放たれる砲声と公開処刑 【2分で読める短編】

火ノ島_翔

放たれる砲声と公開処刑 【2分で読める短編】


 見物人が集まっている。まるでこの公開処刑を楽しみにしているかのようにニヤニヤと……否、楽しみにしているのだろう、ヤル側の気苦労も知らないで。


「クソっ……」


 俺はまだまだ新人だ。今回の公開処刑も初仕事である。だがこれは仕事だ。たしかに危険で人によっては心に焼け付くようなシーンを何度も見ることになるだろう。だが俺は自ら望んでこの職を選んだ。国によっては犯罪だが、この国では限定的に認められる。民の感情統制とか文化的なアレだろう、詳しくは俺なんかじゃわからない。まぁ、簡単な仕事さ、引き金を絞って、砲声と火花を鳴らし、儚く散っていく存在を見届けるだけ。ただそれだけだ……。


「上手く出来るだろうか」


 つい口に出てしまった。これまで何度も練習は積んできた、今日の公開処刑日に合わせて大きいのも小さいのも、練習は積んできたのだが、いざ処刑会場に来ると息を呑むような独特の雰囲気に押しつぶされそうになる。俺は上手く出来るのか、拙い俺の技術で、一発で決められるのだろうか。


「グワッハッハ!何シケタ顔していやがる?」


 熊を思わせる巨体から伸びた手が俺の頭をグシグシと撫でる。俺の師匠であり、この公開処刑場の英雄である。彼がこの場で散らした輝きの数は計り知れない。国内有数の存在だ。そんな実績を持った手に撫でられて少し落ち着いた。師匠の技術を引き継ぐのはこの俺だ。師匠のためにも下手な仕事はできない。


「師匠っ!絶対に一発で決めてみせますっ!」


「おぅっ!力みすぎんじゃねぇぞ、力を抜いて刹那の輝きを楽しめ!グワッハッハ!」


 いよいよ公開処刑の時間だ、俺は持ち場に着き、その手に仕事道具を握る。そしてその時を待つ。


「まだだ」


 早すぎても遅すぎても駄目だ、一発だ、決めなくてはならない、手の中がヌルヌルしてきた、頭がぐるぐるする、大丈夫か、大丈夫だ。俺は自分に言い聞かせる。


 その時が来た!


 ――――……ドォンッ!!


 腹の底に響き渡るような砲声が響く……そして


 ――――ドォッゴォォン!


 この公開処刑場に拙い一撃が放たれた。


 鮮やかな赤色の輝きが世界を覆い尽くす。


 そして辺りは静寂に包まれた。


 まだ手の震えている俺の頭を熊のような手が撫でる


「まぁまぁだな、初めてにしては上出来だ!」


 師匠に褒められたということは、この場は公開処刑場にならなかったということだ。新人に任されたたった一発の大仕事は終了した。安堵の溜め息とともに腰が崩れそうになったが、それでも俺は立たねばならない、見届けねばならない、他の職人が放つ火花を……


 大空に輝く刹那の輝き……その花火の輝きを。

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