終〜始

 キンジローと花子は屋上で佇んでいた。

 これから何が起きるか全くわからない。ただ言える事、それは今までに無い新しい波がやってくるという事である。

 新たな時代を逝き抜くために、古き妖怪達が新たな道を見つけ出せるようになるかもしれない。  いつしかキンジローと花子の距離は縮まっていた。2人は昇る朝陽を見つめながら、手と手が触れ合いそうな距離まで近づいた。

 2人の小指同士が触れ合いそうになった瞬間、キンジローは一歩前に出る。

 「花子さん。知ってた?今日から新しい元号”れいわ"が始まるんだよ!なんかめでたくない?」

 キンジローがそう言い終わると花子は一歩下がって応える。

 「あんな、私達妖怪はいつ消えるかわからんねんで。新たな時代やら元号とか関係ない。1日1日がめでたいんや。毎日のおはよう・おやすみが言えることに何よりも価値があるんやで」

 「言われてみたら…そうかもしれない」

 納得するキンジローであったが、少し気持ちが寂しくなる。

 「でーも、そんな知ったような風吹かせてもおもろないよな。あんたのその浮かれた顔見てると難しい事考えるのがアホくさくなるわ」

 花子は一呼吸置いて言葉を続ける。

 「令和おめでとう。お上りさん」

 それを聞いたキンジローは顔をくしゃくしゃにして笑い、花子に優しく答える。

 「花子さん、おはようございます」

 令和初日の出が2人の門出を祝う様に輝き昇っていく。

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妖怪悩み相談室 巡 新山まり夫 @mario_niiyama

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