第4話 戦闘開始

「一つ二つ..三つ!」

物陰に隠れて田植えをするように撒かれるエンブレムを絶えることなく擊ち壊し牽制する。

「いいぞガンマン!

連中もしどろもどろだ!」

「弾速とリロードを結構昇げてきたからね、防御こそ低いけど。」

「安心しろぉ!

この俺が補ってやる!!」

「...それは頼りになるね。」

「いくぞっ!」

両者厳しい攻防を繰り広げる。

しかし事態は緩やかのままではいかず


「よーし、いくよー?」

 「まったまったタンマ!」

「それっ!」「ぐは!」

『アーミー撃破、1P獲得』

「これで陣地取り放題っしょ?」

「ええ、そうね。」

クリーナーは補助に徹する役割の為戦闘力は皆無に等しいが、いざという事態に備えSPモーションなる動きを持っている。いわゆる奥の手になるのだが一定数モップの威力を格段に高め周囲の範囲を捉える。この一撃必殺をいかに当てるかで腕前が決まる。

「ぬうおぉ!

貴様ら、やってくれたなぁ!」

「まだ終わらないわよ?」

モップでコーティングされた床に次々とエンブレムを刺し支配していく。

飛び跳ねティムスを困らせていたクラッシャーも行き場を失い硬直する。

「おぉ....。」

「ふぅ、ここはもういいわね。

じゃあ私は次にいくわ」

「次?」「そ、後はお願いね」

 ちょっ待てって、あーあー..」

「……」 「.......」

残された二人、犬猿という程ではないが罰の悪い存在。


「その槍、結構イカスじゃん。」 「..君こそ、なんかやるじゃん?」

という訳でも無さそうだ。


第三ブロック

「どらぁっ!」

ラグビーのタックルの如く圧し合いをするクラッシャー同士は、ユニフォームを着ていないのではたから見ればどちらが味方かわからない。

「強いな力が、ガッツとやら!」

「お前こそ重みを感じるぞぉっ!」

「ちょっと、ソッチで熱くなったらどうすんの。こっちガラ空きだよ?」

「気にするなぁっ!」

意図しての言葉なら頼りになるが、彼らのそれは気休めの権化。

〝なんとかなる〟と同義である。


「ガラ空きか..」「ん?」

「サシなら勝負できらぁな!」

「え?」

巨漢の影から細身のライダースーツが飛び出した、敵のレコーダーだ。

「知ってるか坊主?

エンブレムってのはこういう使い方もあるんだぜ!」

上空からブーメランのように鉄の板を振り投げる。避ける間も無く額にヒットしアランの身体は地に伏せた。

「痛った..」

「確か防御は低いんだったなぁ、どのくらいまで耐えられるんだぁ!?」

「くっ..めちゃめちゃイキってるな」

普段目立たない奴は下の存在を見つけると極端に威張る。だからこそ隙が生まれる。

「1、234..」「ほらほらどうした!」

三、四枚程撃ち落とした後リロードし弾を変える。

「ほらもう一枚だぁ!」

「一枚一発、速射で四発..」

構えた銃から連続射撃、序動の一発でエンブレムを落とし、残りの三発は対空中のターゲットへ刺さる。

「何っ..?」「空じゃ無理だよな」

「ナメてたぜ、新人ルーキー...」

 『敵アーミー撃破1P』

「..同じ意味だよ。」

足元では、牛の顔が笑っている。


第一ブロック

「おやおやぁ?

どうしたダンナ、動いてみなよホラ」

「く..わかってやってんだろ!」

煽る小僧に手も足も出ず、それが分かっているからの行動なのだが。

「いいから動けってホォラァ!」

「このガキッ、今に見てろ..」

「あら、言われるがままでいいの?」

「オレにどうしろってんだよ。」


「力貸してあげる」「何?」

エンブレムを落とすと枷は外れ、ぐるりと肩を回す。

「はれ?」「良い女だな、お前。」

「嬉しいわね、ならサービスよ?」

フリスビーの如く投げ敵に投げ、張り付く。

「あれ、動けない!ウソォ!?」

「こういう使い方もあるの、人に直接設置すれば拘束具になる。」

「恐ろしい女だな、ビビるぜ」

「やめて、ねぇ、ねぇって!」

「弾使い切っててよ、通常弾で我慢しろや..」

狙いやすい的を使って射撃練習に励むようだ。

「あばよ」「あっ!」

最早アナウンスの必要も無い。


「終わったわね」「..だな。」

「まだ終わらんぞ!」

傷を帯びた巨躯が見苦しく立ち上がる

「テンポ悪りぃな...」

「グレイテスト発動!」

クラッシャーに許された力の解放、個人差があるが何らかの作用を施す。

「ターゲッターブレイク」

チーム全体のクラッシャーが一点に集まる。

「消えた..」

「む!?」「何処行った?」

「わかったぞ、ガンマン掴まれ!」

「え?」

「どぉりゃあー!」「嘘でしょ。」

ガッツのグレイテストガストシュートにより第一ブロックへホームラン。


「痛い!」「来たか、これ使え」

「え?」

次々と目まぐるしく事は進み、渡された弾を装填する。

「バカげた力技に対抗する力だ。構えろ、いくぞ」

「一斉突撃だ!!」

肩を合わせて撃ち込めば、膨大なエレルギーが三位一体の重撃を砕く。

「やるわね、うん!」

『敵チーム全撃破 勝利となります』

これがアランの初勝利となる。


「先に帰ってるわよ」「ああ。」

 「次の相手はオレだ」「え!?」

まだ彼は帰れない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アーミーセレクト アリエッティ @56513

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る