第19話 【友の死後】
── 19番目の扉へようこそ ──
友人の死後に起きた体験です。
友人Yが国内で数例しかない難病で亡くなった時、息を引き取った同時刻に自宅にいた私はいきなりの呼吸困難と激しい胸の痛みで椅子から転げ落ち、のたうち回りました。
もちろん同時刻だった──という事実はあとで知ったことですか、いわゆるソウルメイト的な仲でしたのでたぶんその瞬間の苦痛をシンクロ体感したのだと思います。
そして葬儀が終わり数日が過ぎたある晩、夢にYが現れました。
非常に明晰な夢で、目覚めてから驚くほどすべてを覚えている鮮明さでした。
その内容というのが──
私はスペースシャトルのような乗り物に乗り、右側にY、左側に自分が座り、前面は大きな窓になっており、地球を見下ろす位置に浮かんでいます。
が、その眼下に見える地球の姿が、いわゆる映像などでよく見る青く美しい星ではなく、全体的に灰色っぽくくすんでいて、なおかつ黒煙があちこちから立ちのぼり──という、非常に不気味で殺伐とした様相を呈しています。
驚いた私が「え?! 地球?! あんなことになってるの?!」と声を上げると、Yが冷静な口調で言いました。
「うん、近未来」
さらに驚いた私が「地球の未来?! あれが?!]と言うと、Yは静かにこう言いました。
「そう──まあ死んでみると色々わかることがあるよ」
含みのあるその言葉の意味を、夢の中の私はそれ以上追求はしませんでしたが、目覚めてからぼんやり(核戦争でも起きるのかな・・・・)と思ったことを覚えています。
あれから10数年──
今、新型ウイルスが世界中をカオス状態に陥れている状況の中、あらためてあの地球の傷んで不穏な
姿が脳裏に蘇り、このパニックが今後なんらかの経緯でのちのちの過激な事態への発火点にならなければいいが、と、密かに案じています。
各国経済の破綻。
食料危機。
そして限界ゆえの戦争勃発。
まさか、そこまで人類は愚かではないと信じたい気持ちではあります、もちろん。
ただ──
「死んでみると色々わかることがあるよ」
そう言ったYのその雰囲気から、あまり良い意味ではないという印象だったことが、今、あらためて気になっています。
たかが夢──と、むろん言えますが、ただあまりに生々しい臨場感があったことに加え、生前のYが少し不思議な能力の持ち主(ふと口にした事がのちに現実となる)だったということが私の中に無視できない引っ掛かりを残しています。
とはいえ、事態の推移を冷静に見ていくことしか個人レベルでは出来ないわけではありますが・・・・。
それではまた、次の扉でお会いしましょう。
真・怪異譚【闇への扉】 真観谷百乱 @mamiyan
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