壊れたロボットくん コスモポリス

雨世界

1 壊れたロボットくん

 壊れたロボットくん コスモポリス


 登場人物


 ベル 壊れたロボット コスモポリスで暮らしている。


 サラ 金色の髪をした人間の女の子 


 プロローグ


 ほら、こっちにおいでよ。 


 本編


 壊れたロボットくん


 ある日、ベルがいつものようにごみ捨て場で、なにか使えるものがないかと壊れた機械部品のジャンクの山を漁っていると、そこに、一人の女の子がいた。


 その人間の女の子を見つけて、ベルはすごくびっくりした。

(だって、機械のゴミを捨てるための場所に、人間の女の子が捨てられていたのだから、それはもうすごくびっくりした)


「あの、大丈夫ですか?」

 ベルはそう言って、女の子の体をゆらゆらと揺らしてみた。

 壊れてしまっているとはいえ、ベルは人間に作られたロボットだった。ロボットは困っている人間をほおっておいてはいけないのだ。必ず手を差し伸べなければならない。それがロボットの決まりであり、絶対のルールだった。


「……う、うん」

 と女の子は言った。

 意識はない。でもどうやらまだ、この女の子はきちんと生きているようだった。(生きている、という定義については、この際、あやふやでも構わない。なにせ緊急事態なのだ。難しいことを考えている時間はない)


 でも、体はとても弱っている。

 傷もある。

 血も流れている。


 おまけに……、そう言って、ベルは、この場所だけ暗い夜のコスモポリスの空を見上げた。

 その真っ暗な空からは冷たい雨が降り続いていた。


 このままこの場所に放っておいたら、女の子は間違いなく死んでしまうだろう、とベルは思った。(死、という定義については先ほどの生きているの定義同様に今回は無視する。死は死である。それでいい。難しいことは考えない。また心のどこかが壊れてしまうから)

 ざーという雨の音が聞こえる。


「よいしょっと」

 そう言ってベルは小さな女の子の体を、同じく小さな自分の体になんとか背負うと(女の子はとても軽かった。まるでそこに女の子なんて本当はいないみたいだった)そのまま、自分の秘密の隠れ場にまで、雨の中のごみ捨て場を移動した。


 それが壊れたロボットであるベルと人間の女の子、サラとの初めての出会いだった。

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