1章 2人の出逢い
1話 滅ぼされた街
「なん、だよこれ…?」
つい数時間前まで、いつも通りだった街並みは瓦礫と人々の死体で埋め尽くされていた。
風の精霊を祀る民が暮らす街、シルフィード。4英雄が1人、キルリア=ティマリが立てた街で、代々その一族が街を治めていた。
建物の美しさで有名だったが、街並みは一変した。
…現当主のオレが単独で街から離れている合間に襲撃にあったと考えるのが自然だろう。この街の状況からみて、襲撃したのは恐らく魔物の類か。長年襲われることは無かったのにどうして今になって襲ったのだろう?
それに今日は年に一度、神殿が開かれる日 。この街を治めるティマリ家の当主であるオレが風の精霊に祈りを捧げる日でもあった。それに神殿には風の精霊にまつわる秘宝がある。
そこまで思考して、オレはあるひとつの結論にたどり着いた。
「…まさか…?」
オレは嫌な予感を感じ、神殿に向かった。
…神官も巫女もほとんど皆、殺されていた。目的の人物がいないと分かったのか魔物達の姿はなかった。
「キーヴェ…様…」
死体だらけの中、まだ生存者がいた。、オレの方に向かってきていた。
「おい、何があったんだ?」
神官は身体中血まみれであったがまだ少し喋る気力が残っているようだった。
「魔物が突如現れ…この街の秘宝……リーフクリスタル…を奪って……人々も襲っ…たのです」
予感は大当たりだ。やはり魔物達の目的は
「リーフクリスタルを奪った…か。魔物は何が目的なんだ?」
リーフクリスタルは風の精霊の能力を封じたモノ。オレ達の一族…ティマリ家の人間しかその能力は使えないはずなのに。
「それは…我々には…分かりません」
だよな…。魔物は一体何が目的でリーフクリスタルを奪ったんだろう。
「あの…キーヴェ様、お願いです…街の皆の為にも…リーフクリスタルを…取り戻して貰えません…か…」
この街は魔物に壊されてしまった。人々の命さえ奪い、大切なものは全て失ったならばオレは…。
「…あぁ、必ずリーフクリスタルはこの手に取り戻す」
そして、殺された街の人々の仇も討つ。それが残されたオレに出来ることだろうから。
「ありがとうございます…どうか、どうか…よろしくお願い…しま…す…」
そう呟いた直後に神官は息を引き取った。その表情は眠るように安らかであった。
「…お前との約束、必ず果たしてみせるからな」
それから数日、旅立つのはせめて彼らを弔ってからにしようと思ってオレは数日かけて墓地を作った。
…どんなに悲惨な最期であったとしても、安らかに眠れるように今は祈るしかない。そして、こんな結末を迎えることになった彼らの為にも必ず全てを終わらせよう。
「行ってくる、皆のためにも必ずクリスタルを取り戻してみせるから」
誓いと共にオレは街を出た。目指すは王都フォルン。情報があるとしたらきっとそこだろう。少しの期待と不安はあるがきっと大丈夫。これから何が起ころうとも。
NEXT→「2話 謎の旅人」
The Connect Cross 咲姫 @Saki_Oto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。The Connect Crossの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます