ターニングポイント

@ktkmba1006

第1話

時は乱世絶対権力者の将軍が失墜し人々は己の為に生き、戦い、支配、征服、成り上がりをたくらんでいる。戦ばかりで土地は荒れその為生活するにも困っている人がたくさんいるのである




外岡士郎寺の息子16歳この物語の主人公は月夜の光を背に大鷹の足に掴まりながら飛んできて風に吹かれて坊主頭に巻いて腰まである紐が風に揺られながら作新城の屋根に降り立った。




士郎は屋根を歩き回り窓を探し城の窓から侵入した。




士郎は月夜の光を頼りに城の中を歩き




なんか、男が寝てるぞ




「こいつが起きているか確認しないと」




士郎は寝ている男の顔に思いっきりけつを近づけ思いっきり




ブー




「やべぇー、力みすぎて実が出ちゃった」




寝ている男は反応しない。




「なんか尻がぐちゅぐちゅで気持ち悪いから早く金を見つけないと」 




士郎は泥棒のくせに物音を立ててはいけないのに思っていることをしゃべってしまったり泥棒は目立ってはいけないのに背中に大きく目立つ字で表舞台に出る男と書いてある服を着ている変わっている少年である




士郎は男が寝ている部屋を歩き回り大きな箱を見つけた。




「この中に入っているんじゃないか」




士郎はワクワクしながら箱を開け、開けた瞬間中に入っていた金がキラキラと光を放った。




士郎は興奮しながら




「これこれ、これだよ」




士郎は金を、持ってきた袋にパンパンに入れて笑顔で金をまとめて寝ている男の頭をまたいで城を出ようとすると




「くっさ!何この臭い」




「ヤバい、こいつ起きたぞ、仕方ない顔も踏んで気絶させなきゃ」




士郎は必死に寝ている男を何回も踏みつける。




男は起き上がりながら 




「いいかげんにしろ、この野郎」




「逃げろー」




士郎は必死に窓まで走り乗って来た鷹に掴まって逃げた。


男は窓から顔を出しめちゃくちゃ怒った顔でくそーと逃げる士郎に叫んでいた。




夜が明けて士郎は作新神社で箱に溢れんばかりの金のまえに立ち




「順番に並んで一人金二枚まで」




士郎は困った人々がほっとけなくて危険をかえりみずいつも無理やり金を巻き上げる大名の城に侵入して人々に金を返してるのである




並んでいる農民の歳を取っている男が




「本当にありがとう」




士郎は謙虚な態度で




「いやそれがしは皆さんの取られすぎた年貢を取り返しているだけなので」




「士郎さんはなぜ見知らぬ私を危険をおかし


てまでして助けてくれたのですか」




「それがしは困っている人を助ける英雄になるのが夢なんです」




回想




ある日の昼の事、村で米を入れている倉庫の前村人達が泣きながら


「これを持っていかれるとこの村の人々が生活が出来なくなります」




いかにも悪人顔の男が




「うるせぇ、お前ら村人の生活など、どうでもいいんだ」




離れたところで見ていた士郎達(このころの士郎は8歳くらい)




「あいつら、ホントひでぇ奴らだこんな時助けてくれる英雄がいたらなぁ」




横にいた士郎の友達の稲荷は


「そんなのいやしないからこんなことが全国各地で起こっているんだろ」




「俺はこういうの見ていて物凄く腹が立つな」




「仕方ないよ、これがこの世の中なんだから自分が英雄にでもならない限り助けられないし」




士郎はひらめいたように立ち上がり




「自分が英雄!そうだ自分が英雄になればいいんだそうすればこのような事も無くしていけるんだ」




回想終わり




「それで私達を助けてくれるんですね」




「はい、皆さん法外な年貢を取られて困ってそうだったので」




歳を取った男は切ない顔で




「士郎さんみたいな方がこの世にたくさんいるといいんですどね」




ダッダッダッ




黒髪ロングで髪は後ろに縛っていて顔は小さく体は小柄だが胸の大きさは丁度良く鼻と口は小さく瞳が大きい髪を後ろで縛っている顔の整った色白の美少女が馬に乗って士郎の前を駆け抜ける。




その後ろをいかつい男達が追いかけている




「あれ、経丸じゃね?」




士郎は気づいたら金をほっといたまま鷹の両足を掴んで経丸を追いかけていた。




いきなり駆け出す士郎に農民の一人が




「ちょっと士郎さーん」




農民の声を聞いた士郎は鷹の両足に掴まりながら首だけ農民の方に振り向き




「後はみんなで適当に分けてください」




経丸、大丈夫か今助けに行くからそれまで無事でいてくれよ




経丸はいかつい男達に囲まれてしまい馬から降りて後ろは崖なのでもう下がれない立ち位置に追い込まれ男達は経丸を円で囲むようにしている。


鷹の両足を掴んで飛んでいる士郎は上空から経丸を見つけた。




「よしここはカッコよく登場するか」




士郎は鷹の両足から手を離し落下して囲んでいる男の中の


一人の男の上に落ちた。




「いってぇー着地失敗したわ」




囲んでいる男の中のリーダー格の男が




「なんだ、お前は」




士郎は男の問いかけにスルーし




「あっよいしょ、ごめんよ、ごめんよ」




士郎は何事もなかったかのように男達を搔き分けて経丸の前に立った。




士郎はニヤッとしながら




「おいお前、助けてほしいか?」




経丸は士郎の問いかけにイラっとし




「別に士郎なんかに助けてもらいたくないし」




「お前二つも年下なんだから呼び捨てするな」




「幼なじみだからって城主の私をお前呼ばわりする方がおかしいんだぞ」




経丸は長作城の城主で士郎とは幼なじみだが寺の息子の士郎がお前呼ばわりするのは大変無礼な事なのである。




「くそ生意気な女だぜ」




「うるさい頭に紐を巻き付けてる変な男」




経丸を囲んでいる男の中の主犯格の男が低い声で




「何、ごちゃごちゃ言ってんだよ」




士郎は男達の方を振り返り




「それがしが来たからもうお前らみたいな屑は終わりだ」




男達は士郎のセリフを聞いて笑い出し隣にいる経丸は表情が引きつっている。




主犯格の男が笑いながら




「はぁ?お前みたいな紐を頭に巻いているようなアホにやられるわけないだろ」




士郎は凄みのある声で




「お前ら、それがしを誰だと思っている」




士郎の言葉男達は一斉に




「外岡士郎」




「えっえっ、なんでわかるの?」




士郎は物凄くわかりやすく動揺している。




男達は一斉に士郎の胸を指さして




「胸」




士郎の服にはでかでかと名前が書いてあった。




士郎は自分の胸を見て




「あっー母上、それがしがよく物を落とすからってこんな目立つように大きく名前を書くなんて」




経丸は呆れた感じでため息をついた。




士郎は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら




「仕切り直して、お前らこのボウガン(小型の自動装てん式)で撃ち飛ばしてやる」




主犯格の男が




「やれるものならやってみろよ?」




士郎は躊躇なくボーガンを主犯格の男の足に打ち込んだ。




いきなり撃たれた主犯格の男は怒り




「ふざけるなこの野郎、皆かかれー」




士郎は襲い掛かってくる敵の足を早業で撃ち抜いていった。




士郎の早撃ちを隣で見ていた経丸は悔しいけど士郎いつの間にかこんなすごい事できるようになっていたなんて。




士郎は得意げに経丸を指さし




「どうだ、見たかお前」




「ありがと」




 えっ素直だな、私なら一人で倒せるとか言うかと思ったのに




士郎は動揺し




「おう」




士郎は経丸と足を撃たれて動けない敵の横を通り過ぎ安全な場所まで来たときに経丸が士郎に




「士郎ちょっと助けてくれた礼をしたいから来てくれないか」




士郎はニヤッとしながら




「おっさっきから急に素直になったな最初からその態度にすればいいのに」




経丸はイラっとしながら




「勘違いするな、私はただ士郎に借りを作りたくないだけだ」




「もっと、お前は可愛げがあった方がいいぞ」




 経丸は食い気味に




「うるさい」




経丸は士郎を自分の行きつけのお店富田亭に連れて行った。雰囲気はどこにでもありそうな大衆食堂で四人掛けのテーブル席が四つあってカウンター席もある八つある店だが昼時ではなかったため他の客は少なく士郎と経丸は四人掛けの席に向かい合って座った。




士郎と経丸の前に熱々のもつ煮と具だくさんの炊き込みご飯が運ばれた。




士郎は慌てて食べ始めた。




ガツガツムシャムシャパクパク




「懐かしいやっぱりここの炊き込みご飯ともつ煮込みめちゃくちゃ美味しいそれがしの母親の料理とは格が違うね」




「士郎そんなこと言うとおばさんに怒られるよ」




「それは確かに、今の事母さんには言うなよ」




 経丸はニヤッとし意地悪そうな顔で




「さぁ、どうしようかな」




 士郎は慌てて




「よせよ、よせよ」




二人が飯を食べながらやりあっているとバタン大きな音を立てて戸が開き慌てて背の高い男が入ってきた。




「殿、ご無事ですか?」




背の高いイケメンの男は経丸を見つけ慌てて駆け寄った。




「大丈夫ですよ、怪我もありませんしそれよりなぜここがわかったのですか?」




男は息を切らしながら




「この店の富田さんが走って教えに来てくれたんですよ」




士郎は男の顔をみて経丸と男の会話を遮るように




「おー‼片倉さん久しぶり」




「おっ士郎、久しぶりだな元気だったか?」




「まぁ元気ですよ、片倉さんもこいつの世話係大変ですね」




片倉は慌てて




「バカ、殿に向かってこいつって言うな」




「だってこいつ俺より二つも歳下なんだもん」




「バカ、歳なんか関係ないんだよ」




 経丸も同調するように




「そうですよ、士郎私に対して態度悪いんですよ」




「士郎、俺にため口を使ってもいいが殿にはちゃんとした言葉を使わないと」




「いや、片倉さんはそれがしより二つ年上だから敬語使わないと」




「じゃあ殿の方が身分が上なのだから敬語を使いなさい」




士郎は経丸と呼ぶのは照れ臭いし家臣じゃないから殿とは呼べないし今さら敬語を使うと距離ができるみたいでいやだと思い




「いや、なんとなくこいつに敬語はしっくりこないんだよ」




経丸は呆れて




「片倉さんもういいです」




士郎は突然思いついたように




「そう言えばお前なんで追われてたんだ」




経丸はつんとした感じで




「士郎に話したってしょうがないから」




士郎は身を乗り出すように




「お前感じ悪いぞ」




「どっちが感じ悪いのさ」




片倉が二人の間に入って




「まぁまぁとりあえず一旦長作城に戻りましょう」




片倉は勘定を済ませ二人を長作城に連れていった。




長作城とは長作という小さな村に小高い山というか丘みたいなところにある小さな山城で城の周り一周するように水堀で囲ってありその周辺には田んぼばかりがあるど田舎の小さな城である




三人は二階建ての長作城の一回の広間に腰を下ろした




「片倉さん、士郎なんかこの城に連れてくる必要ないのに」




「それがしだって話の続き聞くだけだからここに来なくてもよかったのに」




経丸はニコッとして




「じゃあどうぞお帰りください」




「まぁまぁ」




片倉は止めに入った。




「殿、私から士郎に話してよろしいでしょうか」




「いや、片倉さんが士郎のために労力使うのはもったいないので私が話します」




「何が労力だ、まぁ聞いてやるよ」




 経丸は士郎の言い草にイラつき




経丸はニコッとし




「やはりお帰りください」




片倉は慌てて




「まぁ殿、そうおっしゃらずに」




「片倉さんに免じて話しましょう」




「そうだ、早く話せ」




片倉は怒った声で




「士郎‼余計な事言うな」




「すみません」




士郎は素直に謝った。




「さっき私をさらおうとした奴らは矢部という者の手下で代々天羽家は、歴戦の将が多くてその血が欲しいから私を妻にして自分の子供を作ろうとしてるんだよ」




「それでお前はそいつと結婚したくないから逃げていたんだね」




「そうだよ」




経丸は困った顔で答えた。




「そんな奴やつけてしまえばいいのに」




「それがそうもいかないんでだよ」




経丸が士郎に状況を説明している頃夕方の長作城の隣村にある作新城では城主の矢部勝文が家来達の報告を肘置きに肘を置きながら偉そうな態度で聞いている




「なんだ、お前らまた逃がしたのか」




矢部は士郎と経丸を囲んで取り逃がした家来達に怒鳴り散らす。




家来達は震えるように謝る。




「申し訳ございません」




「これで何度目だ、使えないな」




矢部は家来に向かって肘置きを投げつけるその様子矢部の隣を見ていた家臣の荒井が




「殿、こいつらはただやみくもに追っているだけだから捕まえられないのです私なら頭を使ってすぐ殿の元に連れて来て参りましょう」




矢部はこいつ相当な自信家だなと思った。




「それはまことか?」




「はい」




「必ず捕まえてこい」




「はい」




矢部は爪を噛みながら目はギンギンにしながら




「待ってろ経丸、お前を必ず我が妻にしてやる」




夜になった長作城で経丸と士郎と片倉の三人で話していると戸が勢いよく開き戸を開けた家来は急いでいる感じで




「お話中失礼します」




三人は勢いよく戸が開いたことにビックリしたが




経丸は丁寧な口調で




「どうしましたか?」




家来は慌てながら




「やっ、矢部の家来と名乗る者が一人で来ております」




「えっ!一人で?」




経丸は少し驚いた




「矢部ってさっき言ってた悪者?」


経丸は下を向いて




「そう」




「ならば、今この場でぶっ飛ばそうぜ」




経丸は士郎を無視して




「一人なら通して話を聞いた方がよいかもしれません、下手に追い返すと何してくるかわからないので」




片倉は経丸に同調するように




「そうですねとりあえず話を聞きましょう」




荒井は家来に連れられて経丸の前に現れた。




「おーこれは経丸殿」




士郎と片倉は荒井を睨みつける。




経丸は少し怯えながら震えた声で




「何の用でしょうか?」




「経丸殿には我が主の妻になっていただきたい」




片倉はキレ気味に




「しつこいな、殿はなりたくないとおっしゃっておるではないか、それをお前らは何度も殿を追いかけまわして」




荒井は不適な笑みを浮かべながら




「ならない、なら我が軍は総力上げて攻め込むのみだが」




「まぁ戦うのは利口じゃないですよ。我々は手加減ができませんからね、市民もろとも皆殺しにしますよ」




経丸は床をドーンと叩き立ち上がり




「ふざけないで下さい、市民は関係ないでしょ」




「まぁ、良い決断を期待してますよ、それじゃ」




荒井はにやけながら部屋を出て行った。




経丸は荒井の顔を見て怯える。




「おい、あいつと戦おうぜ」




「無理だよ相手は私達の十倍の兵を持っているんだよ、勝てるわけないだろ」




経丸は下を向いて




「それに私が嫁げば戦いをしなくて済む天羽家の人達が無駄に命を奪われなくて済むんだよ」




士郎は冷静に静かな声で




「じゃあおまえはどんなに間違っていても強い者には従って強い者の横暴には逆らうなと言うか?」




経丸は士郎を睨みつけながら静かな声で




「仕方ないんだよこの世は弱肉強食、私達みたいな弱い者は強い者に逆らえないんだよ」




士郎は怒りで床に拳を叩きつける。




「なんでだよ、なぜ弱い者の正義が負けて強い者の悪が勝つんだよ」




士郎は経丸の両肩に両手を力強くおいて経丸の目を本気で見て




「お前、逃げんなよ戦うぞ、ここで戦わないと一生弱い者の正義は強い者の悪に勝てないって事になんだぞ」




経丸はキレながら




「士郎、人一人も殺せないどころか血を見ただけで気絶するような人間が戦うなんて無責任な事言うなよ」




士郎は拳を握りしめ体を震わせながら怒鳴るように




「それがしは寺の息子だから殺生などできないし血を見るのは気絶するぐらい苦手だ、でも今戦わないでいつ戦うんだ‼」




「殿、私も士郎と同じ意見にございます」




「片倉さんまで何を言ってるんですか」




「私は殿をお守りするのが役目でございます




最低な人間の矢部の元に送るなどできませぬ」




経丸はバーンと床を叩いて立ち上がり




「父と母がいない私を小さい頃から娘のように可愛がってくれた長作の人々と親代わりになって支えて仕えてくれた家来の方々を守らなきゃいけないんです」




「だからって矢部に従うのはおかしいだろ」




 片倉も士郎に同調するように




「私もそれだけは反対です」




「もういいです私の言う事を聞いて下さらないなら出て行ってもらえませんか」




経丸は士郎と片倉を締め出した。




士郎は薄暗い長作城の前で紐を木にくくりつけて大繩を回すようにぐるぐる回していた。




それがしは最低だ、経丸の事好きなのになんであんな態度とってしまうんだろうそれがしはただ経丸が好きだから守りたいだけなのに守りたいという気持ちを伝える事もできないなんて最低だ、それに困っている人々を助ける英雄になることを夢にしているのに困っている好きな女の子一人も助けすることができないなんて




士郎は経丸を助けられない自分を不甲斐なく感じ悔しくて泣き叫びながら回している紐を思いっきり地面に叩きつけていた。




士郎の背後から男が近づき




「ネズミはここにおったか」




「誰だ!」




士郎の前にいかつい男達が三人現れた。




男の一人が前に出て




「お前の事は調べた、お前は有名な奴だったんだなどんな大きな権力を持っていても悪党ならそいつらからお金を盗む恐い者知らずの、人呼んで史上最凶のネズミと呼ばれている男だったとは」




士郎は不適な笑みを浮かべて




「ふっそれで?」




士郎は余裕そうな表情を見せた。




「お前が厄介な事をする前に処分してやる」




男達は士郎に飛びかかる。




士郎は背中に掛けてあったボーガンを手に取り早撃ちで三人の膝を撃ち抜いた。




士郎は膝を撃ち抜かれて動けない敵を見て




それがしがボーガンの早撃ちができるようになったのはいつの日かお前を守るために戦う日に備えて練習したからなんだぞ。




士郎がボーガンをしまったその時




いきなり一人の男が士郎の背中から腕を回し首元に刀を突き付けた。




しまった、他にも敵がいたのか




「残念だったなネズミおまえはここで死んでもらおう」




男が士郎の首を切ろうしたその時




ズッサー




男はいきなり倒れた。




「何、油断してんだよ」




士郎はビックリしながら




「あっ、片倉さん」




片倉は気さくな感じで右手を上げて




「よっ」




「なんでここに来たの?」




「いくら士郎ほどの馬鹿でも城の前で二時間も一人で紐を回していたら気になるだろ」




「そっか、わざわざ助けてくれてありがとう」




片倉は険しい顔で




「礼はいらないそれよりいくぞ」




「どこへ?」




「殿を助けに」




「どうやって助けるの?」




「士郎はどんなものだってどんなところにあったって取り返せるんだろ、だったら殿も取り返せるだろ違うか?」




「片倉さん」




この片倉の言葉が士郎の気持ちに火をつけた。




「敵は任せろ抹殺してやるだから殿は士郎、お主に任せた」




「わかりました」




士郎と片倉がっちり握手をした。




「士郎、俺たちが殿を助けに行くぞ(伝説を作りにいくぞ!)」




士郎と片倉は勢いよく手を上に突き上げ士気を高めた。




士郎と片倉の二人は真夜中に作新城前に着いた。




夜更けで真っ暗ら作新城の前の森にたくさんの農民と天羽家の家来達が集まっていた。




片倉は集まった農民に向かって




「本当にいいんですか、皆さん凄く危険でもしかしたら命を落とすかもしれないんですよ」




「いいんだよ、俺達にとって経丸様は娘だから」




他の農民たちもそうだそうだと同調した。




それを聞いた天羽家の家来達も負けじと




「我々も討ち死にしてでも殿をお助けする覚悟で参ります」




「すごい人望だなあいつは」




「まぁな」




士郎と片倉はニヤリと笑いあう。




遠くから




「おーい待ってくれ!」




沢山の松明をもった集団が士郎達に血数いてきた。




士郎は怯えた顔で




「なんだあの大群は」




片倉は低い声で




「敵の軍かも知れない」




「まさかそれがし達が城に攻め込む事がばれたのか?」




士郎達は警戒して皆戦闘態勢に入った。




「士郎さん」




「おい、お前の事知ってるらしいぞ」




片倉の言葉に士郎は慌てて




「いや、それがしあんなの知らないよ」




大群の松明がだんだん士郎達に近づいて来て先頭の男の顔が見えた時に士郎が




「あー!昼間の人達じゃないですか、どうしたんですか?」




士郎の一言に皆ホッとし座りこんだ。




先頭の男が




「この鷹が配り飛んでいる紙を見て」




「あー!お前いないと思ってたら」




先頭の男は昼間士郎に金をもらってお礼を言っていた男だった。




 その男は士郎に向かって




「是非我々も参加させてほしい」




「しかし、危険なんですよ」




「士郎さんだって危険をおかしてまで我々の生活を守ろうとお金を取り返しに行ってくださったじゃないですか」




「いや、そうですけど」




「今こそそのご恩を返すべき時だと、なぁ皆」




皆は声を揃えて




「あー!!!」




「皆、ありがとう」




士郎は嬉しさのあまり涙目になった。




「おい、泣いてるのか?」




「うるさい泣いてなんかいないぞ」




片倉はニヤっとしながら




「まぁそれならそれでよいが」




士郎は片倉を小突いたそして




「今から殿を助けにいく、相手は数が多い、でも俺達で伝説を作りに行くぞ‼」




皆は興奮状態で。




「おー‼」




士郎は声を張って




「伝説の幕開けだぁー‼」




皆はこの声に合わせて爆弾などを爆発させ




城の門を壊し爆音を響かせ門が壊れると同時に士郎と片倉を先頭に城になだれ込んで行った。




作新城中天守閣の部屋では経丸が手足を縄で椅子にくくりつけられていた。




薄暗く無機質な部屋で矢部はニヤニヤしながら




「おっ経丸は縛られて身動きできない気


 分はどうだ」




経丸は矢部を睨みつけながら




「うるさい」




「お前だいぶ反抗的な態度だな」




矢部は経丸の顔に触れようとすると経丸はその手にかぶりついた。




「いって、このバカ女」




矢部は噛まれていない方の手で経丸の頬を思いっきりビンタした。




「この野郎、女のくせに逆らうな、女は所詮、子供を産む道具にしか過ぎないんだから」




こいつマジで屑だ




経丸は抵抗したくてもできないことに悔しくて仕方なかった。




矢部は経丸の服を脱がせようとしたその時




バーンと勢いよく戸があいて家来が慌てながら




「申し上げます、何者かがたくさんの農民を連れていきなり城に攻め込んで来ました」




「おいお前、こっちは今からお楽しみなんだ、少しは空気読まぬか」




「しかし、城中大混乱に陥っております」




「うるさい奴だ、仕方ないすぐ片してくるからお前はここで待ってろ」




矢部は経丸を置いて現場に向かった。




「ぶっぱなせー」




士郎は叫びながら爆弾を投げまくる。




「片倉さん、ここはまかしていいですか?」




「任せろ、後は始末しとくから」




片倉は敵に突っ込んでいき鋭い目つきをし低い声で




「てめぇらめざわりだ失せろ」




敵は片倉の言葉に凍りつき反応が遅れたところを次々と片倉に斬られる。




「片倉さん頼みますよ、必ず殿を救出します


から」




片倉は自分に振り向く士郎に




「いいから早くいけ、殿を頼んだぞ」




士郎はボーガンで次々と敵を討ち一旦混乱している城内を出て鷹に乗って経丸の閉じ込められている天守閣に向かった。




士郎は作新城天守閣の部屋に無事に着き周りをきょろきょろ見渡しながら部屋の戸を開けて




士郎は縛られている経丸の姿が強烈すぎて声も出なかった。




経丸は凄く驚きながらも士郎を睨みつけながら




「何で来たの、捕まってるのをバカにしに来たの?」




士郎は何も言わずに経丸に近づき縄を手際よくほどき経丸を抱きしめ




「怖かっただろ、怪我はないか?」




経丸は士郎からの予想外の言葉に今まで強がっていた気持ちの糸がプッツンときれ涙があふれ出た。




経丸は震えた声で




「さっきあんなにひどいこと言ったのに」




うつむく経丸に士郎は




「お前凄いな」




「え?」




「たくさんの方が命をかけてお前のために戦ってくれてるぞ」




経丸は驚いて




「えっ、何でそんなことを私なんかのために」




士郎は経丸の両頬から流れている涙を自分の持っていた布で拭いてあげ右手を取って両手で優しく包み込み




「おまえが皆の事を大切に思うように皆もお前を大切に思ってるんだよ」




「なんで、なんで涙が止まらない」




士郎は経丸の顔を指さし




「うはははは‼泣きすぎで目が腫れてる妖怪みたい」




士郎は腹を抱えて転げ回るように笑った。




 士郎の言葉に経丸は涙が引っ込みイラっとし




「士郎ってホント最低‼」




士郎は涙が引っ込んだ経丸の顔を見て笑うのをやめて真剣な顔し




「お前、これでもまだ逃げるか?」




経丸は怒鳴るように




「戦うに決まってんでしょバーカ」




「じゃあ行こうぜ」




士郎はしゃがんで経丸を肩に乗せて肩車する。経丸はいきなり肩車されてビックリして




「えっえっどういう事?」




「行くぞ、勝つか負けるか気持ち次第、気持ちー‼気持ちー‼」




士郎は経丸を肩車しながら敵に突っ込んいく




経丸は刀で斬りこんで行くと士郎の上に乗っている経丸は矢部を見つけた。




「士郎、矢部がいたよ」




「距離はどれくらい?」




「士郎を踏み台にしてジャンプすれば届く位」




「そっかじゃあ行けるか?」




経丸は大きく深呼吸し




「もう覚悟出来た」




「じゃあそれがしを踏み台にしろ」




「言われなくてもわかってるよ」




士郎と経丸は二人は声を揃えて




「せぇーの‼」




士郎は足に思いっきり力を入れて経丸は士郎に遠慮することなく思いっきり力を入れて士郎の肩を蹴りジャンプした。




経丸の体が宙に浮く、体が浮いた事にいつもなら恐れがあった経丸だが




「気持ちー‼気持ちー‼」




経丸は叫びながら矢部を力いっぱい斬りつけた。思いっきり刎ねられた矢部の首は宙に浮きそれを経丸は左手でキャッチし矢部の首を持っている左手を上に掲げ大声で怒鳴るように




「敵将討ち取りましたー‼」




経丸のこの一言で矢部との戦いに終わりを告げた。




城主を討ち取られて唖然としている矢部の家来達を横に討ち取った矢部の返り血をもろ顔に浴びて気絶した士郎を経丸と片倉は背負って長作城まで帰って行った。




夜が明けて士郎と経丸と片倉は階段が長い神社の上で朝焼けを眺めていた。




士郎は少し嫌味っぽく




「よかったお前清々しい気持ちで朝焼けが見れて」




経丸は小さな声で




「士郎のおかげだよ」




「今なんて?」




一瞬間があいて




「別に」




「そっかじゃあそれがしはこれで」




去ろうとする士郎に経丸は大きく深呼吸して少し照れながら




「士郎、今回はありがとう」




「なんだよ、急に気持ちわる」




経丸は士郎の言葉にイラっとしたが自分を抑えて




「いや、あっそういえばさうちの城に開いている部屋があるんだけど?」




士郎は興味なさそうに




「へぇーそうなんだそれじゃ」




立ち去ろうとする士郎に経丸は「えっ!」と驚いた。




片倉が慌てて士郎の所に行き士郎の耳元に向かって




「あほかお前、殿が誘っておられるんだぞ」




「えっ誘ってる何を?」




「お前を家臣にってことだよ」




片倉の言葉を聞いた士郎はニヤッとし




士郎はニヤニヤしながら




「そうかそうか、お前俺に家臣になってほしいのか」




経丸も士郎の態度と言葉に意地張って




「いや、別に部屋が空いてるって言っただけだし」




士郎は一呼吸おいて経丸に背を向け朝焼けで青々とした田んぼが美しい光を放っているのを遠い目で眺めながら




「まぁそれがしが家臣になるのは無理だな」




「なんで?」




「それがしはどんな悪人でも絶対に殺しはしない、だから戦には向いてないのさ」




経丸は感情のこもった大きな声で




「そんなのやってみないとわからないでしょ




士郎は士郎の戦い方で戦に出ればいいんじゃないの」




士郎は経丸の方を向き大きな声で




「それがしには夢がある、困っている全国の人々を助ける英雄になること、だから行かなきゃ」




経丸は立ち去ろうとする士郎に大声で




「士郎‼私はどんなことがあってもこの天羽家と長作の人々を守らなきゃいけないの」




士郎は経丸の方を振り向いた。




「その為には私はなんだってする覚悟がある」




経丸は地面に膝をつき




「私には勇気を与えて戦う決意をさせてくれた士郎が必要の、今までの私は戦に怯え、ただ戦を避けることだけを考え戦になるなら強い相手の理不尽な意見も聞き入れなき


ゃと思っていた。でも士郎は違った、弱い者の為に危険をかえりみず戦い悪を挫くその士郎のお陰で私は強い覚悟を持つ事ができるようになった」




経丸は地面に頭をつけ




「だからお願い、私達と共に戦って私達の英


雄になって」




士郎はいきなりの経丸の土下座にビックリ


して




「おい、おい、何やってんだ頭をあげろよ」




経丸は士郎の言葉を聞いて頭を上げ真剣な顔で




「その代わり私も強くなって戦うことから絶


対に逃げないようになるから」




それがしは何やってんだよ自分の好きな子   


 に土下座なんかさせてしまって




士郎は自分に気合いを入れ震えた声で




「英雄になる者なら頼よってくれる者の期待


に応えないといけないよね」




士郎は経丸の覚悟に自分も覚悟を決め地面に膝をつき地面に頭をつけながら大きな声で




「それがし外岡士郎、本日を持って天羽経丸殿にお仕えしとうございます」




その言葉を聞いた片倉は驚き経丸は満面の笑みで




「ありがとう士郎」




士郎は経丸の満面の笑みにドキッとし




何、今のめちゃめちゃ可愛いじゃないか




士郎は胸の動悸が収まらなかった。




経丸は服の袖から士郎に涙を拭いてもらっ


た布を出し


「士郎そういえばこの布ありがとう」




「あっそれあげるよ」




「なんで?」






「それ、それがしがお腹壊して野グソした時に使う布だから」




一瞬にして先程までのいい雰囲気が破壊され




経丸は大声で怒鳴るように




「士郎‼ほんと最低そんな汚いので私の顔を拭いたの?」




さすがの片倉も怒鳴るように




「お前‼殿の綺麗な顔をそんな汚い布で拭くとは‼」




士郎は慌てて




「いや、もちろん使用済みではないよ」




経丸と片倉は声を揃えて




「当たり前だろうが‼」




経丸は刀に手をかけた。




それを見た片倉は




ヤバい、殿は本気で怒っておられる。




経丸は目を血走らせながら




「士郎、一旦この手で叩き斬ってやる」




片倉は慌てて刀を抜こうとする経丸の手を抑えて




「士郎、逃げろ!」




士郎は慌てて経丸と片倉に背を向け勢いよく長い階段を駆け下りた。




片倉に羽交い絞めされ経丸は大きな声で




「片倉さん離してください」




片倉は止めなきゃと思う気持ちと経丸を羽交い絞めにしている罪悪感の感情が入り混じった顔で




「殿、申し訳ございません、落ち着いてくだされ」


 勢いよく階段を下っていく士郎に経丸は怒鳴るような声で




「待ってぇー‼士郎‼」




士郎は後ろを振り返り




「待てと言われて待つバカいないわ」




経丸は大きな声で




「やっぱ士郎、ホント最低―‼」




士郎が天羽家に入ったこの瞬間、今は小さな英雄達の強い気持ちが戦乱という大河の中に一滴の雫として流れ込んでいくのである


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