第112話 ラッキースケベは怒っちゃダメだよ
「脱衣所の扉を開けると、そこは天国だった!」
『♪ 何を言っているのですか、そんなまじまじと眺めたら引かれますよ。早く退室してください』
まあ、既に手遅れだ……ガッツリ見てしまった!
まずは一番近くにいたエミリアを見て、横に居たミーファを見る。この時点で扉が開いた音で俺に気付きミーファ以外の三人から悲鳴が上がる。どこを重点的に見たのかは言うまでもない!
慌ててナタリーがエミリアの裸体を隠そうと【亜空間倉庫】の中から拭き布を取り出し被せるが、俺はその間に自分の仕える主を優先して無防備なナタリーとエリカをチェックする。ナタリーは痩せすぎだが、二人ともよく鍛え上げられており、引き締まった良い体をしていた。ナタリーはモデル体型、エリカはアスリート的な引き締まりだ。
今はミーファ以外が俺に背を向けているけど、可愛いお尻が丸見えだ。お風呂から出たばかりなのか、髪も体も水を滴らせてみんな艶めかしい。
素晴らしい!!
そしてさっきの言葉を意図せず言ってしまったのが今の現状だ。
おっと、視線が合ったエリカが切れそうなので、何か言われる前に退室する。
「失礼」
そう言って脱衣所の扉をしめたのだが……。
俺は現在リビングで腰に手を当て、仁王立ちで怒ってますアピールをしてくるエリカから詰問中だ。その傍でナタリーはエリカの代わりにミーファの髪を拭いて乾かしている。エミリアは顔を赤らめつつ俺から視線をそらして自分で髪を拭いている。
アニメやラノベのように、板の間に正座させられていないのはありがたい。あと、怒ってますアピールのエリカが可愛くて全然怖くないという――
「ルーク殿下、何か言うことはありませんか?」
「ありがとう?」
「なんでそうなるんですか!?」
「…………」
「見ましたよね?」
「うん、総合的にミーファが一番だね! エミリアも素晴らしい!」
胸だけで言えばエミリアが一番好みだけど、本人に言ったら引かれそうなので黙っておく。
「誰が評価しろって言いました! 女性の体を採点するとか最低です!」
あ、確かにそれはそうだ。
「ごめん、確かに失礼だったな」
「わたくしは嬉しいです♪ ルーク様に喜んでいただけるなら、ちょっと嫌だった大きな胸も今後は好きになれそうです」
俺の失礼な発言に対して、ミーファだけは『体を誉められた』と喜んでいた……どんだけ俺のこと好きなんだよ。
「ミーファ様そうじゃないでしょ! ここはしっかり怒って注意しないとダメです」
「待てエリカ、ラッキースケベは怒っちゃダメなんだぞ」
「ルーク様の場合、ラッキースケベじゃないでしょ! とうとう本性を現しましたね!」
「『本性』って何だよ……そもそもここは男子寮で、俺の部屋だ。むしろなんでお前たちが俺の知らない間に勝手に部屋に上がり込んで風呂に入っているんだ?」
「えっ? イリス姉に行くって伝えたよ?」
キョトンとした顔で口調が素に戻っている。
「俺は何も聞いてないが?」
イリスは我関せずと、台所で夕飯の仕込みを始めている。
「イリス、ちょっといいか? ミーファたちが今日来るって聞いていたのか?」
「はい、授業が終えた後に夕飯の準備をしに来るとナタリーから聞いております」
「俺は何も聞いていないけど……」
「商都から二時間で帰って来たので、これなら私たちの方が先に部屋に着くと思いルーク様には伝えておりませんでした。せめて王都に着いたことを誰かに伝えておけばこのような事故も起きていなかったでしょう。申し訳ありません」
「なるほどな……各々の連絡ミスではあるのか……」
「そうですね、以後気をつけます。でも皆さんがお風呂に入っているとは思いませんでした」
そりゃイリスからしても想定外だよな。
「そうそれ! 何でミーファたちは自分の部屋じゃなくて俺の部屋で風呂に入っていたんだ?」
「昨晩お母さまたちがわたくしの部屋を訪れ、シャンプーやコンディショナーを全部持って帰ってしまったのです」
聞けば俺の部屋の風呂にはまだシャンプー類が残っていて、俺自身も今日帰って来るのだと分かったら、エミリアにあげた分まで強請って持って帰ってしまったのだとか……。
そういえば昨日ガイル公爵が『王妃たちがもう残ってない』とか言ってたな。丁度その話をしていた頃、こっちでは王妃たちがミーファの部屋に来ていたのだろう。
流石に先日渡したばかりなので、俺には催促できなかったのかな?
伯母とはいえ、エミリアの分まで奪っていくのは腹立たしいので、次に会った時にでも注意はしておくか。
「事情は分かったが、やはり俺が謝る謂われはないな。お礼なら言ってあげるけどね。むしろ許可なく風呂を使っていたエリカが俺に謝れ!」
「う~~っ! 勝手にお風呂を使って申し訳ありませんでしたっ!」
「うむ、許してつかわす」
「もう! 裸を見られた私が謝らなければいけないとか絶対おかしいです!」
エリカから「二度も裸を見られた」とか、「もうお嫁にいけない」、「責任を取ってもらう」とかブツブツ呟いているのが聞こえてきたので早々にこの話を終えることにした。
「ナタリー、代わろう」
「あ、はい、お願いいたします」
俺はナタリーと交代し、ミーファの長い髪を【ドライヤー】と命名した温風魔法で乾かす。
「うふふ、ありがとうございます。ルーク様に魔法で乾かしていただくと、凄く髪が滑らかになるんですのよ」
「この洗髪剤の特徴の一つでね、適度な熱でブローすると、髪の表面の肌理が柔らかくなり整列され、余分な水分が抜けるまでに形も整えられるから美しく綺麗にみえるんだ」
キューティクルとか言っても分からないだろうと思い肌理と言ったのだが、ミーファたちはこの話に興味をもったみたいだ。
「髪にもお肌のような肌理とかあるのですね」
「そうだよ。髪を拡大して見ると、蛇の鱗のようになっているんだよ。その鱗のようなものが熱で柔らかくなって、回復剤の効果もあるから痛んでいたものが整って滑らかになるんだ」
ミーファの髪のブローが終えた後、話を聞いていたエリカが「私もやってほしい」と言ってきた。
生活魔法レベルの送風程度なら少し練習すれば習得できるが、風属性と火属性の複合魔法の【ドライヤー】は結構難易度が高いのだ。
もちろん喜んでやってあげましたよ!
美少女の髪を同意のもとに触り放題とか、断る理由ないよね。
「やっぱり全然違う! ルーク様ありがとうございます」
「どういたしましてだ」
怒っていたのが噓のようにエリカの機嫌が良くなった。
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「ルーク様、昨晩アンナやララから興奮気味にコールがあり、海に連れて行ってもらったとお聞きしました。ニーニャからも二人が楽しそうにしている動画をメールで頂き、昨晩は皆で動画鑑賞会をいたしたのですよ。妹たちを可愛がっていただきありがとうございました」
夕飯時、エミリアから感謝を述べられた。
「そうです! ルーク様、ララちゃんばかりズルいです! わたくしも海に行きたかったですわ!」
ミーファから見ると、どうやらララにばかり構っているように見えるらしい。
「私も海鮮網焼き食べたかったです」
エリカは貝とかエビが食べたいそうだ。
「うむ、あれは美味じゃったのぅ。妾もまた行きたいのじゃ」
「そうだな。ディアナがその気なら半日ほどで行けるし、今度はみんなで行くか……潮干狩りもできるみたいだし、次に行くときは干潮に合わせて行こうか」
「うむ、ちゃんと美味しいものを食わせてくれるなら、皆を乗せて飛んでやっても良いかの」
やっぱディアナはチョロいけど、そこがまた可愛い。
ちなみに夕飯だが、俺とイリスは先日食べたばかりだし、疲れもあって海鮮物を振舞うのは後日にした。ディアナは俺のイカ料理を食べたいと強請っていたけど今日は勘弁だ。
皆が帰った後、イリスの魔力が無くなるまでシャンプー作りに精を出す。
「イリス、無理しなくていいんだぞ」
「いえ、やらせて下さい。早く練成魔法を習得したいのです」
イリスは俺があげた指輪を普段指にしていない。大事に布に包んで宝石箱に入れ、【亜空間倉庫】に仕舞っているそうだ。「無くすと嫌だから」と大事にしてくれてちょっと嬉しい反面、虫除けに着けていてほしいという思いもある。
「まあ回数こなすのが習得の一番の方法だし、数をこなせば練度が上がり、完成物の出来も良くなるからね」
イリスの魔力が枯渇した時点で本日の作業は終了とした。
明日は久しぶりの学校だし、早く寝るとしますかね――
転生先が残念王子だった件 ~今は腹筋1回もできないけど痩せて異世界救います~ 回復師 @k1509
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