ショートショート「ちびリンちゃん」
棗りかこ
ショートショート「ちびリンちゃん」(1話完結)
笛子は、部屋にランドセルを置くと、
テレビの前に座った。
「ちびリンちゃん」
そのアニメ番組は、
笛子たちと、同世代の小学生が、主人公だった。
リンちゃんが、怒る。
リンちゃんが、泣く。
リンちゃんの、一挙一投足が、
クラスの話題になっていた。
ランドセルが似合う、リンちゃんは、人気者だった。
私もランドセルが欲しいなあ…。
そう言って、ランドセルをねだった笛子だった。
その日も、
リンちゃんを見ようと、テレビをつけた。
だが、その番組の内容は、
笛子のクラスでの出来事と、
そっくりだった。
何でこんなに、似てるの?
笛子は、驚いた。
明日、学校で話さなきゃ。
笛子は、明日が来るのが、待ち遠しくてならなかった。
次の日、
笛子は、教室に一番乗りした。
そして、クラスメイトがやってくるのを、
今か今かと、待ち構えていた。
早く誰か来ないかな。
クラスの窓に、
誰かの人影が映った。
誰か来た!
昨日の、「ちびリンちゃん」の事を、
話すんだ。
笛子は、クラスの戸が開くのを、待った。
おーっす。
入って来たのは、
「ちびリンちゃん」のクラスメイトの、
高沢だった。
えええええ?
お前早いな。
高沢は、黒いランドセルをどっかと机に置いた。
わーーーーーっつ。
大騒ぎをして、
リンちゃんのクラスメイトの連中が入って来た。
今井。
西岡。
玉置。
榎木。
あとから、あとから、入ってくるのは、
ちびリンちゃんのクラスメイトばかりだった。
昨日の番組、見たか?
彼らは、口々に話し始めた。
俺らって、面白いよな。
ガラッと、戸が開いて、
リンちゃんの担任の先生が、
入って来た。
リンさん。
先生が、こっちを見て笑った。
笛子は、そーっと、校庭側の窓に映る自分の顔を見た。
リンちゃんだ…。
嘘かまことか、
笛子は、リンちゃんになっていた。
-完-
ショートショート「ちびリンちゃん」 棗りかこ @natumerikako
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