あらすじって書きます?

 よく分からないが、書庫にあった割には新しいその書物を書見台に置いて、ロスは胡散臭そうに腕を組んで見下ろす。

「全部読むにはちょっと時間かかりそうですね」

「概要とかないのか。歴史書でも一応、まとまって書くものなら細目一覧を付けたりするだろう。記録書も」

 言われてロスはもう一度頁を表紙に戻す。2ページ目を開いたところで、大の男二人がそれを上から覗き込んだ。



 ——森に囲まれた平和な国、シレア国は、先ごろより先帝の崩御と母后の逝去が続いた。その王位継承者の一人、第一子第一王子、カエルムは、正式に即位し、妹王女との共同統治を開始するにあたり、近隣諸国へ表敬訪問のため外遊の最中である。


 シレアの南方に位置するは海に面した強国テハイザ。絶対中立を誓うシレアと、陸の豊かな資源を欲するテハイザの二国は、かねてより緊張関係にある。此度、カエルムは強固な友好条約を結ぼうと、外遊の最終訪問国としてテハイザを訪れる。


 しかし、テハイザ城にある国の宝、「天球儀」は、明らかな異変を示していた。

 隣国の王子は災禍の種として、王との謁見を阻まれる——


 一方、その頃のシレア本国では、国で「時間」を知らせ、けしてその刻みを止めない唯一の「時計台」に異常が起こっていた。


 一刻も早くの帰国が要される。残された時間に、テハイザ王との交渉は相成るか。——



「なんですかこれ。僕らの目的がとりあえず、書いてありますね」

「シレアのことも書いてあるな」

 文体からして明らかに、報告書の要約とは異なる。しかも、旅の前提は書いてあれど、その内容はわかるようで……さっぱり分からない。むしろ本文を読まないと分からない。


 その少し後に、短く続きがあった。


 ——シレア国の王女を主人公とした長編ファンタジー

「時の迷い路」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054889868322

 こちらと同じ時間軸で進む姉妹作。単独でも読める作品として書いています。

 姉妹編を先に読んでいただいた方は、より内情がわかるかもしれません。——


「シレア国の王女って、姫様ですか」

「妹の他にいないだろう」


 そう二人が顔を見合わせたとき、開けっ放した扉からひょっこり顔が覗く。


「あら、お兄様もロスも、この寒いのに廊下の扉開けっ放しで何なさってるの?」


 ***


 さてそんなわけで(?)あらすじって書きますか?

 私の場合、前作の『時の迷い路』、最初は書いていなかったんです。というのも第1、2章くらいで異変が起こるその過程を楽しんでいただきたいな〜と思ったので。ダブル主人公の登場も、謎めいたものにしたかったし。


 しかし姉妹編を書くにあたり、ちょっと反省。中身がわからなければ人も来まい、と思い直し、書くことにしました。それが先の引用部分です。


 これが難産。要約しすぎても、事務的でつまらないし、ネタバレはしたくない。やっぱり物語ですからね。どこまで書いていいのかというのは非常に悩んだ結果なのですよ。


 この辺り、「これ書いたほうが」「やめたほうが」というのがあったら、ご意見もいただきたいです。


 次回描こうかな、は「プロット」のお話。

 お読みいただきありがとうございます! 本編の『天空の標』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054891239087

 と『時の迷い路』もどうぞよろしく笑

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