小説シリーズ メドゥサ 光の女神

山本弘

第1話

原案:山本弘



【コンセプト】

『ウルトラマン』をヒロイック・ファンタジーにアレンジしてみる。

 舞台は魔法や怪獣、人間以外の異種族が存在する古代世界。モチーフはギリシア神話である。ただし、「現代にまで伝わるギリシア神話は、時の流れの中で大きく歪められたもの」「ここで語られる物語こそが真実」という設定で、神話を自由にアレンジする。たとえばゼウスは登場しないし、オリュンポス十二神という概念も存在しない。この物語に登場する「神」とは、古代の地球に干渉してきた地球外知性体である。

 登場人物もギリシア神話の複数のキャラクターを融合したり、役割を入れ替えたりしている。たとえば主人公アタランテのエピソードは、ギリシア神話のヘラクレス、ペルセウス、テーセウスなどの英雄の偉業がミックスされている。メドゥサはギリシア神話では怪物だが、ここでは怪獣と戦う光の巨人である。

 この世界では、ドラゴンや巨人など、地球にもともと棲息している怪獣の他にも、宇宙からの侵入者ゴーデによって創造された危険な怪獣が存在する。主人公たちは怪獣討伐チーム「アルゴナウタイ」のメンバーで、ギリシア及び地中海沿岸各地を回って、様々な怪獣と戦う。

 近代兵器が存在しないこの世界では、剣や槍を持った生身の戦士が、魔法によるサポートを受けながら怪獣と戦う。大きさに差がありすぎると戦いが成立しないため、怪獣の大きさは身長一〇メートル前後と設定する。このため、メドゥサもウルトラマンの四分の一、身長一〇メートルと設定する。


【アタランテ】

 主人公。十四歳の少女。男勝りのワイルドで大雑把な性格で、自分を女だと意識していない。胸が小さいうえ、髪を短く切って男のような格好をしているので、少年と間違えられることも。

 地球外知性体アーテが憑依しているため、怪力と俊足を有しており、傷の治りも早い。槍と弓矢を武器に、巨大な怪獣に立ち向かう。

 怪獣のためにピンチに陥ると、アーテの力が目覚め、光輝く巨大な女神メドゥサ(ギリシア語で「女王」という意味)に変身する。

 実はアルゴス国王アクリシオスの孫で、幼い時に捨てられたのだが、自分では素性を知らない。


【アーテ】

 銀河系外の星雲から、邪悪な存在ゴーデを追って地球に飛来した知性体。肉体を持たないエネルギーだけの存在で、他の生物の肉体に憑依しなければ生きていけない。

 地球に来る際には、超光速飛行能力を持つ宇宙生物に憑依していたが、その生物が死んでしまったため、地球を離れられない。現在はアタランテと一体化している。


【光の巨神メドゥサ】

 アタランテに憑依したアーテの力が発動し、変身した姿。身長は一〇メートル(三階建ての家の屋根ぐらい)。全裸の女性の姿だが、全身が常にまばゆい光に包まれているため、ディテールはよく見えない。長い髪が炎のようにゆらめいている。強大な力で怪獣と戦う。この状態はエネルギーを消耗するため、数分間しか持続しない。飛行能力は無い。

 必殺技は「アイギスの裁き」。左手の平に光が集まって盾のような形になり、その中心に「眼」が形成される。その眼から放つ光を浴びた生物は元素転換され、石像になってしまう。その後、キックやパンチで石像を粉砕し、とどめを刺す。相手が激しく動き回っていると使えないという欠点があるため、まず格闘戦でダメージを与えて弱らせ、動きを止めなくてはならない。

「アイギスの裁き」以外の方法で倒した場合、怪獣に憑依していたゴーデの落とし子は殺せない。落とし子はティアマト(後述)によって蘇生させられ、復活する危険がある。


【アルゴナウタイ】

 アルゴス王アクリシオスが、各地に出現する怪獣を討伐するために結成した戦士の集団。若き勇者イアソンをリーダーとする五人のチーム(+従者の少年)と、それをサポートする四〇人ほどの戦士の集団。怪獣出現の報があればどこにでも出かけてゆく。海の向こうに行く際は、専用の大型船〈アルゴ号〉に乗りこむ。この船には対怪獣用の大型投石機が搭載されている。

 アタランテも腕を見こまれてスカウトされ、メンバーとなる。


・イアソン

 リーダー。英雄になることを目指す青年。喋り方が常に大仰で、戦闘時に大声で名乗りを上げたりする派手好きの性格だが、口先だけではなく、剣の腕は超一流。正義感や責任感も強く、庶民の苦しみに涙する一面も。


・オルペウス

 参謀。暗い雰囲気の青年。伝説に関する豊富な知識を持つ。戦闘の際には竪琴を鳴らし、味方を支援する魔法をかける。


・カライスとゼーテース

 有翼族の兄弟。背中から翼を生やし、空を飛べる。兄のカライスは皮肉屋のひねくれ者で、斧が武器。弟のゼーテースは陽気で楽天的な性格で、弓矢が武器。


・ヘラクレス

 怪力自慢の巨漢。やや直情型だが、心優しい。武器を持たず、素手で戦う。


・ヒュラース

 チームのマスコットの少年。一行について歩き、食事や洗濯を担当する働き者。戦闘には参加しない。


【ゴーデ】

 アーテと対立する邪悪な知性体。自らを無限に増殖して宇宙を支配することを夢見ている。地球に落下する際、分身である「落とし子」を地中海沿岸にばらまいた。

 落とし子たちは動植物や人間の体に侵入し、モンスターを産み落とさせる。落とし子は産まれたモンスターと一体化して成長する。

 ゴーデ自身もある女性に憑依し、赤ん坊の姿で地上に産まれてくる。


【ティアマト】

 ゴーデが転生した少女。アタランテと同年齢。とても愛らしい外見に反して、冷酷無比な性格。早い時期から覚醒しており、少女の姿で力を蓄えつつ、地球征服の野望を燃やしている。ゆくゆくは落とし子を地球全土にばらまき、この星を自分の分身で埋め尽くすつもりなのだ。

 ティアマトは落とし子たちを凶暴化する力がある。邪魔者であるアーテを抹殺しようと、アタランテをつけ狙う。

 最終話では完全復活を果たし、アタランテと同じく、身長一〇メートルの巨人に変身する。こちらは上半身が女性、下半身が蛇の怪獣である。必殺技「ゴルゴンの鏡」は、胸が開いて巨大な鏡が体の前面に展開し、メドゥサの必殺技「アイギスの裁き」をはね返すというもの。


【ゴーデの落とし子】

 ゴーデの分身。地球上の生物と融合して怪獣となる。母体が人間の場合は人間並みの知能を持つが、動物の場合は知能は低い。


【基本設定】

 紀元前一七世紀。

 邪悪な知性体ゴーデと正義の知性体アーテは、超光速飛行能力を持つ巨大な宇宙生物に憑依して、宇宙空間を飛翔しながら激しいバトルを繰り広げていた。

 両者は地球の上空で激突。相討ちとなって、地中海沿岸地方に落下する。宇宙生物は大気と磁気圏に囲まれた惑星上では長く生きられない。アーテとゴーデは、この星で新たな宿主を探す必要があった。

 ゴーデは地球の大気圏に突入する際、生き残りをかけて自らの一部を分離し、十一の「落とし子」を生み出した。それらは各地に散らばり、それぞれ何らかの生物に憑依した。ゴーデ自身もある女性の胎内に憑依することで生き延びる。

 アーテの憑依した巨大生物は、ギリシアのアルゴス地方の沖に落下し、誤って王女ダナエの乗った船を破壊してしまう。溺れて死に瀕したダナエを救うため、アーテは彼女の体内に入り、蘇生させる。

 やがてダナエは子供を身ごもる。身に覚えのないダナエ。国王アクリシオスが巫女に占わせたところ、「王女の胎内にいるのは恐ろしい怪獣で、やがて王を殺すだろう」と予言される。アクリシオスは産まれた女の子を箱に入れて海に捨てさせる。悲しみのあまりダナエは命を絶つ。

 箱はアルカディア地方に流れ着いて猟師に拾われる。女の子はアタランテと名付けられ、猟師に育てられた。十四年後、美しく成長したアタランテは、野山を駆け回る野性的な女狩人となっていた。

 一方、アクリシオスは巫女から「王女の子供は死んではいない」という託宣を受ける。怪獣が自分を殺しに来ることを恐れたアクリシオスは、怪獣討伐隊「アルゴナウタイ」の結成を命じる。

(ここまでの設定は、当初は明かされない。物語が進むにつれて明らかになってゆく)


【第一話 不死の大蛇ヒュドラ】


〈ヒュドラ〉:七本の首を持つ巨大な蛇。首を切り落とされてもすぐに再生する。口から火炎を吐く。


 平和なアルカディアの森。アタランテは山の中で仲良しの熊と相撲を取って遊んでいた。そんな時、巨大な蛇の怪獣ヒュドラが村を襲うという事件が起きる。熊もヒュドラに立ち向かったために殺されてしまう。

 仲良しの熊を殺されるのを目にして怒りに燃えたアタランテは、ヒュドラ退治を決意し、ヒュドラの棲む沼に出かけてゆく。現われたヒュドラに槍で立ち向かうアタランテ。だが、驚異的な再生能力を持つヒュドラは、いくら傷つけてもすぐに治ってしまう。

 彼女がピンチに陥った時、五人の勇者が現われ、ヒュドラに立ち向かう。怪獣出現の報を聞いて駆けつけてきたアルゴナウタイである。彼らは善戦するが、やはりヒュドラの再生能力の前では分が悪い。

「あの人たちを助けなくちゃ!」

 そう願った瞬間、アタランテの中で眠っていた力が目覚め、彼女は光輝く巨人に変身する。巨人は格闘戦でヒュドラを圧倒し、さらに左手に出現した「眼」でヒュドラを石化、粉砕する。その戦いを目にした村人は、巨人をメドゥサ(女王)と呼ぶようになる。

 目覚めたアーテの意識から、アタランテは邪悪な知性体ゴーデを倒すという自分の使命を教えられる。地球外知性体という概念を理解できないアタランテは、アーテを神だと解釈するのだった。

 アタランテの勇猛な戦いぶりを見たアルゴナウタイの指揮官イアソンは、彼女をチームにスカウトする、


【第二話 死霊の野獣パイア】


〈パイア〉:猪がゴーテの落とし子に憑依されて変異した怪獣。第一形態では四足歩行だが、死から復活した後の第二形態では二足歩行に変化し、鼻から有毒ガスを噴射する。


 カリュドーンに巨大な猪の怪獣パイアが出現し、田畑を荒らしている。国王はおふれを出し、怪獣を退治できる者を集めた。アタランテとアルゴナウタイがその地に着くと、すでにギリシア各地から腕に自信のある猛者たちが集まっていた。

 パイア討伐の指揮を執るのは、カリュドーンの王子メレアグロス。彼は最初のうち、アタランテを痩せっぽちの少年と思いこみ、バカにしている。だが、戦いの中で彼女の実力を目にし、しだいに評価するようになる。

 アタランテはメドゥサに変身してパイアを圧倒するが、必殺技「アイギスの裁き」を使う前に他の勇者たちがとどめを刺してしまう。しかも元の姿に戻ったところを、メレアグロスに見られてしまった。アタランテのヌードを目にして、いっぺんで恋に落ちるメレアグロス。

 その夜、戦いの後の祝宴で浮かれる勇者たち。メレアグロスはしきりにアタランテにモーションをかける。その間に、謎の少女(ティアマト)が倒されたパイアの死骸に近づき、手から不思議な光を放つ。するとパイアはゾンビとなって復活した。

 よりおぞましい姿となったパイアは大暴れを開始する。メドゥサは今度こそ「アイギスの裁き」で倒さなくてはならない。


【第三話 大空の覇者ハルピュイア】


〈ハルピュイア〉:人面の巨大鳥。空を飛び、翼で突風を起こす。


 ゴーデの落とし子を倒せるのはメドゥサのみ。その事実を知ったアルゴナウタイのカライスは悩む。メドゥサだけが怪獣を倒せるのなら、自分たちは不要なのではないのか? その意見をめぐって、アルゴナウタイ内部に不和が起き、カライスと弟ゼーテースの仲も険悪に。

 そんな時、巨大怪鳥ハルピュイアが出現。アタランテはメドゥサに変身して立ち向かうが、空を飛べないために苦戦を強いられ、最初の戦いでは敗退する。

 ハルピュイアを倒すには、飛行能力を奪うしかない。それができるのは空を飛べるカライスとゼーテースの兄弟のみ。二人は再度襲来したハルピュイアに空中戦を挑む。

 ゼーテースが囮になってハルピュイアの注意を引いている間に、カライスが背後から攻撃して、ハルピュイアの翼の筋肉を切断。墜落したハルピュイアにメドゥサがとどめを刺す。カライスは自分たちの役割の重要さを知り、自信を取り戻す。


【第四話 青銅の巨人タロス】


〈タロス〉:動く青銅像。実は内部にゴーデの落とし子の吸血植物が詰まっており、その力で動いている。活動するためには大量の血液が必要。鎧の隙間から蔓を伸ばし、人間を捕らえて血を吸う。


 ロードス島にやってきたアルゴナウタイは、巨大な青銅の神像が動き出し、海から出現した龍を一撃で倒す光景を目撃する。その神像タロスは、天才魔術師ヘパイストスが作ったからくり仕掛けの人形で、この島を防衛する最強の兵器なのだという。タロスがいるかぎり島は安全だと豪語するヘパイストス。

 アタランテは像が動く仕組みを知りたがるが、ヘパイストスは徹底した秘密主義で、教えようとはしない。タロスのメンテナンスは神殿の奥で、外部の者に見られないように行われている。

 好奇心にかられたアタランテは神殿に忍びこむが、そこで、やはりタロスの仕掛けに疑問を抱いて探りにきたオルペウスとばったり遭遇する。二人が見たものは、家畜から搾り取られた大量の血液が、タロスの足にある栓から注入されている光景だった。実はタロスの正体は、ゴーテの落とし子が憑依した動く吸血植物。ヘパイストスはそれをタロスの中に詰めこみ、魔法で操っていたのだ。

 そこにティアマトが現われ、不思議な力で吸血植物を刺激する。タロスはヘパイストスの制御を離れて暴走を開始。街を破壊して人間を襲い、血を吸いはじめた。アルゴナウテスの出番だ!

 青銅の外殻に普通の攻撃は通じない。「アイギスの裁き」さえ、外殻にはばまれてしまい、効果がない。オルペウスは、植物であるタロスは火に弱いと看破し、火攻めにすることを提案する。


【第五話 迷宮の猛牛ミノタウロス】


〈ミノタウロス〉:頭が牡牛で体が人間の怪獣。巨大な斧を振り回し、地割れを起こす。


 ようやく自分の素性を知り、祖父アクリシオスと再会を果たしたアタランテ。しかし、アクリシオスは孫娘を、自分を殺しにきた怪獣ではないかと疑っている。アタランテの方でも、幼い頃に自分を捨てた祖父に対して恨みしか抱けない。

 そんな時、クレタ王ミノスから怪物ミノタウロスの生贄とするための乙女を差し出せという要求が届く。ミノタウロスを倒すため、生贄に志願するアタランテ。

 クレタ島に渡ったアタランテは、ミノス王の娘のアリアドネに出会う。彼女の話では、ミノタウロスの正体は彼女の兄だという。王妃パシバエがゴーテの落とし子に憑依されて産み落とした怪物なのだ。王は妻が怪物を産んだことを恥じ、迷宮の奥に閉じこめた。

 小さい頃の兄は、姿は醜いが、優しい性格だったと語るアリアドネ。閉じこめられ、虐待を受けて育ったため、性格が歪み、生贄を要求する恐ろしい怪物になったのだ。自分の境遇と重ね合わせ、ミノタウロスに共感するアタランテ。

 だが、ティアマトがミノタウロスを凶暴化させたため、アタランテは戦わざるを得なくなる。その戦いの中で、アタランテとアルゴナウタイは、事件の背後に怪獣を操るティアマトがいることを知る。


 他にもこのシリーズには次のような怪獣が登場する。


〈ラードーン〉:コルキスの国で秘宝「黄金のリンゴ」を守っている竜。

〈スキュラ〉:上半身は少女、下半身は六匹の猛犬。海中にひそむ。

〈スフィンクス〉:ライオンの体に女の頭と鷲の翼が付いた怪物。予知能力があり、攻撃を先読みして回避する。

〈ケルベロス〉:頭が三つある猛犬。地下の国に棲んでいる。

〈キメラ〉:ライオンと山羊と蛇が合体した怪獣。

〈テュポーン〉:全身から無数の蛇の頭が生えた巨人。

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