人間不信の主人公「楠葉廉」が美少女「橘理華」が距離を近づけていく物語。
それぞれに悩みのある二人の心情が丁寧に描かれていて染みるストーリです。強がる彼に近づく彼女。二人の微妙な関係や時々深く接近する場面などほっこりドキドキしながら楽しめます。
毎話引き込まれますが個人的には「042 少年は泣く」の話がぐっと来ました(でも42話だけ読んだだけだと薄いので、ここまでどっぷりと読んで浸かってください)。もちろんそれ以降も面白いです!
読み進めていくうちに二人のとりこになります。
読めば読むほど見守りたくなる優しい気持ちになる物語ですので、みなさんもぜひ読んでください。
一気読みした。
それはもう、夢中になって読みふけった。
それからというもの、ここ数日、日常生活に支障をきたすレベルでこの作品のことしか考えられなくなっている。
頭がどうにかなりそうなので、すべて吐き出すつもりでレビューを書こうと思った。
この作品の良さってなんだろう。
もちろん、いい話であるというのは言うまでもないのだけど、それだけでは言い足りない。
起承転結がしっかりしていて、構成がうまい。
二度、三度と読むとそれがよくわかる。
文章がこなれており読みやすく、地の文と台詞とのバランスもいい。
各話のタイトルもしゃれているし、表題さえもうまく使いこなしている。
総じて、巧みさのある作家さんだと思う。
さて、ここからは少しネタバレになるので、まだ読了されてない方は先に本編をどうぞ。
この作品も男性向けラブコメとして、「地味な少年」と「美少女」とのボーイミーツガールというテンプレは守っている。
でも、それが嫌味に感じられないのは、よくある萌え系作品のように、ヒロインがいかに可愛らしいかをくどいほど強調するのが本筋にはなっていないからだろうか。
その代わりに二人の価値観――生き方・考え方が噛み合い、まるでユニゾンのように重なり合うところを丁寧に描いている。
恋愛ものとして、この作品が上質だと感じるのはそこだ。
さらに言うなら、「美少女」という要素さえも伏線のひとつにしてしまって、作中でちゃんとそれを回収しているところもいいなぁと思った。
「美少女」であるからこその悩み、苦しみ、生きづらさ、そういうものがちゃんとあって、「地味で、人付き合いは苦手かもしれないけどまっすぐな、優しい少年」に支えられながらそれらを乗り越えていく。
だから「美少女」が単なる記号になっていない。
某所で作者自身が述べておられるように、キャラクターの造形がしっかりしているということなんだろう。
不器用で、理屈っぽい二人だからこそ、丁寧に気持ちを伝える。言葉にする。
この作品の台詞回しは、そのひとつひとつがグッと来るのだけど、それが自然で、心地よいものに感じられるのは、ちゃんとした裏付けがあってこそだ。
そして、恋に落ちた二人がただくっついた、というだけで話は終わらない。
恋をすることでお互いが少しずつ変わっていき、前向きに生きられるようになってゆく。
だからこそ、いい恋をしたね、と目を細めて二人を祝福できる。
本当に、読んでよかったと思える作品だった。
最後に、書籍化決定おめでとうございます。
作中で理華が廉に繰り返し告げたように、私もこの作品と、この作家さんが、もっと愛されてほしい。
そう願ってやみません。
主人公もヒロインも、人付き合いが苦手な変わり者同士。
だけどなぜか二人の嗜好や思考、志向が似ているから、ついつい同じパターンの行動を取ってしまう。
──ということから始まる二人の物語。
最初の出会いの数々は笑えます。
そして主人公は葛藤し、傷つき、考えも徐々に変わっていって、やがて大切な人の存在に気づく……
というか、今まで気づいていたことを自分で認められるように成長する。
決して重いタッチではなくサクサクと読み進められるのにも関わらず、そういった感動もちりばめられているという贅沢な一品でした。
作者様、素敵な物語をありがとうございました。