第3話ルビアハッピートゥモロー

私は屋上を出て目の前の階段を降りそのすぐ近くにある放送室に向かった。

それまでの爆発音が嘘だったように静寂が周りを満たしている。

と、私は目の前にある放送室に繋がる扉を蹴るように開けた。

するとそこには拘束されている明日香、明日葉、明日美がいた。

「3人とも!」

私がそう声を上げるとうつむいていた3人がほとんど同じ動作でこっちを向く。

「ルビアちゃん!」

「ルビアちゃんじゃん!」

「ルビアちゃんだー!」

各々が様々な反応をする。

しかし、その光景に私は笑えなかった。

それは三人が拘束されている後ろに黒コートの男が短剣を指で遊んでんたからだ。

私が来たのを見るとニヤッと笑い、口を開いた。

「やあ、来たね。

ルビア・フォンス・クレセント。」

その瞬間相手からとてつもない殺気が滲み出る。

「、、、、ッ!」

私は咄嗟に後ろに下がる。

すると男は殺気を消してにっこりと微笑んだような気がした。

「さすがの反応速度だ。」

そう言って私に近寄ってくる。

私は紅龍刃を展開しようと試みるがなぜだかここで相手に逆らってはいけない気した。

その私の対応を見た男が、、、

「良い判断だ。」

と言って一番近い明日葉の首元に短剣を近づける。

「君がもしここで展開していたら彼女はもうこの世に居なかっただろう。」

私は思った、今はこの男の言うことに従ったほうが良い。

私は直感でそう思った。

「、、、私は、なんで呼ばれたの?」

少しだけ、嫌悪感と敵意を含んだ声で私は問いかける。

それを聞いて男はまたニヤリと笑った。

「話が早くて助かる、、、

それじゃあ、いっしょに来てもらおうか?」

そう言って私の後方にあるさっき私が通った扉を指す。

つまり、私をどこかに連れていきたいということだろう。

「、、、良いわよ。貴方について行くわ。」

私はそう言うと警戒をといた。

男は私の前に来て、

「よし、お前の友達を開放してやろう。」

すると、さっきまで3人を拘束していた鎖が消えた。

3人は驚いた表情を見せていたがそれ以前に私の方を見た。

その瞳には、罪悪感と後悔の念が滲み出ている。

私はそのを見た瞬間に口を開いていた。

「大丈夫だよ、3人とも。私は大丈夫。」

すると、3人は同時に、、、

「「「ルビアちゃん、、、」」」

と言った。

その行動に思う事があるが、今はそれどころじゃない。

私はにっこりと微笑み、男の方に向かって歩く。

「、、、話は済んだかい?」

男が聞いてくる。

私はその問いに端的に言う。

「、、、ええ、早く行きましょ。」

私は相手にそう言って歩き始める。

男は私の前に立って廊下をゆったりと歩き始めた。


学園の結界を壊して潜入してから数分後。

「どうしてこうなった、、、、ッ!」

俺は囲まれていた。

ことの発端は潜入した当初に当たる。

結界破壊してすぐに学園に侵入したのは良いものの、その後からが面倒であった。

第一に相手の人数が想像していたより多かった。

そして、何より失敗した事は、肝心の相手のリーダーの居場所がわからない。

このような掃討戦には、リーダー格を抑えるのが1番手っ取り早いのだが、

これは、焦っていたとはいえ普通にミスった。

俺がそんな事を考えつつ、階段を一気に駆け上がる。

すると、廊下に顔をマスクで隠している男たちが現れる。

俺を見るなり、

「居たぞ!」

と言って手の持ってる機関銃を掃射してくる始末である。

俺は何とかしてこの状況を打開しなければならない。

しかし、立ち止まっていると、他の敵に発見されてしまう。

ならどうするか?

答えは1つである。

殲滅。

それしかないと考える。

まあ、結果的に警備部に拘束か排除されるので、俺が今やったとしても変わらんだろう。

そのため俺は逃げるのではなく、立ち向かう事にした。

そう心に決めた瞬間、俺は前に足を出して急ブレーキをかける。

すると、男達はそれを見て俺に向かって、小銃やDADシステムの近接武器を展開して俺に接近してくる。

俺は振り向きながら集中する。

すると、景色が

今、俺の目には壁や物陰に隠れている敵の姿が見える。

いや、正確に言うとと言ったほうがいいだろう。

これは、記憶を失った俺が覚えている能力の1つである。

魔力を検知しそれからこれから起こる事象を予知する。

俺はこれを龍皇の目。

俺は改めて周囲の状況を確認する。

敵の数は全部で10。

それぞれ自分の武器を装備している。

前衛に3、中衛に4、後衛に3。

そして、前衛は剣や槍、斧を持って俺に近づいてくる。

その後ろに小銃を構えた敵が俺の照準を合わせている。

まずは、あの遠距離武器をなんとかしよう。

そう俺は思い足に力を入れ、相手が引き金に指をかけた瞬間に、俺はそれを気に留めずに床を蹴る。

すると、後ろにいた小銃を持っている敵が次々に発泡する。

普通に考えれば、ここで銃弾が俺に当たり血花を咲かせるが今はその限りではない。

俺は思考を深くし予測する。

すると、相手の銃弾が俺に当たる順番がわかる。

最初に中衛の右にいる敵の銃弾が胸に当たる。

俺はそれを刀の腹で弾く。

続いて、今度は後衛の二人と中衛の三人の銃弾が俺に当たる未来を予測する。

俺は、体を曲げて一撃目ニ撃目を躱す。

すると、今度は3撃目4撃目は刀で切り裂く。

切られた銃弾が黒龍丸の能力で黒い塵になっていく。

しかし、そんな事を気にしてない様子で俺に鉛玉を打ち込んでくる。

俺はそれを不思議に思いながらひたすら弾く。

あと、4メートル弱。

しかし、そこで近接武器を持つ敵と正面衝突をする。

左右からの同時攻撃に前から3人目の男が槍を振り下ろそうとしている。

それから俺からは見えないが4人目が3人目の男の後ろで身構えているようだ。

さて、状況を確認してみたが退路を塞がれているし、3人の同時攻撃を凌げるかどうかというと若干怪しい。

しかし、打開策が無いわけではない。

俺は左右の攻撃が重なり合う瞬間に背に黒龍丸を当て剣を受ける。

「「ッ!」」

突然のことに相手は驚くがこれで終わりではない。

俺はそれを上に弾く。

その弾いた剣同士が衝突し更に振り下ろしていた槍ともぶつかる。

相手は絶対に殺せると思っていた為、結果が変化し一瞬判断が遅れた。

しかし、その一瞬が戦いでは命取りである。

俺は右足を軸にし回転する。

すると、俺を囲んでいた男たちの首と体が別れそれと同時に血花が咲く。

それを呆然と見ていた4人目の男と目があった気がした。

俺はその男に告げた。

「終わりだ。」

俺は相手の首を落とした。

それからはもはや戦いとは言えない

まさに蹂躙劇と言える戦いであった。

近接武器を持っている敵が全員死亡してしまったため、残った敵と言えば遠距離武器の敵だけだった。

そのため俺は地を蹴って相手に近づき斬って切って伐りまくった。

そして、、、数分も経たないうちに

辺りが静寂になる。

辺りを見るとそこら中に血の跡などがある。

「、、、、ッ!」

俺はその景色を見た途端、俺は頭の中がミキサーに混ぜられるような感覚に陥った。

視界が点滅する。

なんだろう?

見たことのない景色のはずなのに、

?

しかし、その感覚は長くは続かなかった。

「、、、う、、、」

視界が暗くなり、俺は意識を失った。


俺は何処かにいた。

ここは何処だろう?

さっきまでいた学園内ではないことは分かった。

理由は、

しかし、俺は案外混乱していなかった。

すると、どこからか声が聞こえた。

「どうすれば、、、あなたのように強くなれますか?」

そんな声が聞こえたその声を聞いた途端、俺は頭痛に見舞われた。

頭の中で突っかかっている。

その答えが出る前にもう一つ声がした。

「、、、自分が大切だと思うことのために戦うんだ。それが自分の力になる」

その声を聞いた途端俺はハッとした。

これは

記憶を無くす前の俺。

そして、もう一つの声の主は幼い時のルビアだと思った。

なぜだか知らないが、そう思ったのだ。

しかし、その声はすぐに霧散した。

すると、次に現れたのは小学生くらいの黒曜石のような色の髪をした女の子であった。

「、、、君は一体、何者なんだ?」

俺は知らず知らずのうちにそう聞いていた。

しかし、その子は微笑むだけで何も答えない。

俺は戸惑いつつも質問を続けようとしたは、その前に女の子が口を開いた。

「あなたは、大切な人のための自分の大切なものを捨てられる?」

急にそんな事を聞かれて少し戸惑う。

しかし、少女の言う大切な人という言葉を聞いて思い浮かぶのは美咲とルビアの笑顔であった。

俺はその顔を思い浮かべると自然と言葉が出ていた。

「ああ。俺はその大切なものの為なら命だろうと惜しくない」

はっきりと宣言した。

すると、一瞬少女が驚いているのがわかった。

しかし、すぐにまたニッコリと微笑む。

「それでこそ、

少女はそう言うと後ろに下がり始めた。

さっき少女が言っていたパパという単語に驚いて聞こうとする。

「ちょっと待って!君の名前は、、、?」

すると、動きを止め笑顔で言った。

「???、、、私の名前は九条???だよ、パパ」

そして、完璧に暗闇に消えてしまった。

俺はその言葉に考えつつ、いつしか浮遊感にいつしか目覚めていた。


「、、、ちゃん、、、にいちゃん、、、お兄ちゃん!」

俺を呼ぶ声が聞こえ意識が覚醒する。

「う、うん、、、、」

一瞬目眩がしたが、俺は目を開ける。

すると、そこには目を真っ赤にした、

美咲の姿があった。

「おいおい、どうしたんだ?」

俺は分からずに美咲に聞く。

「、、、、お兄ちゃん!」

美咲は大きな声で俺を呼び抱きつく。

俺は驚きつつ頭を優しく撫でる。

「はいよ、お前の兄ちゃんだぞ」

すると、更に涙目になり俺に強く抱きつく。

そこで俺は美咲の他に3人いることが分かった。

見ると確かクラスにいる、明日香、明日葉、明日美とかいう名前のクラスメイトだと思い出す。

「お前ら、どうしてここに?」

すると、答えたのは美咲であった。

「私が迷子になってるのをこの人たちに助けられたの」

すると、3人揃って赤面する。

「いやー私達は助けたっていうか、、、」

「そうそう、私達も迷子になってたわけだし、、、」

「むしろ、私達も君に会いたかったわけで、、、」

その言葉に疑問持ちながら聞いてみる。

「何で俺に会いたかったんだ?」

すると、三人が言い淀みそれから最悪の状況を聞くことになった。

「、、、な、、、ルビアが攫われただって!?」

俺は驚きを隠せずに素っ頓狂を上げる。

すると、3人は俺の声にびっくりし。「ごめん、龍翔くん!」

「本当に、ごめんなさい!」

「申し訳ない!」

3人がそれぞれ誤ってくる。

俺はその謝罪の言葉が耳に入って来なかった。

敵は何故ルビアを攫ったのだろうか?

そんな考えが俺の頭を駆けるが、それを予測するには余りにも敵の情報が少なすぎる。

しかし思考はそこで止めなければならなくなった。俺はどこからか物凄い殺気を感じ思わず辺りを見渡す。

しかし、周りには人どころか生物の気配すらない。

身構えた俺を見て3人組が口々に言う。

「どうしたの?りゅう、、、ッ!」

俺の名前を呼ぼうとした明日葉に向かって何かが飛んできた。

俺は咄嗟に3人組と美咲を横に突き飛ばし飛んできた何かを黒龍丸で弾く。

見るとそれは剣だった。

そして、床に突き刺さった途端に空気中に消える。

「、、、なんだよ、これ、、、?」

俺は困惑した。

その思いをかき消すようにコツ、コツと靴の音がする。

「、、、、、、、、」

俺は息を呑んで相手が来るのを待つ。

すると、現れたのは黒いローブに身を包んだ男だった。

その瞬間に俺は距離をとった。

何故なら、この男とはできる限り距離を空けたほうが良いと生存本能が言っているのだ。

俺と奴の睨み合いが始まる。

しかし、思った以上に早く沈黙は終わった。

その理由は直ぐに相手が口を開いたからである。

「ほう、、、さっきの攻撃を弾くとは、お前がさっき下にいた愚兵トルーパーをやった生徒か?」

愚兵、俺はその単語を聞いた途端に恐怖よりも先に怒りが込み上げてきた。

「愚兵、、、だと、お前は人間をなんだと思ってやがる!」

俺の怒気が籠もった声を相手はサラッと返す。

「所詮は薬の投与に耐えられなかった人間だ、愚兵と呼んで何が悪い?」

俺はその言葉を聞いた途端に思った。

俺達とは違う概念で動いてる人種だ。

そう思うと俺はまた悪寒がした。

さっきまでの寒気とは違う殺意という冷気が俺を飲み込もうとする。

俺は咄嗟に横に飛ぶ。

その途端、俺がさっきまでいた所に無数の剣が刺さっていた。

「クッソ!」

俺は戦闘態勢に入る。

「、、、ほう、私に歯向かうのか?」

男は右手を上げて何かを呟く。

すると次の瞬間。

男の周りには無数の剣が出現する。

「ならば名乗ろう、名無ノーネイムし第10位、ロールンク・アクト・シュード参る!」

俺はその名前よりもその姿を見て

「どこの王様だよ!」

とツッコミをせずにはいられなかった。

すると、そのツッコミを不快に思うように無数の剣が飛んでくる。

「龍王の目!」

叫び、俺は龍王の目を展開し、次の行動を先読みする。

しかしその予知が完了するより速く無数の剣が俺の体に飛来する。

「やっば!」

俺はまた横に飛ぶ。

ここの来て龍王の目の欠点が裏目に出た。

龍王の目は先読みするという非常に便利なものだが無論欠点もある。

その一つが、予測対象を絞れないという事だ。

今、俺の脳内には無数の未来が予知できている。

しかし、その数が

これは相手に対して使用したのでは無く、あの剣一本一本に焦点を当てて未来を予測しているのだ。

そのため、無駄な予知が多くなり、脳がパンク仕掛ける。

しかもその中に俺が死亡する未来、

所謂バットエンドルートの予知も含まれているので結構な精神力をこちらに割く必要があるのだ。

俺は龍王の目を解除し相手の攻撃を見切る事にする。

しかし、数本ならまだしも何十本となるとそう簡単には行かない、

更に俺の後ろには美咲達がいるので後退しようにも後退できずにいるのだ。

何とか致命傷になるような攻撃は弾いたり躱したりしているが、それでも着実に相手の剣は俺の魔力と体力を奪っていく。

しかもジリジリと俺は後退をせざる追えなくなっている。

このままでは俺は負けるだろう。

なんとか逆転の一手は無いかと思考しているとあることに気づき少し鎌をかけることにした。

俺の横を通り抜けた剣を掴んで投げ返す。

その行動で相手の位置が移動し剣の射出が止まる。

俺は上がってしまった息を整えつつ聞いてみる。

「お前、どうやってそんなにDADシステムを使役してるんだ?」

すると、相手が少しだけ驚いた表情をする。

これは、DADシステムの使用条件に該当する。

基本的にDADシステムは一人につき一つしか使うことができない。

稀に、同時に使える人材もいるらしいがそれはほんとにごく少数だ。

しかし、奴はそれを有に超えるほどのDADシステムを使役している。

このことに俺は違和感を持ったのだ。

「ほう、、、そんなことか?

そうだな、私の千剣斬雨ソードレインを防いだのだから教えてもよかろう。

これは、私の日々研鑽の成果だよ」

そう言って腕を広げる。

すると、無数の剣が奴の後方に集まっていく。

見ると、剣が高速で回転し始める。

この時、俺は無意識のうちに横に飛んでいた。

何故なら死の気配を感じたからだ。

次の瞬間、俺の立っていた位置にさっきまでの速さが遊びだというような高速な一撃が飛んでくる。

ズガン、と音がし見ると、床に見事なまでの穴が空いており、下の階にまで貫通していた。

確かこの学園の校舎に使われてる素材は軽く爆弾を爆発させても無傷な魔力石製の筈なのだが、、、

「うそん、、、」

見ると、他の剣も先程の剣と同じ状態になっており待機している。

キィィィィィィィンと音がし始め連続で射出される。

「、、、やっば、、、ッ!」

俺は咄嗟に床を蹴る。

俺の後ろに次々と死の雨が降り注ぐ。

このままでは流れ弾が美咲たちにいつ当たるかわからない。

また俺は窮地に陥る。

考えてる暇はない、龍王の目もこの場面では使い物にならない。

ならどうするか、、、

俺はあることを思いつき、迷ってる暇はないので一か八か実行する。

走りながら俺は唱える。

「炎の精よ・我に加護を・紅蓮の怒りを!」

俺にはなぜだか、炎熱、雷撃、氷結の基本属性の魔術適性がない。

理由は知らないが、使えるのは基本3属の魔術だけだ。

その内の一つ、炎魔術初級、火球ファイアボール

ルビアの炎に比べると貧弱な炎だが、多少の攻撃力は備えている。

「、、、せい、、、、、ッ!」

左手に灯った炎を相手に向かって投げつける。

その炎は相手に向かってきれいに飛んでいきそして、、、

「小癪な、、、」

飛んできた剣にあっさり一刀両断された。

「ですよねー、、、、」

俺の火球が辺りに四散し、廊下が少しばかり明るくなる。

しかし、俺はニヤッと笑った。

そもそも、さっきの攻撃は

俺はその一瞬の間をつき相手に向かって走り始めた。

「なに!?」

相手も今回は少しばかり驚いているようだ。

だが、直ぐに持ち直し俺に向かって剣を撃ってくる。

射出された剣が俺を射抜く瞬間、、、

「龍王の目!」

俺は叫び同時に俺の思考は急速に回転を始める。

この剣の数だと龍王の目のリミットは10秒程だろう。

だが、

「十分だ、、、ッ!」

俺は読む、相手の思考を、相手の思想を、相手そのものを。

弾く、躱す、叩き落とす。

その全ての動作の無駄を無くしただただ合理的な動きを淡々とする。

機械のように。

しかし、それにも限界が来る。

「、、、、ッ!」

龍王の目の限界時間である。

思考急速に現実を取り戻す。

その瞬間、俺は剣に穿たれた。

「、、、かは、、、ッ!」

それを好機と思ったように無数の剣が俺を蹂躙する。

もはや、俺の体は無残な姿になっていた。

体中を剣に刺されこうして息をしていることだって間々ならない。

そこで、俺が最後に見たのは、

黒龍丸を相手の胸に刺している姿


私は名無しの十を狩る者としてこの作戦に配属された。

基本的なこの任務の達成条件はこの学園にいる情報提供者に一任されているらしい。

中々にきな臭い作戦だが私には関係ないので参加したわけだが、その作戦には講師陣が全員出張という事で警戒が薄いと見ていたのだろう。

もちろん最初は計画通りに行っていた。

教室にいた学生を無力化し教室に軟禁状態にしそこからターゲットを探す事になり、そのターゲットもすんなり見つかった。

しかし、問題はそれからであった。

突然結界が破壊されたとの事でその現場に愚兵を行かせてみると、あっという間に全滅。

そしてその相手を自らの手で葬る為にここにこうして来た訳だが、まさか、その相手がこんな学生だったなんて思いもよらなかった。

そんな事を思いつつ数々の敵を葬ってきた、千剣斬雨を放った。

この攻撃を防いだ敵はいるが凌いだ人物は存在しない。

しかし、いざ戦ってみるとその男は危なっかしくもしっかりと凌いでほぼ無傷に近い状態でいるのだ。

私はそれを見た途端に感嘆の感情が溢れた。

ここまで攻撃して壊れなかった奴はいない。

私は歓喜にみちていた。

こいつならこの男なら使

そこで私は奥の手を出した。

惨剣乱光スター・インパクト

これは、今私が持つ最高ランクの技である。

剣を高速で回転させそれに振動を加える。

それによって、斬撃性と貫通性を高める技である。

それを奴はまたしても防いで退けた。

素晴らしい。

私はヤツに称賛を送った。

ここまで心躍る戦いは何年ぶりだろう。

しかし、その後の行動に私は落胆した。

奴は火球の魔術を放った。

それは良い、問題はその後の行動である。

なんと、奴は私の剣たちに向かって走り込んできたのだ。

血迷ったかと思い剣を放つは全て凌がれてしまう。

これもなにかの策かと思い身構えていると剣が奴の体を射抜いた。

その一瞬で奴の身体に無数の剣が刺さっていく。

数秒後にあったのは剣山とかした奴の姿であった。

私はその姿に何か思うことがあり、

「その命、流石であった」

と称賛をした。

だが、あり得ないことが起こった。

「勝手に殺すな」

そう声が聞こえ私はハッとして後ろを振り向いた。

しかし、それより速く胸に熱が走る。

「、、、、な、、、、!」

私は驚いた。

見ると奴が立っていたのだ。

ところどころ火傷した状態で、、、

しかし、それよりも私は気になった事があった。

「、、、、、なぜだ?、、、、お前は確かに私が殺したはず、、、」

そう言って、私はその死体を指さそうとする。

だが、そこに有ったのは空気中に分解していく体であった。

「、、、、どういう事だ?」

すると、奴は私を見てこう言った。

幻影虚歩ファントムステップ

俺が使える技の一つだ」

そう言って私の体を横にする。

「お前、、、名前は?」

私は知らず知らずのうちにこう聞いていた。

奴は、少し迷ったような顔をし、こう言った。

「九条、、、九条龍翔だ」

その言葉を聞いて私は少し微笑んだ。

「龍翔、、、か、素晴らしい戦いであった。九条龍翔、、、」

私はそこで意識が途切れた。

「、、、お前もな、、、」

最後にそんな声が聞こえた気がした。


俺は火球を放ったと同時にある術を使った。

幻影虚歩ファントムステップ

そこに無いはずのものを光を歪めあたかもそこにあるように見せる技である。

それと同時に、魔力でその幻影に質量を持たせる、それによって、俺が刺されたように見せたのであった。

「、、、、ふう、、、」

俺は息を整えながら思った。

強敵だった。

幻影虚歩を使って何とか勝てたが、俺の技が割れていたら勝てなかっただろう。

最もその時は黒龍丸の封印を解けばいいが、、、

そう思っていると、後ろから気配を感じた。

振り返ると、美咲と3人組がこちらに向かってくるのが見えた。

「お兄ちゃん!」

美咲がそう言って俺の身体をまじまじ見る。

「な、なんだよ、、、?」

俺は意味わからずに聞いてしまう。

それを呆れて見ていた3人組が口々に。

「美咲ちゃんは心配してるんだよ」

「妹ちゃんは心配してるんだね」

「妹さんは心配性だねー」

と言う。

つまり、美咲は俺の先程の戦いを見て体に傷がないか確かめたのだろう。

そんな美咲を見つつ、

「大丈夫だよ、美咲。

兄ちゃんはルビア連れて帰ってくるから」

その言葉を聞いた途端に美咲が目を見開く。

すると、急に震え始め目に涙を浮かべる。

「お、おい、美咲!?」

俺は戸惑いつつどうしたら良いかとあたふたしていると、、、

「、、、何で、、、何でお兄ちゃんがこんな目に会わなくちゃいけないの!?

お兄ちゃんは普通の高校生だよ!

なんでこんな死地に出向かなきゃいけないの!?」

と言う。

俺はその美咲の発言に言葉を失った。

確かに、美咲からしてみれば俺は普通の高校生かも知れない。

DADシステムの存在を加味してもだ。

だが、俺には明確にわかることがある。

俺は、美咲の肩を掴みしゃがんで目線を合わせる。

「ごめんな、、、美咲。

お前の言葉はごもっともだ俺は普通の高校生であってこんな戦場に足を踏み入れる存在じゃない、、、」

「なら、、、、ッ!」

「でも、、、それでも行かなきゃいけないんだ。

俺を待ってる人がいるから、俺が、、俺たちが大切に思っている人がいるから、兄ちゃんは無茶を承知で行くんだ、、、

兄ちゃんが無茶をしすぎるのは知っているだろ?」

俺がそう言うとキョトンとした。

「だからさ、、、美咲には笑顔で俺の帰りを待っててほしい。

兄ちゃんとの約束だ」

俺は小指を突き出す。

指切りげんまである。

昔は良くこれで泣く美咲を宥めたものだ。

すると、その指を見て同じように小指を突き出し、絡める。

「、、、うん、、、約束、、、」

と言って涙を拭きつつ笑顔でこちらを向く。

見ると、後ろにいた3人組が何故か知らないが泣いている。

「、、、美咲頼む」

すると、3人は。

「うん、任せて!」

「了解しました!」

「行ってきな!」

と口々に激励の言葉を飛ばしてくる。

俺はその状況に苦笑しつつ背を向け、歩いていく。

「待ってろよ、ルビア!」

俺はここには居ない大切な人に向かって高々に宣言した。


黒コートの男について行って見ると、

そこはある一角にある教室であった。

私もよく使う教室だが、唯一違うのはその床にびっしりと赤い何かで文字が書かれている。

それはまるで、、、

「魔法陣?」

ぼそっと零したこと男が聞き取り。

「正解、最もこれはまだ未完成だがね。」

そう言って私を指差す。

「君がこの魔法陣の核なんだよ、

ルビア・フォンス・クレセント君」

私はこの男が何を言ってるのかわからない。

いや、正確には言ってることはわかるが何故、私がこの術式の核になってるかということだ。

基本、魔術には3種類に分けられる。

個人で発動できる魔術。

これを、私行魔術しこうまじゅつという。

次に、大人数で発動する魔術。

これを、軍行魔術ぐんこうまじゅつという。

そして最後に特殊な媒体や魔法陣を使って発動する魔術。

これを、外行魔術という。

この魔法陣は別行魔術に分類される。

しかし、ここまで大規模な魔法陣は見たことがない。

魔法陣はその大きさに応じて術自体の効力の大きさが変わる。

しかし、この教室の天井にまでびっしりと書かれた魔術文字は一体何をする魔術なのか判別できない。

しかし、そんな私でも一つだけ分かる。

この魔法陣には穴がある。

つまり、そこに私が入れば術式が完成するという事だろう。

「、、、なんで、私なの?」

私は知らぬ間に聞いていた。

それがどうしても気掛かりなことであった。

もし何かの依り代に使うのであれば私よりも魔術適性が高い子はこの学園に沢山いる。

正直な所身代金目的に私が呼ばれたのだと思っていたが違うらしい。

「ん、、、ああそれは、、、」

と言って男は私の紅龍刃のデバイスを指差した。

「それが、1番の目的」

確かに紅龍刃には他のDADシステムに比べて強力な物なのは間違いない、

しかし、男は紅龍刃について何か知ってるのだろうか?

考えている内に男は私にある真実を言った。

「君は元々、、、」

私はそれを聞いた瞬間に固まった。

男はなんて言った?

私はこの為に生まれた?

思考が追いつかない。

「嘘だ、そんなわけ無い」

私は否定の言葉を言う。

「嘘だと思うかい?君は昔から計画の為だけに生み出され、ここまで育てられたんだよ」

しかし、相手は黙々とそれでいて残酷に言ってくる。

私はそれを否定する為に、、、

「紅龍刃!」

手に赤い大鎌が出現する。

「うわあああああああぁぁぁぁッ!」

絶叫をしながら相手に斬りかかる。

しかし、

「君ごとき私にかなうとでも?」

と言っていつの間にか手にナイフを持っている。

「せい、、、」

覇気にない声で私の一撃を受ける。

この状態だと私の勝ちは確定だと思っていた。

だが、、、

「、、、な、、、、ッ!」

動かない!

かなりの力を使って放った一撃なのにそれを防がれた。

しかも、相手は構えもせずに受け止めたのだ。

私は、一回後退する。

「認めろ、そして受け入れろ!

君の運命は決まってるんだよ!」

と言って私に攻撃を仕掛けてくる。

私は攻撃を受ける。

その重みに私は膝を折った。

重い!

この男は強い。

私はその時痛感した。

この男に

流石に龍翔がやられた敵を私一人でやるのはキツ過ぎる。

しかし、ここでやられるわけには行かない。

その瞬間に私は思いっきり弾き飛ばされる。

「、、、、きゃ、、、、ッ!」

私は何とか壁に当たる瞬間に紅龍刃を床に突き立てて勢いを殺す。

「ッ、、、、、」

私は一気に体が重くなる。

さっきの攻撃で魔力の大半を使った。

一撃でこの威力。

私は絶望した。

この圧倒的な実力の差、死のイメージしか沸かない。

私が絶望していると、相手のポケットからなにか音がした。

それは何かの端末のようだった。

「ほう、、、、」

相手はこのとき初めて驚きの声を上げた。

「、、、君の知り合いがこちらに向かっているようだ」

その言葉に最初に思い浮かぶのは私のクラスメイトであり友達であり、大切な人である龍翔の顔であった。

そして、相手は面白く感じているように言ってくる。

「、、、なるほど、、、番号ナンバー10を倒したか、この少年はなかなかやるな、、、」

その言葉から推測するに龍翔はこのテロ集団の上位の人間をひとり倒したとの事だろう。

そう考えた途端私の心に炎が灯った。

諦めないという覚悟の炎が、、、

私が立ち上がったのを見て相手が片方の眉毛を上げる。

「ふむ、、、君はまだ立ち上がるのかい?、、、無駄なことを、、、」

瞬間、相手から濃縮された殺気が放出される。

それが、まるで津波の様に私の心に襲いかかる。

思い出すのは龍翔とのデートのとき、私はあの戦いで何もできなかった。

その後悔の念が殺気に対する恐怖を上回る。

「私は、、、諦めない!」

殺気に飲まれそうになるなるのを必死に堪える。

「私は、負けない!」

膝が恐怖で笑っている。

しかし、私は立ち上がる。

「 私は、あなたを倒す!」

高々にそう宣言する。

「お願い!力を貸して、炎熱龍皇イフリート!」

私は、私のあいぼうの名前を呼ぶ。

すると、私を取り巻いて巨大な炎の竜巻が出現する。

龍皇装セフィロト・クィンクェ!」

炎を纏う。

しかし、それは実践訓練の時のように炎だけではない。

服が変化しシンデレラのようなそれでいて美しい真紅ドレス変わる。

男は私のその姿を見て、

「、、、ふ、ふはははははははは!」

と高笑いを上げる。

「素晴らしい、、、素晴らしいぞ!

これが十王の本来の力!

これこそが炎の皇、炎熱龍皇イフリート!」

男はそう言って私に切りかかった。

「レディの着替えを邪魔しないの!」

そう言いながら私はそれを膨大な熱量を纏った炎熱龍皇で弾く。

「なるほど!これが効かないか、

なら、、、これはどうかな!?」

男は無数の剣を生成し私に飛ばしてくる。

私はそれを弾こうとするが数が多すぎるため全て弾けないと直感で理解する。

そこで、私は、、、

炎熱龍皇イフリート煉獄護炎インフェルノガード

すると、次の瞬間に私の前に炎の壁が展開される。

煉獄護炎インフェルノガード炎熱龍皇が教えてくれた技の一つだ。

任意の位置に炎で生成した盾を展開する。

剣が私の炎に触れた瞬間。

ジュ、と音がし蒸発した。

「なに!」

これには流石に相手も驚いているようだ。

私は炎とかした鎌を振り上げ、

炎熱龍皇イフリート

煉獄天災インフェルノディザスター!」

すると、今度は極大に圧縮された炎の塊が出現する。

「、、いっけ、、、ッ!」

私は鎌を振り下ろす。

それと同期しているかのように死を具現化したような炎が相手に向かって落下する。

教室で触れたものが次々に溶け、

あるいは蒸発する。

しかし、相手は、、、

「そうでなければな、、、、ッ!」

と言って私の炎に真正面から立ち向かう。

「ふ、、、、!」

相手は私の炎にナイフをぶつける。

私は買ったと思った。

煉獄天災を受けきれる人間はほとんどいないと考えたからだ。

しかし、現実は違った。

なんと、相手のナイフが私の炎を吸収し始めたのだ。

「え、、、、、ッ!」

今度は私が驚愕の声を上げた。

しかし、それを現実と言うようにナイフは私の炎を吸収する、、、

いや、

そして数秒後、

そこに立っていたのは私の炎を食べ尽くしたナイフを握っている男の姿であった。

「ふふふ、流石だな龍皇の巫女よ。

流石に今のはこの複合魔竜キマイラでなければ防げなかったぞ」

その姿に私は戦慄した。

こいつはやばい。

さっきの攻撃も全力で放ったのに受け止められた。

その思考に至った瞬間に体から力が抜けた。

しかし、私には思い至ることがあった。

「、、、魔力切れ?」

魔術師の燃料とも言える魔力が切れたのだ。

それもそのはず、あれだけ高火力、

高難度の技を放てば訓練でもしていない限り魔力は枯渇するだろう。

体がついに動かなくなった。

それを見て男は私に向かってる歩いてくる。

私に目の前まで来た男を私は睨みつけ、

「殺すなら、殺しなさい、、、ッ」

私はこう言う。

覚悟は決まっていた。

だが次の瞬間予想外のことが起きた。

「君には、もう少し役に立ってもらうよ、、、」

「、、、え、、、?」

次の私の視界は黒く染まった。


美咲たちと別れてすぐに下の階から爆発音が聞こえた。

「な、なんだ!?」

俺は驚きつつも、それが戦闘音だと改めて気づいた。

俺はその音を聞いた途端に焦りが生じる。

これまでの戦闘で相手の戦力をだいぶ理解してきた訳だが、それでもまだまだ未知数な敵がいるかもしれない。

それに、いくら敵が弱いと言ってもそれは実践的な訓練を積んでいればの話である。

いくら魔術師見習いの学生の集団がいるとはいえ、実際の戦闘力は無いに等しいだろう。

その場合、下手に死人を増やすだけ無駄死にをしに行くだけである。

しかし、その予想は外れた。

階下に降りると、そこには未だに教室に隔離されているようだった。

だが、その後予想外のことが起こった。

炎熱龍皇イフリート!」

と声がし突如廊下を赤い炎が蹂躙する。

「、、、ちょ、まじか!」

俺は咄嗟に黒龍丸の「破滅」を発動させる。

炎が俺に触れる前に黒いチリとなって霧散する。

突然として現れた炎だが、さっきの声とこの炎には見覚えがあった。

「、、この炎って、、、ルビアの?」

俺は困惑した。

もしこれがルビアの炎だった場合、

ルビアが戦闘をしているということになる。

しかも、ルビアは炎熱龍皇イフリートをちゃんと制御しきれていない為下手をすればここ一体が吹っ飛ぶ。

「急がないと、ルビアが危ない!」

俺は先を急いだ。

途中に黒くなった物があった気がしたが気にしないで走る。

そして、体感的にそろそろ、校舎の端についてしまうと思った時にまたしても炎が飛んでくる。

「邪魔だ!」

俺はそれをさっきと同じ手順で無力化する。

しかし、次の瞬間に俺は弾かれた。

「、、、、ッ!」

炎ではない何か

「く、、、、、ッ!」

俺は弾かれた勢いのまま廊下を後ろに後退する。

俺はその攻撃に驚きつつ戦闘態勢に入る。

黒龍丸を構え相手の方を向く。

次の瞬間、俺は言葉を失った。

「な、、、、、、、!」

俺の視線の先にいたのは俺が探していたルビア張本人だったのだ。

俺は異常な状況に思考が停止していると、ルビアが、、、

「、、、、煉獄天災インフェルノディザスター、、、、」

まるで感情のこもっていない声で技を言う。

すると、炎熱龍皇イフリートの刃先に太陽を固めたようなエネルギーの塊が生まれる。

流石に俺もその状況で固まっていたわけではない。

「、、、うっそ!」

その言葉と同時にその熱量に塊が俺に投擲させる。

「、、、、く、、、、ッ!」

俺に当たるまで後10秒と言ったところか、

今から術式を展開するのは間に合わない。

しかも、俺が瞬時に使えるのは基礎3属位なので結局無理があるのだが、、、

そんな事を考えながら今の現実逃避をやめ、黒龍丸を振り抜く。

しかし、さっきまでの攻撃と違い相手の攻撃にも若干の抵抗が生まれる。

「く、、、、、、、!」

俺は苦痛の声を上げた。

それもそうだ、刀のリーチ上、

俺は今ルビアの炎を受け止めてはいるがそれ自体が発する熱量防げていないのである。

要するに今俺の体の前部分がグリルされていると例えたほうが良いだろう。

「せぇーーーーーーーのッ!」

俺は気合の声を入れて刀を振り切る。

すると、みるみる炎が虚空に消えていく。

「ハア、ハア、ハア、、、」

俺は切らした息を整えながらルビアの方を見る。

見た限りだがアイツは本物だ。

誰かが変装してるとか俺の幻影虚歩の様に光を歪めているとかではない。

アイツは俺が知っているルビアだと確信した。

すると、そのルビアの背後に何者かがいる。

見ると、それは俺によく好戦的だった黒コートの男であった。

「待っていたよ、、、九条龍翔くん」

そう言って俺に微笑みかける。

いや、、、それよりも、

「待っていた、なんで?」

俺はそっちのほうが気になった。

理由は2つ。

1つ目は絶対にルビアがこうなったのはコイツの仕業だから。

2つ目、確証はないがこいつ正体が分かったかもしれないから。

だが、それを考える前に男言った。

「ルビアくんの掌握は完了したあとは君だけだ」

そう言って俺を指差す。

俺はその言葉に怒りを覚えた。

全身から自分でもわかるほどの殺意と怒気が溢れ出る。

「てめぇ、だけは許さねぇ!」

次の瞬間俺は床を蹴っていた。

相手の首に刃が当たる瞬間に下からの攻撃で刃が首を通り過ぎる。

「くそ、、、ッ!」

俺は攻撃が当たらないと判断した途端に後ろに下がった。

しかし、ルビアが俺に合わせて前に前進し追い打ちをかけてくる。

「ちょ、おま、危ねぇ!?」

俺は戸惑いつつもルビアの攻撃を受け流す。

しかし、いくら今凌げていても限界は来る。

しかも、ルビアのこの状態がこのまま続くと魔力が空になって死んでしまう。

魔力が空になった状態の事を損失ロストと呼ばれる状態に陥ってしまう。

その状態のままでも一応魔術は放てるがその状態を長時間維持すると死亡する。

今のルビアを見るに、本来の魔力総量キャパシティ以上の魔力を使って炎熱龍皇の能力を行使しているのがわかる。

額にはあり得ないほどの汗が吹き出しており、顔面も蒼白になっている。

俺は怪我覚悟でルビアの懐に飛び込む。

「、、、、、、、ッ!」

ルビアは初めてこの瞬間に驚愕の表情を浮かべた。

しかし、いつもよりルビアの反応が数段階上だった。

咄嗟に紅龍刃の柄を使って俺の黒龍丸の刃を受ける。

だが、それで良い。

俺の目的はルビアに近づくことだったからだ。

「ルビア、ルビア目を覚ませ!」

俺は必死に呼びかける。

しかし、ルビアの記録濁った瞳に反応はない。

それどころか、俺とルビアの間に炎が出現し俺は一旦距離を取る。

俺はルビアの挙動を見逃さない様にしつつも俺は思考をフル回転させる。

何故、ルビアがこのような状態になってしまったのだろう?

一見、この状況だとルビアが寝返ったと見えるかも知れないが、今のルビアは夢に囚われていると言ったほうが良いだろう。

そして、俺はその効果を持つDADシステムを知っている。

夢乱邪想ナイトメア、、、」

俺はそっと呟いた。

それは、相手が一定の精神状態の時に使用できる精神制御能力。

元々軍上層部が開発をしていたはずだが、確かなんかトラブったらしく開発が中断されたらしい。

だが、驚くべきはそこじゃない。

問題は、、、

しかし、そんな思考も直ぐに半ば強制的に停止させられた。

ルビアが切りかかって来たのだ。

「うお!、、、、危ねぇ!」

俺は咄嗟に横に避けて回避する。

「、、、、、、、、、、、、」

ルビアはずっと無言である。

だが俺はその表情を見て覚悟を決めた。

俺は膝たちから立ち上がり、、、

「、、、、前に言ってたよな?

ルビア、、、、」

俺が問いかけてもその本人は何も言わない。

「全力でかかってきなさい、、、

だっけか、、、?」

俺はそれでも話を止めない。

「だったら、、、今見せてやる」

そう言って、俺は黒龍丸の柄を握り直す。

そして、俺は精一杯の大声で、、、

「俺の、、、九条龍翔の全力を!」

俺は大声で宣言する。

その瞬間に俺の頭に言葉が流れてくる。

「我は、、、願う、、、」

その言葉になんの意味があるか分からないがだが、これだけはわかる。

「世界を破滅へと導く暴龍よ、」

その言葉に俺はいつしか自身の魔力が高まっているのを感じる。

「汝は、我が剣、、、」

嗚呼、そうだ。

「 顕現せよ!」

なんで忘れていたんだろう?

長らく使ってきた相棒コイツの名前を、、、

破滅龍皇バハムート!!」

俺は高らかにその名を呼ぶ。

すると、次の瞬間俺を中心に魔力の渦が構成される。

そして、俺はもう一つの相棒の名を叫ぶ。

龍王装セフィロトアイン

俺がそう言うと、体が淡くひかり純黒のコートになる。

しかし、驚きはない。

それどころか俺はこの姿になった途端に、まるでそれが本来のあるべき姿になったかのように体に馴染んだ。

そして俺は、、、

「龍皇の目!」

思考が数段階クロックアップする。

「覚悟はいいか?ルビア」

相手は何も言わない。

しかし、俺のこの気持ちが少しばかり、相手に届いたのか少しだけ後ろに下がった。

「お前の罪も俺の罪も纏めて俺が断罪する!」

俺は勢いよく地を蹴った。


ココはドコダロウ?

私は、ナンデ、、、ここに、居るのダロウ?

私は霞む思考を必死に動かしながら考える。

しかし、思考は霞む一方で何も考えられない。

この空間で私は何をしていたのだろう。

それだけが私の思考を捕らえている。

その考えに至った瞬間。

私にどこからか記憶が流れ込んできた。

それは、私の昔の記憶。

私が彼に初めて会った記憶。

あれ、、、?

何故かそこだけ思い出せない。

そこだけぽっかりと穴が空いている感じ、

そこで、私はその彼に合う前の記憶を思い出す。

私が心を閉ざしていた時の記憶を、、、

私は誰からも相手にされずしまいには嘲笑や侮蔑までされた。

そのことから私は他人との接触を断って孤独に生きていた。

そして私が次に目を覚ましたのは医療用ベッドの上だった。

私は困惑していた。

何故なら、知らない人たちが私の体に様々な機械を貼り付けていたのだ。

今だから分かる心電図解析の電極や点滴等の機械が大半だったが、そのなかでも一際目立っていたのは赤い水晶を中に搭載している謎の機械だった。

なぜかの水晶にだけきれいという感情が浮かんだ。

まるで、

しかし、その頃の私にそれに逆らう力も無く、ただただなすがままになっていた。

だが、次の瞬間現場は騒然とした。

急に、赤いランプが点灯し突然のアナウンス鳴った。

「Bフロアの防壁が突破されました魔術師の人は至急現場に向かってください」

それを聞いた私は何も思わなかったが

辺りにいた大人の人たちが慌てふためいていた。

その人達の言葉に耳を傾けると、、、

「被験体001番は、、、、、」

「こいつだけでも、、、、、」

「だが、、、、、、だから、、、、」

と、とぎれとぎれだが言葉を聞いた。

しかし、数分の内に大人の人は私を置いていなくなってしまった。

そこで私は、ベッドから起きて部屋を出ていった。

そこで、目に入った綺麗な赤い水晶を持って部屋の扉に向かった。

部屋の扉を開けると、そこは見るものをすべてを飲み込むほどの血の匂いと無残に切られた死体であった。

「ひ、、、、、、ッ!」

私は、悲鳴を上げかけたがそこで口を押さえる。

まだ、この人を殺した殺人者がいるかもしれないと幼いながらに考えたからだ。

耳を澄ませてみると奥の部屋から人の声がした。

物陰からそっと見ると、そこにいたのは黒い外套を纏っている私と同じくらいの少年だった。

その少年にはべっとりと血糊が付いており、私は戦慄した。

彼がこの人たちを殺した。

その事実だけが私の心を打った。

だが、そんな考えもすぐに消えた。

少年の目には後悔と懺悔の念が見えた。

その目を見た途端に私は心が震えた。

そして、私は彼は殺しをしたくて殺しているのでは無いと直感的に悟った。

しかし、頭では分かっていても体が震えてしまう。

私が震えながら立ち止まっていると、

少年が私の方に歩いてきた。

私は動こうとしたが足がすくんでしまい、動けない。

殺されてしまうと思い震えていると、、、

「大丈夫か、、、、、?」

少年が聞いてきた。

私は、恐怖で震えた声で、返事をする。

それに少年は満足したらしく私に背を向け歩いていく。

「あ、あの、、、、!」

私はいつの間にか声を上げていた。

その声に少年は足を止める。

しかし、その後が何故か思い出せない。

私が何かを言って、少年が少し考えて私に向かって何かを言う。

そこで、私の視点は突然揺らぐ。

正確に言うと場面が変わったと言ったほうがいいだろう。

そこは、元いた真っ暗の場所だった。

その瞬間。

私の中に負の感情が溢れ出てくる。

その感情を一言で表現するなら、、、

孤独、、、

様々な孤独の感情が私の頭に流れ込んでくる。

[なんで?なんで、私を置いてくの?]

[やめろ、俺の家族を奪わないでくれ]

[私の生きている意味ってなんだろう?]

たくさんの人の孤独という感情が頭の中をミキサーのようにかき混ぜる。

「い、、、いや、、、いや、、、ッ!」

私は声を上げ耳を塞ぐ。

しかし、それでも様々な人の声が聞こえる。

[なんで君は一人じゃないの、、、?]

子供のような声が私のことを言う。

すると、次々と私の足を掴んでくる。

まるで、自分達と同じにしようとするように、、、

そして、私は感情の波に飲まれた。

でも私は諦めず黒くヘドロのような感情の波から抜けようとする。

しかし、その何故か抜け出せないそれどころか更に深く沈んでいく。

「助けて、、、助けて、、、ッ!」

私はただただ、願う事しかできなかった。


俺はルビアと対峙してある変化に気づいた。

ルビアの白い頬に一筋の涙が光ったからだ。

俺はそれを見た途端に歯を食いしばった。

大切な人ぐらい守れなくて何が罪だ、

自分の言葉くらい有言実行できなきゃ駄目だろう、、、ッ!

焦りと自己嫌悪が俺の頭を掠り呼吸が乱れる。

俺は考えた、どうすればルビアを傷付けずに助ける事ができるか、

その時俺の頭にある1つの迷案めいあんが浮かんだ。

しかし、これにはそれなりのリスクがあるし第一にルビアもこれは本望では無いはずだ。

などと考えていると、、、

「りゅう、、、、と、、、」

ルビアの口から俺の名前が飛び出した。

俺はその事に驚きつつ改めてルビアの意識は完全には乗っ取られていないと事実確認が出来た。

「、、、やるしかないか、、、」

俺は覚悟を決めた。

そして、黒龍丸改め破滅龍皇バハムートを握る。

「すまんな、破滅龍皇相棒

少し荒っぽいかとするぞ、、、!」

俺はそう言って再び前進した。

ルビアが俺に向かって鎌を振るう。

それを俺は破滅龍皇の刃を使って受け流す。

刃と刃の接触面に火花が散る。

俺はこの時を待っていたというようにニヤッと笑う。

次の瞬間、俺は無数に分裂する。

幻影虚歩ファントムステップ、、、ッ!」

俺は過度な魔術行使で、限界の体に更に負荷をかけるように技を使う。

俺自体も限界が近いがそれはルビアも同じことである。

だったら、男である俺が先に倒れてどうする!

俺は歯を食いしばって走る。

あと、数歩。

しかし、ルビアも馬鹿ではない。

煉獄護炎インフェルノガード、、、」

瞬間、俺の視界が真っ赤に染まる。

分身体が何も感じないままに次々と蒸発していく。

俺もこのままでは分身体と同じように炎に身を焼かれ肉片すら残らないだろう。

だが、、、

「、、、前に、、、出ろ、、ッ!」

俺は炎に突っ込む。

全身に生を否定する灼熱感が広がるが魔力を全身に流す身体能力強化の魔術で外皮だけ強化し、更に破滅龍皇の効果で痛みという概念と自身が触れている熱という概念を「破滅」させるすると、幾らか痛みと灼熱感は和らいだ。

だが破滅龍皇バハムートの効果は同じランクのDADシステムには効きづらいという欠点がある。

そのため、このままでは炎熱龍皇イフリートの能力が勝ってしまうので一時しのぎにしかならない。

だから、俺は止まらずに走り続ける。

あと少し、あと少しでルビアに手が届く。

しかし、、、

「、、、、、、、、」

ルビアが鎌を振って俺を切裂こうとするそれは俺の行動を読んだ上での攻撃で軌道的に避けられない。

しかし、俺はもう一つの技、

奥の手を使う。

「龍皇の目、限界開放リミットブレイク、、、ッ!」

もともと使っていた龍王の目の効果がさらに増大する。

思考が更に数段階クロックアップし同時に脳内に無数の予測が出現する。

もちろん、本来の龍皇の目にこんな効果はない。

しかし、だからと言って先程までの状態ではこの現状を回避することはできない。

そこで俺は一時的に、自身の体の限界という概念を「破滅」させておいたのだ。

もちろん、その代償に体に過剰な負担が掛かり、内蔵の至る所が損傷し、骨という骨がビキビキと悲鳴を上げる。

だが、これでルビアには届く!

龍皇の目の効果でモノクロになった世界で俺はルビアだけを視覚に捉える。

「 、、、、、、、ッ!」

そこで初めてルビアがわかる反応を示した。

俺はルビアに接近して破滅龍皇バハムートを手放し、

炎熱龍皇イフリートを持っている右手を抑えながら抱きしめたら折れてしまいそうな細い体に手を回し、意を決して桜色の唇に自身の唇を重ねた。


感情に飲まれ、目の前が真っ暗になって思考が沈んで行くときになにか温かいものを感じた。

それは、何だろうと思い目の前に来た光を手にとって見る。

すると、その暖かさの理由が分かった。

これは、優しさという暖かさだ。

その光に触れた途端に辺りの孤独が消えていった。

すると、私の頭上から声が聞こえる。

一瞬先程の惨状を思い出し身構えてしまうがその声は耳馴染みがあった。

そう、どこか嬉しそうでどこか悲しそうな声、、、

そして、記憶にかかっていた靄が晴れて私は今まで思い出せなかった人物の名を呼ぶ。

「龍翔!」

その声はどんどん大きく鮮明になっていき一瞬視界が光に満たされる。

すると、急激な浮遊感に襲われ急速に意識が現実に引き戻される。

「う、うん、、、、、」

目が覚めると、腰のあたりと口の辺りに何か触れている感触

恐る恐る目を開けると最初に目に入ったのは龍翔の顔だった。

「、、、、、ッ!?」

私の思考がフリーズした。

目の前に顔があり唇に微かに感触がある。

それらの情報を推測するに、今私は、!?

私はその断片的な情報を元に今の現状を理解する。

とりあえず、一回離れたいと思い龍翔の背中を叩く。

「、、、ん、、、、」

龍翔はその反応に気づき、私の体を離す。

私はさっきまでの状態に若干頬が紅くなりつつ、状況を聞こうとする。

「あの、、、龍翔?

今どういう、、、」

状況と、聞こうとした途端に龍翔が動いた。

「シ、、、、、ッ!」

私の肩を掴んで後ろに引っ張り右手の刀で何かを切払う。

「え、、、、?」

私は驚いた。

今、龍翔には前など比べ物にならないほどに魔力を内包している。

そして、私が炎熱龍皇の力を開放して何とか蒸発させた剣を意図も簡単に切り返したのだ。

「ルビア、、、」

「ひゃ、ひゃい!」

私は現状を理解できていない状態で名前を呼ばれた為、変な声が出てしまった。

そんな私を見て龍翔は苦笑しつつ、

更に言葉を言ってくる。

「動けそうか?」

私の耳の近くでそっと囁く。

私はその言葉に首を横に振った。

「多分無理、魔力切れが酷すぎてこの状態がやっと、、、」

私は本音を言う。

もちろん私もそうだが龍翔自身も限界が近いはずだ。

体の所々に火傷や裂傷、打撲などに傷があり、更には右眼からは真っ赤な地が出ている。

龍翔は、その私の思考を読んだのか知らないが、

「ああ、俺に関しては大丈夫、、、」

と言ってきた。

すると、急に私を横抱きに抱える。

「え、ちょっと、え、、、!?」

私はまた驚きの声を上げつつ龍翔の顔を見る。

「すまん、少しの間耐えてくれ、、」

私に向かってそう言う。

「龍翔の足手まといにはなりたく無いのよ!」

私は必死に降りようともがくが、それを龍翔は手で静止する。

「少し待ってろ、すぐ終わる、、、」

しかし、そう言われても私は心配で堪らなかった。

「降ろして、、、、」

「嫌だ、、、、」

私の言葉を聞いて龍翔がすぐに言い返してくる。

「降ろしてよ、、、」

「嫌だ、、、、」

私はその回答に少しムスッとし、

「あなたの邪魔になりたくないから

降ろして!」

と少し強めに言ってしまう。

すると、龍翔が、、、

「お前が大切だから降ろさない!」

すごい形相でそんなことを言われる。

そんな不意打ち食らった私は頬が更に赤くなる気がした。

「な、あ、あんた何言って、、、」

すると龍翔も今言った言葉に今更ながらものすごい恥ずかしいことを言ったと気づいたのだろう。

「頼む、、、少しで良いじっとしてくれ、、、」

龍翔は続けて静かにどこか恥ずかしそうに言う

私はその言葉を聞いて頷くことしかできなかった。

すると、相手が空気を読んでいたように話し始めた。

「なるほど、、、

唇での物理的接触によって感情を流しなおかつそこからそのDADシステムの能力を使って私の夢乱邪想ナイトメアを無力化するとはな、、、」

男がそう言って龍翔に拍手を送った。

しかし、龍翔はあいつを睨みながら言った。

「ありがとよ、、、それといい加減芝居も終わりにしようぜ、、、」

その後の言葉に私は驚愕した。

「エリック、、、」

すると、男がフードをとり、出てきた顔は私の知っている人物だった。

「エリック、、、どうして、、、?」

私はこの事実に声が震える。

すると、

黒コートの男改めエリックが、

「お久しぶりですね、、、ルビア様」

そう言ってニヤッと不気味に笑った。


「お久しぶりですね、、、ルビア様」

エリックがそう言って、不気味に笑う。

そして、俺を見てエリックが聞いてくる。

「一つ聞きたい、、、龍翔少年。

何故、私と分かった?」

その問いに俺は素直に答えることにした。

「疑問に思ったのはお前が初めて俺を襲った時の事だ、、、お前はその時に複合魔竜キマイラのDADシステムを持っていたな?」

そう、今思えばそれが全ての始まりだった。

元々複合魔竜のDADシステムは軍が独自に設計開発し試作された物だ。

コンセプトは、完璧を求めた贋作。

DADシステムを通してありとあらゆるものを吸収し複製する。

しかし、欠点がいくつもあるうえコピーした能力が少し弱体化されるので、

その為試作品段階で研究が終わった欠陥品である。

その欠点の一つが、、、

DADシステムとの融合。

一見してDADシステムを使用する際には自身と龍が融合しているように見えて実は違う。

龍とそれを扱う人物の精神上には、

れっきとした精神境界線が存在する。

そして、その境界線が均等に保たれているとDADシステムの本来の力を使用できる。

しかし、一方が大幅に占領していると本来の力を使用できない。

軍の上層部は何血迷ったのかDADシステムの強化にはこの境界線が必要無しと判断された。

その為、この複合魔竜には、そもそも

それはつまり、使用するごとに龍に魂を染められるという事であり、

最悪の場合、、、

完全に龍に意識を乗っ取られる。

それも前の体育館でのルビアが1だとすると複合魔竜キマイラの場合8とか7くらいの危なさである。

そもそも自身の人格自体が龍に飲まれるのだ。

こんな欠陥を軍のエンジニア達も危惧し必死に直そうと努力したらしいが結果は失敗に終わった。

そのことから1度目の襲撃で複合魔竜と予測できた訳である。

それを聞いてエリックは、、、

「、、、なるほど、、、

失敗したな、、、あそこで君を殺れなかったのは痛い。

しかし、

それだけではないのだろう?」

「ああ、それとあと一つ、、、」

俺はその可能性が確証に変わったことを言う。

「俺が入院してるとき、昔の同僚が持ってきてくれた資料があった。

その中に一つ引っかかることがあってね、、、」

俺がエリックの一撃を受け止め病院送りにされたとき、薫が持ってきてくれた資料の中に1つだけ違和感のあるものがあった。

それは、、、

炎熱龍皇イフリート計画。

そう書いてあった資料にはこう書いてあった。

被験体001

ルビア・フォンス・クレセント

実験結果 良好

適合率 98%

この被験体は他に比べて高い適性を有している。

そのため、彼女はこの施設を移り、

クレセント王国に、輸送する。

それを見て俺は歯を食いしばった。

これはつまりルビアが何かの実験に使われていたと言う事である。

その事実に俺は心の底からその実験の参加者を憎んだ。

何とかその感情を心の中に留め次のページをめくる。

被験体002

エリック・ロード・シュトリーネ

実験結果 改善の余地あり

適合率 0%

担当研究員から一言。

「この被験体は、炎熱龍皇イフリートとの適合は不可能である。

よって、サブプランの方に権利を譲渡する。」

そして、次のページには複合魔竜キマイラに研究の内容が入っていた。

そこから、俺の考えが事実だと知ったのだ。

「それが、、、お前の正体に確証を持ったんだ、、、」

そう言って俺は相手を改めて見る。

見た感じ異常なところがないが、

しかし、あの異常な魔力量を見るに半ば龍に取り込まれているのだろう。

「流石だ、、、龍翔少年。

その考えは半ば正しい、、、」

そう言って両手を広げる。

「それこそ、我らの目的。

世界を今一度リセットし、龍皇を

降臨させる、、、」

そして、ルビアを指差す。

「そのために、、、

彼女が必要なのだよ、、、

さあ、彼女を渡してもらおうか?」

しかし、俺はルビアを更に力強く抱きしめこう言う。

「 やだね、、、ッ!」

俺はすぐにはっきりと断った。

すると、その言葉に驚いたのかそれとも早さに驚いたのかエリックが固まる。

俺はそれを見てエリックに剣を向ける。

その行動を見てエリックが、、、

「君は、一度私の敗れているのを忘れたのかね、、、?」

その挑発的な言葉に俺はさらに挑発的な言葉を重ねる。

「一度負けたからって2回負けるとは限らないだろ、、、

日本には三度目の正直ってことわざがあるんだぜ、、、」

「2度あることは3度あると言うことわざもあるがな、、、

まあ、私の言うことを聞かないのなら、、、」

エリックが少しだけ間を開け、、、

「死んでもらおう!」

無数の剣が出現する。

「いけ、、、」

エリックが複合魔竜を振ると、それらが俺に向かって飛翔する。

「ルビア、しっかり捕まってろよッ!」

「え、、、う、うん!」

そして、俺は全力で疾走する。

視界が一瞬にして切り替わり、無数の剣が俺に肉薄する。

「きゃあああぁぁぁぁぁぁ!」

ルビアの悲鳴が甲高く響くがそれを無視して俺はさらに加速する。

龍皇の目の発動時間はあと数分。

それまでに決着をつけなければいけない。

そもそも、体力や魔力的に今の俺には長期戦は無理だ。

なら、俺に勝機のある作戦は一つ。

一撃で仕留めるしかない!

俺は予測する。

しかし龍皇の目の過剰発動で目から出血し視界が半分だけ赤く染まる。

「う、、、おおおおおおおぉぉぉぉ!」

雄叫びを上げ、己を鼓舞する。

無数の死が俺にのし掛かる。

しかし、俺の腕の中で必死にしがみついているルビアの温もりを胸にその死の未来を押し退ける。

俺には生きる理由がある。

守りたいものがある。

その為なら、、、

「俺は、俺は、、、戦う!」

「あヒャヒャヒャヒャヒャ!」

高笑いが俺の耳に届く。

見ると、もはや人間とは言えない形状をしていた。

そして、皮膚の所々に龍燐現れている。

完全に飲み込まれたのだろう。

しかし、俺にはどこかその声に悲しみが滲み出ている気がした。

「、、、、、、、ッ!」

俺はその声を聞いた歯を食いしばった。

その声が含んでいる感情に共感できたからだ。

あいつも心にどこかではルビアを手に掛けること望んでいない筈だ。

だから、俺に託したんだ。

自分の意思をあいつが自分でいるうちに、、、

「お前の思いこの俺が引き継ぐ!」

俺は、はしる、はしる、疾走はしる。

無数の剣が俺の行く手を阻むがそんなのは関係ない。

全てを避け弾き投げ返す。

するとエリックとの距離がみるみる縮まる。

そこで、俺は不思議な感覚に陥った。

気づけば俺は見知らぬ空間にいた。

俺と反対側の位置に人が立っている。

「お前は、、、人の命を背負えるのか?」

その人物は聞いてくる。

「、、、、、、、、、、」

俺はしばし無言になる。

命、、、、

それは一見重そうに見えて実は軽い。

この非情な現実では命は春のタンポポのように一息吹くだけで飛んで行ってしまう。

だが、それでも、、、

いや、それだからこそ、、

「俺は、、、背負い続ける。

過去とか関係ない。

俺が俺としている為に俺は剣を取る」

俺はそう宣言する。

すると、俺の前の人物は少し笑った気がした。

「変わらないね、、、

過去まえ未来いまも、、、」

そう言ってその人物は後ろに下がっていく。

「、、、、、、、、、」

俺はその姿をただ、見る事しかできなかった。

「、、、、ッ!」

気づくと俺はいつの間にか元に戻っていた。

無数の剣が俺に迫る。

しかし、俺の覚悟はもう決まっている。

俺は守る。

大切な人を場所を気持ちを。

そして、ついに視界が開ける。

エリックの目の前に到着する。

俺は、ルビアを抱えている左手ではなく右手でしかも拳をエリックの顔面にねじ込む。

「お、、、らあああああぁぁぁぁ!」

俺の拳が顔面の中心を捉えエリックは回転しながら教室の壁に向かって飛んでいく。

「ぐ、、、、、、、、、ッ!」

エリックの体が壁にめり込む、しかし、あいつは倒れない。

「よもや、、、これほどとは、

流石に今の一撃は想定外だった、、」

そう言いつつ、口から垂れた血を手で拭う。

正直に言っていまので限界を迎えてしまった。

だが、あいつが立っているのなら、

俺が倒れるわけにはいかない。

心の中で自分に発破をかける。

そして、抱いていたルビアを降ろす。

「龍翔、、、?」

ルビアが困惑の表情で俺を見上げる。

俺は、ニッと笑いかけて、エリックに向き直る。

もはや、エリックの姿は人間のそれではない。

目は血走っており、髪の毛も先程までとは一転して黒く染まっている。

俺のような黒髪ではない。

そこだけ空間が切り取られたような色だった。

俺はそれを見て悔しさのあまり唇を噛んだ。

エリックはそんな俺を見て、

「どうした、龍翔少年?

もう終わりか?

まだまだ、戦いはここからだろう?」

そう言ってエリックは俺を見て不敵に笑う。

龍に乗っ取られたせいで随分と好戦的になったようだ。

だが、俺はそんなエリックを見て、

「もう、、、終わりにしよう、、、」

その一言だけを言う。

すると、、、

「では、この一撃を食らってもらおうか!」

そして、エリックの剣に膨大な魔力が集まっているのがわかる。

俺は瞬間でこれを生身で受けたらひとたまりもないだろうと理解する。

俺はそう考え、破滅龍皇バハムートになけなしの魔力を集める。

刀身が更に深く濃い黒に染まる。

魔力が破滅龍皇バハムートの刀身を巨大化させる。

俺は若干安堵しながら更に魔力を貯める。

俺は思った、あるいは願ったのかも知れない。

自分らしくいれるためにこの剣を使うと、だから、俺は諦めない。

最後までアイツを救う手立てを考える。

「「、、、、、、、」」

世界が静寂に包まれる。

どちらも最後の一撃。

先に放つと避けられる可能性がある。

膨大な密度と濃度の魔力がせめぎ合い

教室がギシギシと軋む。

すると、先程までの戦闘で崩壊寸前だった、置いてあった机が魔力の密度に耐えかね自壊した。

「「、、、ッ!」」

それが合図となり二人同時に武器を振るう。

邪龍双戦バイティング・ストライク!」

エリックがそう言うと、複合魔竜キマイラから無数に影が出現しそれが龍の形をとって俺に襲いかかる。

しかし、俺に迷いはない。

この一撃に、、、俺の全てを!

最後エンド・断罪剣ジャッジメント、、、ッ!」

俺が剣を振ると魔力で出来た巨大な刃が龍の形を取る。

無数の邪竜と唯一無二の破滅の龍。

強大な力と力の衝突によって、

とてつもない衝撃が起こる。

だがここで引いてしまうと、ギリギリを拮抗しているこの攻撃が負けてしまう。

「う、、、おおおおおおおぉぉぉぉぉ、、、ッ!」

俺は雄叫びを上げる。

すると、魔力の塊に隠れたエリックの顔が少しだけ、ほんの少しだけ笑った気がした。

その時点で勝負がついた。

エリックの邪竜双戦バイティング・ストライクの威力が少し弱まり、俺の最後エンド・断罪剣ジャッジメントがエリックを穿つ。

とてつもない魔力の奔流に飲まれたエリックの体は羽根のように軽々しく飛ばされた。

ドサッ、、、

エリックの体が地面に着地する。

少しの間静寂が生まれるがそれを切り裂いたのは、、、

「エリック!」

ルビアの彼を呼ぶ声だった。

ルビアはすぐにエリックの元に駆け寄って、しゃがみ込み身体の状態を確認する。

「エリック、エリック、、、ッ!

しっかりして、まだ助かる!」

ルビアは咄嗟に治癒の魔術を使おうとするが本人に止められた。

「どうして、、、?

エリック、、、

なんで止めるの、、、?」

エリックは倒れたまま言った。

「私は、、、もう駄目です。

お嬢様、、、」

先程までとは一転した弱々しい声で言う。

「身体は大きな怪我をしてないんだよ?

まだ、諦めないで、、、ッ!」

ルビアは必死に生かそうとするが俺にはエリックがここまで言う理由が分かっていた。

「、、、、、、ルビア、、、、、、、

もう、無理だ、、、」

俺は歯を食いしばりながら言う。

すると、ルビアはこちらを見て、、、

「龍翔、、、お願い。

エリックを助けてあげて、、、」

しかし、俺はその願いに首を横に振る。

「、、、なんで、、、?

なんでなの、、?

なんでなの龍翔、、、?」

俺はその問いに無慈悲な現実を言う。

複合魔竜キマイラの代償は、

自我を乗っ取られるだけじゃない。

最後にして最大の代償、、、

それは、、、」

俺はその後の言葉をどうしても言えなかった。

そこで、以外にも俺の言葉を引き継いだのは、、、エリック張本人であった。

「、、、ありがとう、、、龍翔少年。

私が、、、引き継ごう、、、

複合魔竜キマイラの代償、、、、それは、寿

それが、、、、

この複合魔竜キマイラと言う、、、禁忌の物を使用した代償です、、、」

そう、複合魔竜が廃棄された原因はそれだった。

使用者は遅かれ早かれ

行使した魔術に応じてその減り具合は多少変わるが、ここまで膨大な量の魔術を行使したら、人の寿命なんてあっさり尽きてしまう。

だが、奴はそれを知っていて俺と戦ったのだ。

「だったら、龍翔のシステムの能力を使ってそれを壊せば、、、」

確かに、そうすればエリックの龍だけを殺す事もできる。

でも、俺は、、、

「、、、ごめん、、、ルビア、、、

破滅龍皇バハムートの能力は、

その事象全てに干渉してしまうんだ。

それはつまり、、、

エリックの魂までも破壊しかねない」

しかしそれは理由の半分でしかない。

俺の破滅龍皇の能力を使ってエリックを複合魔竜キマイラと分断させたとしても、、、

寿

つまり、、、

もうエリック自体の寿命が無い。

つまり、この状態を打開する策は、、

無い、、、。

「すまない、、、エリック、、、

俺の力が足りないばかりに、、、」

俺はいつの間にか苦の言葉を吐いていた。

しかし、エリックは、、、

「何を言っているんだ、、、

龍翔少年?

、、、、君のおかげで、、、

私は今こうして話すことができているんだ、、、

君には、、、感謝しかないよ、、、」

「でも、最後に、、、お前を救えない!

それじゃあ、意味ないだろ!」

俺はエリックに言う何かのしてほしいことは無いかと。

そこで、エリックは考え言った。

「君の、、、手で、、、私を終わらしてくれ、、、

それが、、、、、

私の最後の願いだ、、、」

彼は最後に俺に向かって笑いかける。

「君には、、、大変な、、、困難が、

これから、、、、、起こるだろう、、

でも、きっと、、、君達なら、、、

乗り越えられる、、、

私は、、、そう信じている、、、」

「それは、、、どういう、、、」

俺はその言葉の意味が分からなかった。

俺はそれを聞こうとしたがエリックは笑っているだけだ。

「大丈夫、、、自分を信じて、、、」

そして、エリックの目から光が失われる。

「エリック、エリック!!

エリック、、、ッ!」

ルビアの悲痛な叫び声が教室の木霊した。

少しの間、ルビアの泣き声だけが空間に広がる。

しかし、それも長くは続かなかった。

「、、、、、ッ!」

突然、校舎が揺れた。

すると、俺のズボンのポケットから振動と音が響く。

見るとそれは外部からの着信だった。

そして、忘れていたがここに来る前にある事を頼んでいた人物がいた。

俺は、携帯を操作して通話を始める。

「、、、ッ!、、、やっと、繋がった。

おい、龍翔大丈夫か!?」

電話に出ると、薫の心配する声が聞こえた。

俺はその声に安堵しつつ返答する。

「ああ、何とかなそっちはどうだ?」

俺は至極普通に現場の状況を聞く。

しかし、俺の言葉を聞いた途端に薫が

画面越しでも息を飲んだのがわかった。

「、、、実は、、、今やばい状況なんだよ、、、」

その声に一切の余裕もなく声だけで油断のない状況だと一瞬で理解する。

「どうした?

一応俺がこの事件の主犯格と思われる奴を倒したが、、、」

すると、薫が重大な事実を言った。

「お前が、侵入して数十分したあと、

急に莫大な魔力の動きを感知したんだ。

それをこっちで解析したら、、、

その魔術が外行魔術だった。

しかも、災害クラスの、、、」

「はぁ!?」

俺は自分の耳を疑った。

災害クラス、、、

それは、発動するだけで街一つが滅びる可能性がある魔術だ。

それがここに設置されているという事はまさか、、、

「奴らは、仲間ごとこの街を吹き飛ばす予定だったてことか!?」

俺はそれにさらなる驚きを覚える。

「そうだ、、、すまない龍翔、

ここからじゃ、方陣破壊が間に合わない。

頼む、お前が破壊してくれ、、、」

「んな、無茶苦茶な、、、」

「た、、、、、おま、、、、

こ、、、、破壊、、、、」

突然電波が通りづらくなる。

「おい!薫、、、」

「デー、、、は、送信、、、、る。

あと、、、せた」

そして、電波が途切れてしまう。

「薫、、、薫!」

必死に呼びかけるが画面は沈黙を突き通す。

すると、突然電話が震える。

見ると、それは術式の弱点と破壊方法だった。

そして、術式発動地点は、、、

ここ。

「まじ、、、?」

俺は足元を見ようとした次の瞬間。

さっきの揺れたは比べものにならない強い揺れが起こる。

「うお、、、ッ!」

「きゃ、、、ッ!」

俺とルビアはほぼ同時に床に倒れる。

すると、ちょうどエリックが倒れている部分の床にヒビが走る。

しかも、そこにはさっきまでエリックのことで泣いていたルビアがいた。

「クッソ、、、、ッ!」

俺はもうとっくに限界を迎えた体にムチを打ち無理矢理身体強化の魔術を発動する。

「イ、、、、ッ!」

魔力を通すと同時に体に激痛が走り顔を顰める。

しかし、ここで倒れては意味がない。

俺は意識を半ば強引に繋ぎ止め走る。

いつもより、強化の度合いが低いが今はそんな事はどうでもいい、、、

「間に合えぇぇぇぇぇ!」

俺は今日何回目かの雄叫びを上げる。

最も体力がなさ過ぎて雄叫びと言うにはいささか迫力に欠けたが、、、

「ルビア、、、、ッ!」

俺は床を蹴った勢いのまま、ルビアに手を伸ばす。

「、、、龍翔、、、ッ!」

ルビアも手を伸ばして俺はその手を掴み宙を蹴って離脱する。

「龍翔、、、ッ!

エリックも!」

ルビアは何としてもエリックを助けたいのだろう。

だが、現実は残酷だ。

「無理だ、、、ッ!

ただでさえ、お前持つだけで精一杯なのに二人は持てん!」

俺はそう言って一旦この教室を離れる。

そして、俺は走りながら後ろを振り返ると、、、

「な、、、、ッ!」

俺は絶句した。

さっきまで教室だって筈の場所にポッカリと穴が空いている。

だが、それは建物が無くなったわけではない。

むしろ、逆だ。

と言ったほうがいいだろう。

そして、俺はその現象自体を知っている。

「これって、、、まさか、

ゲート!?」

そう、それは正しくこの世界が魔術という神秘的な力を自覚し始めた元凶だった。

そして、変化はそれだけに留まらず更にゲートから白い物体が出てくる。

少し丸みを帯びている物体。

そう、まるで、、、

「卵、、、?」

ルビアが俺の思考を読みとったように言った。

しかし、それは卵と言うには禍々しい魔力を放っていた。

そこで、再び電話が鳴る。

俺は慌てて耳に電話の端末を当てる。

「もしもし、、、薫か、、、?」

俺はルビアを降ろし電話に話しかける。

しかし、返答の声には聞き覚えがなかった。

「りゅーくん、、、

今から言うことを実行して!」

声の音からして若い女の人だと分かるがそれは今どうでもいい、、、

「あんたは、、、誰だ、、、?」

俺はいつの間にかそんなことを聞いていた。

だが、、、

「私の事はいいから、、、

それよりも、、、今はその危機的状況を打破するのが最優先だよ!」

そう言って、話をそらしてくる。

俺はなんとなくだが深追いしないほうがいいと思った。

理由は、、、

「、、、分かった。

俺は何をすればいい?」

俺の率直な問いに驚かずに、

淡々と説明を始める。

「まず、、、あの卵だけど、、、

普通の攻撃はまず通らない。

君の破滅龍皇バハムートとルビアさんの炎熱龍皇イフリート以外はね、、、」

こいつさらっと俺とルビアが一緒にいる事を言ってくる。

しかし、いちいち突っ込んでいたら埒が明かないのでツッコまないでおく。

「けど、それが面倒でね。

三層構造結界で一層、三層は楽なんだけど問題は二層目なんだよね。

実際はりゅーくんの破滅龍皇でなんとかなっちゃうんだけど、、、

その二層だけ破滅龍皇の効力を受け付けないんだよねぇー、

まあ改善策はあるから、、、」

しかし、そこで言い淀む。

「お、おい、、、どうしたんだよ!?」

俺は急に声が途切れてので、

少し焦る、、、

「大丈夫、、、

ルビアさんの力も必要だから、、、

ごめん!

もう通話がきれ、、、、」

そう言って通話が突然切れる。

「おい、、、おい!」

俺は必死に呼びかけるが応答がない。

「マジかよ、、、」

俺は絶句しながらこの状況を何とかしようと考える。

しかし、今の俺にこの状況を打破する力がない。

龍皇の目も幻影虚歩ファントムステップも実際は戦闘的向きではない。

正直に言って初見殺しの技なのだ。

しかも、ここに来ての魔力不足なので

最後エンド・断罪剣ジャッジメントも中途半端な威力しか出ないだろう。

しかし、俺がやらなきゃいけない。

俺がやらなきゃ、俺の大切な街が人が消えてしまう。

「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

俺は呼吸を落ち着かせ体に更に無理を強いて魔力を集める。

「い、、、、ッ!」

さっきと同じ様な声を上げかけるが堪える。

流石に死ぬかもしれない、、、

そう思いながらも、俺は魔力を練るのを辞めない。

右眼の出血が更に悪化する。

そして、右眼だけではなく体中の至るところから血が吹き出す、、、

「龍翔、、、ッ!」

ルビアが俺のことを心配して駆け寄って来ようとするが俺はそれを右手で制止する。

「大丈夫だ、、、」

俺の声はいつもより自分でも分かるくらい覇気がなかった。

しかし、やるしかないか。

俺は、震える足を使って立ち上がる。

「、、、、、ッ!」

しかし、流石に無理が応えたのかバランスを崩してしまう。

だが、いつまで経っても地面にぶつからない。

むしろ、何か柔らかいものに支えられている気がする、、、

そして、薄っすらと目を開けてみるとルビアの横顔があった。

「ルビア、、、、?」

俺は戸惑ったこんな事をしている暇は無いのにこの時のルビアの顔には様々な想いが籠もっている。

「 私もやる、、、、」

ルビアは俺の顔を見てそう言った。

「駄目だ!

これは俺の不始末が原因なんだ。

この決着は俺がつける、、、」

俺は支えて貰いながらも立ち上がる。

しかし、そこで俺は袖を掴まれていることに気づく。

「、、、、、ルビア、、、」

「私も、、、やる」

ルビアが再びそんなことを言う。

「でも、、、、、、!?」

しかし、その後の言葉は続かなかった。

理由は、ルビアがキスをして俺の口を塞いだからだ、、、

俺は戸惑い固まってしまう。

そして、そっと唇を離したルビアは、

頬を赤らめながら、、、

「さっき仕返し、、、

少しは、落ち着いた?」

そう言って俺に向かって笑ってくる。

俺はその顔をポカンっと見ながら頭を掻く。

「、、、、ああ、ショック療法過ぎるけど一応な、、、よし!

一緒にやるぞ、ルビア、、、!!」

俺はルビアに手を伸ばす。

彼女は俺の手を見てそして俺の手を勢いよく握る。

俺はルビアを立ち上がらせて手を繋ぎながら、俺達は今脈動している。

破滅の卵に立ちはだかる。

「よう、、、待たせたな、、、」

相手はまだ生物として誕生していないのに俺は語りかける。

そこで、俺はやつが微弱ながら震えているのが分かった。

そして、理解した奴は本能的に俺たちを恐れている。

これなら、、、ッ!

「行くぞ、、、ルビア!」

「うん、、、、ッ!」

「来い、、、破滅龍皇バハムート!」

「来て、炎熱龍皇イフリート!」

紅と漆黒の竜巻が発生し俺たちを飲み込む。

さっきまで戦闘でボロボロだった龍王装が多少修復し魔力が若干高まるのを感じる。

そして、不思議なことが起こった。

顕現した破滅龍皇バハムート龍核結晶セフィラ炎熱龍皇イフリート龍核結晶セフィラが淡く輝き始める。

「これは、、、!?」

「え、、、どういう事!?」

俺とルビアが驚愕の声を上げるがそれを無視して更に明度は増す。

そして、気がつけばルビアの手にあった、炎熱龍皇イフリートが消えており、しかも俺の破滅龍皇バハムートがいつもの細身の刀ではなく、

一本の幅広な大剣になっている。

そして形状は炎熱龍王イフリートでも破滅龍皇バハムートとも違う。

「、、、何これ、、、?」

ルビアは驚愕の声を上げるが、

なぜか俺にはこれがなにか分かっている。

破滅龍皇バハムートノヴァ、、、」

俺は知らず知らずのうちに呟いていた。

破滅龍皇バハムート、、、、、

ノヴァ、、、?」

俺に問いかけてくるがそれにうなずく。

俺はこの剣に魔力を通すと、

この剣の情報が頭に流れ込んでくる。

「、、、概念を断つ力、、、?」

疑問に思いながらも俺はこの刀を信じる事にした。

俺は剣を上段に構える。

「はあああぁぁぁぁぁぁ、、、ッ!」

俺は今日何度かの雄叫びを上げる。

すると、さっき俺とルビアを包んだ赤と黒の魔力が出現し巨大な刃を形成する。

これまでの破滅龍皇バハムートをゆうに超えるほどの巨大化を果たす。

「くらえぇぇぇぇぇぇぇぇ、、、ッ!」

俺は絶叫し剣を破滅の卵に向かって振り下ろす。

その一撃の名を、、、

断罪ジャッジメント・する煉獄剣インフェルノ!」

卵に魔力の刃が激突する。

接触面から膨大な火花が上がる。

すると、その火花から魔法陣が出現し刃の行く手を遮る。

だが、思った以上にすぐ、ヒビが入る。

「、、、、、、、ッ!」

俺が更に力を込めることで魔法陣が砕け散る。

そして、次に現れたのは更に高精度の魔法陣だった。

破滅龍皇の能力と思しき魔力が魔法陣を侵食するが弾かれてしまう。

しかし、今度は炎熱龍皇の魔力が出現し結界を粉々に砕く。。

そして、最後の層、、、

「クッソ、、、ッ!」

第一層と第二層で魔力を使い過ぎたのか最初ほど威力が無く、

このままでは結界を破壊できない!

俺はなんとか魔力を練って威力を上げようと試みる。

だが、、、

「かは、、、、、ッ!」

吐血してしまった。

一瞬集中が切れてしまう。

そのせいで破滅龍皇バハムート・ノヴァの魔力刃が点滅し消えかけてしまう。

俺は何とかして維持し続けようとするが思った以上に力が入らない、、、

ここまでかと思ったとき後ろから支えられた。

「私だって、、、一緒に戦う!」

その声の主は俺の手をその上から握る。

すると、そこから体全体が熱くなる。まるで魔力が活性化するかのように

そして同時に魔力が溢れ出し、

破滅龍皇バハムートノヴァが更に巨大な魔力刃が形成される。

「龍翔、、、行くよ、、、!」

その声に俺はニヤッと笑って返事をする。

「ああ、、、!」

この時、俺は、俺たちなら誰にも負けない。

俺は今そう確信した。

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

俺とルビアは声を張り上げて最後の力を込めて剣を振り下ろした。

「と、ど、けぇぇぇぇぇぇぇ!」

すると、端のほうピシっと音がし中心に向かって亀裂が走る。

そして、直ぐに結界が崩壊し、卵が空気に溶けていく。

俺達はただそれを呆然と眺めているだけだった。

「終わった、、、のか、、、?」

俺は呟いた。

「ええ、終わったわ、、、」

その答えをルビアが言う。

俺達は一瞬お互いを見合いそして、

「「終わったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」

と、二人同時に声を出して、

その場に崩れ落ちた。

正直に言って満身創痍という言葉が軽いと思うくらいの怪我である。

「ルビア、、、怪我はないか?」

俺は隣に倒れているルビアに聞いてみる、だが返ってきたのは、、、

「すぅ、すぅ、すぅ、、、」

大人しい寝息だった。

俺はそれに一瞬驚きつつ苦笑する。

そして、ルビアの綺麗な髪に手を当て

「お疲れ様、、、ルビア、、、」

労いの言葉をかけながら撫でると、

少しばかり寝顔が穏やかになった気がした。

それから、薫の救助隊が来るまでずっとそうしていたのは秘密である。


あの事件から一日、俺はまだ病院で入院していた。

「きみ、最近退院したばっかりなんだから無茶しちゃ駄目だよ、、、」

なんか胡散臭い俺の専属医に言われ、

「なんか、、、すんません、、、」

俺は謝ることしかできない。

あの後、すぐに病院に連れて来られ精密検査を受けた。

結果は、肋骨が二本ヒビがあり、なおかつ、体中に火傷、更に魔力損失ロストをし、最終的には龍皇の目の過剰使用によって目に多大なる負荷がかかり治るまで眼帯生活という、傍から見ればよく生きていたなと思われるが自分でもそう思う。

「あんたには感謝してるけど、、、」

俺は言葉を濁した、

何故なら、ぶっちゃけて言うと俺のこの怪我の原因はほとんど自分なのだ、

そして、この医者は平気で人の体弄るという趣味が悪い趣味を持っている。

そのため、感謝しようにも感謝しきれないのだ。

そんな俺の心情を読んだのか、、、

「大丈夫だよ、、、君の体はいじってないから、、、多分、、、」

「おい、ちょっと待て、、、多分って言葉でお前の信用ががくんと落ちたんだけど!?

ほんとにしてないよね、、、!?」

俺は戸惑いながら聞く、、、

「そう言えば、、、なんだけ?

そうだそうだ、ルビアとかいう嬢ちゃんは、お前ほどの怪我でなかったにしろ心におった傷が酷いらしいから見に行ってやれ、、、」

そう言って俺の病室を出て行こうとする。

「おい、、、」

俺は相手が出ていく前に声を掛ける。

「どうした?どこか痛いか」

相手はそう聞いてくるが、

俺は、、、

「ありがとな、、、」

感謝の言葉を述べた。

すると、相手はニヤッと笑って、、、

「今度なんか奢ってくれよ、、、」

そう言って今度は本当に部屋を出ていく。

「、、、、、、、」

俺はその後ろ姿を眺めていたが、、、

「ルビアのところ行くか、、、」

唐突にそう思って俺はベッドから起き上がる。

ベッドの近くには松葉杖が掛けてあったのでそれを使って立ち上がる。

「、、、、行くか、、、、」

俺は扉を開けた、、、

結果的にあの事件は世間からはいち学生を人質に撮った身代金事件ということで事後処理が進められた。

理由は流石に犯罪者集団の名前を上げるわけにはいかないのと、

それと同じくらい大事なのが、

皇女が誘拐されたということ自体が問題のため情報規制がかかったのだ。

それを知るのは俺とルビアの他に軍の上層部しか知らない事になっている。

校舎が崩壊したあと落下したエリックの遺体が捜索されたが見つかったのは半ばから折れている複合魔竜キマイラだけだったらしい。

そしてやっと最近になって事件の全貌が明らかになった。

名無ノーネイムしの目的が判明した理由はエリックの自宅にあった手記から判明した。

まず初めにこの事件の発端となったのが5年前のルビアの件だった。

その頃からエリックはルビアのことを知っていたらしい。

そして、彼は自分を必要としない研究員たちを恨み同時に自分にないものを持っているルビアに尊敬の念を持ったということだ。

そこから、手記が途切れる

次の手記はごく最近だった。

その内容は自分の中の複合魔竜キマイラを制御できなくなっているという事そして、ルビアを救うためにこの計画を実行することが書かれていた。

その計画の具体的な内容は書いていなかったが発動術式が魔獣王降臨キングビーストサモン、だった事からルビアの炎熱龍皇イフリートの魔力を流用しこの世界を破壊しかねない最悪の獣、魔獣王ビーストを呼び出そうとしていたらしいのだ。

そして、自分の娘を実験に使用されたクレセント王だったが思った以上にご立腹であり、実験に関わった人物全てに死刑宣告を言い渡すらしい。

しかし、ルビアは炎熱龍皇イフリートを手放したくないと言ったらしく王も困惑し必死の説得の末了承を受けた。

ちなみに、その現場に俺も連れてかれたわけであり、事件の顛末を聞かされた国王が俺にニッコリ笑いかけ、、、

「龍翔くん、娘を助けてくれたありがとう。

この国を代表して感謝する。」

そう言われ、俺の握手をする。

「こちらこそ、ありがとうございました。

ルビアがいなければ今僕はここにはいません、、、」

すると、王が驚いたような顔をし、

「そうか、、、なら良かった、、、」

その顔が一瞬王から娘を思う親の顔に変化した。

この人は良い人だ、、、と思ったのも束の間今度は思いっきり俺の手を握ってくる。

「、、、、、、、、、、、、、」

俺は無言になりつつ手と王の顔を見る。

すると王が、、、

「しかし、それとこれとは話が別だ、、、

君、、、私の可愛い娘のファーストキスをもらったとはほんとかい?」

俺はその言葉を聞いた途端に噴き出しそうになった。

前言撤回する、この人はとんだ娘馬鹿であった。

まあ、その後のことはルビアが止めに入り王が皇女に説教するという珍しい光景を見て俺は帰宅した。

こうして、事件の捜査は現場検証以外は終了した。

そのため今は絶賛校舎の再建を今は進めているところである。

「しかし、まぁ色々あったな、、、」

事件のあとすぐに咲樹星が黒龍丸に封印を施した。

本人に理由を聞いてみると、

「緊急時用、、、」

とのことだったので俺は無理に反対しなかった。

そして、最後の問題としてあの破滅龍皇バハムート炎熱龍皇イフリートが混ざった現象について、、、

この現象については今のところ何も分かっていない。

ちなみに、咲樹星にも聞いてみたが何も知らなかった。

そのため、

なんの情報もなく今はただあの現象が起こる原因と条件を探すことが先決だと考える。

今回はたまたまできた感があったのでまた今度も同じ事ができるとは限らない。

そんな事を考えているうちにいつの間にかルビアの病室の前に来ていたらしい。

俺は白い扉の前に立ちコン、コンと

2回ノックをする。

すると、、、

「、、、どうぞ、、、」

と声が聞こえたので俺は扉を開けて入る。

部屋に入ると、そこには外を見ている天使がいた。

昼時の太陽の光を浴びた金髪が整った顔立ちをさらに輝かしいものにしている。

そんなルビア嬢は俺を見て、ニッコリと笑い。

「こんにちは、龍翔、、、」

と俺の名前を読んだ。

基本的に俺に方が怪我はひどかったのでルビアの方が先に退院する訳だが、

それまでは俺は毎日のように病室に通っている。

大体が談笑だがたまに今後の事を話すこともある。

「龍翔、、、わたしさ、、、このままここに居ていいの?」

急にルビアがそんなことを言った。

「、、、な、なんだよ、急に、、、」

俺は突然の質問に戸惑った。

その言葉にはこれまでの空気とは違う気配がしたからだ。

「この事件の大本の原因は、

私なんでしょ、、、?

なら、、、私がどこかに行けば、

こんなことは起こらないんじゃないかと思って、、、」

そう言って俯いてしまう。

ルビアの奴はそんなこと思っていたのかと俺思った。

確かに今回の事件は、基本的にルビアを標的としたものだった為こう思うのも無理は無いだろう。

だけど、、、

「ルビア、、、1つ話ししていいか?」

俺はその問いに答える前に一つ話をしようと思った。

「話って、、、なんの?」

そこで俺はある一人の男の話をした。

「昔な、、、強大な力を持った男が居たんだ。

その男は平和のために自分の身を地獄に落としたんだ、、、」

俯いていたルビアがその話を聞いた途端に顔を上げる。

「龍翔、、、それって、、、」

「俺はな、、、その男には大切なものが無かったんだと思うんだ、、、」

俺はルビアに目を合わせて言った。

「その男に無かったのは、、、

守りたいものが無かったからなんだ、

そして、一番大事な生きる意思が無かったからなんだ、、、」

そこで、俺はルビアに手を握る。

俺よりも一回り小さい手は少しひんやりしていた。

「ルビアは、、、俺や美咲と離ればなれになりたいか、、、?」

「、、、、、、、、ッ!」

すると、ルビアは驚いたような表情をしまた下を俯いてしまった。

「でも、、、あなたに迷惑を掛けられないし、、、」

「、、、なんだ、、、そんな事か?」

俺はその言葉に苦笑する。

「俺の意見なんか良い。

俺達のことは考えなくていい、

俺が聞きたいのは、、、

今は、お前がどうしたいかなんだ、

ルビア、、、もう一度聞くぞ、

お前はどうしたい?」

すると、、、

ルビアが俺に向き直り言った。

「私は、、、、、

また、龍翔と一緒に暮らした。

美咲ちゃんと話をしたい。

私の事を認めてくれたあのクラス居たい!」

そう俺に言う。

俺はニッコリと笑って握っていた手を離す。

「そうだ、、、お前はそれで良い」

すると、俺に向かってルビアが飛び込んでくる。

「よし、よし。

もう大丈夫だ、お前は俺が守ってやる」

俺はそう言ってルビアを抱き締める。

そうすると、ルビアの両手の力が更に強くなり、よりいっそ距離が近くなる。

すると、、、

「ルビア姉、お見舞いに来たよー」

「失礼します!」

「お邪魔しまーす」

「参上いたす!」

誰かが入って来た。

そして、入り口で俺とルビアが抱き締めるあっている姿を見て固まる。

見ると、美咲と明日香、明日葉、明日美の四人が入ってきていた。

俺とルビアの今の状態を見て一番最初に再起動したのは我が妹美咲だった。

「お、お、お、お兄ちゃん!?

ななな何してんのよ!」

「おーっと、邪魔しちゃったかな?」「二人ともまさかそういう関係!?」

「あとは、二人でごゆっくりー」

四人がそれぞれの反応をする。

俺はその状況をどうしようか考えていると、ルビアが俺から離れて、、、

「みんなごめんね、、、心配かけて」

すると、四人が顔を見合わせ、、、

「大丈夫だよ、ルビア姉」

「気にしちゃ駄目だよー」

「みんな生きてるから気にしなーい」

「怖い思いは時に人を成長させる」

後半はなんか違う気がしたが、みんながルビアに対して笑顔で各々の思いを言う。

ルビアはその言葉に涙を流して、、、

「うん、、、みんな、ありがとう」

ルビアは笑顔であいつらの輪に入っていくのだった。

これで、事件は一件落着。

「良かったな、、、ルビア、、、」

俺はその背中を見て微笑ましく思いながら窓の外を見る。

すると、病院の向かいにある建物の屋上に何かに影が見えた。

「、、、、、、、、」

俺はそこを凝視するが、、、

「気のせいか、、、」

美咲の俺を呼ぶ声がしたので俺は振り返ってこっちに手を振っている、

ルビアと美咲に向かって歩いていく。

これから続く強大で執拗な運命という

戦い。

このとき俺は知らなかった。

十王とは何なのか?

DADシステムとは何なのか?

そして、、、

だが、まだそんな事はいい。

ただ今は、、、

ルビアが幸せな明日を掴めただけで、、、

龍翔が美咲とルビア方に向かって歩き出した頃、、、

龍翔が見ていた屋上にある人影があった。

「りゅーくん、、、良かったね」

そう言いながら屋上に立っているのは、曇りのない晴天の様な蒼い髪に

これまた宝石のサファイアのように透き通っている瞳を持つ、

一人の少女であった。

彼女はどこか悲しそうに、

しかしそれでも、どこか嬉しそうに言う。

「待っててね、、、りゅーくん、、、

昔の約束を叶えに行くよ、、、」

少女はそう言って屋上から飛び降りた。

そして、その手には、

海のように深く淡い色をした蒼い槍が握られていた。


パタン。

そんな音がし、いつの間にか世界が変わっていた。

「 さて、、、読者の皆さん、、、

はじめまして、、、

私は、アストラルと言うものです」

見ると、十、七、八くらいの青年が立っていた。

そして、その手には一冊の本が握られている。

「話が逸れてしまいましたね、、、

今回の物語で、九条龍翔は破滅龍皇バハムートの力を開放しました。

ですが、これは始まりに過ぎません」

見ると、彼の後ろに無数の人影が現れる。

「これは、、、物語の序章に過ぎないのです、、、」

そして、、、

「この物語は、一度は歴史の闇に飲まれてしまいました、、、

ですが、今回の物語は違うようです。

皆さん、ご静聴ありがとうございました。

これからも、彼が織り成す物語を、

ご覧ください。

それでは、、、また、、、」

青年が再び本を開けると視界が暗転した。

そして、物語が始まる。


これは過去に失ったものを取り返す物語。

少年は龍と共に世界を廻る。

その結果は破滅か創造か、、、

今は誰にも分からない。

これは、一人の少年と龍たちが描く

消失ロストした物語メモリーズ











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ロスト・メモリーズ @tororosova

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