第30話 それぞれの課題6


 エバがアランの事を皆んなに話してから、あっという間に時間が過ぎ、いよいよアラン1周年サプライズ前日。



「アラン!」


「エバお兄ちゃん! おはよ!」


「よし! 今日も楽しんでいこー!」


「いこーう!」



エバとアランはもう慣れた様子で路上ライブを始めた。するとこちらも慣れたようにいつもの男の子達がやってきた。



「まーたやってるよ」


「ほんと飽きないね君達」


「アランもそっちのお兄ちゃんも下手じゃん」


「いい加減気付けよ! 誰もお前達のライブなんて興味無いんだよ!」



そう言って地面に落ちてた石を取ってエバ達に投げようとした時。



「はーい。ストップ」



 そう言って男の子の腕を掴むキッド。



「キッド!?」


「よう! 気になってつけてきちまった」


「ねえねえ、このお兄ちゃん誰?」


「お前がアランか! はじめましてだな! 俺はエバとバンド組んでるキッドって言うんだ! アランの事毎日エバから聞いてるぞ? すげーなお前は」


キッドはアランの頭をがむしゃらに撫で回した。


「へへへ、ありがとうキッドお兄ちゃん!」


「こいつらは何もすごくないよ!」


「毎日、毎日下手くそなライブしてるだけじゃん」


「ほーう? だったら明日の夕方18時に此処に来てみろ。お前らびっくりするから」


「ふん! 勝手に言ってろ」


「誰が来るもんか」


「ちょうどいいや……。 スゥーッ」



そう言っておおきく息を吸い込んだキッド。



「お前ら!!! よーく耳かっぽじって聞きやがれ!!! 明日の夕方18時から此処でライブをやる!!! びっくりするようなゲストが登場するらしいから楽しみにしておけ!!! 来ないと絶対後悔するからな!!! ってスタークが言ってたぞ!!!」



キッドがスタークの名前を口にした瞬間目の前の男の子達は目をキラキラ輝かせた。



「スタークが来るの?」


「ねえねえ! 本当にスタークが言ってたの?」


「さあな、明日来てみれば良いじゃねーか」


「ケチ!」


「もう行こうぜ!」


「ベーっだ」


「来るわけないだろ! ばーか!」



 いつも通り捨て台詞を吐いて帰って行く男の子達。



「と、言うわけでアランも明日は18時集合な?」


「それは良いんだけど本当にスタークが来るの?」


「来ると思うぜ?」


「ママにも見せてあげたいな。 あんなに遠くからじゃ見えないよ」


「アランのママはあの病院に居るの?」


「うん……」


「大丈夫! スタークのギターなら届くよ!」


「そうかもしれないね! なんたってスタークだもんね! どうしよう、本当にスタークが来たら」



 アランは今のうちから緊張している様子だった。



「まぁ、明日の楽しみだな!」


「だね!」


「「「ドドドドッ」」」


「なんか凄い音するよ?」


「なんだろう? もしかして地震?」


「確かに地面が揺れてる気がするな」




「スターク様!どこー!」


「こっちの方から声が聞こえた気がするぞ」


「あそこの空き地らへんじゃないか?」


「スターク! 居るなら返事してくれ」




「やべえ! スタークのファンだ。 どんだけ来るの早いんだよ……今日は解散だ! 明日18時に集合な?」


「分かった! じゃあまた明日ね! エバお兄ちゃん! キッドお兄ちゃん!」


「うん! また明日!」


「おう!」



この日はそれで解散したエバ達。 その後とんでも無い数のスタークファンが空き地に溢れ返ってた事をエバ達は知らなかった。

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2人で奏でる異世界デュエット 琢也 @sametaku

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