Museum


「やっと着いた・・・」

 俺はため息とともに額の汗をぬぐった。


 セントラルパークの横の四車線の道路を渡ると、白い巨大な外壁に四本の太い柱と大きなエントランス、そしてその中央にはセオドア・ルーズベルト大統領が馬にまたがった青銅の像が立っている。


 ここは American Museum of Natural History ──アメリカ自然史博物館だ。


 お腹がすいていたので博物館の前にたくさん並んでいる屋台カーでホットドッグを頼む。大量の玉ねぎと極太フランクフルトが挟まった、両手いっぱいのサイズのホットドッグがもらえた。これが5ドルというから、さすがアメリカ。値段も大きさも世界トップレベルだ。


 ここまでくるのに空港から二時間ほど。結局隣のアメリカンぽっちゃりボーイの大きないびきと、単純に狭い座席のせいでほとんど寝れていない。やっと眠れそうってときに隣の女性がトイレに行くと起こしてきたときは軽く殺意が芽生えた。

 ディズニー映画1本とホラー映画2本(もちろん英語)を観て、くだらないと思いつつも座席に標準のミニゲームをしていた。最後に飛行機を降りる頃には、そんなミニゲーム最終局面までいっていて終わるのが惜しかった。


 JFK空港から出ている空港列車?から、紫から黄色へと美しいグラデーションを放つ朝焼けを見ながら出発。この太陽を日本人は昨日見てるんだよな・・・

 

 アメリカの地下鉄の乗り方に戸惑いつつも、なんとか博物館開場時間ぴったりに間に合った。できるだけ細かくリメイン周辺をみるには、まだ人が少ない午前中がベストだと思ったけど、すでに多くの人が博物館へ入っていく。そりゃそうか、だって今日はリメインの展示の最終日前日だからね。


 ホットドッグを口に突っ込んでから博物館へ入る。ニューヨークを代表する博物館とあって、エントランスホール(セオドア・ルーズベルト記念ホールという)もかなり広い。そして映画のようにT-REXの化石が大きな口を開けてお出迎え──はなかった。代わりに肉食恐竜アロサウルスと首長恐竜のバロサウルスが争っているシーンの化石が展示されていた。どうやら映画でのシーンはフィクションだったらしい。残念!

 

 早速チケットを買って、ぷんすかしながら中に入る。さっきの受付で、表記では学生は18ドルって書いてあるのに、「ここでの維持費は皆様の募金をもとにまかなわれています。どうか、募金を」なんてスタッフが言うから20ドルくれてやった。募金をしたこと自体は別にいいんだけど、なにが腹立つって、後ろの明らかに日本語しか話せませんっていう若い日本人夫婦は通常料金で入っていったからだ。なまじ英語がわかって、ふんふんうなずいてしまったことが逆に裏目に出てしまった。カモられた気分だ。


 ここではしっかりと日本語表記のパンフレットをいただいていく。観光をしたい気持ちもあるけど、目的はリメインの奪取。結局4階から観ていくことにした。

 入ってすぐの手前の階段を上がると早速大きなクビナガ竜がその長い首をドアからはみださせていた。

 この隣の部屋が今回の目的である『指輪』が置いてある部屋だ。

 リメインを一般公開ってだけでもすごい人数の人が押し寄せるのに、これを一番人気であろう4階に置いてあるから、すでにたくさんの人がこのフロアにいる。


「鳥盤類恐竜」とパンフレットに書かれた部屋から順に回っていく。

 こういった化石とかにはあまり興味はなかったけど、これは楽しい。日本のそこらの博物館じゃ、一つで目玉展示物になるであろうでっかいネッシーみたいな化石やレプリカを惜しげもなく展示している。

 

 化石と言えば恐竜!くらいしか思っていなかった俺でも、ここでは教科書で見るような中生代より前の生物(三葉虫とか虫みたいなのが強かった時代)の化石から順に進化の過程と一緒にみることができて、とっても勉強になった気分。専門用語の英語ばかりでほとんど理解できてないけど!


 ぐるっと一周してきて、最後の部屋に入ろうとしたらすでに人であふれていた。みんな目的は同じ。そう、ここ特別展示室にはリメイン、『パーシー・ハリソン・フォーセットの指輪』が展示されている。

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Fruits!! 林檎 @applepie0069

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