第2話 蚊

2~3年前だろうか。

「もっとも人類を殺した動物は蚊である」と発表されたのは。

ビル・ゲイツ財団が発表したそれは、色々なメディアで取り上げられたので、耳にした人も多いだろう。

人間の「約58万人」を大きく引き離し「72.5万人」が蚊のキルスコアだそうである。

他には蛇のような毒を持っている動物や、鮫などの攻撃力の高い動物が多くを占めている。

蚊が他の動物を攻撃する主な手段は、言わずと知れた吸血である。

蚊によって失血死した人間が70万を超える?

蚊の大きさを考えれば、乳児が藪蚊の集団に襲われた、とでもしなければ、荒唐無稽な想像だろう。


では何故か?


よくよく見ると、蚊によって媒介された伝染病が死因だそうである。

確かに、ウィルスであれば「動物」の範疇ではないとしても問題はないだろう。

ツェツェバエが入っているのも同じ理由と考えれば、特段不自然な点はない。

しかし「蚊による伝染病での死者」の内、マラリアによるものが43万人ほどだそうである。

マラリアの病原体はマラリア原虫であり、ウィルスではない。

つまり「蚊のキルスコア」として計上されている72.5万のうち、43万は「マラリア原虫のキルスコア」として計上されるべき数値である。

ということは、”人間を最も殺した動物”は人間であり、第2位がマラリア原虫、蚊は3位ということになる。


ビル・ゲイツ財団はマラリアの撲滅を目指しており、世論への注意喚起としては十分な効果をあげただろうと思われる。

しかし、ミスリードであることは事実である。


もう話題になることは少ないだろうが、読者諸兄は十分に注意して欲しい。

高名であろうが、正しい目的のためだろうが、意図的に間違った情報を発信するものがいるということを。

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