第2話〜なかった筈のもの〜

___しばらくして___

辺りを見渡すと、そこには先程まであった筈の赫い魔法陣やクラスメイトは居らず、ただ草原が広がっていた。

周囲には見たことのない植物が茂っていて、動物もいた。

「人は…いないな…」

俺は妙に冷静だった。

魔法陣で飛ばされるとすればその先は異世界と決まっている、そう思って疑わなかったから…

しかし、改めて考えてみればおかしな話だ。物理法則に逆らっている。いや、逆らっているどころではない。もはや世の中の理念そのものが改変されているのだから。

「ダメだダメだ。」

俺は頭を横に大きく振った。

考えれば考えるほどおかしな点に気がついておかしくなりそうだ。ここは異世界であって自分たちの世界ではない。

そう割り切る他自分を冷静に保つ方法はなかったのだ。

「そんなことより…だ。」

俺の頭の中にクラスメイトの顔が浮かんだ。

「彼奴ら、探すか…」

俺は立ち上がってもう一度辺りを見渡した。

すると、座っている時は見えなかった景色が見えた。

「案外、悪くないな…」

地球よりもずっと綺麗だった。そのうえ、空気も美味しかった。

地球も何千年もむかしはこうだったのかと思うと、何か込み上げてくるものを感じた。


しばらく歩いてみると、少し先に街らしきものが見えた。

「あそこなら人、居そうだな。」

1人でそう呟くや否や、俺はその街に向かって駆け出した。

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日常など存在しない世界で こたつみかん @kotatsu-mikan

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