赤の隅から

@megomilk

第1話 忙しい朝

『キーンコーンカーンコーン』

聞きなれたチャイムに、朝という憂鬱さも混ざり溜息をつく。朝から、グループ内で人の悪口を言っている女子達や、くだらない話で馬鹿騒ぎしてる男子たちにも苛立ちは募るばかりだ。

ここ、私立朝日高等学校は今年で創立100周年を迎える由緒正しき名門校だ。大学も付属しているため、ここの学校の生徒達は基本的に怠けている。他の学校の高校生の方が、しっかりしているはずだ。いや、小学生の方が。

「おはよー!ナナさん。ねね、今日の数学の宿題やってきた?」

「当たり前でしょ。家でやるから宿題なんじゃん。」

「そんな酷いこと言わないで〜!お願いします。ナナ様、仏様、神様〜〜〜!!!!」

「五月蝿い。私に頼む前に、自分で努力したの?私が宿題をやっていた時に貴方は何をしていたの?人に頼ってばかりの人間って1番嫌い。」

そう言って、数学のノートを彼女に貸す。

「早く、写しなさいよね。」

「ありがとうーーー!!ナナさん大好き。」

そう言って、慌ただしく彼女は去っていった。彼女の名前は、佐々木優奈。高1の時に、同じクラスになってから妙に話しかけられる。いつも、ポニーテールにしていて運動神経抜群の彼女はバスケ部に所属している。明るく、コミュニケーション能力が高い彼女は誰とでも仲良くなれる反面、男子にとても媚びをうるため男好きと囁かれている。

私の名前は、宮崎ナナ。私立朝日高等学校に通っている高校2年生だ。身長は、165cmと少し高め。髪は、肩にかかるくらいで右の方だけ耳にかけている。美術部に所属しているため、運動神経が悪いと思われがちだが私は得意な方だ。小学校、中学校と毎年リレーの選手を任されていた。高校になってからは、流石に現役の陸上部にはかなわず応援席にいる事になった。だが、まだまだ走りたかった。バトンに託された思いを繋ぐとか、そういうことではなくてただ、あの疾走感を心から味わいたかった。

そんな、思いにふけていると急に教室のドアが開いた。担任の千葉康太先生だ。彼は、ブラジルとのハーフだが日本で生まれ育ったためその外見とは裏腹に社会を担当している。

「早く、席につけよー。2限目始まんぞ〜。」 そのくせ、坊主ときたから女子の好感度はそこまで高くない。だが、この教師は男子と女子に対する態度の違いが激しく女子には優しいが男子には当たりが強い。その為、男子は勿論女子も、言い寄られるのが気持ち悪いらしく最近は嫌われている。

「うぇー、まじ最悪じゃん。社会とか萎えるわ、」

そんな事を言い出したのは、クラス1危ない危険人物だ。奥野太一は、沸点が分からず何か気に触ることをしてしまえば直ぐにキレる。高1の時も、急に暴れだして男の教師3人がかりで押さえ込んだそうだ。もはや、病気なのではと疑ってしまう。

「アハ、いーじゃん別に。寝てれば終わるんだし。」

「いや、アイツがいるだけでウゼェ。気持ち悪いしよ。おい!早く出てけよ。」

「まぁまぁ、そこまで言うならサボろ?ね、」

「......。愛美がそう言うなら。カラオケ行こーぜ。」

「OK!」

そう言いながら、2人が立ち去っても教師は何も言わない。2人が怖いのだ。太一と一緒に出ていったのは、和知愛美。学年、いや、学校1の美少女である彼女は太一の彼女だ。クルンとカールした髪に、小さい身長、パッチリとした二重が可愛らしい。いかにも、守りたくなるような子だ。クラスも、この2人の突発性にはなれているのでその後の社会は、滞りなく終わったのだった。


「ありがとうございました。ナナ様本当に助かりました〜!」

数学のノートを写し終わったらしい優奈が、感謝を伝えてくる。

「うん、次はやってきなよ」

そう言い、ノートを受け取る。

「それは、わかんないけど...笑。まぁ、今度から気おつけマース。」

言っても、仕方がないことを理解した私はもう関わるのを辞めようと足早に立ち去ろうとした。すると、急に彼女に止められた。

「ねぇ、麗花の事どう思う?」

突然そんな事を聞かれ、軽く困惑する。麗花とは、冴島麗花のことだろう。彼女は、最近和知愛美のグループにいる中島由緒の好きな相手と話しているところを見られ、ぶりっ子と言われクラスで1番嫌われている。由緒は、相当キレているらしく今はその影響で麗花に話しかける人は誰もいない。

「別に。興味ないから。」

言った言葉は、事実だった。どうでもいい。私以外、私じゃないのだから。

「そ、じゃーね!ナナさん。」

笑顔で挨拶をしてきた彼女に、軽く会釈をして立ち去った。優奈は、何を考えているのだろう。いや、ただ気になっただけなのか、釈然としたまま夕暮れの空の下を1人帰るのだった。

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