第13話

 泣き止んだ深琴の背中をあやしながら、僕は空を見上げた。

「見てごらん、凄く良い天気だ」

「・・・・・・道流さんはのんきだね」

「・・・・・僕は、あの空を好きになれそうだよ」

 深琴がそばにいるから、どんな景色も好きになれそうだ。たとえ「それ」が叶わない、報われないものだとしても。「可愛い、やっと言える。深琴は、可愛い」

「・・・・・道流さんもとても魅力的な男性です」

 僕は抱きしめた。一人の女性ではなく、妹として。

 僕にできることは、この子を諦めることしかない

「・・・・・・私は何も思い出せないよ。でも、それで良かった。思い出せなくて、よかった。その分、道流さんとの記憶で埋めつくせるから」

 皮肉にも、空は晴れ晴れとしていた。涙が頬を伝う。深琴はそれを拭こうともしなかった。いつまでも、涙が枯れるまで二人で泣いたんだ。





 おわり。

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鬱蒼とした青 雪之都鳥 @189nisi123

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