第27話 領主代行様のお屋敷
コンコン……
ミツルとアールヴが心の中で話し合いをしていると、誰かが部屋の扉を叩く音がする。
扉を叩いたのは、恐らくアンナであろうと言う予測はたつが、だからといって放っておくわけにもいかない。
そう思った彼は扉を開ける。
「ミツルさん、こんにちは。準備が出来ましたので呼びに来ました」
やはり彼の考えの通り扉を叩いたのは、アンナだったようだ。
二人の方は、彼女と違いもう既に準備もできている。
なので、アールヴに合図を送って彼ら三人は宿を後にすることにした。
★★★
宿を出るとアンナは二人の前に積極的に出ながら、この町のことを色々と説明してくれる。
恐らくは、まだ朝と言うこともあるのだろう。
通りを行き交う人の流れは、それほど多いとは思えないが、ただそれでも通りに構えているお店は開いている。
なので、ある程度の時間が経過すればそれなりに賑やかになるのかと思いながらミツルは歩いていた。
「もうすぐです。あの辺りです」
そして、そんな中でアンナがふと角の辺りを指を指す。
二人は指を指した先を見てみると、そこにはかなり大きな屋敷が一軒建っていた。
「えっ…ちょっとあれって…もしかして領主代行様のお屋敷?」
周囲を取り巻く建物の2倍?4倍?
いやいや、そんなものではない。
周囲に建つ建物と比較するのがバカらしく思えるほど、広い屋敷……
いや、ともすると城と言った方が適切なのかもしれない。
それだけであれば、まだマシなのだが……
外壁が金色と言うなんとも悪趣味なセンスを伺わせる。
恐らく、誰が見ても見間違えるなんてことはないだろう。
そんな建物だけに、思わず二人は見合わせてしまった……
[おいおいおいおいおい、あれか……嘘だろ?]
(多分そうじゃないのかな?)
[どー言う考えで、あんな建物作ったんだろーなー]
(アールヴ!頼むから、そういう問題になりそうな言葉はやめてよね)
[あー、もちろん。俺を信用しろって!]
と言ったやり取りをしながらではあるが、それでも三人の歩みというのは止まらない。
「はい、あちらが代行様のお屋敷です」
笑顔で頷くアンナの言葉に、二人は苦笑いを隠せなかった。
その笑顔には何の不安も感じていないようにさえ見える。
ミツルは心の中で、慣れというのは恐ろしいものだなと感じつつ……
「あー……、そうなんだね……。とりあえず、なんか良く分からないけど、凄そうだね……」
[おい、お前、何だよ!良く分からないけど凄そうって、言葉がアホっぽいぞ!]
(えっ……、そんなこと言っても……何か一言でも喋った方は良いかと思って……)
[そんな無理に言う必要なんてねーだろ]
どうにも場を無理に繋ごうとしたばかりに無理矢理喋ろうとしたミツル。
そして、そんな彼を茶化すようなアールヴ。
このままだとどうしようもないと感じたミツルは無理にアールヴに反論するのはやまて、流すほうに専念することにした。
「あのお屋敷は凄いですよね……最近は慣れましたけど……」
「とりあえず、俺たちの準備って言うのは、あそこでやるんだよね?ってことは、外からか入る扉とかがあると思うんだけど……」
「はい、それでしたら。あそこの角を左に曲がると門番さん二人と扉がありますので、そこから入れますよ。後、昨日手続きした契約書は持っていますよね?あれがないと手続きができなくなるのですけど……」
「あー、うん。もちろん持ってるよ。もしも他に用意しておくものがあるんだったら、教えてくれると嬉しいんだけど」
「他に用意しておくものですか?うーん、ちょっと思い付かないので、無いと思いますけど」
そんな会話をしながら三人は屋敷の角を曲がった先、確かに少し行ったところに門番らしき人物が二人ほど立っているのが見える。
まだハッキリとはしないが、恐らくその辺りに扉の方も確認できるのだろう。
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