第8話 嫁さん一人三百万円
今から二十年ほど前のお話です。
近所のオバちゃん連中が、噂してたんですよ。「○○さんちの息子の嫁、中国人なんやで。業者に三百万払ったらしいで。そやけどその嫁はん、中国に旦那と子供いて、その家族に送金するために○○さんの息子からお金むしり取ってるんやって」というような内容でした。
その頃の田舎というのは、息子が結婚できないのを心配するおばあさんが、外国人の嫁を仲介業者に頼んで連れてくる、っていう話があちこちであったんですよ。特に農家。何で農家なのかというと、大抵嫁いじめが酷かったから、なりてがいなかったのです。いじめというか、めんどくさい風習がきつくて、よく「嫁が出てった」とか聞きましたよ。工場でバイトしてる時にそういう女性いましたね。「山から逃げてきた」っていう。
私の同級生にも、農家に嫁いだ人がいるんですが。舅(しゅうと)にいじめられて、ある時など幼い娘に「うるさいから」って、水かけられたとか何とか。昔の朝ドラみたいな話なのですが、こういう事を聞くと嫌になってしまいますよ、農家の「嫁」になるとか。農業を衰退させたのは、政治の問題もあるのかもしれないんですが、農家の嫁問題もあるんだと思うのですよ。今はそういう待遇面、改善されているんですかね。
ところで「嫁一人三百万」っていう相場、当時はあちこちで耳にしたんですが、よく問題にならなかったなあと思うのですよ。だって人身売買じゃないですか。単なる出稼ぎ感覚の人もいたんだろうけど、主に中国から来ている人が多かった時代から、フィリピン、タイと変化するんですが。
ところで冒頭にある「○○さんの嫁」ですが、その後、日本で生まれた子供と共に中国の家族の元へ帰ったそうです。
それにしても、昔の田舎の話を聞くと暗澹(あんたん)たる気持ちになるのです。子供が水くみのために学校に行けなかったとか、貧乏なのにどんどん子供が生まれるとか、嫁いじめとか変な風習とか。
何で結婚報告でご近所さんに饅頭配らなあかんのや。あたしゃそんな事、子供らが結婚してもやらんで! と言ってます。あとは嫁入りトラックとか。家具が入るように、家を建てるとか。もうね、結婚のハードルを上げまくる風習はやめた方がいいのですよ。少子化やら都市部への人口流出やら、田舎の変な風習やめたらちょっとは改善するのと違うかなあ、と思います。もう遅い気もしますが。
今回は、お仕事というよりは「だから田舎は嫌なんだ」話になってしまいました。
これから働く人たちへ むらさき毒きのこ @666x666
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。これから働く人たちへの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます