#10 V.S襲撃者
「あの女、来た」
「さっさと渡せば、いいものを…」
「いつもの通り、やるぞ」
「…おう」
赤いカーソルが4つ集まって小声で話している。
そしてすぐに全員隠密スキルを発動したのでカーソルごと彼らの姿は見えなくなった。
「あれは…NPC?レベルも高いし…」
「たぶんそうだな…。ただレベルがやけに高いから、彼女のレベルじゃ瞬殺だろうな…」
「ルアさん、NPCだって知らないのかな…」
「と思うぞ。PKerに襲われたって来たんだし」
とりあえず、彼女にあれがNPCだってことを伝えるのが先決だろうな。
でも、それはちょっと間に合いそうにないし…。
「カーソルは赤いからモンスター扱いだよな…?」
これで俺らが倒したことによってクエストの進行が止まったりすると面倒だけど、彼女はクエストとは言ってないし…。
「ゆきくん、ゆっくり考えてる時間はないよ。早くいかないと」
「っと、そうだな。みゆはルアさんを安全な場所まで避難させてくれ」
「…わかった。すぐ戻ってくるから、それまで死んじゃダメだよ?」
「もちろん。そんな簡単に死んでやるつもりはないよ」
…奥の手もあるしな。
左腰に加わった頼もしい重さを感じながら頷いた。
「じゃあ、ルアさん頼む」
「うん。気をつけてね」
両の手に剣を握り、森の中へ入ると、案の定彼らは罠の設置を行っていた。
幸い、こちらのに気がついた様子はない。
この辺はやっぱりNPCだな…。
ただ、なんで彼女を執拗に狙うんだ…?
あとで尋問してみるか。
とりあえずは、近くにいる二人だな。
音を立てずに背後に回り、そのまま首を落とす。
味方がやられたことに気づいて、残りの三人が俺のほうを見てるけど動きはしない。
これ簡単に瓦解するやつか…。
妙に個体が強いわけだ。
「貴様、何も…」
「あ?」
隙だらけなんだよなぁ…。やっぱりモンスターの戦闘と大差ないか。いやまあ、実際モンスター扱いなんだけども。
やっぱりプレイヤー相手じゃないとつまらないな…。
「二人、やられた。撤退…」
「させるかよっと」
「がっ…」
逃がしてたまるかってんだ。レベルの割に弱いからいい経験値稼ぎになるし。
さて、残りは一人だけど…。
なんだかやばげな雰囲気出してんだよなぁ。
「…逃げないのか?」
「易々と逃がす、相手じゃ、ないだろう?」
よくわかってるじゃないの。二刀を構えて、突進しようとした刹那――
「…っ!」
一人残った襲撃者の浮かべた、ニヤりとした笑みに、悪寒とも思えるようなおぞましいなにかが身体を撫でた。
直感的にまずいと感じ、後ろに大きく後退した。
ひゅん、という風切り音とともについ数瞬前まで俺がいた場所が大きく抉りとられていた。
さっきのやばげなのはこれか…!
「今の、避けるか」
「おいおい、ノーモーションでそれってさすがに反則すぎやしないか?」
「お前も、十分反則だろう?」
「あんたに比べちゃ可愛いもんだよっと」
話している間にも間髪あけずに飛んでくる致死の一撃を掻い潜りながら隙をうかがっていたが、そもそもそれを出している当の本人はどういうわけだかは知らないけど動いてない。
動いてないってことはどこからの攻撃にも対応できるようにしているわけで…。
「(このままじゃジリ貧だな…みゆを待つしかないか)」
「…どうした。攻めてこないのか?」
「ずいぶんと饒舌になったもんだな」
「ふん。お前がただ逃げ回っているだけで退屈なのでな」
「なんだ、そんなことか。ならもうしばらく付き合ってもらうぜ?」
「……」
そこは攻めてくるんじゃないのか、という微妙な顔をしたのが見て取れた。
そんな安っぽい挑発に乗るわけないだろ?
みゆがここに戻って来るまで付き合ってもらうぜ。だんだん見切れるようにもなってきたしな。
わざとぎりぎりで避けたりしていると、俺が余裕を見せてきたことで焦ったのか狙いがだんだんと雑になってきている。
ガードも大分甘くなってるな…。
攻撃を避けるいい練習にはなるけどそろそろ飽きてきたし、ちょっとだけ削ってみるか。
それにしてもみゆのやつ、ちょっと時間食い過ぎじゃないか…?
みゆのことだから万が一はないとは思うけど、ちょっと焦ってる感じだったからちょっと心配だな…。
「わからないことをいちいち気にしてても仕方がないか。さて、ぼちぼちやりますか」
「やっと、攻める気になったか…」
敢えて反応せず、ポーチから二本細長いピックを取り出して足元に投げる。
当然弾かれるが、こっちはブラフで本題は――
「…っ、クソが」
「油断しすぎなんだよ」
足元に意識がいった隙にもう二本、目の位置に向かって投げたピックは片方は目に突き刺さって部位破壊を起こしたが、もう片方は惜しくも目には刺さらなかった。
それでも顔面に刺さったので少なからずダメージは入っているはず。
「これで、一歩リードだな」
「…舐めるな」
「そりゃ、お互い様だろっ!」
不意打ちで突進攻撃を敢行したがさすがに防がれた。
そうそう、そうこなくちゃ…。
二人の口角は、意図していないのに上がっていた――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます