第8話 セリーヌからの手紙

  ジャック達が帰った後、【ノルウェー渓谷】の谷底で全裸で両手をふるアレン。


  「アレン様。そろそろお洋服を着ませんか?」

 

  「えっ?・・・・」


  『光威顕現【セレクトファッション自由な服装】』

 

  黒いブーツに濃紺のワイドパンツ。上はゆったりとしたローディナルレッドのシルクのシャツに、白の羽織、裾の左手側には赤い鷹の紋、右側には赤い龍紋が書いてあり、背中には円と十字が重なった王家の紋章が描かれていた。


  「チッ、ありがと」

  明らかに嫌そうな舌打ちをするアレン。


  「全裸なんて駄目ですよっ、マンモスが暴れ放題じゃないですか!」

 

  「ところで、バルベリスだっけ?、何で俺は命を狙われているんだ?まだ他にも色々やって来るのかな?」

 

  「バルベリスが襲ってくる理由ですが、実はアレン様が【威戎力】に目覚めたらお渡しするように【セリーヌ】様からお手紙を預かっております。

  クソ悪魔共の襲撃に関してはご安心を。奴の話しを聞く限り単独で動いていたみたいですし、バルベリスの件はイレギュラーであり、直ぐに何かがあるという事はないかと愚考いたします」

  と言って、手紙をアレンに差し出した。


  「母上からの手紙?」

  アレンは手紙を受け取り適当な岩に腰をかけ、手紙の内容に目を通しながら先程の会話の続きをする。

 

  「イレギュラーね。問題が発生する時はそんなもんだよね?」


  「先程、ジャック様にも、この星を守る結界をお願いしましたから。【超威者】を存在など、アレン様と【エステル】様の2人位なものです」


  「うん?【超威者】を存在?俺は【超威者】じゃないのか?」


  「はい。アレン様は【神威】ですよ?」

 

  「【神威】??そんな説明なかったぞ?」


  「はい。【神威】です」


  「何で、そんな最強中の最強が転生なんかしてるんだ?しかもその時の記憶なんて欠片もないぞ?」


  「その事をお話するのは、私ではないです。【エステル】様が暫くしたら、みえられるので直接聞いて下さい」


  「そのエステル様というのはいつ来るんだ?さっきの話しだとエステルさんも【神威】なんだろ?」

 

「エステル様がお見えになる時期ですが、あのお方の行動は私如きでは分かりかねます。アレン様の魂を転生させた事はお伝えしてありますので、まぁ最短でも10年、遅くて100年位ですかね。

  同じ【神威】でも格があります。8段階に分けられていている内の一つを例にあげていえば

【極威】の中でもピンキリがあるという事です。【威戎】の枠組みはあくまでも基準や目安でしかありません。事実、ごく稀ですが【極威者】が【万威者】を倒す事だってあるんですから」


 




 ◆◆◆




 親愛なるアレンへ

 

  生まれた時に、側にいてあげられなくて

  寂しい思いをさせてしまってごめんなさい

  全てはあなたを守る為にそうするしかありませんでした

   


 今から約1万年前、悲惨な戦争により、あなたは

  【あなたが愛する私を守る為】に

 私の盾になって、儚く散ってしまったのです

  それからというもの、私は毎日血眼になって、四六時中あなたの事を探し続けました。やっとの事で見つけたあなたは、グッスリと深い眠りについていたので

  そのまま私の中に戻ってもらいました。うふふ♡


  あなたの小さな魂を再びこの身に宿す事が出来たのは奇跡という他ありません

 今は記憶や力も完全には戻っていないので、一方的に語るのみになってしまいますが.......

 

  【運命は最終的に一つにまとまる】ものです



  それと.......

  【エステル】は次元船【DOORS未来の扉】に乗って広大な宇宙へアレンを探しに旅立ちました

 

  アレンの魂をみつけた事は伝えてあるので

  時期に戻ってくると思います






  P.S.

 

  私から、愛するアレンへささやかなプレゼントがあります。

  あなたが寝ていたベットに【威戎力】をそそいでみてください


   

 

  因みにローガンはあなたの本当の父親ではありません。てへっ


 

 

  後はエミリーに丸投げします



  アレンの永遠の恋人セリーヌでした♡

  (ビリーーーーーボッ.......)

  手紙は一瞬で切り裂かれ、そして灰になった.......




 ◆◆◆




  「エミリー、俺に伝えるべき事を教えてくれ」


  「アレン様の本当のお名前はアレン・デル・メギド・クル・ラシェルと申します

  メギドというお名前は以前アレン様が住んでいた星の名前です。【神威】のお力を持たれるアレン様の祝福でその星は大いに繁栄していたのですが

  突如アレン様のお力が弱まり、【天獄門】の封印が解かれてしまいました。門からはクソ悪魔共が大量に溢れ出し、愚かにもメギドの核を破壊してしまったのです

  星が完全消滅するまで、3日の猶予はありましたが、あの大混乱の中では、スムーズに避難する事も難しく多くの命を失う事になったのです

  そんな中、アレン様が何処からか現れて、悪魔共を片っ端からぶちのめして下さいました

  蟻を踏み潰すが如く凄まじい勢いでしたよ


  そこでアレン様は仰いました

  『大丈夫。少し時間がかかってしまったけど、転移先の星系を作っておいたから、私はここに残らなくては行けないから、先に行ってくれ』

  その後、次元船【DOORS】に無事に避難出来た、12万人の住民共に、このノーズ星系へ1万年前に転移し、今に至ります」



  (前前世の俺、何かやらかしてんな・・・突如力を失うって・・・【神威】も強いんだろうけど、やらかす事もあるって事だね)



  (質問したい事だらけだな。まずは.......)

  「12万人の人が乗れる【DOORS】なるものがあるなら、俺個人の船とかもあるんだろ?」



  「はい、この【ノルウェー渓谷】の最奥に拠点がございます」


  (ビンゴ!、まぁ異世界転生の雰囲気は台無しだけど便利なものは利用しよう。となると次は.......)

  「マルティネス家の肩書きは邪魔になるよね? 」



  「はい、アレン様が安心して暮らせる環境を第一に考えておりましたので。このマルティネス家を利用させてもらいました」

  (さらっと、えげつない事をいう)


     

  「なるほど、マルティネス家を出る事は分かったけど、すんなりいくかな? 」



  「【威戎力】で記憶を操作します」

  そんな事は朝飯前ですよ。とエミリー。


  「何でもありなんだね、魔法レベルじゃないよね?」


  「魔法はこの世界の魔素を集めて、具現化させる事ですね。 大賢者クラスになれば無詠唱も可能ですが、 一般の宮廷魔術師も魔法を行使する為には、 媒体となる呪文だったり、道具が必要になりますからね」


  「私達が使う【威力】は呪文や媒体等は必要ありません。ただ文字にしないとちゃんと伝わらないので.......」


  「ん?新しいキーワードだな。文字が必要なのか?」


  「何でもないです。今の件は忘れて下さい」


  「アレン様が転生なされてから、私もお部屋で魔法らしく見えるように、ぶつぶつと言って、杖とかふっていましたけど、必要ありません。ようするにパフォーマンスですよ」



  「城に戻る理由は母上からの贈り物を受け取る為という事で間違いないか?」



  「はい、そうしないと後で私がひどい目に合わされます」



  「了解した、でもその前に一目惚れした刀の確認をしたいんだ。エミリー、相手をしてくれるかな?」



  「はいっ、喜んで!」

  エミリーが微笑む姿はまさに天使のそれだ。

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星に輝きを 影熊猫 @hosizaki

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