#12 一段落

前書き失礼します。

遅くなってほんとごめんなさい。

星評価してくださった方、ありがとうございます!

――――――――――――――――――――


「ゆきくんっ!」


地面に倒れこんだ衝撃で、残りわずかしかない彼のHPが0になる――ことはなかった。けれど、HPがほとんど残っていないことに変わりはないから、治癒魔法を何度かかけて、ようやく彼のゲージをほぼフル回復させることができた。


「今は、ゆっくり休んでね」


彼の頭をわたしの太ももの上に――俗にいう膝枕をして、さらさらした髪を何度も撫でつけていると、だんだんと彼が身じろぎをし始めた。


「う、っつつ…」


「ゆきくん、起きた?」


起き抜けでまだ焦点が合っていないのか目をこらすようにわたしを見て、すごい勢いでガバッと身を起こした。


「わわっ…」


「ごめん、重かっただろ」


「ううん、大丈夫。もう平気なの?」


「まだ少し頭が重いけど、大丈夫」


「今日はもうお家でゆっくりしよっか」


「そうだな…」


よいしょ、と身体を持ち上げる彼の後に続いてわたしも立ち上がると、まだ少しふらふらしている。


「だ、大丈夫?」


「ああ。ごめん」


そのあと、ルアさんが家で待っているので家に転移して、いろいろ聞きたいこともあったから彼女にいろいろ聞くことにした。


「遅くなってごめんなさい」


「いえ。すみません、全てお任せしてしまって」


「それが仕事ですから。ですが、いくつか聞きたいことがあるんです」


「聞きたい、ことですか?」


「はい。今回の対象のことです」


「…それが、どうかしたんですか?」


少し間が空いた。なにか思い当たる節があるのかもしれない。

よくよく考えてみたら不思議な点が多すぎる。

例えば、何度も同じ場所で同じようなことをし続けているということ。

そもそも同じプレイヤーを何度も執拗に狙い続けること自体が稀だし…。


「今回、ルアさんが依頼された件の対象、NPCだったんです」


「っ!でもっ、カーソルの色が…」


「このゲーム、NPCと犯罪者カラーが同じなんですよ。あんまりひどいプレイヤーだと、モンスター扱いされているような形になるんです」


「これが単なる勘違いならいいんですが、ここまで執拗に同じ場所で狙われ続けたら、クエスト窓を覗くくらいはするんじゃないですか?」


ルアさんが言葉につまったような顔をする。

こりゃかなり怒ってるな…。こうなると俺もどうにもできないし…。

なんか後ろに般若みたいなの見えるし…。

それを見て観念したのか、ルアさんはポツリ、ポツリと言葉を紡ぎ始めた。


「あなたの…いえ、あなた方の思っている通りです。私はあなた方を利用して、クエストをクリアしたんです」


彼女の言うには、あるクエストを受けて、キーアイテムを入手したはいいものの、そのあとに倒さなくてはいけないモンスターが強すぎて彼女一人では倒すことができなかったらしい。

何度かパーティーを組んだりしてみたものの惨敗。だから今回、それなりに名の通っていた俺たちに近づいたらしい。

なんで嘘をついたのかと聞くと、PKと言わないと手伝ってもらえないと思っていたからだと申し訳なさそうに言った。


「なんだ、そういうことだったんですね」


「…えっと、責めないんですか…?」


「責めませんよ。でも、そういうことなら先に言ってほしかったです。PK狩りじゃなくても、頼ってくれた人たちにはできるだけ応えたいですから」


みゆはそう言うと柔らかく微笑んだ。

おぉ…みゆの慈愛の笑みだ…。

なんかこれ久しぶりに見た気がするな…。


「ありがとう、ございます…っ」


ルアさんは目尻に涙をためながら深々と頭を下げた。

彼女は落ちついてから、もう一度深々と俺たちに頭を下げて、家から出ていった。


「ふぅ…。一応一段落したな…」


お疲れさま、そう続けようとしたが、声が出ない。なぜなら…


「んっ…」


「…!?」


目を瞑ったみゆの顔が、目の前にあったから。

唇にはしっとりとして柔らかい感触がある。

数秒ほどでみゆは口を離したけれど、俺には何分にも感じられた。

そしてそのまま、俺をソファに押し倒してぎゅっと抱きついてくる。

もう離さないとでも言うように。


「うぅ~っ」


「…痛いて」


「…ゆきくんが心配ばっかかけるのが悪い」


「えぇ…」


俺のせいなの…?

飼い主に甘える猫のようにぐりぐりと頭を擦りつけてくる。

ちょっと…というかだいぶ大げさだけど、心配してくれてたんだよな。


「ごめんな、心配ばっかかけて」


「ほんとだよ…。すっごく心配したんだから」


「…で、なんでお前は俺の指食べてるの?」


「んむっ…。おいひいはら」


はむはむと音がしそうな勢いで、指がしゃぶられている。

…ほんとになくなったりしないよね…?

そんな一抹の不安を覚えつつも、されるがままのんびりと(?)過ごしたのだった。


このあとほんとに欠損アイコン出てきて焦ったのはまた別の話。

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犯罪者狩りカップルのまったりゆったりスローライフ みーにゃ @gogatsunolion

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