みなさん初日に「新作」で出すんですね!
「それで、この話は何の話なんだ」
取り敢えず、よくわからないところで文字の動きは止まっている。ただし、いくらか空白が開いており、その先にはすでに固まった段落が始まっているのだが。制止した頁を見ていても仕方がないので、ロスは書の冒頭の方へ戻っていく。
「ええと、ついこの間までのテハイザ滞在のことみたいなんですけど……」
「この間のテハイザ滞在、というのは私たちの行った?」
「そうです。南に友好の交渉に行った時の話がなぜか……」
「もう国事記録係には報告したし、おまえが書いてくれたものが確認へ回ったはずでは?」
国事記録書に収めるはずの書面はロスが整理し、帰国後まもなくして担当官へ回したはずだ。何も不思議がるものではない——文字が踊っているのを別として。だが、ロスは落ち着きのないままだった。
「いえ、僕が書いたのとは違います。なんだかこう、記録書や歴史書の類じゃないのです。どちらかと言えば叙事詩やら、そういう類に似ているのですが……」
ふむ、とカエルムはちょっと考える素振りを見せた。
「この国は人智の及ばぬことが多いからな。テハイザもそうだが……」
「でもこれ、始めの方に日付っぽいのがついているんですけれど、よくわからない暦なんです」
ロスが表紙に戻って一枚めくると、なるほど「旅のはじまり」と、いかにも冒険譚やら英雄譚、叙事詩的な題名が記されていた。そしてその下にある暦。
「2019年9月?」
聞いたこともない暦だ。
「それでですね、さっき文字が動いていたところの少し前に何やらスタンプみたいなのが」
再び頁を戻って指差されたところを見ると、
『11月29日、カクヨムWeb小説コンテスト』
とある。筆では無く、何かで刻印したような形の整った文字だ。そして同じ頁には、本体とは別の細く長い紙が挟まっていた。
「これは?」
見てみれば、これまた事務的書状や歴史書などではなく、叙情詩、叙事詩、怪奇伝など、物語の類を思わせる題名らしきものがずらりと並んでいる。
「もしこれが物語書ならば、こういうものは一番初めか終わりにあるものでは?」
書の端(大抵は終わりが多い気がするが)に、同じ作者または類する書の一覧を載せる、という習慣がある国も存在するらしい、というのは耳に聞いたことがあった。
「でもこの場合、途中に挟まっているのですよね」
「妙だな」
「本の体裁としては、計画性がないですね」
「開始点を間違えたような有様だな」
不細工にびろんと伸びる細紙を(やたら長い)持ち上げ、カエルムはため息をついた。
「途中にこれが入っていたら、本編も此処から開いてしまわないか?」
そうですよねぇ、とロスも相槌を打つ。
「物語がたくさん一度に出るなら、『新作』に目がいくじゃないですか。途中から読めったって、難しいかもしれないのに……機を間違えたというか、考えていなかったというか」
***
はい、そのような訳で、カクヨムコン長編は初参加。参加するとも思っていませんでしたから。みなさんが開始当日まで準備して、当日に新作を投稿! 読者の注意を喚起、そして冒頭から読んでもらう! 書きためたものを定期的に投稿!
なんていうセオリーは、全く知りませんでした。お星様も、期間内のものが有効らしいですね。その意味でも、期間開始と同時に、が戦略的には当たり前のようだ、というのを初めて知りました。
九月に掲載開始ののち、不定期更新で約45000字いったものに、「参加」とポチッと。しかも仕事で書き終わるかもわからぬという、不格好極まりない体裁です。
これ書いている間に本編書こうよ(じゃなきゃ仕事しなよ)。
それでもフォロー&読んでくださる方がいらしてとても嬉しいです。ありがとうございます。
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