BAD・DAY&BAⅮ・END・BREAKERS

低迷アクション

第1話

BAD・DAY&BAⅮ・END・BREAKERS

(バッドデイ&バッドエンドブレイカーズ)


 銃撃!それに続けて連続した爆っくはつ!その中を駆けるぴっちり青コスチュームの

これまたボマーな爆乳ねーさん!?…


「堪らないねぇ!」


咆哮一つ上げ、腰のバックパックから

7.62ミリ入りの弾倉を引っ張り上げ、弾切れお預け状態の銃犬カラシニコフ突撃銃に

叩き込む!傭兵部隊所属の“軍曹”は再開された銃撃の振動に酔いしれながら


味方の発射する銃撃で赤く彩られた、高層ビル街を飛んでいくボマーねーさんの

4トン爆弾並みの良い感じなお尻の追跡を続行する。


戦闘が始まってもう1時間。良い按配だ。そろそろあのねーちゃんも失速する頃だろう。

極東の島国で起きた現象によってあらゆる非現実的存在や現象が

闊歩するこの時代…(人々はそれらを総称して“漫画勢力”と呼んでいる。)


軍曹率いる傭兵連中の戦闘も過激なくらいに激しさを増している。

勿論、彼等にとっては大手を振って喜ぶ事だが…


今回の任務もとっても自分達好みの内容!

依頼者は極東、海岸沿いの小さな町を牛耳るいや、これから牛耳ろうとする裏組織が


政府の(現行の政権と漫画勢力が結びついたもの)所属エージェントの“捕獲”を

依頼してきた。


相手はかなりの美人のおねぇに加えて!組織に潜入する日取りまで調査済み。

魅力的な報酬に加えて!戦闘になった場合でも“捕獲”で良いという好条件!!


“なんだかんだであーゆう柔肌嫌い”じゃないっていう

軍曹達が断る理由は何処にもなかった…


 「RPG(対戦車ロケット)直上発射」


ビルの屋上に分散配置された部隊の一つ、元空挺部隊大尉の巨漢“コワルスキー”指揮下

の攻撃隊が、号令と共に複数のロケット弾を発射する。摩天楼を飛ぶボマーねーさんの頭上で爆発したそれらは空中で大量に破片をばら撒く。


夜のライトに照らされた破片は美しい光を反射しながら、ボマーねーさんに降り注ぐ。

間を縫うように躱す彼女の背中に、


黄色い毬のような物体が飛びつく。そのまま失速し、地面にぶつかる寸前で、

張り巡らされたネットが二人を包む。


「バックニュ~ネーチン!!ゲットデス~!」


背中からがっちり彼女の胸を掴んで放さない、黄色髪!色々ヤバゲなチビッ娘

隊員(てか、コイツこそが漫画勢力じゃね的な容姿の!)“イワン・コソバユスキー”が

網の中で歓声を上げる。


「よくやったイ~ワン!!野郎共、かこめぇ!」


軍曹の声に集合した迷彩服の集団が網で包まれ、這いつくばる彼女達に銃口を向けた。

ボマーねーさんの瞳に憎しみ+悔しさ+艶~な感じ?の色が混ざる。


「んっ?おい、イワン!ねーちゃんの何処触って(汗)

もうええ!それは後でな?後で大丈夫なモンだから、その辺でな」


「へッへ~、タマラン、タマランデ~スヨ~」


網の中のいろんな所を撫でまわして悶え合う二人の女の子+それを見下ろす重武装の

兵隊連中…いくら人通りのない往来と言っても限度があるってもんだ。


慌てる軍曹の隣に立つコワルスキーが不意に構えたAK-99突撃銃を後ろに向ける。

つられて振り返った軍曹の目に黒ずくめの男達が列をなして、歩いてくるのが

映っていく。


「依頼主か…早いな。集団を引き連れてもう回収か?」


「ずーっと俺達を監視してたって事でしょ?気に食わねぇ。」


かつて幼稚園を武装ヘリで襲撃した男、覆面兵士の“アスク”が手にした散弾銃を構える。それを目で制止させ、軍曹は集団の先頭、代表格ともいうべき男に


近づいていく。黒いツバ付き帽子の下は黒ずくめの服装とは真逆の真っ白フェイス、

目はこれまた黒のサングラスで覆われている。


この国の人間という事が辛うじてわかるが、この出で立ちでは、まるで“死神”だ。

男が唇をゆがめ、言葉を発してきた。


「噂通りの腕前だ。傭兵にしておくのは勿体ないな、軍曹殿、妖達の評価もわかる気がするよ。」


姿から想像できない程の爽やかな声で男が喋る。思わず拍子抜けするが、一応答えておく。


「妖さん達(この顛末は何処かのお話で)には色々助けてもらってるんでね。そーすると

オタク等も俺達と同じような戦争を?」


「いやいや、我々にそんな大きなビジョンはない。この町を掌握するのに手一杯でね。

上の連中もそれで満足してる…とにかく助かった。その女諜報員には手を焼いていてね。

餅は餅屋とはこの事だな。いや、失礼、この国のことわざだ。」


喋りながら手を上げた男の合図で彼の部下達が、兵士の間を音もなく走り抜ける。

まるで気配を感じさせない。相当の手練れと軍曹は分析した。


“だったら何故?俺達に依頼を?“軍曹の考える目の前で黒い男達は器用に捕縛網を外し、まだお楽しみを続けるイワンを上手に離し、


イワンによってすっかりふにゃけたボマーねーさんを拘束し直し、運んでいく。

僅か数分で事を終わらせた部下の動きを静かに見届ける代表格が軍曹に近づき、彼の手に紙を握らせた。


「小切手だ。必要金額を確認してくれ。ん、大丈夫か?確認の早いのは良い事だ。

それもさすがと言うべきかな…我々はこれで引き上げる。君達も

派手に騒いだ。警察の目はこちらで少しごまかしておくが、早めの撤収を期待する。」


「了解。それと最後に一つだけ聞きてぇ事があるぜ?(グイッと顔を男に近づけて)」


「…?…」


「俺等が捕まえたねーさんはこれからオタク等の組織で何というかその~ひど、ひどぅん、いや…」


「…?…」


「その~なんていうかさ?ほら、あれだよ18禁的な調整、洗脳、いや、調教とか拷問とかで最終的にはといれ~?ど~れい?的な事になっちゃうんかにゃ~と思うてよ?」


「だとしたら…(低い含み笑い)…どうする?」


「いや、そうだなぁ!正直言って俺等は外道な糞野郎だからよ~あれだよ!勿論、

満足な額をもらってっから!どうでもいんだけどよ。もし良かったら、良かったら

ご一緒にやらせてもらえねぇかなぁってよ!後学のためによ!なんてね!!」


部下に聞こえないような小声に加えて、最後は照れ隠しか頬に走った2本の切り傷を

盛大に歪ませて笑顔を作ってみせる軍曹を面白そうに眺めた男は笑顔を…


若干呆れを含んだ笑みを絶やさずに答える。


「残念だが、貴殿の想像しているような事にはならない。我々は効率的に事を成すのでね。それでは失礼する。」


片手を上げた代表格の合図で男達が道から消えていく。後に残された軍曹は、部下に

今の会話が聞こえてない事を祈りつつ“安全地帯”までの移動を促した…


 「軍曹、あのねーちんは?どーなるんでしょう?」


“安全地帯”まで撤収を終え、正直、久しぶりの勝利を確信し、オマケに良い感じのねーちゃんを遭遇&狩る、軍曹的にはGOODDAYを満喫している最中にアスクがとてもわかり切った質問をする。


「どーゆう風の吹き回しだ。聞く必要もないこったろ?今回の作戦は明らかに

“悪者サイド”の依頼だぞ?わかり切った事を聞くんじゃねぇや。」


「わかってますぜ?ただ、最近、なんやかんやで“イイもん(正義)じゃね?俺等”な事を

していた気がしなくもないんで。」


軍曹は立ち止まり、アスクに向き合う。周りに続いていた部下達も同様に

動きを止めた。


「アスク!人はあらゆる勢力に属するもんだ。例えばあのねーさんのように政府に

籍を置く者は、おのずと世界に対しての奉仕的な、正義に近い“色”になる。


それがひっくり返るような事をすりゃ、総スカンを食らう。

さっきの裏組織の連中だってそうだ。たまにイイ事でもしてみろ?


普段の真っ黒が真っ白?絶対、何か企んでるよ?コイツ等ってな感じで

やっぱり総スカンを食らうぜ。だが、そこに来て、“傭兵”は違う。


‟色‟なんて持たなくてもいい存在だ。勿論あった方がいいとか、これからつけりゃぁいいとかあるけどよ。今はとりあえず何にもない。そのおかげで、俺達はどんな色にでもなれる。

正義にも悪にもなれるぜ。


その時代の流行りに体を染め上げてくのさ。一生楽しく、派手にな!

食いっぱぐれはねぇ。そうだろ?」


「確かに、そうかもしれませんが…」


「何だ?何が気になる?だいたい、お前も大好きだろ?

あんな感じのピッタリボデースーツが、ボディースーツが!半裸に剥かれて、吊るされて

色々ヒドイ事されるの大好きだろ?一体いつから健全ジャンルに鞍替えやがった?」


「いや、そうじゃなくて、そういう事じゃないんでさぁ」


「だったら…」


「(軍曹の言葉を遮って)問題ナノハ、アイツラがそんな“匂い”じゃなかったって

事デショ~」


不意に割り込んできたイワンがアスクの背中に飛び突き、声を上げてくる。

その言葉で頷くアスクに軍曹の「?」は続くばかりだ。


「軍曹、俺はここに来るまで、ヒドい所を渡り歩いてきました。勿論、それは

望んでいた事だし、先ほどの言葉の通りに言えば、お気に入りのジャンルでしたからね?」


「ああ、ヒデェ経歴だったな?」


「褒め言葉と受け取っときますよ。そんな所を体視してきた訳ですから、わかるんです。

俺も最初は軍曹が小声で言ってたような事の(しっかり聞かれていた事に軍曹の顔が

赤くなった。)ご相伴に預かるつもりでした。


ですが、あの連中を見てわかりました。奴等はあの子を違う目的で拉致した。

後ろめたい事に変わりはないんでしょうが、明らかに血の匂いつきのね?

これは色のねぇ、俺達でもタブー視してる何かをやろうとしてるんですよ。」


珍しくマトモなアスクの言動に周りの兵士達が驚きながら、軍曹を見る。指揮官である

自分の判断を仰ぐように…苦渋の表情を浮かべた彼だが、それも僅かな事だった。


「いいんじゃねぇの?それでも…」


「えっ?」


「たとえ、血を見るような事であれ、それが奴等の何かしらの欲求を満たすもんなら、

確立してやればいい。俺達の後学のためにもな。


そんなに深く考えるな。何でもアリの世界だ。」


「軍曹…」


「何だ?」


「最低だ…あんた。」


低く、力を込めて呟くアスクが背を向ける。彼の背中に乗るイワンは

軍曹の顔にツバを吐きかけていった。


他の兵士達も彼から離れていく。安全地帯であるため、解散は自由だが、


この動きにはハッキリと軍曹に対する“侮蔑”が含まれていた。

最後に残った巨漢のコワルスキーが表情一つ変えずに敬礼し、去っていく。


一人残された軍曹は、薄っすらと白み始める空に呟いた。


「何だってんだ…全く。」…


 今日の“ねぐら”は戦友の家だ。散々な日だったが、それもまた一夜の悪夢。

闇が明ければ、また新しい朝が始まる。


「さて、ひと眠りといこうか?」


戦友はこれから仕事だが、一休みさせてもらう分には構わないだろう。古い作りの

老朽化したアパートに備え付けてある急階段に足をかけ、音を出して上る。


訪問の合図を送ったつもりの軍曹は、これまたいつも通りのかかってない鍵に親しみを覚えつつ、勢いよくドアを開ける。確か、この戦友の部屋には買い置きのラムをとっておいた筈…


場所を思い出しつつの彼を出迎えたのは強力な鉄拳だった…


 顔面を思いっきり潰され、元々二目と見れない面構えを更に粉砕された軍曹は、

抑えきれない痛みと怒りを露わに45口径自動拳銃の引き鉄を上げ、腰から引き抜く。


「新手のモーニングコールは嫌いじゃないが、コイツは一体どーゆう了見だい?ああっ?」


撃鉄を起こす親指に柔らかく小さな手が重ねられた。一瞬癒された彼の感覚が一瞬にして痛覚に変わる。


「ぎいやぁぁ、な、何これ?凄い力。こんなにぷにぷにしてんのに!?こんな、ふに肌に

ワタクシの親指がっ!?これは、これは!!まさか、まさかぁっ!!」


「潰してんのよ☆」


絶叫と共に怪談を転げ落ちる軍曹。45口径は何処かに吹っ飛び、親指はお陀仏。

落下を感じる暇もなく、柔らかくて良い匂いのするモノが軍曹の顔面に叩きつけられ、


そのまま固定される。視界真っ暗、何かにじり、にじりと顔面の上を動かされる感覚に

強制浸りな彼の頭上付近からこれまた綺麗で冷たい声が響いた。


「とりあえず舐めなよ☆!」


少女の軽やかな美声と香りに、顔面が彼女の靴下にグリグリされている事に気づく。


「全くさぁ、ホントにやってくれるよね?あんたら傭兵の馬鹿どもはさぁ?」


穿いた“靴下”を拭いつつ、怒りを抑え切れないと言った感じかつ、

ヒラヒラな服装の少女が入口に立っている。この姿的に言えば、彼女は

魔法少女か変身ヒロイン…


不味いな。多分、ボデースーツねーちゃんのお仲間だ。

軍曹の予感はいつもかなりの的中率を示す。それも、とても悪い方に…


「よくも、“サキ”を…目的は?誰に頼まれたの?」


「金だよ?嬢ちゃん。それ以外に何がある?傭兵って言ったろ?

主義も理想も何にもないさ。依頼主なんて関係ねぇ。マネーが高ければ、誰の足でも

舐めるさっ」


「このっ」


少女が腕を振り上げ、軍曹の胸倉を掴む。魔法強化って奴か?見た目、中坊くらいの癖に

首が、特殊部隊の教官張りの腕力で締め上げられる。


「へっ?殺すか?朝の社会人、学生闊歩の通りに、フリフリ衣装の女の子が傭兵風オッサンを絞め殺すぅ?いいねぇ!新聞に動画サイト、SNSは、この話題で持ちきりだね!」


「貴様ぁっ!」


「はい、そこまで。彼を殺すのは、いつでも出来ますが、今は“どうどう”です!」


荒く息をつく獣みたいな娘っ子とは対照的な声のもう一人がゆっくり階段を下りてきた。


「私達が表だって動けないのは弱みがありますからね。せっかく代わりにサキさんを助けに行ってくれる、そもそもの原因を作った傭兵さんが仕事をしてくれるって言うんですから…」


「いや、仕事を受けるとは…」


「受けますよね☆?」


首筋に少しというか、結構深々と剣を刺す笑顔の魔法少女、あ、ヤバい。こっちも同じだ。


「ちょっと、首はヤバいよ。死なれたら、誰がサキを助けに行くのー?」


「あ、そうでしたー、いや、この面見てると腹立たしいモノがありまして、わかりました。軍曹さん!では行ってくれますね?」


「・・・・・・・」


「ね☆?(二人同時に得物を構える)」


「・・・・・・」


相手の攻撃が始まる前に、しぶしぶ頷く。最悪だ…久しぶりの任務成功&大金GETの日に最悪の出会いが連続するとは…とりあえず、軍曹は潰れた親指と首の血を止めながら、明るくなる道を走りだした…



 「これは、俺の勘だがな。アイツ等、顔白いじゃん?絶対、昼間、外に出れないぞ!

多分、吸血鬼系じゃね?とゆー事で夜になる前に攻撃仕掛けて


数時間前の夜に俺達が引き渡したあのボデーねーちゃんを奪還する!以上!何か質問はあるか?」


「いや、特にねぇっすけど、どーゆう風の吹き回しですか?そして、ここ数時間の間に出来たであろう、その潰れた親指と首に巻いた包帯どーしたんですか?」


「アスク!そこには触れんな!とにかく全員武器を持ったな!後は奴等の居場所を知る

必要ありだ!」


「任せてクダサーイ!あのネ~さんの匂いなら、クンクン!バッチグーです!」


鼻をひくつかせるイワンを一瞬“可愛い”と思うが、他の隊員達の表情は冷たい。

何とか集まってくれたアスクは懐疑心タップリだし、コワルスキーはいつもの冷たい表情から微動だにしない。


わかってる。だが、ここは…


「先程、俺は言った。俺達はどんな色にも染まれる。正義でも悪でもな!今、あの女を

救うなら、最初から捕まえるんじゃねぇってツッコミ待ちだな。わかるよ。だがな、


どこにも染まらないって事は、あらゆる可能性を秘めてる存在だって事にもなる。

俺達は何でも出来る。そして、その行動が正義と悪の架け橋、強いては…平和の共生…」


「イヤ、グンソー、あれでしょ?他の変身ヒロインだか、魔法少女的な子達に脅されて

マスヨネ?」


「イー?イワンッ??んんっ?」


「グンソーの体カラ、フダン、ゼッタイ匂わないイイ匂いシマス!ダカラ…」


「よし、行くぞ!!全員突撃!!」


最後の台詞を遮り、軍曹は勢いよく走りだした…



 目的の町は夜になっていた。何故だ?あり得ない…オマケに暗く沈んだ建物のあちこちから何か黒く歪んだモノが見え始め、こちらにゆっくりと近づいてくる。


「あの、軍曹?さっきというか、この町に入るまでは明るくお昼ドキッ!みたいな感じでしたよね?何すか…この真っ黒クロノスけ(パニックで語尾が可笑しくなってる)…」


「マズイデスネ、逃げましょか?コワルスキー…」


「ドウームズ・デイ…何処に逃げても同じだ…」


「ヤバいっすよ。どうするんすか?軍曹?」


「‥‥4人じゃ少なすぎた‥騎兵隊が必要だ。」


「えっ?ちょっ、軍曹!?」


アスクの戸惑いが強制的戦闘の始まりとなった。

“そもそも、あんな異形の影共に弾丸が効くのか?”


というツッコミはさておき、手持ちの武器を発射していく。しかし、そのほとんどが

素早く動く影には当たらない。


突撃銃に新たな弾倉を差し込む軍曹の前に黒い影が止まる。霧が晴れるように露わになっていく影には見覚えがある。そう思う彼の前で白く不気味な顔がこちらに笑いかけた。


「やっぱり、人外れだったか…」


「それは人外と言う意味かね?軍曹、どうした?充分な報酬を払ったぞ?」


「ワリい、色々あって鞍替えだ。だが、お前等がやろうとしている事が上手く行けば、

いや、既にイキそうだが、こんなもん、紙屑だろ?」


「否定はしない」


「だったら、戦うまでだ。派手にやろうぜぃ」


叫ぶが早く、懐から覗かせた閃光弾を破裂させる。


まばゆい光に暗い影の敵が動きを止めるのを見逃さない。


指示を出す必要はなかった。部下達が構えた突撃銃が放つ弾丸は、正確に敵を撃破していく。

軍曹は目を抑える男の足を素早く撃ち抜き、羽交い締めにして拳銃を額に突き付けた。


「愚かな…銃弾では我々を殺せないぞ?」


「わかってる。動きを止めるだけでいい、それに喰らえば痛いだろ?

だから、早く、ボデーねーちゃんの所に案内しな…」…



 オブジェのように集められた人間達の姿を軍曹はしかめ面を作った。元依頼人が

案内した都市の地下には古代遺跡のようなモノが広がり、


恐らく市民であろう人間達が目を閉じ、暗い天井に吊るされている。その真ん中、

いや、真ん中じゃなくても否が応でも目立つな、あのボマーな爆乳は…


目的のモノを見つけ、ほっと一息する俺の腕の中で白い顔を歪ませた男が口を開く。


「この祭壇の…」


「いや、意味とか、おたく等の目的はどうでもいい。この儀式、術式が世界終焉の日に

なっても関係ない。俺は、俺の終焉を避けられればいい。」


「ふっ、そうか…ならば、解放しよう。大きな力を持つ彼女は必要だったが、それは

あくまで起動の際に必要なモノ…今となってはもう詮無き事だ。」


男が手を上げると吊るされていた救出対象が静かに下される。涎を垂らすイワンを何か言いたげなアスクが抑え、コワルスキーに背負わせる。


入口には、銃弾で蹴散らした黒い影達が終結し、出口を塞ぐ。だが、軍曹が抑える男が

目を動かせば、それもすぐに道を開けた。


入口に消えていく仲間達を見送った軍曹は、男の首をゆっくり離す。首を抑えながら、

こちらに笑う彼に対し、軍曹は歩みを止め、笑い返す。


「どうした?何故、逃げない?」


「逃げる必要がない。」


「?…ハハッこの状況でかぃ?」


「仲間とボマーねーちゃんを助け、安全を確保した時から決めていた。今日は

最悪の日で、最悪の出会い…


だから、締めはカッコよくだ。そこにいるお前等を蹴散らして、残りを救い、お前等の企みを打ち砕く。」


「今更、正義の味方か?勝算はないぞ?」


「ああ、気分次第だ。傭兵は何でも染まって、何でもアリだぜ?」


「ソー、ソー、その通り!コッチはナンデモアーリー!」


軍曹の言葉に片言が被さる。振り返れば、先程脱出した筈のイワン達と救出対象のボマーねーさんまで並んでいた。


「お前等…」


「軍曹、全員で行きましょう。そうすりゃ、少しは勝算アップでさぁ」


おどけたアスクの声に軍曹は笑い返し、全員が武器を構えるタイミングで、目の前の敵に

向かい、恐ろしい勢いで飛びかかっていった…(終)


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