エピローグ
「昨日の今日で集まってもらってすまない。初めてくれ」
「はいそれでは。まず最初に、こちらが最新のリッチメンズアイランドの航空写真です」
「おいおい海じゃねぇか。座標あってんのか?」
「合ってます。地図上、緯度も経度も、あの白黒写真と同じ場所です」
「沈んだの? 確かあそこってメガ、なんだっけ? 金属の筏で浮かんでるんでしょ?」
「メガフロート。ですがここまで綺麗さっぱり消えるものでもないです。上に家もありますし、木も自生してます。それに中心部は普通の島なはずです」
「ひょっとしてだが、朝方のあの警報も関係してるのかな? あの津波警報」
「ご名答です。正確な時間は不明ですが、夜明けあたりに大規模な爆発を観測してます。その影響での津波だと推測されます」
「だとすると、クラクの自爆? プロファイリングには当てはまらないけど」
「それと関連あるかと思うのですが、同時刻、人質と思われていた島民らから無事だと、顧問弁護士を通して発表がありました」
「おい冗談だろ」
「いえ、今朝の新聞を持った人質っぽい写真と一緒の発表で、なんでも偶然、外に出てたところを島が襲われて、誰は狙われてたかわからないから隠れていた、と」
「一応筋は通るね。なら向こうから具体的な要求が一切なかったのもうなづけるよ。天文学的確率での奇跡ってことを除けばだけどー」
「それと補足情報としましては、各国のレーダーによれば飛来物はなし、周囲警戒中の海軍によれば放射能もなし。だけど各地から魔力を観測してますので、魔法の可能性が高いです」
「島一つ消せる大規模攻撃魔法、儀式に準備、地産地消と考えても簡単にできるものじゃない。知識、道具、魔力、今回の八組、そのどこも、協力し合っても無理だろう」
「そっちは、あたしの専門外なのでなんとも」
「そこで我々が呼ばれた。今ある情報から彼らがどのようにこの自爆魔法を行なったのか、そのための第九の組織が存在するのか、それともこれは別組織からの攻撃なのか、総合的な分析を依頼されている」
「ヒントになりそうなのがこちらの」
「て、てぇへんだぁ!」
「ちょっと!」
「どけブス! パソコンよこせ」
「勝手に触らないで!」
「それどこじゃねぇんだ! この、どうやんだこれ!」
「かして! このアドレスね。それっと、これで……何よこれ」
「千葉からのライブ映像だ」
「チバ?」
「日本の街だよ。東京の隣、総人口六百二十七万九千飛んで二十五人、そのほとんどが東京への出稼ぎか、あぁそうかここは『夢の国』の植民地だ」
「夢の国って、リッチメンズアイランド作ったとこ?」
「そうだよ! そこの東京支部、通称『灰被りの城』が襲撃されてんだよ! クラクに!」
「嘘でしょあいつは島で死んでるはず」
「なんでかなんか知るか! 縮地の観測があの爆発でできてねぇからそっからだろ! それよりこの虐殺現在進行形だぞ! どうなってんだ!」
「ここにいては何もわからない。諸君、現地に飛ぶぞ。二十分後に出発」
◇
一面のピーナッツ畑を、侵食された死体が跋扈する。
リッチメンズアイランドから連れてきた戦力に、現地調達したのも加わって、黒い絨毯となっていた。
並び、進み、襲うは夢の国の中でアジア第二位の城、当然守りも硬い。
「おネズミ様のために!」
着ぐるみ、カラフルな台車、胸に抱えた狂信、そこへ量産型プロパガンダーシリーズが加わり、溢れ出る千葉県民ども、そこへガンフロントが掃射を浴びせる。
黒く変色した機体、当然侵食しており、対人には過剰すぎる火力を存分に発揮して、人と台車とプロパガンダーはひとまとめの合挽きとなった。
現状優勢、だけどクラクに笑いはなく、ただ掴まれたなかった手を見つめる。
「……たかが一人だ」
ボソリと吐き捨てると、懐かた新たなタバコの箱を取り出し、封を切り、一本引き抜いて口に咥えた。
先端に青い炎、点けて一服、紫煙を空へと吐き出す。
それが消え散る前に、クラクは銃を引き抜いた。
復讐の終わりは、まだ遠かった。
8 Hant Island 負け犬アベンジャー @myoumu
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