第4話民間協力は大切です

「もう、話しても良いかい?」後ろから話しかけられ、びっくりして振り向く。

「あっしは、その娘、さきの親父で、北島組の、サブと申しやす。あっしからもお礼を言わせてくだせい。」サブは、四十を超えたか、超えないぐらいの年だ。

道具箱を持っているところを見ると、大工なのかな?

「こいつは、一人娘なんですが、女房が将来の為、行儀見習に出した方がいいって言うんで、こちらにお世話になってるんですが、甘やかされて育ったせいか、気の利かないところがありやして。」長くなりそうだな。

「もちろん、親のあっしが言うのもなんですが、まあまあの器量良しだし、優しい良い子なんですよ。ちょっと、世間知らずなところがありやすけど。」

うわー、親バカ全開だー。勘弁して下さいよー。逃げるタイミング逃したかなあ?

「おーい、さっきの浪人、また暴れてやがるぞ!」辻角から声が聞こえる。

宗助ナイス!

「急げ!今度こそ、足腰立たぬようにしてやる!」

「はい!」急いで逃げよう。

重さんと私は、声に従って角を曲がりいないはずの賊を追って走り出す。

「あ、ちょっと待ってくだせえ。」呼び止めるサブを尻目にどんどん遠ざかる。

しばらく走った先にあった、神社の境内で一息つく。

「どうやら、撒けた様だな。」僕の言葉を宗助が否定する。

「それは、甘い様ですね」

社の影からサブが出てくる。

「ここは、あっしの地元でして、ガキ大将でしたから、鬼ごっこは得意ですぜ。」

鬼ごっこ・・・まあ、そうか。

私は、溜息を吐くと、サブに向き直り真顔で話しかける。

「これから話す事は、決して、他言無用だ。」

サブも、真顔になっている。

「わかってまさあ。お侍さんのことに町民のあっしが口出し出来る物でもありますまい。たとえ、そちらが将軍様だったとしても、触れ回る事はありません。墓まで持っていきまさあ。もっとも、町人のあっしが、そんな事言ったって、誰も信じないでしょうけど。」鋭いな、サブ

「そのまさかだ。こちらは、9代将軍、家重様にあらせられる。」

私の顔と、後ろに控える宗助の、何時でも命を奪う仕草を見て、本当の事だと悟るサブ。土下座して、頭を地面に擦り付けて喋る。

「知らなかったとは言え、大変御無礼申し上げました。先程も申しました通り決して他言いたしやせん。」

「あたまをあげてくれ、サブさん。ここに居るのは、家重ではなく、徳山重太郎、重さんだ。」

「上様も、ああ仰っておられる。要は、他言さえしなければ良いのだ。」

「では、失礼をして。」顔を上げたサブの額には土が付いている。

差し出された手拭の家紋を見て、あんしんする、サブ。三葉葵が出てくるかと、思ったみたいだ。顔を拭いて、懐にしまおうとする。オイオイ!

「これで、身元が割れる様なことはありやせん。きちっと洗ってかえしやす。」

なるほど、それもそうだ。取り越し苦労だったか。

落ち着いたところで、上様、重さんが話し出す。

「何故、我等がここに居るのか説明したいのだが、此処では誰に聞かれるかわからない。良い所は無いかな?」

「それでしたら、先代の家へ行きやしょう。先代と、姐さんの二人だけだし、寄り合いが出来る様に二階も有りやす。」

こうして、我々はそこへと歩き出した。

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暴れる某将軍 式 裕貴 @tarokunEX

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