シーンの断片が自分の記憶に溶け込むような感覚があった。情景の切片は小説という形で断続的にしか観測できないが、一つの流れを確かに感じれる。
叙情的な美しい文章で、繊細に綴られている物語です。物語は静かに進んでいき、幻想的に感じるほどの美しさがあります。皆さんもぜひ読んでみてください。
中学2年生の少女・泉は、教室に閉塞感をおぼえながらも、心のバランスを保つ。うまくバランスを保てない少女が居る。教室より理科室に馴染む少年が居る。教室という箱に、個人の別世界が、プレパラートの上のアメーバのように生きている。顕微鏡越しに拡がる透明な微生物の世界。それは、10代を生きる人の姿のように、流動的でフォルムを固定しないからこそ、脆くも美しいのだろうか。花びらみたいな心の行方を、見守らせて、ください。
目が疲れるのを気にしないで、ゆっくり物語の世界に浸りたいと思いました。
思春期。今思っても、なんだか特殊な時期だったと思う。そんな思春期特有の心情が、とても美しい文章で綴られています。懐かしいような、切ないような、そんな気持ちになるお話でした。思春期は、1日が長くて、1年経つのだって本当に長くて、妙な閉塞感で溺れそうだった。そんな感覚が呼び覚まされました。