その身に「獣」を宿し異形と化した人間たちの、死と再生の物語

本作品の登場人物は全員、身体の一部あるいは全身が獣と化した異形の姿をしています。そして当然、ヒロインも異形です。半身が鱗に覆われ、左右の目はそれぞれ蛇と虫という、異なる獣の要素が歪に組み合わさった姿をしています。

そして、自分は第1話目を読んだ時に「最高じゃないか!」と思ってしまったものです。何せ根っからの人外好きですから。ケモナーじゃなくて、人外好きです。ケモももちろん好きですが、それよりも半人半馬だとかの複数の生き物が組み合わさったようなタイプの人外がもう大好きなのです。

でも、読み進めるうちに、そんなこと無邪気に考えちゃってゴメンなさいとなりました。何故なら、この「村」の住人の多くは、元いた世界で打ちのめされ、絶望し、失意のうちに「村」に送り込まれた人生の落伍者だったのです。そして主人公は、ヒロインや住人たちに助けられながら、己の過去や自分自身と向き合うこととなります。

ところで、あくまで個人的な感想なのですが、本作品の「村」から少しだけ「成れ果て村」を連想しました。作品名はここでは伏せますが、漫画やアニメに詳しい方ならすぐに分かると思います。
でも、本当に少しだけです。どちらも「かつて人間だった者たちが異形の姿をとっている」という点では共通していますが、その他の点ではかなり色々と違いますからね。ただ、成れ果て村が好きな人は、この作品も好きなんじゃないかなと思います。あくまでも個人的にそう思うってだけですが。

長々と書いてしまいましたが、自分にとってこの作品は現時点で一番「刺さる」カクヨムの作品でした。このような作品を書いていただき、本当にありがとうございました。もっと多くの人に読んでもらえたらいいのにと思っています。