ロスト・メモリーズ

@tororosova

第1話ルビアスクールデイズ

?年?月?日 ?時?分 

ここは、ただの倉庫の中。

そこに、一人の少年が立っていた。

少年は俯いているため顔は見れない。しかし、その少年の心だけなぜか分かる気がする、、、

そうその感情は、、、

後悔だ。

ただただ、後悔だけしていた。

少年の周りには、だけが、沈黙を突き通していた。

少年の頬には光る二筋の涙があった。

少年は思った。

このような力があるから、過ちが起きるのだと、、、

そして、少年は理解した。

こうなる事が最初から決まっていたのだと、、、

大切な人を失った。

大切な場所を失った。

そして、自分の心を失った。

もう、何も感じないし何も感じられない。

少年は考えた。

どうすればこのような事にならないだろうか、、、

その時、初めて少年が口を開いた。

「だったら、、、こうしよう、、、」

少年は自分の右手にある、

を自分の胸に突き刺した。

その時、カチカチと時計のような音が聞こえた気がした。


現在、、、

俺は寝ていた筈なのだが無理やりに起こされた。

理由は妹が俺に極悪非道な起こし方をしているからだ。

そりゃあもう、眠気も吹き飛ぶくらいにだ。

何をされているかと言うと、ベッドの上に乗られ、腹の上でトランポリン宜しき飛び跳ねられている。

ぶっちゃけて言うと、時々鳩尾みぞおちなどを踏まれるので正直に言って限界が近い上に目が覚めてからの怒涛の嫌がらせによって死にかけていた。

流石に、死因が妹の起こし方で死亡とか洒落にならないので、声をかけてみる。

「お、おい、美咲、、、

流石そろそろ死ぬから、飛ばないでもらっていいか?」

その問いに気づいたらしく、飛ぶのをやめないで、こちらを振り向いた。

「おお、おはようお兄ちゃん。」

と笑顔で、挨拶をしてくるのが、俺の義妹いもうと、九条美咲である。

御年十三歳、十三歳の同年代しては身長が小さく、目もリスのように丸っこい俺の自慢の妹である。

だが、その可愛い妹でも、

そろそろこういう起こし方をやめてほしいものである。

さて、そんな事を考えつつ

根気よく寝るふりしていたが

段々と美咲の動きに激しさが増し、

体の所々が踏まれ若干痛くなり始める。

そろそろ限界が近いので、どいてもらうことにした。

「いや、お前な、俺の腹をトランポリンか何かに勘違いしてないか?」

そう言うと、美咲が。

「お兄ちゃんが起きないのが悪いんだよ。最初はもう少し穏便に起こしてあげていたのに起きないから、美咲も強行手段に出るしかなかったのだよねー」

そうは言っているものの現在進行形で兄を殺しにかかっているので、穏便という言葉の意味自体が、違う気がする。

「ちなみにだな、穏便な起こし方って、どんなのだ?」

その問いに少し悩み。

「いやー、ちょっとね、、、、」

「 うん、、、言ってみ?」

「、、、、、、」

「、、、、、、」

「、、、、、、」

「その後は!?」

俺はツッコミを入れてしまう。

これは言えない理由があるのか、言えない程のことをしたのか、どちらとも言えないが、この件に関しては触れないほうが身のためだろう。

ていうか、何されたかを知るのが少し恐ろしくなった。

「わかった。今起きるよ。」

観念し、ベッドから起き上がる。

「わかった、私は先に下に行ってるぞ!」

そう言って、トテトテと部屋から出ていった。

妹が出て行ったのを見届け、

俺は一つ大きなあくびをして、ベッドから出る。

昨日まで、春休み真っ只中だったので押し入れにしまってある制服を取り出し着替える。

一通り自身の服装を確認し寝癖があることだけ以外は大丈夫と判断し、

部屋から出る。

ドアを開け、階段を眠気眼で降りる。

寝癖を直すために洗面所に向かい、

鏡を見ると少しだけ伸び過ぎた前髪が目に掛かる。

それを、雑に退かすと最近の徹夜で視力が低下したのか、はたまたもとからだったか、少し鋭い目つきがあらわになる。

これもうどうしようもないことなので

気にせずに前髪を切ろうと考える。

そんなことを考えながら、洗面所を出て廊下を少し歩きリビングに向かう。

ちなみに、両親は仕事の都合上、海外出張が多い為、基本妹と二人で暮らしている。

しかも、台所に立つのは基本俺である。

「早くしてよー。お腹減った。」

その妹の声で考えるのを止め苦笑しつつ、壁に掛けてあるエプロンを付ける。

ここ最近はずっと休みな事もあっていつも遅く起きていたため若干眠いが、気にせずに料理を作っていると、美咲がテレビをつけたのか、ニュースキャスターの声が流れ始め俺はその音を聞きながら卵をフライパンに割って落とす。

「今日、4月6日であの終末戦線エンド・ウォーズから30年を迎えました。」

と画面の中のアナウンサーが言った。

俺はそれを聞いて、もうそんな時期なったのかと思った。

30年前、世界で三度目の大戦。

第三次世界大戦が勃発した。

これが後に終末戦線エンド・ウォーズと呼ばれる事になる。

戦争が始まったその時点で人口が全世界で90億人にもなっていた。

だが、その後の戦後処理で人口が50億人にまで、減少したとみるといかに多くに死者を出した大きな大戦だったかわかるだろう。

戦地は中東から南米など一番の辺境で南極や北極も戦地になった。

結果的に、すべての国で被害が増えて最終的に世界の各国が終戦協定を結び第三次世界大戦は幕を閉じた。

そして、戦争が終結し人々が見たのは野は枯れ川は蒸発し山は削れているという荒廃した世界であった。

誰もがこの世界大戦後の世界を地獄と思ったであろう。

しかし、本当の地獄はそれからだった。

それは偶然か必然か、同年、ユーラシア大陸にて大爆発が起こった。

ただでさえ終戦直後である。

この時はまだ世界経済が安定していなかった為情報共有が遅れてしまう。

そのため、どこかの国からの攻撃かと各国は緊張状態に陥った、

しかしその原因は予想もしない、

意外な結果になった。

数日後各国合同の先導部隊が現地観察に向かった。

そこで彼らが見たものは、、、

何もない砂の世界だった。

そう、

そして、同行していた研究班が調べたところ、大爆発の大きさは、、、

ユーラシア大陸の全体の4割が蒸発したとの事だった。

その後の調査で、結果的にいくら現代科学でも戦術核でもそんな事はできない、という結論に至り偶発した謎の現象という事でまとめられた。

しかし、謎の現象は、それだけでは無かった。

爆発が起こってからある程度時間が立ったある日。

世界各地で同時刻に未知の爆発が発生する。

そして、世界が混乱したのもつかの間、直ぐに異変が起こる。

爆発自体はごく小規模だったり、上空だったり海底などだったが、その後に爆心地から膨大な熱源反応が、発生する。

それが高まるにつれて地震や豪雨と言った自然現象も増加していった。

そして、それはあまりにも突然の出来事だった。

熱源反応が高まり続けて数日後、

爆心地の中央に空間の亀裂が走った。

なぜなら、その空間の亀裂から、この世のものならざる生命体が出現した。

それらを魔なる獣と言うことでと呼ばれている。

人々は未知なる生物に探究心を駆られたが、その直後に魔獣達は、突然人類を襲い始めた。

それに対して最初の爆発の中心であったロシアや中国は対応した。

しかしそれらの国々の防衛線は数週間で陥落した。

理由は唯一、これまでの兵器類が一切効かなかったのだ。

そう、銃火器などの対人兵装はおろか、あまつさえ核なども使用されたが、決定的な戦果は挙げられなかった。

しかし、そんな状況にある奇跡が起きた。

偶然にもヨーロッパで誕生した一人の子供が、ある特殊な力を秘めていたのだ。

それは、世界の事象を捻じ曲げる力、

後に魔力と呼ばれるものである。

そのような子供達が複数人誕生した。

子供たちの身体構造を研究したところ、彼らは魔獣たちと身体的な構造が似ていると判明した。

そのため、軍の上層部は彼らだけに使用できる武装の開発に着手した。

そこでエデン・ザ・ガーデン社通称ETG社で開発されたのが、ドラグメント・アサルト・デバイス、通称DADシステムだ。

これまでは奇跡と呼ぶに等しかった、旧世代で言う魔術を科学的に立証するものである。

それにより、魔獣は撲滅され、それからというもの空間の歪みには、DADシステムを装備した1流の魔術師たちが警備にあたっている。

現在はなぜか日本に空間の歪みが集中しており、都市一つがその魔獣対策の防衛ラインにすらなっている。

「次のニュースです。

クレセント王国の第2皇女、ルビア・

フォンス・クレセント殿下が、昨日未明、来日されました。

情報によると、国立魔術学園に、転入するそうです、、、」

と、アナウンサーが喋っていたので、

「、、、うちの学園か、、、」

俺はテレビに映っているクレセント嬢の映像を見ていた。

クレセント王国とは、第三次世界大戦の終戦直後、魔獣のよって壊滅状態に追い込まれたヨーロッパにできた新しい国だ。

確か、空間の歪みが頻繁に発生するので、それによって経済を活性化させた国である。

空間の歪みに、魔獣が出現する代わりに様々な副産物を生み出す。

第1にDADシステムの基盤になる結晶体、龍核結晶りゅうかくけっしょうを生成する。

さらに、永久的に電磁波を生み出しているので、世界のエネルギー問題は、一瞬で解決したと言っていい。

そんな事を考えていると、どこからか焦げ臭い匂いが立ち込め、、、

「お兄ちゃん、焦げてる!目玉焼きがダークマターになりかけてる!」

という美咲の悲痛な声に気づき慌ててフライパンを見ると、そこにあったのは、目玉焼きと言うにはあまりにも黒くなってしまった、謎の物体だった。


朝ごはんを食べて、俺は、妹よりも先に家を出た。

ちなみにあのダークマター《目玉焼き》は俺がきっちり美味しく頂きました。

そうこうしていること、徒歩5分。

俺は、校門に到着した。

国立魔術学園。

ここでは、魔術師の育成を目的に国が設立した、教育機関である。

そのカリキュラムは実に多彩で、魔術師を育てる部門からはたまた、魔術で料理を効率よくする、などの部門もある。

中高一貫校であり、美咲もここに通っている。

今日は、始業式であるため、少し早めに来てしまったようだ。

「どうしたものかね。」

一人でどうしようか考えていると、どこからか声が聞こえた。

「あのー、ここの生徒ですか?」

咄嗟のことに驚きつつ、振り向いて答えた。

「はい。そうです、、、、」

けど、と言葉を繋げなくなってしまった。

理由は、明確である。

今、俺の前にいる人物が、先ほどテレビに出ていた、クレセント・ルビア嬢その人であったからだ。

あまりにも現実感の無い展開に思考がフリーズしていると。

「ちょっと、聞いてますか?」

少しだけ、強めに言われた言葉に俺の思考が正常に運転を再開する。

「すいません!ルビア様。」

慌ててそう言うと、彼女は、素っ気なく。

「いいえ。大丈夫です。それと、私の事はルビアっと読んでください。」

そう言われても、世間からなんか言われそうで怖い。

「ええっと、それって大丈夫なんでしょうか?」

「ええ、いいわよ。それと、口調も戻して、あなたのその口、調素じゃないでしょう?」

そう言われればそうする他はない。

しかも、ちゃっかりとルビア様も口調が変わってるし。

多少戸惑いつつ、口調を戻す。

「、、、わかった、それじゃあ俺の事は、龍翔りゅうかって呼んでくれ

、、、でも、良いのか?」

すると、キョトンとし聞いてきた。

「なにがよ?」

「いや、立場とかそこらの問題。」

そう言うと、クスっと笑い、彼女はこう言った。

「学園ってみんな平等でしょう?

私堅苦しいことは嫌いなの。」

そう言って、俺の前に来る。

「あなたに会うために来たんだしね。」

小声で言ったのその言葉を俺は聞き取れなかった。

「なんか言ったか?」

そう聞くと、

「何でもない。」

と返ってきた。

それが、俺とルビアの初めての出会いであった。

その後、ルビアに学園を案内してくれと言われた為、周りに生徒がいないことを祈りつつ、学園を案内した。

とりあえず、学園を1周はしたので、校門に戻ってきた。

「ざっと、こんな感じだけど、これで良かった?」

そう聞くと、

「うん!ありがとうね。」

っと感謝の言葉と共に屈託のない笑顔を見せられたので、一瞬ドキっとしたのは秘密である。

すると。

「お嬢様。学園長に挨拶の時間であります。」

そう、後ろから黒いスーツをピシっと着こなした男性が現れた。

「うわ!」

あまりの気配のなさに驚きつつ、その隠密能力に高い称賛を送っていると。

「わかったわ。エリック、じゃあ龍翔また、ホームルームでね。」

そう言って、彼女はエリックっと言う護衛を引き連れ、校舎内に入っていった。

「またホームルームでか、、、、、、

ん?てことは、、、」

その後、起こる惨状に思い至り俺は、長いため息をついた。

まあ、気にしていても仕方ないので、生徒が増えてきた玄関に向かったのであった。

校舎内に入り、靴を乱暴に履き替え、クラスに移動する。

始業日のため、新しいクラスになっているので、中にはまだ顔を知らない人がいるが、静かに入り静かに着席した。

すると、後ろから声をかけられた。

「よう。また、同じクラスだな。」

聞き馴染みのある声を聞き自然と振り向く。

そこには、俺と同じくらいの身長で、メガネをかけ少し猫背な青年がいた。

「ああ、楼御ろうごお前も同じクラスなのか。」

「当たり前だろう。でなきゃここにいないっての。」

彼は新島楼御にいじまろうご、1年の頃から良く絡んでくる奴である。

その頃に意気投合し、今では親友と呼べるくらいにまでになった。

「まあ、お互い頑張ろうぜ。」

そう言うと、ちょうど始業のチャイムがなり、

「おーい。席に着け、出席とるぞ!」

と言って大柄な講師が入ってきた。

名を、参角山森岳さんかくやまもりたけ通称、くまさん。

なぜくまさんかと言うと、単純に体格がクマにそっくりだからである。

もちろん、本人もこのあだ名に関しては、何も言っていない。

(本人は、若干気に入っているらしい)

もちろん、講師なだけあって、DADシステムの扱いは一流である。

しかし、そのくまさんが出席をとる前に、前の席にいるメガネの女子が一言

「 せんせーい、転校生が来るってホントですか?」

その問いに、キョトンとし、次に頭をがりがりと掻いた。

「お前らの情報網がすごいことを知ったよ俺は、それじゃあ、入ってきてくれ。」

すると、廊下の方から、

「はい。」

と、朝聞いた声がした。

その途端、朝に感じた不吉な事を思い出してしまい長いため息をつく。

そして入って来たのは、今朝会ったばかりのルビア嬢であった。

「今日から皆さんと、一緒に勉強する事になりました、ルビア・クレセントっと申します。気安くルビアさんっと読んでください。」

クラスが騒ぎ始めたもっと言うと俺以外の男子がだ、それはそうだ、だって、いち王女が自分のクラスに転入して来たらどうだろう?しかも容姿は淡麗であり、日光を浴びて輝く金髪に、サファイアの様な瞳が合っている。

すると、目があってしまい、ルビアに気づかれ手を振ってくる。

すると、クラス中の男子が一斉にバッとこちらを向き殺意を放ってくる。

俺は、知らん顔をして、それらを受け流す。

そこで、ルビアが俺に手を振っていることに気づいたらしく、

「じゃあ、ルビアさんの席は、龍翔の隣だ。」

おい、くま(先生)お前、ちょっと面白がってるだろう。っと思うが、気にしない方がいいだろう。

「はい。」

返事をし、俺の左隣の席に着席する。

「それでは、授業始めるぞー」

くまさんのその一言で、クラスの各々が、勉強道具を出したりしていると、

ルビアから1枚の紙切れが送られてきた。

そこには、[放課後、屋上に来て。]

とのこと、俺は不審に思いつつも、OKの返答を返した。

放課後。

俺は言われた通りに屋上に来ていた。

ちなみに、時間指定はされていない為、いつ来るかわからない。

すると、屋上の扉が開き、誰かが入ってきて気配がする。

俺はそれをルビアだと思ったが、、、

「どうしたんだ?ル、、、」

ビアっと言おうよした次の瞬間、強烈な殺意を感じた。

「ッ!」

咄嗟に反応して後ろに下がる。

一瞬にして、剣閃が俺の前髪を掠め、だが、最初の一撃を躱せたのは昔の訓練の成果だろう。

まあ、その代わりに何本かの髪の毛が巻き込まれ切れてしまったが、、、

俺は相手の追撃が来ると判断し、

一気に相手との距離をとり、観察する。

見た目は、背丈の大きい人間だ。

右手に、1本の短剣が握られている。

また、俺に向けての殺気が凄まじい。

これ、流石に交渉ができる人物じゃない、、、

と内心冷や汗をかいていると、、、

そこで俺は制服のベルトに掛けてある、黒い結晶に触れ、一言。

「黒龍丸、、、ッ!」

するとその結晶が変化する。

そして、変化が終わると俺の右手には漆黒の刀が握られていた。

DADシステムは、所有者によって形状が変化する。

例えばおなじDADシステムでも、

Aさんの場合大きな戦斧になるが、

Bさんの場合は小さな小刀になるなど、十人十色なのだ。

そして俺の場合、1本の黒刀になる。

相手が武装を展開したのを見て、敵対行動を撮ったと判断したのか濃密な殺気とさっきの倍のスピードで、相手は俺に突撃してくる。

しかし、俺は無駄のない洗礼された動きで避ける。

相手の一撃が空を切り一瞬にして立場が逆転する、相手は体勢を崩したので俺はとどめを刺すべくそこに空かさず、渾身の一撃を叩き込む。

しかし、この刀には刀に大切な切断性が皆無である。そのため相手は、両断されないその理由は。

俺は刀を鞘から抜いていないのだ。

これは、俺のミスでは無く、単純にしかし、いくら鞘で攻撃したとはいえ、当たれば骨折では済まない、しかし、相手も相手で一流らしい。

当たるギリギリで、体を捻って躱す。

刀は、コンクリートの地面を粉砕する。

そこで、相手が初めての言葉を発した。

「お前、、、???か。」

相手の声が小さいため上手く聞き取れなかったが、声の質は酷く嗄れている。

いや、今どき変声器など大手雑貨店などでも売っている時代である。

誰でも声ぐらい変化できるので、あてにはならないが、、、

考えている途中で、相手がある行動に出た。

右手に何かを持ち、地面に向かって投げつけたのだ。

それは、古典的な煙玉であり、一瞬にして、黒煙が、屋上に蔓延する。

「逃がすかよ!」

地面を粉砕するくらいかのごとく足に力を入れて、距離を詰める。

相手がいたと思われるところに向かって刀を振るう。

何か、掠った手応えがあったが、そこには何も居なかった。

周りを見渡すと、校舎内に通じる、ドアが開いていた。きっとそこから逃げたのだろう。

とりあえず、武装を解除しておき、どうするか考えていると、そこに、ルビアが現れた。

「どうしたの?」

と疑問気味に聞いてきたが、何でもないと答え、この学園を取り巻いている現状を改めて異常だと、認識したのであった。


「しんどー。」

家に着くなり、体が重くなった。

今日は、色々ありすぎた、流石に、ここまで色々ある1日は、初めてである。

今日は、もう疲れたから、夕飯食べて風呂入って寝よう。

心にそう誓い。玄関で靴を脱ぎ、脱衣所に、ある扉を開けると、そこにいたのは、さっきまで一緒に居た、ルビア嬢であった。

「な、何でいるの?」

純粋な問いが、飛び出した。

しかし、その答えを聞くよりも早く、ルビアの完成された肢体が目はおろか脳細胞にまで焼き移された。

金髪は、しっとりと濡れており、出てるところは出て締まっているところは締まっている。

若干フリーズしていると。

「、、、、きゃぁぁああああああああああああああ!」

と悲鳴が上がり、右頬を思いっきりひっぱたかれた。

その後は、なんとか平謝りして許してもらい、結果的にリビングで話し合うことになった。

そして、今、非常に嫌悪感を抱いた瞳で俺を見ている。

ちなみに、服装は、さっきのような格好ではなく。しっかりとした部屋着だった。しかも、結構緩めな。

いい加減話を切りだそうと思い、ルビアに向けて問いかけた。

「ええっと、何でいるの?」

まずは、そこからだろう。

だって、こいつは俺の同級生であり、クラスメイトなのだから、これくらいは聞いても良いだろう。

しかしその問いを聞いてルビアは、ムスーっと顔を顰め、それから思いっきりの爆弾発言を降下した。

「いや、だって私達当分の間一緒に暮らすのよ。」

思考が停止する。

1日に二度停止するのは、流石にやばいと思っていた。

しかし、今なんて言った?

一緒に住む、だって、冗談がキツイと思っているが、その視線は事実だと宣告している。

すると、妹がリビングに入ってきた。

「おい!美咲どういうことだよ!」

すると、

「お兄ちゃん、おかえりなさい。」

「お、おう。ただいま、、、じゃなくて!」

一瞬キョトンとするが、すぐに考えに思い至ったと言うような顔をする。

「ああ、ルビア姉の事?私が前に、お兄ちゃんに渡した紙に書いてあったじゃん。」

すごいカミングアウトに驚いて、少し記憶を、思い返していると、なんかそんなプリントを渡されたような気がしてきた。

てか、ルビア姉って!来てそうそう打ち解けてるじゃねーか!

すると、ルビアが割って入ってきた。

「とりあえず、空いてる部屋に荷物を置いてあるから、よろしくね。」

その言葉に、これから始まる異常な生活と、ただでさえ頭が痛い学園生活になったのに俺は持つのだろうか(精神的)と思うと、なぜだか知らないが胃が痛くなってきた。

とりあえず、なぜこうなったこの話だけ聞きたいと思い、聞いてみた。

「何で、一緒に暮らすことのなってんの?」

相手は、一国の王女である。こんなところにいて良い訳がない。

しかし、そこを、ズバッと両断してきた。

「だって、私住む家がないんだもん。」

至極単純な理由である。

確かに、異国の少女が独り暮らしするのは酷だろう。

だが、なぜ、俺の家なのだろうか?

その質問もバッサリと切られた。

「なんか、お父様があなたの家だったら良いって言ったから。」

意図が読めない。なぜ、クレセント王国の現国王が、俺の事を知っているのだろうか?次々に疑問が湧き出るがその前に、クゥーンっと、なんだか情けない音がなった。

対面している相手を見ると、赤面して、俯いている。

「ルビア姉お腹な、、、、」

空気の読めない妹様の口を押さえ、声を遮断する。

「んんーんんー」

妹がもがいているが、それを総ていなす。

流石に、ここで俺が助け舟を出さないとまずい気がする。

「そろそろ、飯にするか?」

すると、赤面している、顔を上げて、

「、、、お願いします。」

っと一言。

その姿に苦笑しつつ、台所に立つ。

正直に言って、あまり凝ったものは作れないが、今日は、パスタを作ろうとしていたので、丁度いい。

30分後、食欲をそそるような匂いが部屋全体に充満する。

完成したのは、ボロネーゼだ。

「ルビアは、フォークで良いか?」

「うん、ありがとうね。」

そして、全員が席に付いたところで、食事を開始する。

ルビアは、俺の料理の腕に太鼓判を押していたが、自分的にはまだまだっと思っている事を告げると、家の料理人になってよ、っと言われるが、辞退させてもらった。

その後は、美咲とルビアが一緒に風呂に入ったり、ルビアの寝間着姿に少しだけ、ドキッとしたりしたが結果的に良い1日と言えるであろう。

そして、俺は今日の刺激的な思い出に浸りながら、そっと瞼を閉じた。


ある夢を見た。

そこには、俺の前にが立っている。

ルビアでもないし、美咲でもない。

誰かわからないが、記憶の奥が騒ぐイメージまるでそんなイメージだ。

俺の前にいるが言葉を発した。

ノイズにしか聞こえない声だったが俺には、何を言っているかわかる。

いや、体よりで理解できるといった感じだろうか。

「やっと、見つけた。」

酷く悲しくしかし儚い声。

「もう君を逃さない。」

確信と可能性に満ちた声。

「でも今はまだ。」

この声を俺は知っている。

、???」

これは、?

それを思い出す前に、意識が急速に現実に戻された。


朝、ふと、体の右側に何かがくっついている気がした。

家には、犬や猫などのペットはいない。

美咲が、俺のベットに入って来たのだろうか?いや、美咲よりも、少しだけ大きい気がする。

恐る恐る、毛布を退かすと、そこにいたのは、なんと、ルビアであった。

「なんでや。」

思わず出てしまったエセ関西弁に突っ込んでくれる人はいない。

とりあえず昨日、何があったか思い出すことにした。

確か、俺は風呂に入って出ると、もう二人は眠ってしまっていた。

そのため、何も気にせずに俺も自室に入って寝てしまったわけだが、

「ううん、、、、、」

流石にやばい、今の状況は非常にマズい。今、俺は右手をルビアに枕として提供しているため、身動きがとれない。

そして、寝息の間隔がだんだんと早まっているので、起きるまであと少しという事だろう。

故に取れる行動は1つ、俺は、静かに右手を引き抜く事にした。

ゆっくり、ゆっくり、起こさないようにしながら、徐々に右腕を抜いていく。あと少しで、完璧に抜けるという時に、

「 うにゅ、、、、」

と言って、ルビアが目を覚ました。

終わった。

直感でそう理解しこれから始まる理不尽に備えて心を決めたのであった。

ルビアは、キョロキョロと周りを見渡しそのときに俺と目があった。

「 お、おはよう。」

挨拶してみたものの、相手はフリーズしている。

しかし、急に赤面したかと思うとボフンっと音が鳴ったかのような顔になる。そして、ぷるぷると震え始め。

「ル、ルビアさん?」

「 ッ!」

バチンっと、右頬にきつい一撃がお見舞いされたのであった。

理不尽っと思いながら甘んじてそれを受ける。


数秒後、追撃を貰わずに済んだ俺は、

なんとか、荒ぶっているルビアをなだめ、一旦落ち着くことができた。

「ええっと、なんでいるの?」

「もしかして昨日夜にトイレに行った時に、間違ったかも知れない。」

なるほど、ルビアはまだ俺の家に慣れていないのでしょうがないことだろう。

「とりあえず、おはよう。ルビア。」

「おはよう。龍翔。」

こうして、また俺のドタバタな1日が幕を開けた。


結局、今日の場合は、一緒に学園に行く事になったが、あらん噂が立たないかどうか不安である。

てなわけで、学園に着いたわけだが、何だか周りがざわついている。

と、ルビアが

「みんなどうしたんだろう?」

っと、疑問を口にしたので、クラスメイトの一人が意を決したようにして聞いてきた。

「ねえ、ねえ。ルビアさんと龍翔君は付き合ってるの?」

と、身も蓋のないことを聞いてきた。

「なんで、そんな噂が立ってるの?」

ルビアがその子に問いかける。

「だって、ルビアさん、龍翔君といる時すごい笑顔だし、しかも他のクラスの子が一緒に家から出るのを見たらしいのよ。」

その時、俺はしまったと思った。

なんだかんだで、ルビアを受け入れたわけだが、事情を知らない他の人からみれば、一緒に暮らしている=付き合っているなどの親しい関係っと見てとれる。

明日から、登校時間をずらすかなどと考えていると、少し考えていたルビアが、口を開いた。

「付き合っているわけないじゃない。

一緒に暮らしてるのは、私の事情なだけだから、大丈夫よ。」

そう言って、席に付く。

周りの女子と俺はそんなルビアを見ながら、各々が席に付く。

そして、女子の集団はこの話を聞かない方が身のためのだろうと考えたのだろう各々の席につく。

結果的に俺だけ取り残され、静かに席についたのであった。

「それじゃあ、今日は実戦テストを行う。」

そう言って、くまさんがスーツケースを取り出した。

そして、おもむろにそれを開き中身を生徒に見せる。

それは、俺の腰に付いている黒い結晶DADシステムの媒体である。

「 それでは、お前らにDADシステムを配布する。自分の媒体を持っている人間は、自分のを使用するように、それでは、30分後、体育館に集合するように。」

そう言って、くまさんが出ていった。

その途端、教室内が急に騒がしくなった。

それもそのはずだ、ここの学生はDADシステムを使用するのに憧れてを持っていたりするので、そうもなるだろう。

しかし、ルビアは、静かに立ち出ていった。

青のことに気づいたが、俺は彼女についていくのに戸惑い、一瞬遅れて教室を出たが、彼女はいつの間にか消えていた。

そして、体育館に向かって行くと、そこに広がっているのは、東○ドームが丸々1個入るくらいの、大きさの体育館であった。

思わず、

「すげーなこれ、、、」

っと、つぶやいてしまうくらいである。

しかも、中もすごいらしく、最初に受けた説明によると、物理強度、DADシステムが起こす、魔術の無効化までついているというのだ。まさに要塞である。

中に入ってみると、くまさんがいた。

「それでは、二人組になって、実戦訓練を開始するぞ。それじゃあ、はじめに、九条龍翔対ルビア・クレセントの訓練を開始する。」

そう言って、俺とルビアが呼ばれ、目線で前に出ろと言われている。

そこで、俺は、まあ、いつもどうりにすればいいかと思っていると、前に立ったルビアが、

「全力で来て、龍翔、あなたの実力を見せて。」

そう言って、首に掛けてあったブレスレットに付いている赤い結晶に触れて唱えた。

「お願い、紅龍刄こうりゅうじん。」

と言うと、ルビアの右手に紅蓮の炎が集結し、刃先が紅に光っている鎌の形になる。

そして、上段に構えて俺が展開するのを待っている。

俺は、ため息をつきながら、腰につけてある結晶に触れながら、唱える。

「来い、黒龍丸。」

黒の暴風が俺の右手に集い一本の刀になった。

くまさんがお互いに展開したのを確認して、

「それでは、、、、、、始め!」

そう言って、戦いの火蓋は斬られた。

すかさずに、ルビアが音速の速さで俺の懐に入る。

しかし、俺は落ち着いてそれを受け流す。

「ッ!」

そこで、ルビアは右手に炎を宿して、放つ。

「紅蓮の息吹よ!」

そう言うと、右手から空気すら焼き尽くす炎が噴射される。

これが、DADシステムの特徴であり、真骨頂と言える技、幻想の実体化、マギアシステムである。これは、DADシステムの核に宿っている、存在の力を使用し現実に顕現させるシステムである。

その属性は、存在の属性によって、変化するが、基本的に炎、水、雷の3属性である。

先の読めなかった攻撃に、俺は、流石にこれは避けれないと思い、刀で切り払う。

しかし、切払うと言っても火球などの、固体的なものではなく、火炎放射器の炎に似ているので、空気ごと切る必要がある。

流石に、人間の体で空気ごと切るのは、それこそほんとに地獄のような鍛錬をしなければならないだろう。

でも、その概念すら覆すのがDADシステムだ、俺は、刀の鞘に魔力を纏わせ、空間すら断ち切る様にイメージをする。

「、、、せい!、、、」

刀の、鞘部分に火炎がぶつかると、そこから、死を撒き散らす火炎が消失していく。

それに、ルビアは、驚きつつ。

「これも効かないのね、、、」

そう言って、攻撃を突然に止めた。

何をするのか分からずに、身構えていると、おもむろにルビアが、紅龍刄に魔力を貯め始めたのだ。

その行動に、俺は、何をするのか分からずに戸惑っていると、言葉を発した。

「我は請い願う、」

ゆっくりと俺の結末を宣告するように、

「汝の枷を解き放ち、」

鎌の炎が、更に燃え盛る。

まるで、

「汝の真名を開放す!」

紅蓮の奔流が辺りを蹂躙する。

そして、

「名を、、、、」

その一言で、世界が変化した。

炎熱龍皇イフリート!」

鎌の炎が、ルビアの身体まとわりつき、鎧とかす。

龍皇装セフィラクィーンクェ!」

するとそこに現れたのは、もはや人間とは言えない神々しさを持った、少女であった。

さっきまでの金髪が紅の赤髪になっており、目まで真っ赤なルビーのようになっている。

「さあ、あなたの全力を見せてみて。」

そう言うとルビアが、俺に突撃してきた。

ルビアが、鎌を振りかぶると炎が生み出され、俺に襲いかかる。

「マジかよ!」

咄嗟の判断で横に避ける。

さっきまで俺がいた所が焼け野原になっている。

俺は、理解した。これ、当たったら死ぬやつ。

冷汗をかいていると、ルビアが。

「あなたもを解放すれば

戦えるでしょ?」

と言って、俺の黒龍丸を指差す。

それはそうだ、俺の黒龍丸とルビアの炎熱龍皇イフリートは同質の存在である。

あいつの持つ炎熱龍皇イフリートは、DADシステムの10柱の内の1つである。

その10柱それぞれが、他のDADシステムの上位互換であり、その中で、1番の高火力であるのがあれである。

見ているだけで戦意を損失してしまうくらいの神々しさ、確かに今の黒龍丸じゃ、太刀打ちは出来ないだろう。

しかし、だからといって、抜刀するわけにもいかない、それは、俺に誓いを自身で破ることになるのだ。ここは、俺自身の全力を披露したほうが良いだろう。

「分かったよ。」

そう言って、俺は腰溜めに刀を構える。

「そうでなくっちゃ!」

再び、ルビアが突撃してくる。

しかし、それは

相手と交錯する瞬間に呟く。

「、、、、焔一閃。」

ルビアの炎熱龍皇が俺の首に吸い込まれるより速く、そして正確に相手の胴体を切り裂く。

無論、鞘から出していないため、斬撃と言うより打撃に近いが。

それでもルビアは、瞬間的に纏っている炎の威力を強めてその斬撃を受け流した。

「これでも、効かないのかよ!」

毒づきながら後退すると、突然審判の先生が出てきた。

「お前ら、派手にやりすぎだ!」

そう言われて、周りを見渡すと、あたり一面が焦げていたり、機材が焼けていたりしていた。

確かに、やり過ぎである。

「今回の実戦訓練は、そこま、、、」

で、と、くまさんが言おうとした瞬間ルビアにある異変が起きた。

突然フラリとし地面に倒れたのだ。

「お、おい!ルビア!」

声をかけると、ふらつきながらも、すぐに立ち上がったが、なにか雰囲気が違う気配がした。

すると、突然。

「、、、炎熱龍皇イフリートバースト。」

すると、次の瞬間、体育館の温度が爆発的に上昇した。

見ると、炎熱龍皇イフリートがさらに燃え盛っている。

本能で直感する。

あれはやばい。

あれは、人を殺す力だ。

流石にやばいと思いくまさんに通告する。

「早く、模擬戦を終了させろ!」

しかし、炎熱龍皇イフリート業火が辺りを蹂躙しその炎から他の生徒を逃している最中だった。

「すまない!少しだけ時間を稼いでくれ!」

そう言って、先生は避難を優先している。

あの先生の焦りようから、この危機的状況は、本来起こらないはずの出来事であったと推測できる、しかも動けるのは俺だけ、この圧倒的に不利な状況で俺にできることは唯一。

「ルビア《あいつ》を止める。」

さっきまでの模擬戦程度の力では、あいつは止められない。

なら、

「やるしかないか、、、、」

俺は、黒龍丸を鞘から抜き去ろうとしたとき、

「ルビア様!」

どこからか、聞いたことのある声が聞こえた。そう言って、出てきたのは執事のエリックであった。

エリックは、自身のDADシステムを起動し短剣を生成した。

その時、俺の頭の中何かが当てはまった気がした。

あの短剣、俺は見たことがある。

あれは確か、、、

しかしそこで、俺は思考を止めなければならなかった。

エリックの短剣に刺されたルビアの、体から炎が消失していくのだ。

その状況に驚き硬直していると、突然エリックが。

「龍翔少年!お嬢様を。」

と言われたの、ルビアの方を見る。先程まで炎熱龍皇イフリートの力で、飛行していたので、その力が消失したとなれば、空中に留まることができない。

しかも、空中で意識を失ったため自由落下の体勢に入っている、このままでは、ルビアは地面に激突するだろう、それを考えた瞬間に、俺は足に力を込め地面が砕けるくらいに踏み込み、即座にルビアの体を横抱きに抱える。

俗に言うお姫様抱っこというものだ。

着地の衝撃を受け流しつつ、ルビアに怪我をさせないように着地する。

そこで、ルビアが目を覚ました。

「、、、ううん、、、、私は何をしていたの?」

その問いにどう答えればいいかわからないので、とりあえず保健室に連れて行くことにした。

保健室に着くと、先生に。

「ルビアをお願いします。」

すると先生が、

「任されました。君は授業に戻りなさい。」

っと言ってくれたので俺は保健室を退室した。

すると、そこには、エリックがいた。

「ちょっと来てくれ、龍翔少年。」

そう言って、廊下を歩いていく。

俺は、不審に思いつつあとに続く。

ついて行った先は、屋上であった。

そこで、すごいデジャブを覚えつつ、相手との一定距離を保つ。

不意に、エリックが止まったので、俺もそれの続いて止まる。

不穏な空気が漂いつつも警戒を緩めない。

ふと、エリックが口を開いた。

「彼女、、、ルビアお嬢様は、お前と喋っているときは、いつも良い笑顔をする。」

なんか再びすごいデジャブを感じた。

「そうなのか?」

とりあえず、ごまかいしてみたがどこまでごまかせたかわからない。

「ああ、本当だ、、、、急な話だがお前に頼みがある。」

「頼みってなんだよ?」

すると、エリックは、悲しそうにそして自分ではだめであると悟ったように言った。

「お嬢様を守ってやって欲しい、あの方は、誰にでも優しく、誰にでも平等に接する方だ、でも、そんな事をしても誰もあの方の本心を理解しようとしない、無論私もその一人だ。だから、お前には分かってもらいたい。」

その言葉には、とてつもない重みが乗っている気がしたが、それでも俺は、

「ああ、任せろ。」

と、口走っていた。

今思えば、あれはエリックなりのけじめだったのだろう。

そして、エリックはこれまで見たことの無い微笑を浮かべ、

「頼むぞ。」

と一言放ち、屋上を出ていった。


エリックの話があった後、俺は気になったことがあったので、ルビアに聞くべく保健室に戻ってくると、そこにはベッドに横になっているルビアがいた。

窓から指す夕日が彼女の金髪に反射し、まるで絵画のような絵面になっていた。

俺が、入ってきたのに気づくと、こちらに向かって微笑をした。

俺は、彼女の隣まで行き、来客者用の椅子に座った。

しばらく、お互いに沈黙が続いたが、先に口を開いたのはルビアの方だった。

「さっきはごめんね。」

急なその一言に度肝を抜かれる。

最初は、何に対して謝っているのか分からなかったが、それが、さっきの実戦訓練の事だと気づくと、俺は、謝るのは間違っていると思った。

「謝らなくていいよ、、、でも一つだけ聞きたいんだ。」

そこで一瞬言葉をつまらせたが、その先の言葉を口にしていいのかわからない、でも、エリックとの約束がある以上は、俺は、この先の言葉を口にしなければならない。

「ルビアの、炎熱龍皇イフリート

を使ったあとの記憶はあるか?」

「ッ!」

その言葉に、ルビアが言葉を詰まらせる。

確かに踏み込んだ問いかけだと分かっている。

でも、これを聞かない限り、俺は、こいつと面と向かって本心から話し合えないと思ったのだ。

少しだけ、ルビアは戸惑っていたが、ふと、言葉を発した。

「実を言うとね、私、まだ炎熱龍皇イフリートを使いこなせていないのよ。」

「それは、やっぱり十王のDADシステムだからか?」

十王という、ワードを俺が言った瞬間、ルビアが目を見開いた。

「ッ!なんで、君がそれを知ってるの?」

その純粋な問いに、俺は言葉を濁した。

「いや、、、噂で聞いたからさ。」

少し、疑いの目を向けられているが、俺は気付かないふりをする。

十王とは、DADシステムの中でも特に高性能な特注品に名付けられる名前である。

曰く、すべての世界を破壊する。

曰く、それらは、原初の地球から生成されたものである。

曰く、それらは、現在のDADシステムの原形である。

エトセトラエトセトラ。

まあ、ざっくり言うと、この世界に10個しか存在しないものである。

それは、現在の技術で作成したDADシステムを遥かに凌ぐスペックを用いているが、その分代償もでかい。

それこそ、ルビアみたいに、精神を乗っ取られるなどもあるらしい。

その力のせいで現在はその所有者は全て国が秘匿しているが。

「、、、はあー、、、まあいいわ。そういう事、今、私は、この子を使いこなす事ができないのよ。」

っと言って、首にかけてあるブレスレットを触る。

どうしたものかと考えていると、ふと、良い事を思いついた。

「そうだ。ルビア、今度の土曜暇か?」

そう言うと、少し考えて、

「ええ、暇だけど。」

そして、訝しげに俺を見る。

その表情に苦笑しつつ、さらにそこで、俺は爆弾発言をすることにした。

「その日、俺とデートしようぜ。」

その後に、響いた、ルビアの声が校舎に木霊したのであった。


次の日。

まあ、実際は同じ家に暮らしているので、待ち合わせる必要はないのだが、

ルビアが、待ち合わせ場所を言ったので、俺は今、近くの駅前に来ている。

ちなみに、そのことを、美咲に話したところ、流石に驚かれたが、キラキラした目で、行ってらっしゃい。と言われなんか勘違いさせた気がする。

ちなみに今は、午前11時半。

待ち合わせの時刻は、12時ピッタリ。

流石に早く着きすぎたと思ったが、そんな考えはすぐになくなった。

理由は唯一、待ち合わせ相手が来たからだ。

あたりを見渡し、俺を見つけるとぱあっと顔を綻ばせ、こちらに走ってくる。

俺は、走ってくるルビアのその服装にドキッとしてしまった。

春には珍しく、今日は暑い。

しかし、そんな事を忘れさせるほどの爽やかな服装であった。

白を中心としたカーディガンにこれまた白のプリーツスカートが、合っている。

どこぞの令嬢かと思うほどで、実際にルビアがここに来てから、辺りの男達がこちらに視線を向けている。

(まあ、実際に皇女なわけだが)

それはそうと、テレビにも顔が出ている、それでよくバレないものだ。

そこのところをどうなのか聞いてみる。

「お前、よくその姿でバレないよな。てっきりなんか変装したりするのかと思ったよ。」

そんなことを言うと、不敵な笑みを浮かべて言った。

「そりゃあ、人って相手の顔をしっかり見てるわけじゃないし、大丈夫でしょ、まあ、緊急時用に光学迷彩を応用した、変装道具持ってきてるから。大丈夫よ。」

さらっと言ったがその光学迷彩の変装道具どこで仕入れたんだよ!っとツッコミを入れたいのをこらえ、俺は、ごく自然に返した。

「お、おう。そうか、、、それじゃあ、行くか。」

「うん。」

そう言って、俺達は隣り合って近くのデパートに向かって歩き始めた。


デパートに入って数分、ショッピングを楽しんでいた俺達だがそろそろ、昼時なので少し休むことにしたすると、急にルビアが、今回のデートについて聞いてきた。

「そう言えばさ、なんで、私をデートなんかに誘ったの?」

その問いに対して、俺はどう答えようか考えていた。

確かに、様々な理由で誤魔化すこともできる。

しかし、それは、エリックとの約束破ることになるし、ましてや、自分の心に嘘を付きたくない。

そんな思考が俺の頭をよぎり知らず知らずの内に本心を話していた。

「理由なんて無いよ。ただ、お前と一緒に何処か行きたかったそれだけ。」

その答えに、ルビアは少し驚いたような素振りを見せたが、すぐに、いつもどうりになった。

「そそそそうだったのね、龍翔は私と一緒にでで出かけたかったわけね、、、」

なんか、呂律が回っていないが気にしないようにしよう。

そこで、俺は、ずっと気になっていた事を聞こうと思った。

「なあ、一つ聞いていいか?」

その問いに、大丈夫よ私は正常、私は正常、となにかやばい独り言を発していた、ルビアがこちらを向いた。

「何を聞きたいの?ちなみに、スリーサイズとかは駄目よ。」

と言って、胸を隠すように腕を交差させる。その言葉に、俺は、咳き込んでしまう。

「ぶっ!、、、おい、ちょっと待て、お前の中で俺はどんな人物像になってんだ!?」

すかさず、大声でツッコむと、笑って「冗談よ。」と言ってきたので、手のひらで踊らされた感がある。

話を切り替えるために、一回咳払いをし、話を戻した。

「ま、まあ、いいや。それで聞きたいことっていうのが、、、」

その先は、言葉に出せなかった。

急に、ガッシャーン、とガラスの割れる音がしたと思うと、上から黒コートのこの前屋上であった敵が現れた。

急なことに、その辺りにいた客は、逃げまどい、大混乱が起こってしまった。

すると、どこからか、警備システムのロボットが現れ、黒コートの敵を発見するなり。

「警告、警告、直ちに武器を収納しなさい!前告を無視した場合、無差別にあなたを無力化します。」

電子音がそう警告するが、一切反応しない。

すると、ロボットが銃火器を展開し、発泡を始めた。しかし、黒コートの敵は、それをいとも簡単に避け、ロボット達を通り抜けざまに切り刻んでいく。

数秒後、辺りには刻まれてショートしたロボットの残骸が散乱していた。

それを確認した、奴は、今度はこちらを向いた。

「ヒッ!」

ルビアが、怯えたような声を上げた。それは当然だ、俺でさえ、この殺意の塊に恐怖したのだから。

しかし、恐怖してばかりでは、このまま、俺もルビアも刻まれるだろう。

だったら。

「来い。黒龍丸。」

DADシステム顕現させ、俺は脳内で自らを戒めている鎖を引き千切った。

すると、体にルビアとの模擬戦よりも強く深い魔力が俺の体を巡り始める。俺は拳を握ったり閉じたりし感触を確かめ、ゆっくりと歩いている奴に向かって切りかかった。

だが、その一撃は、相手に防がれ、さらに、競り合いに発展する。

「龍翔!」

恐怖で動けない、ルビアが俺の名前を呼ぶ。

「ルビア、下がってろ!」

そう言って俺は、わざと体勢を崩し、相手との競り合いを受け流す。

後ろに飛ぼうとしたとき、相手が突進してきた。

速い!

俺は、後退するのを諦め、相手を追い込むために刀を振るう。

一閃、一閃合わせて思う。

前よりも格段に強くなっている。

その、俺の思考を読んでから知らないが、相手が思わぬ手に出た。

!」

その言葉を聞いた瞬間、相手の左手に炎が宿る。

咄嗟に横に飛び、躱すが少し掠ってしまった、だがそんな事はどうでもいい、あいつが今放ったのは、それは紛れもなくであった。

「 何で、お前がそれを使える!」

俺は相手に問いかけた。

しかし、その問いには答えずに、再び俺に斬りかかる。

まるで何かに乗っ取られているかのように。

「クッソ!」

再び、切り合いに発展したわけだが、

切り合って改めて分かる。

今の俺では、不抜けた俺では、やつには

再び刀と剣が拮抗する。

一瞬拮抗したかに思えたが、すぐに勝敗が見えた。

俺が弾かれ、近くの壁に叩きつけられたのだ。

「ごは、、、」

思った以上の衝撃に、肺から空気が抜けていく。

そして、口から血が溢れる。

壁にぶつかった時に、内臓が損傷したのだろう。

その考えに至った途端に、息が苦しい、視界もぼやけ始めた。

「流石に、ちょっとやばいかも、、、」

思わず苦笑するが、今は、顔が引きつるだけだ。

すると、どこからか、泣き声が聞こえた。

「ッ!」

あり得ないことが起こっていると思いつつ泣き声がする方を空耳であってくれと思いながら見る、しかし、現実は悲しく、そこには少女がいた。

きっと、逃げ遅れたのだろう。

相手もそれに、気づいたらしく、ゆっくりと、歩いていく。

俺は、予感した。

きっと、あいつは、あの子を殺す気だ。

しかし、そこに驚くべき乱入者が現れた。

それは、紛れもなく俺と一緒にいた、ルビアだった。

紅龍刄を展開し、相手を睨みつけている。

だが、その手は震えており、ましてや足に至っては立っていられるのがやっとであろう。

見ればわかるくらいに、子鹿のように震えている。

「来るなら来なさい!貴方なんかにこの子は殺させない!」

その覇気のない声で、高らかに宣言している姿を見て、俺は、何をしていると、自問自答していた。

俺は、彼女を守るために、

しかし、立とうとしても足に力が入らない。

「クッソ!」

俺は、毒づきながら、必死に立とうとする。

しかし、結果は同じである。

見ると、ルビア目の前に死神が立っていた。

大ぶりに短剣を振りかぶり、一撃を、確実に殺せるであろう一撃を放とうとしている。

その、死がルビアに襲いかかる瞬間。

「やめろぉぉぉおおおおおおおお!」

俺は、さっきまでの状況が何だったのかというくらいの速さ、走っていた。

そして、気づけば、ルビアと相手の前に入り込んでいた。


私は、恐怖していた。

それは、今龍翔が戦っている、あの男ではなく、自分にだ。

その理由は単純で、学園では、自分の力を最大限発揮し、実戦訓練もしっかりと出来るのに、いざ、ほんとの実戦になると、足がすくんでしまったからだ。

龍翔は、今健闘している。

私が、怯えたあの殺気をものともせずに、戦っているのだ。

私は、彼と生活してきた。

少ない時間だったが、彼という存在を少しは理解してきたはずだ。

だが、どうしてもわからないことがある。

それは、彼の戦う理由。

それが、分からない。

私は大切な人々の笑顔を守りたいから戦っている。

しかし、いざ実戦を見てどうだろう?

そんな自分の目的など、一瞬で霧散するほどの、圧倒的恐怖感。

それが、私を支配し、体を石へと変えていく。

しかし、その時脳裏によぎった。

私が戦おうと思った原点を。

あの日私が、私に私という存在意義を与えてくれた少年の、言葉を。

その言葉を思い出した瞬間。

私は、少しだけ恐怖が抜けていく感覚があった。

これら立てる。

そう考えた時、どこからか、幼い泣き声が聞こえた。

その方向を見ると、お店の中に小学生くらいの少女が居るのだ。

その声は、きっと黒コートの男にも聞こえたのだろう。

静かにしかし、しっかりとした足取りで、少女に向けて歩いていく。

私は、脳裏にあの子が斬られる姿を想像できた。

しかし、龍翔は倒れてしまっている。

だったら、私がやるしかない。

「お願い。来て、紅龍刄。」

そう言った、あるいはそう願ったかもしれない。

私は武装だけ展開し、敵と少女の間に入り込む。

そして、大声で宣言する。

「来るなら来なさい。貴方なんかにこの子は殺させない!」

そう言って、私は少女の壁になる。

しかし、男は歩みを止めず、ついに私を切れる位置にやってきた。

「ッ!」

足が震え、手も震える。

カタカタと、切っ先が音をたてる。

しかし、私は動かない。

せめて、少女の壁になろうとした決意したからだ。刹那、大振りの一撃が私に向かって放たれた。

その直前。

「やめろぉぉぉおおおおおおおお!」

と、龍翔の叫ぶ声がした。

ザシュと、何かが切れる音がした。

それと同時に、なにか生暖かいものが私の頬に当たる。

一瞬私が切られたと思った。

しかし、痛みがない。

確かに斬撃は、私に直撃したはずの攻撃なのに。

そう思い、目を開けると、、、

そこには私の前に更に壁となっている人物がいた。

龍翔だ。

その顔は、満足げに笑っている。

「、、、よう、大丈夫か?ルビア、、、」

いつもの様なハリのない声で私に問いかけてくる。

「、、、なんで、、、、どうして、、、」

私は、あまりにも現実離れしている現実に思考が追いつかなくなっていた。

「なんでか、、、強いて言うならお前を守りたかったからかな?」

不敵な笑みを浮かべるが、咳き込むとその口からは血が溢れてくる。

気づけば、黒コートの男は、いなくなっていた。

そんなのを気づかないほど、龍翔の傷は深かった。

もはや、足に力が入らないのか、足から崩れ落ちる。

「龍翔ッ!」

咄嗟に私は、龍翔を支える。

「サンキュー、、、ルビア、、、」

そんなことを言うので、私は視界がぼやけてくる。

「もう、喋んなくていいよ!今、救急車を呼んでるから!」

しかし、龍翔は諦めたように、自分の最後を知っているかのように、言った。

「もう、大丈夫だ。お前が無事ならそれで、、、」

そう言って、私の頬に手を当ててくる。

その手は、ひどく冷たく、赤かった。

すると、そこに、私の後ろにいた少女が歩いてきた。

「君、、、怪我はないかい?」

その言葉に、少女は、コクッと頷く。

「そうか、良かった、、、」

すると、少女が口を開いてこう言った。

「、、、お兄ちゃん、お姉ちゃん。助けてくれたありがとう。」

その言葉に、私と龍翔は、息を呑んだ。

その言葉に、私達は幾分か救われたのだろう。

その後、すぐに救急車が到着し、龍翔は、近所の病院に救急搬送され、すぐに手当を受けることになった。

私も、一様受けるように言われたが、辞退した。

龍翔は、救急車が来た当初から意識を失っており、私は、龍翔が目覚めるのを待った。


ここは、どこだろう?

俺は、いつの間にか、見知らぬところにいた。

確か、俺は、あの黒コートの一撃を受けて、その後、どうしたんだっけな?

その後の記憶が、思い出せない。

いや、正確には、なにか靄がかかっているようになっている。

そこで俺は、ここがどこか思い出した。

「ここは、、、」

5年前の場所だった。

なぜだろう、酷く忘れていた場所だ。

ここの記憶は、あまり良いものでは無い。

俺は、ここで沢山の人を、

「、、、、、、、、、、」

俺は、その記憶を思い出し、昔のことを思い返していた。


少しだけ、昔話をしよう。

九条龍翔、彼の昔の話だ。

なぜ、彼は、DADシステムについて他の人より多く知識を持っているのか、それには、彼に過去について話さなければならない。

そもそも、彼が、DADシステムに触れたのは、小学生の頃のことだ。

その頃の彼自体の記録は、存在しない。

否、存在しないのでは無く、っと言ったほうが近いだろう。

彼の、幼少期の記憶はおろか、幼少期の彼を見た者すらいない。

そう、彼自体がどこで産まれ、誰の子で、どこで育ったのか、それすらも証拠がない。

まるで、誰かがその存在を、意義を、

その起源すらも、、言えるだろう。

その彼が始めて観測されたのは、5年前のことだ。

そう、5年前、その、時間こそが、彼を変える特異点になったと言える。

5年前の事、彼は、新米のDADシステムの魔術師として、活動していた。

その時、事件が起きた。

その日、空間の歪みが膨張し、中から大量の魔獣が現れたのだ。

まだ、魔獣だけならば良かったが、その原因が、外道魔術師たちの暴走であったため、事態は急変した。

俺は、上に命令され、外道魔術師の掃討に、向かっていた。

その後が、地獄の始まりであった。

いざ到着してみると、そこは、もう地獄とかしていた。

見るだけでも、魔術師が30人ほど、そして、使役された魔獣が10匹ほどいるのだ。

俺は、いつものどおりに、殺しに殺した。

ただただ、純粋に殺戮を繰り返した。

殺らねば殺られるそんな時間が長く続いた。

どれくらい時間がたっただろう。

気づけば、そこには山があった。

死体という山が。

気づけば俺は一人だった。

俺は、また自らの手で人を殺めた。

俺は、ただただ、大切な人を救う為に、刀を取った。

確かに、俺が殺めることで、沢山の人が救われるかもしれない。

しかし、そう思い込んでもあまりに有り余る量の人々を殺してきた。

なぜ、俺がこのような事をしなければならなかったのだろう?

なぜ、という問いが頭の中を蹂躙し、なぜか、意識が飛びそうになる。

まるで、しかし、そこで思考が停止した。

どこからか泣き声が聞こえたのだ。

その方面を見ると、そこの壁の後ろに何かの気配があった。

そこに向かって歩いてみると、そこに居たのは、俺と同じくらいの歳の少女であった。

俺は、その子の姿に目を奪われていた。

悲しそうに歪んでいる顔だが、そんなのを、吹き飛ばすくらいの輝かしい金髪を持っている少女であった。

そんな少女であったが、俺を見た途端、更に泣き顔になった。

それはそうだろう。

理由はすぐに分かった。

なぜなら今の俺の姿が、黒い外套にベッタリと返り血を浴びて、更に血で赤くなった黒刀を持っている。

傍から見れば、死神と見間違われる可能性がある。

(事実、夜、俺の姿を見た上官が死神と言ったのが、地味に心に傷がついた。)

そこで、俺は、黒龍丸を結晶体に戻し、少女に接近した。

「ヒッ!」

明らかに怖がっている。

若干、心に傷を負いながら更に近づく。

少女は、動かない。というか、俺が怖くて動けないと言ったところか。

そして、ついに俺は少女の目の前に到着した。

「大丈夫か?」

短い問いだったが、すぐに反応しない。

数秒待つと、か細い声がよく通る声でこう言った。

「、、、、、はい、、、、大丈夫です、、、」

その言葉に、俺は安堵しつつ任務を遂げたので、帰還しようとしたすると、

「あ、あの!」

そんな声が聞こえたので、驚いて俺は後ろを振り向かずに足を止めた。

「、、、どうした?」

俺は、端的に応えた。

その後の言葉に俺は、驚くことになろうとは思わなかった。

「どうすれば、、、あなたのように強くなれますか?」

そんな事を聞かれたのは初めてだ。

俺に、話しかけてくる人物は、上官と同じ部隊のメンバーくらいだった。

少し考え、ある答えに辿り着く。

俺は、それを口にした。

「、、、自分が大切と思うことのために戦うんだ。それが自分の力になる。」

そう言って、俺は、歩みだした。

すると、後ろから、

「、、、、私、強くなります!あなたを守れるくらい強くなりますから!」

そう言った、少女は、声を枯らしてそう言った。

その言葉を、俺は、この頃の俺は、心にも留めなかった。


「ううん、、、、」

何だか、自室とは違う香りがする。

体も重たい。

とりあえず、起きなきゃ。

さっきまでなにか長い夢を見た気がするが、とりあえず今日の朝飯の当番は俺だったはずだ。今が何時か知らないが、窓から指す日の光から、まだ、登校時間にはなっていないはずだ。

しかし、そこで俺はある疑問にとらわれる。

確か、俺の部屋の窓がある位置からは、俺に光は当たらないはず。

そんなことを考えながら起きようとすると、

「ッ!」

体を起こした途端に背中に激痛が走る。

あまりの痛さに思わず

「いっっっっっっったぁぁぁぁあああああッ!」

なんて叫んでしまった。

なんかもう、背中がオーブンで焼かれている感覚。

痛みって痛すぎると熱く感じるって言うけど、あれってホントなんだって自分で実証できた気がした。

そんな激痛で唸っていると、

遅くなりながら気づいた。

俺の隣にいる人物。

細かく言えば、俺のベットにもたれかかって寝ている人物、俺はその名を呼んだ。

「ルビア!?」

そう、恐怖している体を動かして、やつの目の前に立ち、少女を守ろうとした、あのルビア嬢であった。

そのことをどうこう言う前に、俺は、様々な感情が渦巻く心を落ち着け、改めて、安堵のため息をついた。

そして、寝ている彼女の頭に手を乗せて、優しく撫でた。

「、、、ありがとうな、ルビア、、、助けてくれて、、、」

そのまま、優しく撫で続けると、少しだけ、彼女の寝顔が少しだけ微笑んだ気がした。

とそこで、病室の扉が開き、外から、小柄な何かが飛んできた。

その何かは、勢い余って俺にぶつかった。

「ぐふっ!」

と、どっかの青いロボットの名前を言ったような気がした。

そして、その勢いのせいで、また傷口に激痛が走る。

また、叫びそうになるので、必死にこらえながら突進してきた塊を見る。

それは、我が義妹の美咲であることに気づくまでに時間はかからなかった。

それ以前に、俺の突進してきてから、俺に抱きつき動かない。

「えっと、、、美咲さん?」

少し、様子がおかしいことに気づき、問いかける。

すると、俺の胸に顔を埋めながらこう言った。

「、、、心配したんだよ、お兄ちゃん。」

と、少し震えた声で言ってくるのだ。

「何言って、、、、、」

そこで、俺は、美咲が泣いていることに気づいた。

俺は、その後の言葉を飲み込み、先程ルビアにしたように、頭を撫でた。

「ごめんな、、、こんな兄ちゃんで、、、」

そう言うと、美咲は首を横に振る。

「、、、、大丈夫だよ。お兄ちゃんの無軌道っぷりには、馴れてるから。」

そう言って、ニコッと笑いかけてくる。

その妹の言葉に、少し苦笑しつつ、それでもその言葉に救われた気がした。

「ちょっと、ねえ、あのさ、、、」

と、疑問系の言葉が、3連発くらい聞こえたと思うと、いつの間にか、ルビアが起きていた。

その声には、若干の怒気を纏っている。

「ル、ルビアさん?」

俺はその反応に戸惑っていると、ルビアも、俺に突撃してきた。

「ぐふ!」

さっきと同じぐらいかそれ以上の衝撃に見舞われ、再び青いロボットの名前を口走った気がした。

しかし、俺は責める気にはなれなかった。

なぜなら、思いっきりぶつかった後、美咲と同じように俺に、抱きついて来たのだ。

「お、おい、、、、」

すると、ルビアは、目を赤くしながら、俺の体をぎゅーうっと更に強く引き寄せた。

そして、ポツポツと言葉を漏らした。

「、、、心配、、、したんだから、、、あなたが私の前から消えちゃうんじゃないかって、あなたはどこかに行ってしまうんじゃないかって、、、でも、、、良かった、、、生きててくれて。」

そう言って、俺の胸から頭を離し、太陽のような微笑みを見せてくれた。

その笑顔に、内心ドキッしつつも、

俺は、その笑みを見て、改めてこいつを守れたことに感慨を抱いた。

すると、いつの間にか俺の胸からベッドの縁に座っていた、

「んで、お兄ちゃんは、なんか私達に言うことはないの?」

そう言って、にっこり笑っている。

いや、正確に言うと、顔は笑っているが、目が笑っていない。

というか、美咲の後ろになんか見える。なんだろう?白い仮面を被って、紅龍刄の2倍の大きさを要する鎌を肩に担いでいる。

その背後霊?を見なかったことにしつつ、流石に俺もこの事に関しては言わなきゃいけないと思っていたので口を開いた。

「ごめん。二人とも、迷惑かけて。」

そう言って、俺は、二人に向かって頭を下げる。

二人は、呆れつつも笑顔、会釈してくれた。

すると、さっきまでの美咲の後ろに見えていた背後霊?が、消えていった。

その危険の消滅に安堵しつつ、俺は、改めて、現在の状況を聞くことにした。

「、、、、それで、あの後どうなったんだ?」

そう言うと、二人は、顔を合わせて淡々と話し始めた。

俺が倒れたあと、あのすぐにあの現場は閉鎖されたらしい。

らしいというのは、かく言うルビア達も、あれから現場に行っていないらしく、あの後もすぐに俺と一緒に救急車に乗ったので、現場の状況もよく見ていなかったらしい。

まあ、俺とルビアもあの時は、満身創痍だったので、仕方ないだろう。

しかし、そこである問題が発生する。

「そう言えば、俺達を襲った黒コートの男は、どうなったんだ?」

その問いに、ルビアは、少しだけ残念な顔をする。

「それが、まだ捕まって無いってて、、、」

「、、、、、そうか、、、、」

その言葉に、俺は、ある意味良い方向に向かったと考えた。

まあ、それが相手に対しての安堵なのか自分に対しての安堵なのかわからないが。

その俺の反応に疑問を持ちつつ、ルビアが聞いてくる。

「それで、学園はいつから行けるの?」

その問いに、改めて自分の体の状態に気づく。

話している最中は、気づかなかったが、体の至るところに打撲痕や、裂傷痕、そして、背中にある一筋の裂傷など、普通に考えれば死ぬくらいの、傷跡である。

「よくこれで生きてたな、俺、、、」

ぼそっとつぶやいた言葉に、ルビアが苦笑する。

「そりゃそうだよ、ただでさえ、無茶し過ぎなのに、それを天元突破しちゃうんだから。」

ここで言う無茶とは、俺がルビアの前に飛び出したことだろう。

ほんとにすいません。

と思っていると、美咲が割って入ってきて、

「そうだよー、でも、ルビア姉もお兄ちゃんが意識失ってる間、ずっとお兄ちゃんの名前を読んでたじゃん、手を握ってさ。」

そう冷やかすように言う、ルビアが顔を赤くし反論する。

「そ、それは、ええっと、、、だって心配だったんだもん、、、」

段々と小さくなっている声に俺は、後半が聞き取れなかった。

その後も、俺とルビアが話をし、美咲が、たまに茶々を入れる、ということが何回かあった。

そこで、病室の扉がノックされ、看護師のおばちゃんが入ってくる。

「ごめんねー、お嬢さんたち。

今から、龍翔君の検査があるから。退室してもらっていいかしら?」

看護師のおばちゃんがそう言うと、二人は、納得した様子で、

「それじゃあ、また来るね、龍翔。」

そして、ルビアと美咲は退出した。

「かわいい彼女さんと妹さんですね。」

とか言ってくるおばちゃんをルビア達が去ったのを見ると、半眼で睨んだ。

「もうその変装いいから、それと口調も元に戻せよ。」

すると、おばちゃんがニヤッと笑いながら、次々と服を脱ぎ、その下から、男性用のスーツが出現する。

そして、最後に、顔に付けてあったマスクを剥ぐすると現れたのは、彫りの深い顔をした。ダンディな男の顔であった。

男は、少し息を整えると、首に掛けていたネックレスを外し、さっきの声よりもさらに低い声で話しかけてきた。

「よく、わかったなお前。俺の変装見破るのは、中々のものだぞ?」

そう言って、ニヤッと不敵に笑う。

彼の名は、雨宮薫あまみやかおる

俺が昔お世話になった、人物である。

俺の元仕事場の同僚であり、DADシステムの開発エンジニア兼魔術師をしている、実は、凄い人。

「たくよー、もう少し気を使ってもいいんじゃないか?しかもしっかりと変装してるって、どんだけ要周到何だよ。」

そんなことを言っても、相手ひらひらと手を振り、さっきまで、ルビアたちが座っていた、椅子とは別の椅子を用意して座った。

「んで、要件ってなんだよ?まさか本当に検査に来たとかじゃないんだろ?」

そう言うと、俺の机の上に鞄から大量の資料を出してきた。

ドン、ドン、ドン。

続けざまに、次々と資料の束を出していく。

そろそろ、机に置けなくなった頃についに最後の資料が置かれた。

その量は、おおよそ、そんな小さなかばんには入らない量の資料だった。

「ちょっと待て!お前これどこから出した!?」

それを聞いて、少し自慢げに話す。

「そりゃあー、、、ほら、あのどこぞの青いたぬきの、、、、」

その後の言葉を聞く前に、俺はその言葉を、遮った。

「ストップ!それ以上は言うな!色々なところから、苦情が来る!」

俺が咄嗟に言った言葉で、薫は、話を切り替えることにしたらしい。

「まあ、いいや。それで本題に移るのだが、、、」

言葉の最後のほうが濁っていたので、気になって問いかけた。

「どうした?」

俺は問いかける。

すると、少し顔を顰めどう答えていいのか考えているといったとこだろう。

しかし、その考えもまとまったのだろう。

「じゃあ、、、、話すぞ、、、今のお前にとって、、、大切なことを、、」

そして、机の上に散らばっている資料の中から、一際目立つ代物を出した。

枚数的に15から20枚ほどある。

そして、表紙に

外部に漏れた場合、その対象を始末し資料を抹消せよ。

と、赤い文字で書いてある。

てかなに、対象の抹消って、なんかものすごい怖いパワーワードなんだが、

てかそうじゃなくて!

「いいのか?そんな超重要そうなもの俺に見せて?」

俺は、現在ただの学生である為、そこまでの機密事項を持ってくるのは、意外であった。

すると、薫がへらへらと笑いながら、

「大丈夫、もし、上層部にバレた場合、お前の社会的な地位が無くなるだけだから。」

さらっと、怖いことを言ってくる。

しかし、今更もう遅いので、意を決して資料の1ページ目を開いた。

「こ、これって、、、」

俺は、いつの間にか、驚愕の声を上げていた。

そう、そこにあったのは、、、


それから、数日後。

俺はなんとか無事に退院出来た。

結果的に、背中の傷以外は比較的に早く治ったのだが、それでも、負傷したときに出血量が致死量の一歩手前だったそうなので、検査なり経過観察なりをしているうちに、いつの間にか、数日が過ぎていた。

まあ、それはさておき、こうして退院できたわけだが、問題は、その後であった。

というわけで、数日ぶりに自宅に帰ってきたわけであるが、それこそが問題であった。

家に着いてみると、なんだか騒がしい気がした。

見ると、俺の家の周りに、沢山の人がうじゃうじゃいたのだから、

「、、、これ、どういう状況?」

素直な、疑問が浮かんでしまった。

しかし、家のは特に話題になるようなものは無いはず。

だって、俺の家に住んでいるのは、俺と美咲とルビア、、、

そこで思い至る。

「そういやあ、ルビアって皇女だったけか?」

そう言えば、最近になって忘れていたが、ルビアは、もともと一つの王国の皇女であった。

いやしかし、それは、王様自体が了承しているはずなので、そこまでニュースなどに取り上げられることは無いだろう。(そんなことをした場合多分消されるだろうから、、、)

だとしたら、あの人たちは、何に関して取り上げようと思ったのだろう。

すると、家の隣にあるマンションから、誰かが手を振っているのが見えた。

よーく目を凝らすと、そこには、なぜかよく知る人物、というか我が妹である、美咲が手を振っていた。


とりあえず、美咲が手を振っていたマンションのロビーには来てみたが、様々な不安が残っていた。

まあ、それらは、美咲が知ってるだろうからなんとかなるだろう。

すると、突然、ロビーの扉が開くと、そこに居たのは。

「ルビア!?」

素っ頓狂な声を上げたが、今になっては、美咲がいるなら、一緒に住んでいるルビアもいるだろう、と思った。

すると、こっちに気づき静かに手招きする。

まるで、こっちに来いと言っているかのように、、、

とりあえず、従うしか方法は無いので、俺はそっちに向かった。


しばらくして、マンションの上層に到着した俺だが、ルビアのあとについてきただけなので、今がマンションのどからへんなのか、わからなくなってきた所で、ルビアが足を止めた。

「ここよ。」

そう言って、目の前の扉を指差す。

そこには、何も変哲もないただの扉があった。

「なにが?」

言うと。

「とりあえず入って、話はそれから。」

そう言われれば、従うしかない。

俺は、若干、不安が残っていたが、それでも俺はそれに従うべく、中に入った。

中に入ってみると、そこにいたには妹の美咲と、もう一人。

顔を知っているどころか、数日前に会った。

「、、、薫!?」

素っ頓狂な声上げると、当の本人は、

「大正解。」

と言って指をパチンと鳴らした。

そういうことじゃなくて!とか思いながら、とりあえずルビアに無言の圧で座れと言われているので、仕方なく着席する。

なんだか、すごい不思議な空間が広がっている。

なんせ、いち王国の皇女に、軍の官僚、それに民間人が二人。

明らかに出会わないはずの人物同士が出会っている。

それだけでもカオスなのにしかも家に沢山の人が集まっているという現状だ。

しばらくの間沈黙が続く。

ここは、一番何も知らない俺から話を切り込むべきだろう。

「、、、な、なあ、なんで俺んちの周りがあんな状況なんだ?」

俺が今一番気になっている事から話を聞こうとする。

すると、しばし沈黙が訪れた後、ルビアが口を開いた。

「それはね、、、とりあえずこれを見て。」

そう言ってスマホを取り出し、画面を俺に向けてきた。

スマホに表示されているのはネットニュースのサイトらしく様々記事が載っている。

そして俺は、ルビアが指差している記事を見て、

「、、、、、、、、」

なんと返せばいいか分からなくなった。

なぜなら、そこには、並んで歩く俺とルビアの姿とそれと同時に黒コートの男と戦っている俺の写真が貼ってあったからだ。

「、、、、何これ!?、、、」

素直な感想が飛び出した。

そして、追い打ちをかけるように、

見出しには、[ルビア様に交際相手!?]

そう書かれていた。

それを見て、この行動は迂闊だったと改めて理解した。

額に汗をかきながら、どうするか考えていると、

「一応、私のお父様が情報操作をしてるから、それが済んだらもうあのマスコミは来ないはずよ。」

それに関しては、ルビアの家が何とかしてくれると思っていたがまさか、ここまで早い対応とは、、、

その早さに関心していると、今更ながら、薫が居ることに違和感を覚えた。

「そういやあ、なんでお前がいんの?」

と言って今度は薫に質問する。

すると、薫がちょいちょいと手招きをしたので、そっちに近寄る。

そして、耳元で。

「今の俺は、お前の昔なじみの友達ってことになってるから、お前も合わせろ。」

そこを聞きたいのではないと思ったが、それよりも早くルビアが聞いてくる

「えっと、奏絶さんは、コーヒーで良いですか?」

そう言ってこちらを向いてくる。

それに少し驚きつつ、薫の方を見ると、薫は目線で、「その話に乗れ。」

と言っているようだった。

聞いてみては良いものの、ろくな情報が手に入らなかったがまあ良いだろう。

そう考えていると、俺の目の前にコーヒーが置かれる。見るとルビアがテーブルに置いてくれていた。ルビアが俺にもコーヒーを入れてくれたらしい。

「はい、どうぞ。」

そう言って、俺の前にカップを置く。

「ああ、サンキュー。」

俺はそう言って置かれたコーヒーを一口飲む。

すると、その光景を見ていた美咲と薫が、コソコソとなにか話している。

「どうした?」

少し不自然に思ったので聞いてみる。

しかし、二人はコソコソと話を続けそしてふと話をやめたと思うとまたこちらを向き、俺とルビアを交互に見て、

ニヤニヤし、またコソコソと話をし始める。

「な、なんだよ、、、?」

俺は戸惑いつつも聞いてみる。

すると、美咲が俺とルビアを交互に見つつ。

「なんか、こうして見るとなんだか二人が、夫婦に見えてきたんだけど、、、」

その言葉を聞いた途端、隣からガッシャーンと音がしたので、見るとルビアがお盆を落とした音だった。

「おいおい、大丈夫か?」

そう言って俺は立ち上がり、ルビアの手伝いに入ろうとする。

「ごめんね。大丈夫だから、座ってて。」

ルビアが急いでそれを拾う。

「良いよ、二人で拾ったほうが早いだろ?」

俺も拾いに行く。

すると、それを見ていた美咲と薫が、

「「熟年夫婦か!」」

と、揃ったツッコミを入れたいのだった。

数時間後、、、

結果的に言うと、なんだかんだでマスコミの群れはいなくなり、無事に帰宅ができた。

結局薫は、仕事があると言って仕事場に戻った。

そして、気づけばもう夜遅くになっていた。

風呂から上がった俺は、

リビングでくつろいでいる、ルビアと美咲を見て、何気ない日常に戻ってきたと改めて実感したのであった。


そんな幸せを龍翔が噛み締めていた時。

ある雑居ビルに入っていく男がいた。

「、、、、ここにするか、、、、」

男はそう言って、地面に手を付けてぶつぶつと何かを唱える。

すると、辺りの景色が一瞬にして切り替わる。

まるで、どこかに瞬間移動したかのように。

しかし、驚くのはそれだけでは無い。

見ると、そこには見えるだけで数名の人がいた。

いや、、、と言ったほうが正しいだろう。

今はもう、生気すら感じられない。

しかし、それは何事もないように最奥に歩いていく。

ただ、ただ、歩いていく。

その目には、思考の光すらない。

まるで、何かに操られているかのように、、、

すると、突然に視界が開けた。

するとそこに広がっていたのは、

「、、、、、、」

男は気にもせずにただただ、その景色を眺める。

すると、どこからか

「ようこそ、、、私達の世界へ、、、」

という声が聞こえた。

振り返るとそこに居たのは、、、

男は跪いた。

何か考えが浮かんだわけではないのになぜか本能でそうした。

なぜだろう、そこにいる存在には、逆らってはいけない気がするのだ。

それくらいにアレの存在は

その後、男を見た者はいない、、、


結局俺は、退院してからも本調子には程遠く、学園に行けずにいた。

なんだろうか?

なんかこう、力が入らない。

まあ、あれだけの血を失っておいて急に動けるほうが化け物だが、、、

しかし、そろそろ血は足りてくるはずなのだ。

だが俺にはそれ以外に思い当たることがあった。

俺の相棒である。

黒龍丸のことである。

なぜか、黒龍丸がここ最近顕現出来なくなっていた。

整備不良かと思い、整備に出したのだが結果は、正常であった。

とりあえず、朝。

ベッドで寝ていると、揺さぶられている気がした。

てっきり最初は美咲が起こしに来たのかと思ったが、明らかにおこし方が優しすぎる。

いつもどうりに考えて、美咲ならもっと雑な起こし方をしてくるに違いない。

ということはつまり、俺の家にいるのは俺と美咲以外にあと一人。

俺は体を起こさずに目を開け。

俺を起こしている人物の名前を呼ぶ。

「、、、おはよう、、、ルビア。」

俺がそう言うとルビアはにっこりと太陽のような笑顔を浮かべ、

「おはよう、、、龍翔。」

そう言ってくれた。

ルビアは美咲の代わりに起こしに来てくれたらしく、美咲はリビングでくつろいでいた。

ソファーに寝っ転がっていた美咲だったが、俺を見ると顔を挙げずに。

「あっ、お兄ちゃんおはよー。」

と、言ってくる。

ちなみに今日はもちろん平日なので、美咲もルビアも登校するわけだが、おれは今日も休まなければならない。

なんか、黒龍丸の調整をもう一度行うらしく、それに俺も同行しなければいけないらしい。

正直に言って、

「これ、、、出席日数足りるのか?」

なんせ、これまでの休みを総合すると、実に2週間ほど休んでいる計算になる。

まだ、4月15日とはいえ、学期のはじめにいきなりこんなに休むと後々大変になる。

その思考を読んだのか、俺の前に座るルビアが、

「出席日数に関しては、安心して頂戴。確かあの学園入院とかの時は出席したことになったはずだから。」

さらっと今の俺にとっての希望を言った気がした。

「、、、それ、、、本当か?」

俺は少し疑問に思いつつも聞いてみる。

「、、、本当よ、、、多分、、、」

少しだけ情けない返事が聞こえがっくりと肩を落とす。

すると、時計が8時を指した。

「やっば!学校行かなきゃ。ルビア姉早く行くよ。」

美咲が通学かばんを持って、ルビアを呼ぶ。

「わかったわ。今行く。」

そう言ってルビアは立ち上がって、荷物を持つ。

二人揃って玄関に立った絵面は、なんだか本当の姉妹に見えた。

「「行ってきます。」」

二人はドアを開けて出ていく。

そんな二人の背中がドアに消えていくのを見て。

「、、、、行ってらっしゃい、、、」

見送りの挨拶をする。

時計を見て、俺もそろそろ行かなければと思い支度をして外に出る。

すると、なぜかさっきよりも風が強くなり始め、次第に水滴が落ちてきた。

「、、、、、、雨、、、、、?」

俺はその時ふと不穏な気配がした。

なんだろうこの感じ、まるで、が起こる

そんな気がした。

しかし、そんな不安も一瞬だったので、俺は気にせずに行き先に向かって歩いていった。

俺はこのとき気づかなかった。

これから起こる事件に、学園に何か暗いものが進行を始めたということを。






























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