私は……

私の名前は水瀬愛梨。

ピチピチの17歳、花の女子高校生。

二年生だ。


学校は近所のに通っていて、恋に部活に忙しい毎日を送っている。


最近では将来のことを考える、進路に悩む時期にも差し掛かってきた。


そんな私の日常は朝、耳を澄ますことから始まる。


窓は開けない。


なぜならそれが命に関わることだからだ。


謎の奇病が発生して早5年。


感染は世界中で爆発的に広がっていて、残された人類は半分ほど、それらもいつ感染するかと毎日怯えながら暮らしている。


この街では感染者が出ると街中に設置されたサイレンが鳴り響き、私達に知らせてくれるようになっている。


知らされた私達は近くのシェルターに逃げ込むのだ。


シェルターは今時どの建物にもついている。



その奇病は感染すると100%死に至る。

治療法はない、

しかも人から人へ感染する恐ろしいもの。


感染経路は感染者との接触。

もっとも確実なのは噛まれることだ。


噛まれること以外では感染することはまずないといわれている。


つまり、感染しないためにはシェルターへ逃げ込むしかないのだ。


ならなんでそんな限定的な方法でしか感染しないのに、ここまで広がって人類を追い詰めているのか、


その答えは、この病気が奇病といわれる要因にある。


この病気の恐ろしいところは感染すれば絶対死ぬこと、治療法がないこと、そして……


この病気で命を落としたものは再び動き出すところだ。


動き出すというのは生き返るということではない。

死体がおもむろに立ち上がり、歩き出すのだ。

呻き声は出すが意識はなく、言葉は通じない。ただ、まるで獲物を狙う猛獣が如く、人に襲いかかる。


それらはリビングデッドと呼ばれている。


私達はそのリビングデッドから逃れるためにシェルターに逃げ込むのだ。



だから毎日耳を澄まし、サイレンが鳴っていないのを確認してから窓を開く。


外の風は気持ちがいい。

死の恐怖におかしくなりそうな精神を癒してくれる。



私達人は、毎日生き残るために全力を尽くしている。

故にその消耗も激しく、日々弱っていくのだ。

本当なら学校になんて行くのもおかしいのだろうが、そうでもしないと怖くて外に出ることもできなくなりそうで、何かしら外へ出る理由として考え、毎日通っている。




現在家には私一人、朝食を食べにリビングへ向かう。


今朝も静か、両親と弟はもう出てしまったようだ。


うちのシェルターはリビングの真下にある。


入り口はテーブルの下で、すぐにでも入ることが可能。


いつサイレンが鳴ってもすぐ飛び込める。


今日はなんだか静かすぎる。


もしかしたらサイレンが鳴るかもしれない。


朝食を食べ終えた私はそんな予感がする。


「……準備するか」


シェルターへ持ち込むものを家中からかき集めることにした。

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終末のサバイバル ベームズ @kanntory

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