異世界に勇者として召喚された複数人の男女。
主人公はある理由で色々諦めてるが、異世界に於いてもそれが付きまとう。
しかしある事で勇者を辞めて異世界で生きる事を決めると、少しずつ歩み始める。
異世界と現実世界を絡めた様々な人間模様を通じて、人間の弱さ脆さ怖さ、そして強さ優しさ、暖かさが語られます。
コメントやレビューに「速くクビになってタイトル回収を」とか良く書いてありますが、ある程度纏めて読むと、その設定のボリュームや人物像、世俗風習、世界観などを主人公アラタの行動に合わせて説明がされているのがわかります。
そのおかげで単なる「説明」部分を退屈せずに、読み飛ばす事もなく理解できました。
改めて「文章」という限られた表現方法の枠組みの中、未だに描かれていない膨大な設定を持つこの「物語」の連載を、破綻させる事無く進行させて来た作者さまのこれまでの努力を賞賛します。
万人向けとは言えないかもです。
ただ、異世界召喚モノが溢れる今、一風変わった話を欲している方にはオススメかと思います。
個人的には500話1000話となっても追いかけて行きたい作品です。
剣聖などの他派閥が我が物顔で王国を好きにしていて自派閥の肩身がせまいなか、起死回生の願いをかけてアラタに文字通り身をかけて尽くして尽くしてプリンセスオーダー(王女直属騎士)に任命するところまでこぎつける。
ところが、当日にアラタが心変わりして魔王討伐に行くことになってしまう。
ここからは作品の記載から外れるが、王女の動向が把握されていないはずはなく、アラタとの治療目的の同衾はバレていないにしても二人きりで部屋にしけこんでるのくらいは貴族界隈で話題にならないはずがないだろう。
この時点での王女に対する周りからの評価は【勇者の出来損ないを勇者に寝取られた王女様】になっていてもおかしくない。
アラタは当初、寝取られ被害の意識を持っていたけど、無自覚に自分がされた一番いやなことを王女に行っていていることに気づいていない辺りに人間味を感じる。
気づいていないからその後も平然としている辺りが作品として現実的。
アラタに裏切り行為をかまされた王女の今後の心情描写に期待したい。
自分が王女だったら最初から剣聖とくっついてビジネスライクな付き合いで割り切っていた方がまだましだったと思いたいレベル。