第2話 戦闘準備

「敵は三人..一人多いな。」

「だったらなんだ?

 その分手数を増やせ!」

パワータイプの発想で数をこなすつもりの様だが相手も手練れ、策無しで攻める事はしないだろう。


「前方三方向、その後は解るな?」

「はいよ!」

正面の銃口が弾を放つ、三段速射の直線撃ち込み。

「真っ向から来た、別れろ!」

「わかってますけども。」

左右に散る事でそれをかわす。

「良い判断だ、こちらにとってだが」

別れた右、左にそれぞれブラスターが待機し銃をかまえる。

「読めてんだよー!」

「中心から退けば自然とこうなる。

スカスカだな、お前ら」

熟練された連携に即席の上下関係では抗えない。

「お前誰に言ってんだ?」「..何?」

連携する必要がないから即席なのだが


「同じ弾で撃つ奴があるかよ!」

「...あ、そうか。」

ブラスターは通常弾の他に弾を二種類持ち込める。ケリーが所持しているのは反射弾と炸裂弾。

「お前にはこれをくれてやる..」

弾を入れ替えすかさず撃ち込む。

咄嗟だからか軌道は少しずれ、顔の脇を掠めて通る。

「おい、何処狙ってんだ?」

「さっき言っただろう、お前だよ!」

「なっ、ぐわっ!」「ははっ!」

路地の壁に跳ね返り、遅れて弾が命中

『敵アーミー撃破、1ポイント獲得』


「はっ..弾変えないと!」

「馬鹿何見てんだお前っ!」

逆転劇に気を取られ、行動するのを忘れていた。急いで弾を替えてはみるがやはり慌てて落ち着きは無い。

「やらせると思うか⁉︎」

「ああちょ..よし出来たっ!」

弾を選んでいる隙も無く、目についたものを入れ敵の銃口と同時に放つ。


「かあっ!」「うわぁ!」

アランの弾は相手の通常団を巻きこみ

暴発し爆風を撒き散らした。

「爆発弾...馬鹿!

そりゃ遠距離用の弾だろがっ!」

相手を倒しきれず、自らも深手を負って尻餅を突く。無計画の攻めだという事があからさまに露呈し目についた。

「痛って..!」

「いいから撃て!せめて構えて..!」

「はっ!」「え..?」

『敵アーミー撃破、1ポイント獲得』

痛みを帯びるアランの身体が衝撃により消滅する。その後に例のアナウンス

「一人目、堕つだな..。」


「正面の奴か!」

「余所見するなよ?」「なっ⁉︎」

焦げた右アーミーが火を吹くが、拳は前に向いている。

 「....くそ。」 

無抵抗の崩壊、止める者はいない。

『敵アーミー撃破、1ポイント獲得』

「ふん。」

「邪魔者は消えた、制圧するぞ」

「俺はこの通り大ケガしてるけど?」

その時フィールドにブザーが鳴り響く

『時間終了、直ちに基地へお戻り下さい。武器をしまって下さい』

「おっと時間切れだ、残念だったな」

「……」

マウントは取れたが時間を掛け過ぎていたようだ。

「時間切れ?戦績は...嘘引き分け!?

いつやられたのよケリー達!」

「引き分けだとぉ!!

何をしている、どういう事だ!」

「そんな大袈裟な事じゃないでしょ?

..まぁでも僕の撃破霞むけどね。」

嘆いても憂いても結果は同じ、人間性が露呈するこういったときにいかに冷静さを保てるかで兵隊は己を測る。


「何やってんだテメェッ!

あれ程準備はしとけって言ったろ!」

「...言ってましたっけ?」

「何だとコラァ!?」

まぁ完全に〝人による〟としか言えないのだが。

「言ってたっけそんなこと?」

「いってないわよ。」

「聞いた事も無ないなぁ!」

「ほら。」「ほらって何だオイ!」

自分でも言ってない事に途中で気が付いたが、引き下がる事が今更出来ず声を張るしかなかった。

「そんな怒る事無いんじゃん?

初めて間もないんだからさ」

眼鏡を掛けた痩せ型の男が、山積みの本を抱え穏やかに諭す。

「うるせぇケルラゴ!

お前なんでさっき前線立たなかった⁉︎

5人しかいなかったんだぞ!」

「相手にレコーダーがいないから待機しろって言ったのはケリーでしょ、もう忘れてんの?」

「……もういい!

こいつのメンテを手伝ってやれよ。」

「はいよ、面倒なのはいつも人任せか

こっち来て、ほら。」

「はい、どこに?」「いいから。」

初対面の男が知り得ないところへ連れていこうとする。女子なら通報ものだ

「はぁ..少し休んでくる。」

「なんで報告するのよ?」

「僕は暫くここにいるよ。」

「だから何で報告するの?」

「俺は..」「もういい!」

「君はどうするの?」

「私、私は...ご飯食べる。」

「そう。」

聞けば素直に教えてくれる。報告をしないだけだ。

「いいの?

また名前忘れられちゃうわよ」

「..何の事?」

「新しい人、ケルラゴに取られちゃったでしょ。」

「..あぁ、いいよ別に。

あのメガネくん僕あんまり好きじゃないしね」


「なんで?」「キャラ被ってるから」

意外な面を見せているが、ここも含めての事なのだろう。

「さぁ、ここだよ」

「..なんですかここは?」

大きな本棚のある落ち着かない図書館で何をカスタムしようと言うのか。

「この大きな本棚に詰まれた本の数々はね、戦闘を助けてくれるエナジーウェポンだよ」

「エナジーウェポン?」

「目の前の本を開いてみて。」

「本を開く..」

ぎっしりと詰められた本の間に無理矢理隙間をつくり、なんとか腕を通す。

力技で取り出した本のを開いてみると

ページが窪み、何かが挟まっていた。

「何コレ?」「取り出してみて」

「……」

いわれるがままに取り出すと、それは拳の形をした金属板。何故こんなものがものが本の中に?

「それはパワーアップステッカー。

モノによって効力は違うけど、君が取り出したのは威力アップのステッカーだね」

「威力アップ..なるほど、こういうのを付けていって強化していく訳か。」

「そ、呑み込み早いね。

ポジションによってやり方は違うけど

ブラスターならそうだな..威力を高めて、リロードやモーションのスピードを高めたりしたらどうかな?」


「これって、どうやったら数が増えたりするの?」

「数が増えるってよりは、ポイントで手に入るって感じかな。戦闘に勝ったり、成績を残すとポイントが貰えるんだけど、それでこの棚に置く事が出来る。」

「ほぉっ..!」

こなしたぶんが糧となる、理想のアーミー生活がここにある。

「ここにある分はいくらでも使えるから、好きに使っていいしね」

「ほぉっ!」

簡単なシステムだ、何故これをケリーの奴は説明出来なかったのだろう。

「あそれとね、ブラスターの人ならそのポイントで弾も買えるからさ。」

「ほおっ!?」

最早出来ない事は無い、アランは早速手元のポイントを確認した。

「ポイント表か、どれどれ...」

連射弾 25p

翻弄弾 25p

追尾弾 25p

反射弾 35p

炸裂弾 35p

召喚弾 50p

「今持っているポイントは30、貰える弾はこんなもんか。」

ステッカーを交換する余裕は無いと考え弾に抑えたが、それでも限界はある

「何これ、箱であるの?」

迷ったときにジャケ買いが可能な様パッケージには凝ったデザインを施した

「これにするか。」

四角い箱で牛の顔が

『すげぇ撃てるよ』と笑っている。

「取り敢えずシリンダーに入れとこ」

アラン残り所持ポイント5

「あと適当にステッカー貼ってと。」


「おい、いつまでやってんだ!」

「何、今度はなんだってのさ?」

「いくんだよ、準備しろ!

次はお前もバリバリ参加だからな!」

「ったく勝手な奴だな。

 行こうか、うるさいし」

「前からああなんですか?」

「いつでもああだよ、センスも無いのに仕切ってさ。面倒なんだよ」

目立つ仕切りたがりほど場を濁す、統率が主では無く支配が目的だからだ。

「文句言いたいけど強いからさ、戦力としては必要なんだよ」

「へぇ。」

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