第6話

「さぁて」

私が振り返ると、そこには無数の部下たちがいた。

みな笑顔の面を被り、無個性の塊である。

「それじゃあ打ち合わせ通りでよろしくね〜。A班は結界準備、B班は鷺くんのサポート、C班はきっちり魔法少女たちの観察よろしぬね〜じゃあ解散!」

号令を出すと、素早い動きで作業に取り掛かる部下たちを見ると何故か感動さえ覚える。

こうやっていったことちゃんと熟せるって素晴らしいよな…こんな部下ばっかりだといいのに…と遠い目をしてしまうこともあっちゃったりする。

「魔法少女たちは今回で成長してくれるやら」

A班が結界を張り終わると、先ほどまで賑やかだった学園が瞬間静寂に包まれる。

私たちが言う結界とは、外部から身を守るだけではなくこういった内部の時を止めることさえ可能である。ただある指定のものを例外にして。

「なっ…また!?」

「今度は学園だなんて………!」

「みんな!合体しよう!」

神奈の呼び声に残り二人は頷き、各相棒とアイコンタクトを取る。

「「「合体!」」」

「はぁ〜〜〜いつ見てもたまらん」

魔法少女たちは相棒の魔具と「合体」を行い、一時的に魔人と同等に魔法を扱えるようになる。

神奈の魔具は「鹿月」〈かげつ〉と言った大剣。普段は鹿の格好。

緑の武器は「十鳥鳴」〈とどりなき〉と言った弓矢。普段は小鳥の格好。

飛鳥の武器は「猪丸」〈いのまる〉と言った斧。普段はウリボーの格好。

彼女らの連携はいまいちで、いくらでも殺せる機会はある。しかし私たちの目的は殺すことではなく、彼女たちを育てること。

だからこそ、なおの事、難しい。

彼女たちにある程度の恐怖心を与えても過度な恐怖はだめ。

誰かを殺すなんて言語道断、それはタブー。

深追いをしてはいけない、絶望を与え過ぎてはいけない、勝利の気持ちよさを味合わせなければいけない。

このように彼女たちの扱いにはいくつものルールがあり、それら全てを守ろうとしたら私たちは力の一部を出すことさえはばかられる。だから、鷺君の様な思いっきりのパワータイプは彼女たちの相手に向いていないのだが、人手不足は人手不足。猫の手も借りたいとは今ここ。

正直私が彼女たちの相手をしたいのだ。

ちゃんとルールは守れるし、何より彼女たちと触れ合うことができる!最高だ!!!

しかし私の力は強力過ぎる、又、見た目が私は彼女たちに似て女子高生そのものだからこそ彼女たちはきっと戦いづらくなる。

だから、こうやって下唇を噛んで鷺君を監視し続けるのだ。ほんとに!悔しい!!けどね!!!

そうこう考えているうちに魔法少女たちは鷺君と戦っていた。また「学校のみんなを元に戻して!」とかそう言うのだろう。

彼女たちはいつも他人優先。そゆとこがほんと好きである。チュッチュしてやりたい。

「はっはっはぁ!!!」

「はぁ…はぁ………この人強い…!」

「私の斧が全然効かないなんて」

「…諦めない!」


「さぁて」

そろそろピンチだよ、魔法少女たち。

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幹部は辛いよ 山田青葉 @upakop

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