第2話ルビアスクールウォーズ

今俺は自宅を出て数十分の所に来ていた。

この辺はショッピングモールなどの商業施設が建ち並んでおり、

地域で一番活気付いている場所である。

そのため平日にも関わらず多くの人がいた。

もちろん、俺は賑やかな商店街などで買い物をしに来たわけではない、俺が用があるのはこの先にある薄暗い路地裏に行くためだ。

理由は唯一、俺が今一番問題にしていることを解決してくれる人物に会いに行くためだ。

ちなみに、その人物は引きこもりでろくに家事が出来ないので俺にいつも任せる癖にDADシステムのメンテナンス技術がピカイチという謎の人物である。

今朝、行くと連絡を送ると、、、

[じゃあ、朝ごはん作って♡]

という返信が返って来てベッドにスマホを投げつけてしまった。

なぜ俺はそうまでして来るかと言うと、俺の黒龍丸のメンテナンスをいつもこいつに任せているからだ。

まあ、、、正直に言ってここまでして来る価値があるかは不安だが、技術だけは一流なのは事実であり黒龍丸を変にされると困るので、なんだかんだでここによく通っている。

路地を右に左に行くこと数分、やっと目的の場所にたどり着いた。

そこは、薄汚れた扉のある行き止まりだった。

正直に言って帰りたくなってきたのだが、いつものことなので扉に手をかける。

すると鍵はかかっていなかったらしく少々重い鉄扉を開けて、玄関に入る。そこはまるで険しい山脈のようになっていた。

というか、率直に言ってものすごく汚かった。

ライトノベルや漫画などの本類が床に散乱し、もはや足の置き場すらなかった。

すると、その奥に何やら布団の塊が鎮座している。

いや正確に言うと、あの固まりこそが俺の会いたかった相手の訳だが、、、

なんかほんとにいつもと変わらないので俺は呆れてしまう。

俺は呆れつつも本などを踏まないようにどかし、相手のところに向かう。

「おい、、、起きろよ、、、

来たぞ、、、」

俺がそう言って布団の塊揺する。

すると、その塊がもぞもぞと動き顔が出てきた。

男のように短い髪は雪のように白い、そして黒縁の眼鏡をかけた人物。

それこそ、俺の最後の手段であり同時に俺の最後の希望である、咲樹星みこくさきほであった。

彼女は目を擦り、手元にあった時計と俺を交互に見る。

「あれ、、、?私寝てた?」

見てわかるような質問を聞いてくるので、俺は呆れつつ。

「ばりばり寝てたぞ?さっさと起きてどうせ朝食とってねぇだろ?

俺が作ってやるから、その間に着替えろ。」

もちろん、ちゃんとここに来る前に食材は買っておいてあるので、あとは作るだけなのだが、、、

すると、咲樹星が寝ぼけ眼でこちらに向かって歩いてくる。

「 あれー?少年、いつ来たの?」

と聞いてくる。

てか、さっきの掛け合いで俺と認識できなかったんかい!

とか思いながらも、俺はこいつとの付き合いが長いのでしょうがないで、

こいつが物凄く朝に弱いため、

とりあえず許そうとする俺もいる。

「とりあえず、顔洗ってこい。その後にご飯用意してやるから。」

俺がそう言うと咲樹星が、俺の手元を見て目を輝かせ。

「了解した。そんじゃまあ、少年よろしくー。」

と言って洗面所に消えていった。

俺はその後ろ姿に苦笑しつつ、調理に取り掛かる。

キッチンを見る限り、ここ数日料理をした痕跡はない。

理由は無駄にキレイなキッチンなのにシンクには水を流した痕跡がなく、更に言うとホコリをかぶっている。

その横にはカップ麺やらコンビニ弁当やらのゴミが散乱している。

「、、、、、、、、、、」

俺はその惨状に無言になりつつ考える。

ほんとはちゃんとしたものを食ってほしいんだがこの惨状を見る限り体に優しいものを作るしかないだろう。

「粥での作るか、、、」

俺はこの数日で、あいつは高カロリー、高コレステロールの食べ物ばかり食っていたことになるので、胃を休めるのを考え、粥を作ることにする。

流石にいくら若いとは言えこれだけの食が偏っていれば死に至る。

てか、なんで俺がこいつの健康管理をしなければならないのかと思いながら、料理を作っていく。

もちろん材料費は俺の自腹である。

まあ、今日の夕飯用の材料込みなので変わらないが、、、

すると、洗面所の方から声がした。

「しょうねーん。何作ってるー?」

その言葉に俺は、

「とりあえず洗面所から出てこい。それから食べさせてやるから。」

すると、洗面所からドタバタガッシャーン!と音がする。

俺はその音を聞いて、、、

「、、、ちょ、おい!咲樹星どうした!?」

俺は無意識のうちに、洗面所に足が向かっていた。

「今こっち来ないで!」

という言葉を聞き逃してしまい、

慌てて扉を開ける。

「大丈夫か!咲樹星、、、、、、」

名前を読んだところで絶句した。

そこには、惜しげもなくその裸体を晒している咲樹星の姿があったからだ。

もちろん下着は着ているが、

俺はそれよりも、なぜこうなったのかと思い首を傾げていると、、、

すると、足元に洗剤の蓋が転がってきた。

つまり、さっきの音は洗剤などを倒した音だろう。

しかし、さっきの音的にもっと酷い状態だと思ったが大丈夫どうで良かった、、、とか思って顔を上げる。

すると、次に見えたのは咲樹星の綺麗な体だった。

なんか前にもこんな事があった気がするが、気のせいだろう。

とか思いながら綺麗な姿に見入っていると、同じように硬直していた咲樹星が

「、、、あのさ、少し後ろ向いて、

恥ずいから。」

という言葉に俺は意識を取り戻し、

「ああ、すまん、、、」

俺は戸惑いつつも扉を閉め戻ろうとする。

すると、さっき閉めたはずの扉が少しだけ開き、咲樹星が顔を出して。

「、、、、見た?」

と単刀直入に聞いてきたので、俺は首を横に振った。

すると、素っ気なく。

「そう、、、」

とだけ返して、再び扉の中に消えていった。

「、、、、何だったんだ?」

俺は疑問に思いつつも料理中ということを思い出し、すぐさま台所に戻った。


数分後。

咲樹星はなぜか私服に白衣というスタイルで俺の前に現れた。

まあ、そんなことは気にせずに俺は食卓に皿を置いていく。

俺の分は作ってないので、咲樹星の前においていく。

「で、、、少年。今日は何をしに来たのかな?」

粥を頬張りながら聞いてくる咲樹星を見ながら俺は本題に入った。

「お前メール見てないんかよ、、、、要件は、、、これを見てもらえないか?」

そう言って俺は黒龍丸の龍核結晶セフィラを取り出した。

すると、咲樹星はそれを手に取り覗き込む。

ちなみに龍核結晶には、数字にしておよそ数万字程度のコマンドが設定されているが、こいつはなぜかそれを一瞬で解読することができる。

それはなぜかと前に聞いてみたところ。

「なんかわかる。」と言っていた。

数秒後、龍核結晶を俺に返して、数瞬迷ったあと、口を開いた。

「率直に言うけど、機器自体に以上はないよ、、、ただ、、、」

言葉を濁した咲樹星の言葉に俺は疑った。

「ただ、どうしたんだよ?」

すると、また迷ったような顔をし、口を開いた。

「、、、一つだけ聞くよ、、、、?

少年、最近使?」

その言葉を聞いた途端心臓が跳ね上がった。

「な、なんでそう思うんだよ、、、?」

俺は動揺を隠しながら聞いてみる。

しかし、咲樹星は冷静に言った。

「いや、単純な話なんだよねぇー。

私がこれにかけたそれが若干だけど緩んでるからさ、、、」

俺はその言葉に内心焦っていた。

俺にはこのをかけてもらった覚えがない。

それもそのはずだ、なぜなら俺には5

周りには気づかれないようにして生活してきたがそれでも記憶が無いというのは大変なことである。

なんせ昔の知り合いは自分のことを知っている体で話を進めるので今更誰ですか?とかは聞けない。

その上失った記憶自体が思い出とかなので更にたちが悪い。

イメージ的にはりんごがどういう果物かは知ってるのだがそれを美味いと思ったかを覚えていないという事だ。

そして、それを知っているのは俺以外に家族と今目の前にいるこいつ、咲樹星だけだ。

なぜ家族はともかく咲樹星がこのことを知っているかというと、理由は単純で、俺が覚えている記憶を失って初めて目にした人物がこいつなのである。

なぜそんな事になっているのかさえ思い出せないが、咲樹星が言うには記憶を失う前の俺がこいつに黒龍丸の力の封印を頼んだらしい。

そしてそれだけを言って俺は気絶をしたらしい。

それからと言うもの俺はこいつに黒龍丸の整備を頼んでいる。

しかし、これは困った。

「封印って、もう一度かけれたりするのか?」

そもそも封印している意味すら分からないのでどういう状態なのか困っている。

すると、、、

「どうだろうねぇー。私の感だけど、もう一度封印する必要性が薄いと見るよ。君にはこいつの全力が必要な気がするんだよねー」

咲樹星は俺の未来を見透かしたように言ってくる。

俺には意味がわからず首を傾ける。

すると、咲樹星は部屋の一端にある様々なものに埋もれていたテレビのリモコンを手に取ってテレビをつけた。

すぐについた液晶には予想外のことが起きていた。

「ここで速報です。

現在、国立魔術学園が占拠されたニュースについて最新の情報が届きましたのでお伝えします。」

と、画面のニュースキャスターが言っていた。

そして画面がスタジオから切り替わり学園の上空に画面が変わる、

そして見ると、そこには激しく煙を撒き散らす校舎の姿が見えた。

「な、、、、!」

俺が絶句していると

「ほら、急いだほうがいいでしょ?

少年。」

驚きが伺えない声でそう言ってくる。

咲樹星の言葉にはまるで俺の行動を知っているかのように俺に問いかける。

だが、俺はそれを疑問に思わないくらいに混乱していた。

俺は思考が追いついた後に玄関を飛び出ようとした。

すると。

「やめときなよー。少年一人が行ったところで何も変わらないよ?」

咲樹星はさっきとは意味が違う言葉を言う。

まるで俺の心理を確かめるかのように、、、

その言葉を聞いて俺は立ち止まった。

そして、改めて考える。

確かに、俺一人が行ったところで何も解決しないかもしれない。

だが、それでも、いや、それだからこそ。

俺の思考に様々な感情が渦巻く。

ふと俺が思い出したのはルビアのひまわりのような笑顔だった。

俺はそれを思い出した途端に覚悟が決まった。

そして、自然と言葉を口走っていた。

「 確かにな、俺が行ったところで何も変わらないかもしれない」

俺がそう言うと咲樹星が意外な顔をして俺に向かってなにか言おうとする。

しかし、その言葉は俺の言葉によって口から出なかった。

「、、、でも、それでも、行かなくて何か失って、後悔だけはしたくない!」

俺の口から自然に出ていた。

それを聞いた咲樹星がポカーンとしていたが不意に笑い始めた。

「、、はは、あはははははは、何今の言葉?カッコつけすぎ。」

と、大声で笑いながら言ってくる。

「そんなにキャラに合わなかったか?」

俺が少し不安になり聞くと、涙目になりながら咲樹星が言った。

「いいや、良いんだよ。少年はそれで。まあ、少年のキャラに合ってないとかは思ったけどね。」

その言葉に俺は少し頬が熱くなるのを感じた。

「でも、君がそう望むのなら行ってきな。まだ間に合うはずだから、、、」

そう言って、俺に黒龍丸を投げてくる。

「一応、設定はしといたけど、

今だと、の全力を使うのは危険だから気をつけてね」

と言い俺の背中をバンと叩く。

その勢いで俺はドアに鼻をぶつけかけた。

「ちょ、お前危ない!、、、、

たく、まあいいや、ありがとな。」

俺はその感覚を胸に刻み俺は玄関を飛び出した。


龍翔を見送ってすぐに私はなにかの気配を感じた。

しかし、私は驚かない。

なぜなら、そうなることを知っていたからだ。

「彼を行かせてよかったの?」

その何かが聞いてくる。

私はに向かって言った。

「これは、彼の紡ぐ物語だ。

彼の行動に間違いなんてない。

そして、この物語に矛盾なんて存在しない。

だって、

、、、そんな事、君も知ってるだろ?」

私はそう言って笑いながら問いかける。

顔見えないがその何かがふと笑った気がした。

「そうだね。とんだ杞憂だったようだ。」

何かがそう言って、気配が消滅した。

私はさっきまでいたはずのなにかに向かって言った。

「やっぱり、彼は変わらないね、、、

現在むかし未来いまも、、」

私はその声の主の事を考えながら、

そう言って机に

「さて、、、これからどうなるのかね、、、?」

独り言を呟いていた。


俺は咲樹星の家を出たあと、あの路地をまた移動するのは大幅なタイムロスだと考え、魔力を足に通して脚力を上げ屋根伝いで移動していた。

その理由は単純であり、なにか嫌な予感がしたのだ。

なにか、俺の大切なものが消えてしまう気がしたのだ。

ここから学園まで、少なくてもあと数分かかる。

「間に合ってくれよ、、、ッ!」

俺はそう思いながら足に込めていた魔力をよりいっそ強めたのであった。



時は数時間前に遡る。

私は龍翔の見送りを受けて学園に向かった。

なんだかんだで、同居が始まって以来、いつもは龍翔と一緒なのでひとりでの登校は少し寂しい気がする。

私は首を振ってその思考を止めた。

そんな暗いことを考えていたら龍翔の顔を思い出していた。

最近はなにかと、ずっと龍翔と一緒にいたので、龍翔がいない日中が何故か珍しく感じする。

すると、目の前が騒がしくなってきた。

どうやら考え事をしている間に学園の前に着いたらしい。

しかし、何やらいつもより騒がしい気がした。

聞くと何やら今日は急に講師陣の大多数が出張になったらしい。

しかし、私はさほどその話に興味がなく、学生同士の騒がしい喧騒を聞きながら私は玄関に入っていた。


なんだかんだで、一日の授業が半分終わった。

1日を通してみて改めて気づいた。

私の日常に龍翔が深く関わっていることに。

なぜだろうか?

龍翔がいないといつもの日常が何故かこんなに色褪せてしまう。

こんな事になったことはないので少し驚いている。

なんだかやる気が出ずに授業を終えると、近くにいる仲良し三人組。

明日香、明日葉、明日美が私に近寄ってきた。

「どうしたの?ルビアちゃん。」

「なんかあったの?」

「何か悩み?」

と聞いてくるので、私の今考えてることをそのまま話した。

すると、3人は考え口々に話した。

「それは恋だよ。」

「それは恋だね。」

「恋って言うね。」

と口々に言うのだ。

「こ、恋?」

私は少し疑問気味に言った。

なんせ、恋なんてしたことがない。

何故ならそんな暇がなかったからだ。

もちろん、知識としては知っている。

漫画とかを見てるとよく出てくるワードだからだ。

「なんでそう思うの?」

私は自分の行動がそんなに変だったか気になったのだ。

すると、三人が顔を見合わせて。

「いや、ルビアちゃんもなんだけど。」

「九条くんもなんか雰囲気変わったよね。」

「「ねー。」」

とか言ってくる。

どういう事なのだろう。

龍翔が変わった?

思えば私は今年から転校してきたので、1年前の龍翔など知らない。

故に私は聞いた。

「変わったって龍翔が?」

「そうそう、1年前なんか友達って言ったら新島くんくらいしかいなかったもん。」

「そう、なんか存在が暗くってねー」

「なんか、近寄り難かったんだよね」

ねーと口々に言う。

疑問に思いながら考えていると、いつの間にか始業のチャイムが鳴っていた。

私はそこで思考を切り替え、教師の方を見て机に向かった。


昼休み。

今日は美咲ちゃんと食べる約束をしているので、いつも食堂で食べているが、今日に限ってはいつも美咲ちゃんが食べているという屋上に向かった。


魔術学園の校舎は4階構造になっており、1、2階は各学年の教室、3階に食堂などの休憩スペース。

そして4階はDADシステムの研究ラボなどが完備されている。

ちなみにエレベーターなどの便利なものは無く。

基本階段で階層行き来をする。

しかし、まあこれにも抜け道があり、

システムを使って空を飛ぶなどで階層を行き来する者もいたらしい。

らしいというのは、昔ある生徒が面倒に思い、術式で空を飛んで行こうとしたところ操作を誤り落下し寸前のところで教師に助けられたらしい。

それからと言うもの飛ぶ生徒などいなくなり、同時に3階に術式ジャミングする装置が設置られたそうだ。

そんな事を考えているうちに私は屋上についた。

「、、、遠い。」

素直に感想を述べる。

なんせ王室にいた頃は運動といったら鍛錬だけだったので基本DADシステムの補助を受けての運動が大半だったので体力を養ってこなかったのだ。

こうなるんだったらちゃんと体力作りしとけばよかった、、、

とか思いつつ、屋上の扉を開ける。

少しの抵抗感があり、一瞬にして視界が開ける。

するとあたり一面に青色が広がる。

それが、空だと理解するのに数秒かかった。

そう言えば学園の近くにこの高さの建物が無いため、空の景観をそのままに堪能すること出来ると話題になっていたことを思い出した。

その景色に見惚れていると、、、

「ルビア姉ー!」

と言う声が聞こえたと思った途端にお腹に衝撃が加わる。

「おっと。」

咄嗟のことに驚きつつもその衝撃の原因を支え、その名前を呼ぶ。

「美咲ちゃん、遅れてごめんね。」

そう言うと美咲ちゃんが私よりも少しだけ低い所にある顔を横に振る。

「大丈夫だよ、、、それよりもお昼にしよ?美咲お腹ペコペコなんだよ。」

美咲はお腹を押さえベンチを指差す。

その言動に私は苦笑しつつ、その手を握ってベンチに向かった。


私達はお弁当を食べ始めて数分。

私は今日クラスメイトが言っていたことを思い出した。

「ねえ、、、美咲ちゃん。」

私は意を決して聞くことにした。

純粋な光を放つ瞳が私に向く。

「なあに?ルビア姉。」

と聞いてくる。

「実はね、、、」

と言って私はクラスメイトに聞いた話を、全て話した。

すると、美咲ちゃんが数瞬考えた後に口を開いた。

「実を言うとね、お兄ちゃんは前よりも明るくなったんだ。そのルビア姉のクラスメイトが言うように昔のお兄ちゃんは暗かったなー。」

と言って弁当の中にある卵焼きを頬張る。

「なんで、龍翔は暗かったかわかる?」

その問いに卵焼きに笑みを浮かべていた美咲ちゃんが首を傾げる。

「どういうこと?」

「ええっとね、、、龍翔がそうなってしまった理由が知りたいの。」

すると、美咲ちゃんが少しだけむむむと唸り始めそれから話し始めた。

「これから話すことは他言無用だけど大丈夫?」

さっきまでのほわんほわんした雰囲気から一変して空気が冷える気がした。

私はその空気に戸惑いつつ、覚悟を決めた。

「 お願い。私に話してくれる?」

すると、冷えた空気を作っていた美咲ちゃんが急にもとに戻り。

「それでこそ、美咲の知ってるルビア姉だよ。」

太陽のような眩しい笑顔でそう言った。

「これから話すことは紛れもない事実だよ。」

その言葉を聞いた瞬間、必然と唾を飲む音が聞こえた気がした。

「実はね、、、」

「実は?」

「美咲とお兄ちゃんは、、、」

「美咲ちゃんと龍翔は、、、?」

「ホントは血の繋がっていない妹といういかにもギャルゲーにある関係なのです!」

私はそれを聞いた途端、一気に緊張が解けギャグ漫画よろしくズッコケてしまった。

「あははは、ルビア姉がズッコケた。」

私の様子に笑い声を上げる美咲ちゃん。

私は若干驚きながら、今も笑っている美咲ちゃんに向かって言った。

「もう!美咲ちゃんたら、、、

それで?本当はどうなの私が聞きたいのは、、、」

そこで、美咲ちゃんが笑うのを止め言ってきた。

「知ってる、お兄ちゃんが暗くなった理由でしょ?それはね、、、」

もったいぶって一向に話そうとしない。美咲ちゃんに困っていると、、、

校舎が急に揺れた。

突然のことに私達は体勢を崩して屋上の床に尻もちをついてしまう。

「きゃあ!」

美咲ちゃんも私と同じように尻もちをつく。

私はすぐに立ち上がり美咲ちゃんに駆け寄る。

「大丈夫、美咲ちゃん?」

と言って私は手を差し伸べる。

「、、、大丈夫だよ。ルビア姉。」

美咲ちゃんは私の手を握って立ち上がる。

すると、辺りから黒煙が立ち込めた。

本来はありえない出来事に私達は硬直する。

屋上にいて誰かがこの状況を一言で言い表した。

「何これ、、、襲撃?」

その一言を聞いた途端私達は戦慄した。

現在、この学園の講師陣の大多数は偶然にも出張に出てしまっている。

この学園が国内屈指のセキュリティを有している。

それが理由はともあれ、この謎の爆発を発生させた人物あるいは複数人がこの学園に入ってきたに違いない。

一応この学園にも侵入者防止用の警備ロボットが配備されている筈だが、セキュリティを突破した人物だ。

それにも対策してある可能性が高い。

私は刹那にその結論に至る。

犯人の目的は身代金かこの学園のDADシステムに関する研究論文かわからない。

相手の目的がわからない今、下手に動くと怪我人が出るかもしれない、最悪の場合、死者がでるかも、、、

そこまで考えた時、地面から黒い影が現れたの、

近くの生徒はほとんど恐怖で固まっていると、影の一人が男子生徒に向かって突撃してくる。

「危ない、、、、、ッ!」

私は咄嗟に紅龍刃を展開し影と生徒の間に走り込む。

「せい、、、、、ッ!」

紅龍刃を下から上に振り上げナタのような武器を上に弾き返す。

「ルビア姉、、!」

美咲ちゃんが私の名前を呼ぶがそっちを見て頷き相手に追撃をする。

その私の姿を見て現実味を取り戻したのか汎用DADシステムの飛竜ワイバーン陸竜サンドラなどを展開し応戦している。

私はその状況を見つつ攻撃を行う。

正直に言って、この影は戦闘能力は限りなく低い。

もちろんだからといって気を抜いていい相手ではない。

ただでさえ実戦を行うのはほとんどの人物が初めての筈だ。

しかし、それでも現状が瓦解しないのはひとえに日頃の教育が良いからだろう。

私はそんな事を思いつつ影の一人の首を切り飛ばす。

しかし、血は出ずに空気に溶けるように消滅した。

それを見て私は戦えない生徒の方向に向かおうとしていた影に向かって突撃する。

どれくらい経過しただろう気がつけばすべての影が消滅していた。

こちらも怪我人はいるものの死者や重症者はゼロである私はその結果に盛大なため息を吐きつつ内心は安心する。

しかし、その安堵も束の間だった。

突然の全校放送がなった。

この放送で教師陣が帰ってきているとこの辺にいる生徒は思ったのだろう。

安堵している人が多くいる。

だが、私はこの放送にイヤな予感がしてならない。

すると、最悪にもその予想が的中してしまう。

「生徒の呼び出しをします。

ルビア・フォンス・クレセントさん。

いましたら、放送室まで来てください。」

私は驚愕に囚われた。

理由は唯一、この辺の状況は持ったが他の場所自体がもたなくもう占拠されてしまったということだったからだ

そしてその考えを考慮しても、

その言葉に私は迷った、これは指示に従ったほうが良いだろうか?

その答えはすぐに決まった。

「早めに来てくださーい

君の大切な人も待ってるよ。」

と言ってブツっと音がし放送が切れた。

この遠回しのセリフから、私の知り合いが人質にとられていると思っていいだろう。

ほんとに最悪の事態だ。

正直に言ってこれだけは起きてほしくなかった。

さすがに私狙いだったとは思わなかったがそれならむしろ都合が良い。

そして私に答えはすぐに決まった

何故なら考えている間に殺されてはいけなからだ。

私は美咲ちゃんの方を向き言った。

「美咲ちゃん、、、行ってくるね。」

そう言って私は校舎に続く階段に向かおうとする。

すると急に袖を掴まれ足が止まる。

振り向くとそこには私の袖を掴んで俯いている美咲ちゃんがいた。

「美咲ちゃん?」

私は不思議に思い、問いかける。

俯いていた美咲ちゃんが顔を上げこう言った。

「行っちゃだめ。」

その一言に様々な思いが籠もっていることがわかった。

しかし、私はにっこりと微笑み言った。

「、、、大丈夫だよ、美咲ちゃん。

必ず帰ってくる。また龍翔と美咲ちゃんと私で一緒にご飯を食べよう。」

そう言って私は小指を見せる。

「約束。」

私は指切りの形を取る。

すると、美咲ちゃんが驚きつつも私の差し出した指を見て自分の指を絡める。

私達は指切りをした。

そして、思うことがなくなったのだろう。

美咲ちゃんは笑顔で私を送ってくれた。

それこそまるでいつもの家のときのように。

「行ってらっしゃい。」

その言葉を聞いて私も笑顔で言うことができた。

「行ってきます。」

私はその最悪も状況を打破するために屋上を出たのであった。


俺は咲樹星の家を出て数分。

そろそろ、学園が見えていい頃だ。

建物を屋根伝いに移動しているので普通に移動するよりは早いはずなのだが、それ以前になんだか下の道路が騒がしい。

いつもの喧騒とした空気とは違う、人々の混乱と困惑を含んでいる空気と言ったほうが良いだろうか。

その原因はすぐにわかった。

屋根に思いっきり踏み込んで高く飛ぶ。

すると学園の姿が見えた。

「な、なんだよあれ、、、」

俺は困惑の声を上げた。

そこに見えたのは所々に黒煙が立ち込め更に学園の防性結界の不可視インビジブルが設定されていない姿だったからだ。

確かあれは学園の設計資料で見た魔獣が大量発生したときに住民を保護する為の最終防衛モードだったはず。

俺はそれを見て改めて一大事であることに気づいた。

そこで俺のポケットが震えた。

驚きつつも何かと思うと薫からの着信であった。

俺は屋根を蹴りながら電話に出る。

「どうした?」

俺は端的に聞く。

その声を聞いて画面越しでも薫がほっと息を吐いた気がした。

「おい、龍翔!今どこのいる。」

その問いに俺は、、、

「今、学園に向かってるところだ。

それでこの状況は何なんだ!?

できる限り簡潔に頼む」

俺が聞いた問いに薫は衝撃の事実を言った。

「学園が何者かに占拠された、、、」

その言葉を聞いたとき薄々予想していたが現実になってしまったことに、

驚きすぎて一瞬魔力を込め忘れ俺は足を滑らした。

その瞬間さっきまでの飛んでいた足場から落ち、重力に従って落下する。

「やっべ!」

咄嗟に足元に空中を蹴り飛ばしその勢いで屋根に着地する。

死ぬかと思い思いっきり冷や汗をかいた、そして若干焦っていると、、、

「おい!おい!返事しろ、、、ッ!」

と薫の切羽詰まっている声が聞こえてくる。

俺はスマホを改めて耳に当て。

「おう、、、一応無事だよ。

、、、それで?その占拠した奴らってどこのどいつだ?」

俺は少しでも現場の情報を手に入れるべく聞いてみる。

すると、またしても意外な言葉が放たれる。

「占拠した奴らは、僕たち警備部に動画を送ってきてな、、、

奴らそこで自分達のことを名無し《ノーネイム》と言った。」

名無ノーネイム

俺はその名前を知っている。

何故知っているかというと、それは記憶を失う前の俺が交戦したと記録があったからだ。

記憶が無くなった直後はよく自分に関する記録を軍のデータベースから探していたので、その時に見つけたのだ。

奴らは非道な存在であり、DADシステムの研究の為なら人体実験すらもする連中である。

「そいつらだったら、記憶失う前の俺が壊滅させたはずだろう!?

なんで、復活してんだよ!」

そんな奴らが学園を占拠したという事は、学園内でアイツらが求めている何かがあるということになる。

「すまない、、、そこまではまだ判明してない、、、」

俺はその言葉に我を思い出す。

そして、深呼吸して、俺は落ち着きを取り戻しつつ聞く。

「、、、すまん、、、

それで?学園内には侵入出来たのか?」

その問いに薫がいい淀む。

「実を言うと、学園に常時展開されている防護結界が侵入者に書き換えられたらしくて、、、現在解除をしてる最中なんだ。」

俺はその言葉を聞いた途端にとてつもない焦りを感じた。

「、、、解除までどれくらいかかる?」

すると、またしてもいい淀み。

「、、、最低でも、2時間くらいかかるらしい、、、。」

俺は絶望した。

2時間、侵入者にして見れば目的を達成し後始末も済ませられるくらいの時間である。

俺は腰に付けてある黒龍丸の媒体に指を触れる。

そして、俺はある策を思いついた。

しかし、これはリスクを伴う策であり、同時に今一番成功確率が高い作戦だ。

俺はこの作戦を薫に行こうか渋っていると、俺は学園の中にいる沢山の知り合いのことが頭を過ぎった。

「、、、俺が行く。」

俺は静かに告げた。

今俺がいるこのビルからは学園の全貌がはっきりと見え前よりも近づいた。

俺の言葉を聞いて薫がつばを飲む音が画面越しに聞こえた気がした。

すると、次出てきたのは意外な言葉だった。

「、、、、行けるのか?」

その問いかけに少し戸惑いながら自身に満ちた声で俺はこう言う。

「、、、ああ!」

すると、再び薫が黙り大きなため息をついた気がした。

「以外だなって思ってるだろ?」

俺は驚きながら言葉を返す。

「いいや、、、珍しいと思っただけだ。」

俺は正直の答えることにした。

「どうせ龍翔おまえのことだから何か策でもあるんだろ?

僕はそれにかけたいと思うから龍翔を行かせるわけ。

みんなをよろしく頼むよ。」

と言って通話が終了する。

そして俺は自動的にブラックアウトした画面に向かって。

「任せろ。」

と返した。

そして俺は最後の距離を詰めるべく飛ばしたのであった。


学園の裏門に来てみたが、やはり全面に防護結界が展開されているらしい。

試しに石を魔力でコーティングしたものをこれまた魔力で強化した肩力で投げてみたが弾かれるのではなく消滅した。

流石にここまで硬いとは知らなかったが、しかし、何もやることがないべきことが無いわけではない。

「来い、黒龍丸。」

俺は黒龍丸を展開する。

前に言ったようにDADシステムにはその龍核結晶に応じてある限定の能力を発揮する。

ルビアの場合は炎を宿す。

これは一般的に炎、冷気、電撃に分類される。

そして、ある一定の状況下に置いて発動するのだが俺の場合は少々特殊なのである。

その特性こそ黒龍丸を

俺の黒龍丸の特性それは、

それが黒龍丸に宿っている限定能力である。

それは、黒龍丸が触れたものにを付与する。

俺はその能力を使って結界を砕こうと思ったのだ。

一見便利そうな能力だが、無論、そんな簡単に行くわけがない。

黒龍丸の能力の弱点それはそれ自体が触れてなければ発動しないという点だ。

それに追加で思いっきり魔力を持ってかれるのでとても燃費が悪い。

しかし、能力が能力なだけあってこの程度の結界は破壊できるだろう。

もちろん、結界自体の自動修復機能によって破壊した途端に修復されるのがオチだろうが、それでも数秒穴を開けることができる。

「、、、、セイ、、、ッ!」

俺は気合の声とともに黒龍丸を結界に向けて振り下ろす。

結界と黒龍丸が触れた瞬間、猛烈なスパークと魔力の残滓が飛び散る。

今は拮抗しているがあと数秒のうちに俺はこの威力を維持出来なくなるだろう。

だったら、答えは1つだ。

「う、おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

更に魔力を込め刀を押し込む。

すると、次の瞬間。

パリンッと砕けるような音がし、人一人が通れるくらいの穴が生まれた。

「よし!」

俺はガッツポーズをして穴の中に身を投げた。

するとすぐに砕けたはずの結界が修復していく。

つまり、もう後戻りはできないという事だ。

俺は改めて校舎に向きなおり、深呼吸をする。

そして黒龍丸を握り直し、ゆっくりと校舎に向かって歩き出したのであった。

これから起こる様々な戦いに自ら身を投げたのであった。


???ロスト・メモリー

私は何をしているのだろう?

自分自身に私は問いかける。

だが、答えが見つかるわけが無くただただ呆然と事が進むのを見ている。

そして、徐々に瞼が重くなり始める。

まるで、昼寝のしているみたいな微睡みが私を飲み込むが私はそれに抗う。

まだだ、まだ呑み込まれてはいけない。

私は自分に抗う。

ただ、ひたすらに抵抗する。

「ルビア様、、、、、、、、、、」

私は愛しい主に名前を呼ぶ。

だが、その声は虚無の中に響くだけだった。









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