無人島 vs 最先端の近未来文明
ちびまるフォイ
無人島に文明の利器をもっていけるの?
「さあ、はじまりました。一般人でも無人島生活!
緊張していますか?」
「はい、これから無人島に送り込まれると思うとドキドキします」
「それでは、これから何でもひとつだけ無人島に持っていくことができます。
なににしますか?」
「そうですねぇ……それじゃあ」
「太陽電池内臓で、どこでも電波が拾えて、
ネットは世界中どこへでも最高速で繋げられて
耐水、耐塵などが施されて頑丈な未来のスマホをください!!」
「 用意しましょう!!! 」
スマホ1台とひとりの男はこうして無人島に流された。
「まさにザ・無人島って感じだな。
さてどうしようかな」
男は背筋をぐいと伸ばす。
どこか余裕すら感じさせる様子にはスマホの存在が大きかった。
「これさえあれば無人島のどこへでもGPSで場所がわかるし、
ネットにもつながるから毒キノコ食べる心配もない。
ライトにもなるうえ、バッテリーは太陽光だから永久に持つ。
あとは、この無人島バカンスを楽しむだけだ!!」
男は砂浜へとダッシュした。
無人島は言い換えれば貸し切りのプライベートアイランド。
その気になればスマホで助けを求めればいい。
なにせ未来のスマホは地球上どこに居ても電波良好なのだから。
「ふぅ~~、遊んだ遊んだ。
トロピカルジュースと水着の美女でもいればもっといいんだけど
まあ贅沢は言えないな」
さんざん遊んだ男は日もくれてきたので火を起こして食事にしようと考えた。
「さて、火はどうやって起こせばいいのかな」
スマホの電源を入れるとネットで
『サバイバル 火の起こし方 エロ画像』と検索した。
検索結果にはいくつものライフハックというかDIYというか
ひとりキャンプやそのグッズが検索上位をせっけんする。
「ったく、こんな道具があったら調べてないっつ―の。
ああここもショッピング。こっちもショッピング。こっちはオークション。
どうすれば火を起こせるのか知りたいって言ってるだろーー!!」
男は沈む夕日に向かってネット通販サイトへの哀を叫んだ。
「あ、そうだ。質問すりゃいいじゃん」
それで頭が冷えた男は質問サイトに投稿することに。
「急募、無人島で生活しているんですが火の起こし方で困っています……。
どうすれば簡単に素手で火を起こせるのかご存知でしたら教えてほしいです、と」
男はヒット件数を稼ぐためにさっき見つけたセクシーサムネイルをいっぱい載せて、
さながら動画配信者のように目立つ文字を画像に入れ込んだ。
男の努力と策略の成果もあって質問にはあっという間に回答がついた。
ベストアンサー
そもそも勝手に火を起こすことの許可は取っていますか?
許可もなく何かを焼くなんて許されません。
その他の回答
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カテゴリーが違います。
ただしくは「サバイバル」ではなく「生活の知恵」カテゴリーでは?
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過去の質問を検索してから質問してください。
あなたのような調べ足らずのめんどくさがり屋は質問すべきではありません。
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なにをもって無人島なんですか。
火を起こすというのはどの規模のことを言っているんですか。
どれだけ持続させられればいいんですか。
情報が少なすぎます。答えようがありません。
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「俺は火の起こし方を知りたいって言ってるだけだろーー!!」
男は怒りのあまりスマホをぶん投げそうになったがグッとこらえた。
その後も大喜利に発展するばかりで答えは得られなかった。
「質問はダメだ。回答にかこつけて日々のストレスを
俺で発散しようとする文化系ジャイアンが襲ってくる。
やっぱり自分で調べなくちゃ……」
質問は諦めて、マイナス検索というオーバーテクノロジーを駆使し
改めてこれからのサバイバルのための生活方法を調べることに。
「お、これよさそうじゃないか」
火の起こし方についての動画が見つかった。
文字だけではイメージしづらいので助かると再生ボンタンを押した。
「……なんだこれ」
動画ではなかった。
キャンプファイヤーの静止画をバックに文字が流れるだけだった。
しかも文字のスピードはひどく遅くイライラさせられる。
読み終わった後で、動画(静止)の内容が火の起こし方ではなく
ネットで炎上商法するための手法だったことを知った。
「ふざけんな! 15分くらい見ちゃったじゃないか!
いったいいつになったら俺はサバイバルするための方法が見つかるんだ!!」
動画も除外して再度検索し直した。
通販サイトを省いても今度はキャンプ用品を扱う企業のページが襲いかかる。
網の目をかいくぐるようにして見つけたのはやっとサバイバル方法について書かれたページだった。
「な、長かった……。
タイトルも『無人島で過ごすための必須なこと5選』とある。
これを実践すればもう大丈夫だろう」
■そもそも無人島とは?
無人島とは人のいない島のことを言います。
人とはホモサピエンスのことで、我々人類と同じと考えていいでしょう。
■無人島の歴史
無人島が誕生するまでは長い年月がかかります。
地球が氷河期に入って冷えてから誕生したものと考えます。
現在世界には100個ぐらいの無人島があるとされています。
■無人島の年収って?
無人島は基本的にお金はかかりません。お金も発生しません。
飛行機事故とかでたまに漂流する人が出てくるので、
持っておいても損はないでしょう。
■無人島の家族構成
無人島には義母がいると考えられています。
SNSでは無人島を擬人化した家族も書かれているようです。
■無人島の出身高校
無人島は無人島無人第一高等学校を卒業したそうです。
無人だったので誰もそれを証明できないみたいです。
■無人島の今
無人島は今女優の〇〇さんと交際しているという噂があります。
そのうち無人島が有人島になる日も近いのかも知れませんね。
いかがでしたか?
無人島のサバイバル方法を調べた結果、
無人島について様々な歴史や相関関係についてまとめてみました。
今後、無人島で何が起きるか楽しみにしましょう。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
男は激怒した。
男は無人島に取り残された哀れな男である。
およそ他人から気分を害されるはずのない孤島で怒り狂っていた。
目の前にニンジンがぶら下がっているのに、手を伸ばそうとするほどに遠ざかるのだ。
男は我慢できなくなり、ついに滞在1日で助けを呼んだ。
「誰か! 助けてくれ!! なんでもやる!! お願いだ!」
ネットさえつながればいくらでも生活できるだろうと甘く見ていた。
情報さえ集まれば困ることはないだろうと思い上がっていた。
「だれか……おねがいだ……」
なにもかもを諦めたそのとき、海の果てから光が近づいてきた。
「大丈夫ですかーー! 今行きます」
無人島に船が到着する。久しぶりに他人の顔を見た気がした。
「ネットであなたがのことを知って行かなくちゃと思って来たんです」
「ああ……そうなんです……本当に良かった……。
誰も見てくれてないと思っていた……」
「なにを言っているんですか。あなたはあなたが思っている以上に
たくさんの人から見られているんですよ」
「ありがとう……本当にありがとう……」
船は無人島を離れて海をひた走る。
いつまでもいつまでも。
長いようで短いようで、やっぱり長かった無人島生活を思い出し、
いつまでも陸にたどり着かないもので思い出でも二巡目に入ったころ。
「あの、いつまで海を渡っているんですか?
俺がいた無人島ってそこまで陸とは離れてなかったような……」
「あれ? ネット見れるのにご自身のことは調べてなかったんですか?」
救助にあたった男はひとつの記事を見せた。
「あなたの次に無人島に行く人が持っていくもの。
それは別の無人島にいるあなたと言ったから、わざわざ迎えに来たんじゃないですか」
男は船のスクリューに飛び込んだ。
無人島 vs 最先端の近未来文明 ちびまるフォイ @firestorage
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