会いの賜物です。

 しかしながら、私はあまりにも教会で恵まれすぎており、入門書である本著でも、伝え切れていないことが多くある事にも気付かされました。こちらに関しましては、同日公開しました、「いくそす。ふぁんぶっくす。『カリオテの男編』」をご覧戴ければと思います。

 これからも「スタイリッシュ罰当たり」の最先端を行くべく、研鑽と邁進を続けていく所存ですので、どうぞこれからも「いくそす。」と「骨林頭足人」をよろしくお願いいたします。。



原作「カリオテの男」

20090908.Tue

加筆修正20120722. Sun

初版20171123.Thu

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カリオテの男 PAULA0125 @paula0125

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