幼馴染に好きと告ったら振られたのでもう元の関係に戻れない【企画参加用】

プル・メープル

第1話 ゆうくん、好きです

「ゆうくん、好きです」


 そう伝えるのは、思っていたよりも簡単だった。彼を空き教室に呼び出して、1歩踏み込んでしまえば、後はすんなりと言葉になった。

 けれど、 伝えてから急に恥ずかしさが増してきて、私の心臓の音は脳にまで届いてくるようになった。目の前にいるゆうくんに聞こえてないといいけど……。

 そんな心配をしたのも束の間。

 30分後、私は保健室で目を覚ました。




 保健室のベッドは思ったよりも固くて寝づらいけれど、学校で寝れるという優越感みたいなものを感じられるからか、横になっているだけでウトウトしてしまう。

 ゆうくんはそう言っていたけれど、今の私はそうでもない。

 ここに運ばれる前のことを思い出せば、勝手に涙が流れる。

「…………私、振られたんだよね」

 胸が締め付けられるように痛い。

 3歳の時にゆうくんが隣に引っ越してきてから、ずっと一緒にいて、ずっと仲良しでいたのに……。

 ゆうくんのことなら誰よりも私が理解しているはず。逆に私のことを一番理解してくれているのもゆうくん―――――――と思ってたんだけどなぁ…。

 というか、理解せざるを得ないんですけどね。


 私とゆうくん、一年前に体入れ替わったままだし。


 いや、そもそも振られた理由が酷いと思うんだよね。『いや、無理。体戻ってないじゃん』だよ?そりゃ、ショックを受けて倒れてもなんにも不思議ではなくてですね……。

 それにつけ加えて、『ゆうくんって呼び方やめてくんない?くん呼びきらいなんだって。体は男でも中身は女だからさ』とまで言われちゃった。

 ゆうくんだって私のこと、有咲ありさって呼ぶくせに。まあ、本名だから仕方ないけど、こんな女の子みたいな名前をつけた親を恨みたい……。

 ていうか、体が入れ替わってからというものの、自分の性格がかなり変わっているような気がする。前は一人称僕だったのに、今は私が普通になってしまっている。

 体が女になると、こういう変化もあるのかな?

 ゆうくんも男らしい話し方になってるし、私だけというわけでもなさそう。

「……どうしようかな」

 私は天井を見つめながらため息をついた。

 私はゆうくんにはっきりと振られたわけで、もう、元の関係に戻れる気がしない。

 いや、それ以前に元の体に戻れる気がしない。

 本当に、どうしたらいいのかな……。

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