第29話 屋敷の中

 アンナの案内で小さい方の屋敷にはいると、ミツルとアールヴは彼女とは別行動と言うことになった。

 薬草類を卸しに来たと言っていた彼女だが、どうやら買い取りの窓口では、二人の目的とする業務を行ってくれないらしい。

 それを聞いて一瞬、不安になったミツル。

 彼女の言葉を聞いて一瞬困った表情をしたのだが、彼女に言われた先を見ると何やら複数人の女の子が忙しそうに動いているのが見えた。

 どうやら、その女の子達は案内役の女の子らしく、分からないことは彼女らに聞けば良いと言うことだったので、とりあえず二人はアンナと一旦別れることになった。


 「いらっしゃいませ、ようこそ!本日はどういったご用件でしょうか?」


 声をかけるつもりで近寄っていったミツル。

 本当なら、先に声を掛けるはずだったのが先手を打たれてしまったことに若干驚いていた。


 「あっ、はい。実は昨日この町に来まして入場の手続きをしました。それで、昨日聞いた話では、ネックレスみたいな……」


 ミツルがそこまで言うと


 「はい、この町に始めてこられたかたですね!ありがとうございます!それでは、昨日手続きをした際に契約書などを交わしたと思うのですが、それをいまお持ちですか?」


 ミツルの話を遮るように彼女は二人が契約書の有無を訪ねる。

 恐らく彼女らは仕事柄、数えられないほど自分達のような人物に接しているのだろうと考えながら彼は、魔法の袋から契約書を出して彼女に見せた。


 「はい、ありがとうございます!こちらですね。二枚見せていただけると言うことは、お連れ様の方は……」


 そう言いながらキョロキョロと周囲を見渡す彼女。

 

 (あれ?さっきまで隣にいたはずだぞ?)


 そう思ったミツルも彼女につられるように周囲を見渡すと……


 なんと遠くの方で何やら飲み物を飲みながらくつろいでいるエルフの子供らしき姿を発見した。


 「あっ……、あれです。すいません」 


 とりあえず彼女に誰が自分の連れなのかを印象づけておく必要を感じた彼は、謝りながらアールヴを指した。


 「あー、あのエルフのお子様ですか。なるほどですね。お客様と種族が違いますので、私の方で気づきませんでした。申し訳ありません」

 

 そう言いながら彼女は丁寧に頭を下げるが……

 

 (でも勝手に離れたのはこっちなんですよね……)


 そう思ってしまったミツルは、彼女に再びこちらが悪いと謝りつつ、とりあえずはアールヴを呼び戻しに行った。


 [なんだよ、ミツル]

 (なに勝手に離れてんだよ)

 [別によくねーか?見てすぐ分かる位置にいるんだし、お前の位置は俺の方からも問題なくわかったぞ]

 (見て分かるとか……とりあえず、今から手続きするから)


 見た目だけじゃなく、言動も子供みたいなことはやめてくれと思いつつ彼は再び彼女の方を見やった。


 「はい、それでは先程の続きですね。」


 そう言いながら再び彼女はミツルが渡した契約書の方に目を通す。


 [それで、どうなんだ?問題なくすみそうなのか?]

 (んー、それを今彼女は確認しているって感じかな……)


 「えーっと。先ずは確認ですが、本日お越しなられたのはミツル様とアールヴ様でお間違いないでしょうか?」


 書類に目を通しながら彼女はミツルとアールヴの両方を確認する。


 「はい、間違いないです」

 「うん」


 二人はそれぞれにあった形で反応を示すと、彼女は何やら小さく頷き出す。


 「はい、ありがとうございます。それで、こちらの方を確認する限りでは住んでいる場所の方が明記されていないのですが…」

 「はい。昨日の来たばかりで、昨日は宿屋の方に一泊しました」

 「なるほど、親戚の方などがいるわけでもないと言うことですね。ちなみにその宿屋と言うのは今後も利用していくおつもりなのでしょうか?」

 「えーっと、正直なところ昨日この町に来たばかりで、この町のきまりなども理解していないと思いますので、その辺りも説明していただければと思うのですが……」

 「はい、分かりました。それではこちらの方へおこしください」


 そう言いながら、案内人の女の子はミツルたちの前を歩き出したので、二人はとりあえずついていくことにした。

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死神と歩く異世界冒険録 tantan @tantan3969

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