第3話 決戦開始

「揃ったか!」

「当たり前でしょ呼ばれてんだから」

「うるせぇ行くぞ!」

指示するスキルはまるで無い為召集してすぐ逃げるように前線へ向かう。


「ふぅ..仕方ない奴ね、いい?

相手がどう出るかはわからないけどガッツを盾に牽制しつつ距離を詰めて追い詰める、慣れてないアーミーの為にね。」

限られた飛距離の銃では撃破数も限られる。そこにクラッシャーを挟む事で防御しつつの前進を図る算段だ。

「ティムスとケルラゴは私の先導をお願い、確保されてないと陣地は取れないから」

「なんで僕がコイツと!」

「やれって言ってんだからやればいいじゃん別にさ。」

「その感じが嫌なんだけど⁉︎」


「よろしくなガンマン!

ケリーの弟子かなんかか?」

「いや、違うよ。」


「それじゃあ行くわよ!」

「おう!」「はいよ。」「了解〜」

「よし..やるか!」

前述の男よりも慕われる圧倒的統率力

彼女のポジションはバリバリのサブウェポンだ。


 『アーミー到着しました』

「遅かったなテメェら。」

「アンタが出しゃばったんでしょ」

「右に同じ。」「そっち左だよ」

「みなぎるぞお〜!」

「..何が?」

フィールドにアーミーが12体顔を揃えた。戦略は組によって異なり、攻め方も違う。中には変わったチームも有り

「何だアレ?」

「ブラスターが一人もいないね。」

「面白い連中だな!」

「面倒だよ..」

基本的な配置としてはブラスターに重きを置き、それを固めていく形が多いが今回の相手はブラスターに置くべきところクラッシャーを三人、クリーナーを一人、レコーダーを二人といった積極的に攻める型とは少し異なる配置を取っている。

「なんなんだアリャ?」


「クラッシュレコーディオンよ。」

「クラッ..なに?」

「なんでそんなに知ってんの」

「そういう人なんだよ。」

「どういう人?」

「……」 「ねぇ」「……」「え?」


「行くぞ!」

「また仕切ってる。」

「行くわよ!」「はい!」

敵クラッシャーが前進。こちらチームはフォーメーション通りに三手に別れ行動開始、それに合わせて相手も動く

「クラッシャーは纏まって動く訳では無いのか..」

フィールドは戦闘によって異なるが今回はシャンサイドタウン。ビルが多く立ち並び都会を思わせる海外のようなスタイリッシュな街だ。

スタート地点から真っ直ぐのびる一本の道路が前方、右側のビルを介して横に伸びる道が一つ。反対側の同じくビルから左にのびる道が一つの計三手。

スタート地点は南に位置し相手は北、その間のフィールドを確保するかアーミーを撃破する事でポイントを稼ぐ。


「今回は私の行動範囲が広そうね」

「良かったじゃん?」

「よくないわ、動きたくないからこのポジションやってるのに。」

「ガッツとは真逆だね」「..そうね」

意外にも控えめ番長、リーダーというのは実は力を隠しがちだ。

「おい!

中心じゃなくて良かったのか?」

「だって..あの人陣取ってるし。」


「よぉ、デカブツ。

武器も持たずにケンカ売るのか!」

「…他の者はどうした、まさかとは思うが見捨てられたのか?」

「知るかよ、オレ一人で充分だって事だろ。捻って終わりだコラァッ‼︎」

お山の大将山を降りればひとりぼち。

「また騒いでるわね」

「騒いでる?

何も聞こえないけど。」

「そんな気がするのよ」「変だね。」


「いいから先導してくれる?

陣地をサッサと取っておきたいのよ」

「その、クラッシュなんとかって」

クラッシュレコーディオンよ。」

クラッシャーに隠れ陣地を取りつつ警戒を強いる完全防御スタイル、ブラスターならまだしもサブウェポンではサシの勝負は中々出来ない。

「成る程、幅を広げつつ寄せ付けない訳か、やるな。」

「でその対策が僕らって事?」

「..まぁそんなとこかしら」

事前にクリーナーで床をコーティングしておけば陣地を取られる心配は無いし、最中に敵が来ても長物の槍なら上手く牽制できる。

「ケリラゴは出来るだけ遠くを磨いておいて、ティムスは中距離でいつでもどの方向でも向けるように。」

「はいよ」

高確率でイエスマンだが、実力が乏しいわけでもない。リーダーを担う力を充分に有してはいるのだが仕切るのを嫌い目立つ事を毛嫌いしている。立場的に従う側が楽なのだろう。

「さて、何処から来るのかな?」


「フーン!」

「真上か..こんなのばっかりだな。」

ビルの屋上から緊急参戦


「ついてこれてるかガンマンよ!」

「はぁ..なんとか!」「ならいい!」

攻撃は最大の防御、ならば逆も然り。

身体一つで盾にも矛にもなる。

「俺がぶつかる!

そしたら奴は後ろからエンブレムをばら撒く、それを残らず狙撃しろぉ!」

「声でか...。」

アリのような出来事を、ライオン程の大きさで伝えがちのこういう男は基本的に音量調節機能は無く〝大〟の発信のみとなる。

「お前!

なかなかいい作戦を練るなぁ!」

「何ぃ!?そうだろ!

我ながら凄まじい企画力だ!」

「似たようなのしかいないの?」

類は友を呼ぶ、ハウリングに近いが。


『第二ブロック三名対二名応戦中、第三ブロック二対二同じく応戦中、第一ブロック、共に一騎討ち』


「くっ..なんでこんなに重たい奴ばっかりくるのさ」

「ハッハー!タフだなアンちゃん!」

飛び跳ねる鉄ダルマをなんとか槍で弾きつつ避け回る。蓄積するダメージが大きい。

「大丈夫かなーあの人、でもあんまり好きじゃないらしいんだよな僕の事」

「余所見ついでに頂くよ?」

「えー?あー!

ちょっと何やってんのさ!」

気にかけるクリーナーを敵のモップが煽り立て床を掃除する。

「勝手に手を付けないでくれ」

「清掃用具で叩く気なのかい?」

クリーナー同士が鉢合わせたとき、それは物理的な奪い合いに変わる。

「お前だって振り上げてるじゃんか」

「そっちがやって来たからだわ!」


「アイツ、大丈夫か?」

「知らないわ

エンブレム、置いておくわよ」

「あ、ちょっ!

..普通この状況で置くかな。」

ただでさえ命の危うい状況の中足元にエンブレムを設置する。

「ハッハー!かち割るぞ!」

するとどうなるか?

「は!」 「ぐぉっ..!」

「やらせると思うなって。」

意外にも士気が昇がったりする。

「..やるではないかっ!」

初めから好戦的な奴はピンチを知っているのだろうか?

「うらららぁ!」「シルバーアーム」

「鋼の鎧か..だったらなんだ!」

銃弾装填 重鎮弾 着弾後比重が厚い

これで鎧は砕かれる。

「くあっ..」

「ヒビの入った処にコレだ」

装填変換 炸裂弾

鎧を完全に破壊し、露出した肌に刺さる追撃。

「やらせるかぁ!」

「..コレはこうやって使うんだよ。」

無防備なボディに遠距離爆破弾、爆風が身体を多い炸裂した胸を更に掻く。

「ぐおぉっ..!」

「一人目、落としたぜ。」


「何やってんの?」「ぐぅ..すまん」

瀕死のクラッシャーの腹から、小さな男子が現れた。

「..何だ?」

「ん、あぁ僕ですか?

決まってるでしょ、六人目ッス!」

「六人目..そういや人数足りなかったな、アナウンスで聞いただけだが」

隠された兵は拍子抜けの歩兵か、余り頼りがいのある風にはみえないが。

「ポンコツが古びて寝ちゃったからね仕方ない、ここら一体貰いまっせ!」

「なっ..」

複数枚取り出したエンブレムを多方向に一気に投げる。見えない範囲は段階がわからないが、見える第一ブロックほぼ全てのエリアは確保された。

「これって反則?

それ言うのナシナシ〜!」

 「てめぇ何しやが..る...。」

「おっと、動き止まった感じ?

エリア制圧されちゃ仕方ないわな!」

彼の名はクチナシ、曲者である。

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