第28話 屋敷へと続く道

 「おい、そこの三人。その位置で止まれ。本日はどういった用件出来たのだ?」


 領主代行の門番であろう、男が自分達の所まで近づいてくるミツルたちに向かって、そう言ってきた。

 ただ、言ってきたと言っても恐らく男が発しているその言葉は自分が門番という役目を果たすために義務として発している言葉なのだろう。

 聞いていた三人には、偉そうに喋ってはいるようだがどこか力なく聞こえるので、逆に間が抜けている感じがした。


 「はい、実はこちらの二名ですが昨日、町に来られたそうです。それでお話を伺ったところ、暫くこの町を拠点に活動したいということなので……」


 アンナの説明を聞いて門番の視線がミツルとアールヴの方へ向けられると、彼ら二人はその場で静かに頭を下げる。


  「なるほど、そちら二名がか宜しい通れ!」


 門番の一人がそう言うと、もう一人の門番が門の方に行き横についているロープのようなものを引き門を開け三人は屋敷の中へと案内された。


★★★


 「いやー、外から見た感じも凄かったけど中から見た感じも、それに負けない感じで立派なんだね?」


 門の中にはいると中央に道が広がっていて、その脇には様々な色の花や木が何とも豊かに生い茂る。 

 草の丈なんかも綺麗に揃えられているので、かなり手入れにも力を入れているのだろう。

 アールヴなんかは、意外にも緑の風景というのが結構好きなようで、興味深げに周囲の花をじっと眺めていた。


 「そうですね。あまり広すぎて、ちょっといまだに分からないときがあるんですよ」

 「え?そんな回数多く来たりするの?」

 「そうですね。三日に一度位は来ていると思います」


 ミツルの言葉にアンナが返してくれるのだが、意外に領主代行が彼女の中で深く関わっているということに内心で彼は驚いていた。


 「へー、そうなんだ。なんか意外だね。ちなみに普段はどういった理由で来ているの?」


 そう言うと、彼女は自身が持って来た袋を指差す。


 「はい、町の外で摘んだ薬草とかがある程度たまったらここに卸しに来ているんです」

 「あー、そういえば。昨日も最初は薬草摘んでたんだよね?それが、こんな感じになっちゃって……なんだか申し訳ない」

 「いいえ、全然大丈夫ですから謝らないで下さい。それに昨日は、お二人に会う前に摘んでしまった後でしたから」

 

 そんな会話をして扉を潜り歩いていると、やがて建物が二つ確認できた。

 一つは大きい屋敷言っても差し支えがないような建物。

 外の外壁の状況を考えると、誰がどう考えてもこの屋敷に領主代行が住んでいるのかなという感じの建物だ。

 一方、もう一つの建物はと言うと、それよりは二回りほど小さい建物に見えるのだが……


 とは言っても小さい建物が別に貧相に見えるということはなかった。

 あくまでも大きい建物と比べて小さい建物ということにすぎなく、小さい建物とは言っても十分に立派な建物に他ならない。


 だが、建物が二つ確認できたことでミツルとしてはアンナがどちらの進路をとるのか気になる。

 とりあえず後ろにつくような形で、確認をしてみると……


 どうやら彼女の足の方向が、小さい方の建物に向かっているようだ。


 「アンナちゃん、あっちの方の建物に向かっているの?」


 ミツルは小さい方の建物を指差しながら彼女に訪ねた。

 

 「はい、大きいお屋敷が代行様のお住まいらしいです。それで、別な方のお屋敷の方が手続きなどを管轄しているようなので、今日はそちらに向かうことになります」

 「あー、そうなんだね。てっきり普通に中に入れたから代行様が直接手続きしてくれるのかと思ったんだけど違うんだね」

 「代行様は、お忙しい方なのでそういったことにはあまり顔を出さないと……ハハ……」


 自身の言葉を発してから、ミツルはセキュリティの問題とかもあるだろうし、気軽に偉い立場の人間が自身の館に招くことはないかなと納得した。

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