増殖らきむぼん殺人事件 解決編


十七 探偵小説の流儀


「なるほど、それがこの島で起きた全てなんだね」

 影山は増鏡から全てを伝えられた。途中からはランベルト鯖の話も聞き、最後にはレッドラムやルルイエ、火凛、そしてらきむぼんからも話を聞いた。そうやって、廃神社のこと、各人の動き、食堂での会話、らきむぼんの捜索、殺人事件、電話線の切断、船の沈没、死体の増殖など、影山は愛鞍布島で起きた事柄を脳内で再構築していく。

「これで、この事件の全てが判ったのですか?」

 増鏡は問う。影山はスープを飲み干し、少しの間だけ天を仰いだ。

「いや、全てではない。しかしこの事件が一人の異形を発端に成された事件だということは判ったよ」

「異形?」

「異形の話はとりあえず後に回すとしよう。放っておいてもいずれ理解することになる。だから僕は君達に殺人者のことを話すつもりだ」

 影山はゆっくりと語り出す。

「まず、この事件は至ってシンプルだ。この殺人を犯せた人物は限られている。更に、この殺人を犯してしまう状況にあった人物はおよそ一人しかいないと思われる」

 影山はそう言って、らきむぼんを見る。

「らきむぼん君、君は、オリジナルじゃない」

「…………何故そう思うのです」

「君が十二時間ほども自室に隠れたからだよ。それはつまり、君がらきむぼんであるために必要な時間だったんだ。人間の脳はきっとイチから創るにはそれくらい手間がかかるんだろう? 君がオリジナルなら、完成した脳はもうできているのだから」

「あなたはどこまで知っているのです?」

「さあ、何も知らないよ、今のは殆ど当てずっぽうだ。何せ、君達のような怪物は僕も初めて見るんでね。まあいい、だから君は犯人じゃない。自分が自分を殺したことを隠す意味がないんだ。それは君自身が語った通りだよ」

 増鏡は全く理解の追いつかない二人の会話をただ聞くことしかできなかった。だが、らきむぼんが犯人から除外されたことはなんとなく理解した。つまりらきむぼんは彼自身を殺しても本物を名乗ることで問題をクリアできるのだ。彼が殺人を隠す道理はない。

「さて、次に、重要な前提を確認しておきたい。今回問題に上がっている三人のらきむぼん君だが、彼らは全員右肘に怪我をしている。これは増鏡くんの証言では判らなかったが、ランベルト君たちの証言で

 これで影山は事件の起き得る最初の時刻を割り出したことに等しい。

「次にらきむぼん君が実際に殺された時刻を特定する。便宜上、今生きているらきむぼん君をらきA、浜辺の死体をらきB、裏庭の死体をらきCとする。まずらきAは死んでいないので解無しだ。次にらきBだが、彼は神社から帰った後の自由時間から翌朝の捜索までだ。その根拠は腕の傷と、死体の頭部の傷。前者は全てのらきむぼんで同一で、後者はバラバラであるため、らきAとらきBは互いに入れ替わって目撃されたり会話をしたりしている可能性がある。従ってらきBの生存は最大値で判断せざるを得ない」

 つまり、ルルイエと一緒に帰り、部屋に籠もったと言うらきAの証言はその裏でらきBが死んでいる可能性を孕んでいて、死亡時刻を狭める論拠とはならないということだ。

「次に最後に見つかったらきCについてだが、彼については非常に死亡時刻の判断が容易い。おそらく、彼の殺害は犯人にとっては最大の誤算であり事故だった。彼は増鏡君とランベルト君による別荘内の捜索中に殺害されている」

「えっ?」

 増鏡はその事実に一切気付くことがなかった。あの時、誰が冷静な思考を保っていられただろう。増鏡は自分が普通の人間の中では最も冷静であったと思っている。おそらく影山の言う異形が、シャドウマンの中には潜んでいるのだから。だが、らきむぼんの死体が更にもう一つ増えたというあの状況で、一体彼はどこまで論理的に思考できただろうか。

「説明するまでもないが、増鏡君とランベルト君は最初に別荘をぐるりと一周している。その時点で死体は存在しなかった。そして捜索を終えてから君達は、単独行動をしなかった。何故なら、君達は自分たちの中に殺人者がいる可能性について議論するほどに、を熟知していたからだ」

 皮肉なことに、この公理は正しい。そう、彼らはミステリマニアだった。ミステリにおいて、第一被害者が現れた後に単独行動をすれば、その中から死人が出る。そんなことはミステリファンなら誰でも判る。だが、それ故にか、それとも天の悪戯か、第二の死体は三人目の同一人物だった。

「では、あの時間、アリバイのないものは誰だろう。まずはらきAは失踪中だったわけだが、本人曰く立入禁止区域に向かう道に迷い込んでいた。これについては彼に嘘を言う理由はない。少なくとも人としては、ね。まあいずれにせよ彼は最初に言った理由で犯人からは除外する。彼はこのタイミングで自分を殺す理由もそれを隠す意味もない」

 増鏡はらきむぼんの方を改めて見た。思えば、彼の雰囲気は失踪以降変わったように思える。まるで文字通りように。

「次にレッドラム君だ。彼にもらきCを殺す意味がない。彼が犯人と仮定して動向をトレースしてみよう。彼はルルイエ君と一緒に船着場まで行く。そこで彼女と別れ浜辺へ向かう。そしてらきCを殺すために別荘へ引き返す。この時点でもう彼が犯人であることはない。らきCが別荘付近にいることを彼は知りようがない。それに決定的なのは、道を引き返せばルルイエ君に見つかってしまうからだ。船着場は、島内の東西移動には必ず通る場所であると到着時に増鏡君が説明している。仮にルルイエ君が余所見をしていても、そこをわざわざ通るリスクを負う殺人者はいない」

 レッドラムは犯人候補から外れても嬉しくはなさそうであった。むしろ、その絶望的な表情はどこか悲哀に満ちている。そうだ、彼にはもう犯人が判っている。

 増鏡とて例外ではない、もうここまでくれば、殺人犯が誰かなど……

「ルルイエ君は、レッドラム君と同様の推理で第二の殺人の容疑から除外できる。彼女が犯人であるためにはレッドラム君と別れてからすぐに別荘へ引き返す必要がある。ここではそれにかかる時間を考えたい。船着場からは別荘へはおよそ二十分程度は掛かる。らきむぼん君とランベルト君がらきCの死体を第三の死体だと断定するために船着場のらきBの死体を確認しに行っているよね。実際にその時の写真は二十五分前の時刻のものだった。そして彼女は往復する必要が絶対にある。それはレッドラム君が最短の場合二十分で戻ってくるからだ。船着場から浜辺までは片道十分だからね。つまりルルイエ君には殺人を犯して船着場に戻る時間的余裕はないということだ」

 影山がそこで一呼吸置く。ルルイエは微笑していた。それはどこか狂気的な微笑で、増鏡は彼女が恐ろしくなってきていた。犯人でないと証明されたのにも拘らず、その表情と仕草は、愉快さに必死で耐えている子供のようなものだったのだ。

「さあ、もう答は出た。犯行時刻、ランベルト君は増鏡君と一緒に行動し、二人はそこから一切の単独行動をしていない。つまり、もう犯人になり得る人物は一人しかいない。そうだね、君」

 犯人――火凛は目を閉じたまま天を仰ぐ。彼女は憔悴しきった姿だったが、それでも彫像のように美しかった。

「…………共犯の可能性に触れていないわ」

 それは、ほとんど形式的な反論だった。その言葉に意味がないことは本人が痛いほどに実感している。探偵は寂しそうに微笑む。

「必要ない。君達は推理作家の次にだ。殺人を犯す時に仲間のアリバイを確保する必要があることなど常識だ。だからこの事件はそもそも計画殺人ではない。人間の、人間による、人間らしい殺人だ。それとも、を考慮しなきゃ駄目かい?」

「いえ、もう結構よ。だからそれ以上は言わないで。あなたが推理小説の信奉者なら、この殺人の醜悪な、あまりに惨めな、あまりに恥ずべき動機なんて、暴かなくてもいいでしょ。殺人者の動機なんて、共感すべきものじゃないんだから」

「僕は動機には興味ないよ。だが、一つ忠告する。もう君がその理由を語る機会はないよ。それだけは断言できる。あとは君が自分で考えればいい」

「……そう、あなたが言うならそうなんでしょうね」

 そう言って、彼女は静寂と同化した。



十八 名状し難き者


 増鏡は部屋をぐるりと見渡す。ランベルトは疲れ切った様子でぼうっと座っていた。おそらく彼も、影山が結論を口にする前に犯人に気付いていたのだろう。何しろ、増鏡と彼は最初からお互いが犯人でないことに確信を得ていたのだから。レッドラムは、火凛の方をじっと見つめていた。不器用な男だが、実は誰よりもこのサークルを心地よい場所として認識していたのかもしれない。この最初で最後のシャドウマンの集会を、彼は一時でも楽しめたのだろうか、と増鏡は思う。

 影山がコホン、と咳払いをした。

「さて、僕も探偵を名乗ったからには、少しばかりその先の推理を語らせてもらおう」

 その先の推理? 増鏡は影山の発言の意図が掴めなかったが、彼の視線がらきむぼんに向いていることに気付き、その意味を察した。

「私、聞きたいわ」

 ルルイエが笑う。

「僕もぜひ拝聴したいですね」

 そして、らきむぼんが笑う。

「僕は、らきCを殺害した人物は、らきBを殺した者だと思っている。いや確信していると言ってもいい。何故なら、あの場所で殺害しなければならなかった理由はおそらく一つだからだ。つまり火凛君は再葬したんだよ」

「再葬?」

 らきむぼんは鸚鵡返しに問う。

「そう、火凛君はおそらく昨夜らきむぼん君を殺した。浜辺でね。そしてそのまま別荘に帰り晩餐に参加した。そしてらきむぼん君の捜索時に、神社に向かおうとして見てしまったんだ。らきむぼん君が別荘の裏手にいるのをね」

 火凛は何の反応も示さなかった。

「彼女は恐ろしかったはずだ。浜辺ではレッドラム君が死体を見つけるわけだが、その情報は火凛君にはまだ届かない。彼女にとってはまさにリビングデッド――生ける屍だったわけだ。或いはもっと現実的にこう思ったかな。、と」

 そうか、だから彼女はどれだけリスクがあっても、その時に殺人を犯さなければならなかったのだ。もし殺し損ねたらきむぼんが起き上がり、別荘へ戻ってきたのであれば、それは確実に自身の破滅に繋がる。あの時、らきむぼんを殺す必然性があったのは彼女だけだ。

「だから、彼女は部屋から出てくるらきむぼん君を見て、失神するほどに驚いたんだ。だってそうだろう? 二度も殺したの男が部屋から颯爽と現れたんだからね。やはり、これは衝動的な殺人なんだ。計画も何もない。もちろん、クローズドサークルを作るというような、皆殺しを前提とした計画なんてものは、火凛君には意味がない。皆殺しの計画を立てる必要があったのは、増殖を知られた君達――怪物側の論理だ。だから、船も破壊した。そしてそのせいで僕は死にかけ、挙げ句、あんなを見る羽目になった」

「それで?」とらきむぼんは挑発的に言った。ルルイエはそれを見て微笑する。

 何だ、この異様な雰囲気は。自分は一体何を相手にしているんだ。増鏡は大地がぐらぐらと揺れるような錯覚を覚えた。

 らきむぼんは――この男は――一体、誰だ?

 影山は問う。

「さっき言っただろう、君はオリジナルじゃないって。なあ、君は、本当はなんだ?」

 らきむぼんは含み笑いをして、窓を指差した。

「残念ながら、時間切れです」

 窓には数え切れないほどのが犇めいていた。

 陽は落ち、既に窓の外は暗闇に包まれていた。そこに室内の光が漏れ出て、外に犇めく何かを仄かに照らす。それは夥しい数の人だった。

「ああ! 窓に! 窓に!」

「うわああああああああああ」

 悲鳴を上げたのがレッドラムだったのかランベルトだったのか、はたまた自分だったのか、もう判別はできなかった。次の瞬間には、窓が弾け割れ、は雪崩のように室内に侵入してくる。食堂は激しい騒乱に陥った。どこかで食器の割れる音がする。

 意識が遠のいていく。地響きのような喧騒に包まれながら、増鏡は影山に助けを求めた。

 しかし彼もまた異形の者に囲まれその叫びは届かない。

「君達の勝ちだ」

 増鏡が最後に見たのは、敗北する探偵の姿だった。彼は割れたスープカップの破片で自らの喉を掻っ切った。


 *


 やがて増殖したらきむぼんたちと一人の少女は、海へと帰る。

 そして愛鞍布島には、誰もいなくなった。



 エピローグ


 愛する人を失ってどれほどの時が経っただろう。

 私はあれからずっと彼女との再会を望んでいた。

 そして幾つもの禁忌を試してきた。時には人の理解を超えた存在を利用したこともある。その過程で、本来人間が簡単には至ることができないこの世界の真理にも触れてきたつもりだ。この世界が本当に我々の知る科学の成す宇宙の歴史によって生成されたかは、今では疑問に感じる。

 この世界にはどんな問にも真実で答えるものがいる。そして宇宙は一つではなく、世界は幾重にも重なり、その先には仮想なる神、そう、それはデミウルゴスとも言えるような……。

 いや、それよりも、今はそんなことよりも、重要なことがある。

 人を造るということに対してアプローチは幾つかある。

 たとえば、それは生物学に、量子力学的に、時空遡行的に……

 私が愛する者の再生に対して、人造というアプローチを検討している時、一人の少女が接触してきた。

 彼女は名をルルイエといい、それは古代の都市の名だという。

彼女は契約を持ちかけてきた。人を造るということに対して、知恵と媒体を与える代わりに、「器」の材料を提供してほしい、と。

 これは備忘録だ。

 何も知らない者に全てを説明せずともよいだろう。

だからその複雑な過程と、彼らのような「人外の存在」、そしてそれらの歴史についてはここでは語るまい。

 重要なことはそう多くない。

 彼らは古代の支配者であり、地球の最初の支配神だった。そしてそれとは別の系譜を持つ旧き神により古代都市とともに海底へ封じられた。彼らを封じた旧き神は、今は眠りに就いている。しかし封じられた悠久の時の中で、海底の者共は肉体を失った。

 彼らは一人の少女を造った。

 それは苦労の末の唯一の先導者だった。彼女は強力な力は持たないが、地上を自由に歩き回れ、地上の知識も持っていた。そして、彼女は遺伝子を複製し、有機物の持つ遺伝子を書き換える力を持っていた。私に声をかけたのはその少女だ。

彼女の望みは、彼女の同胞が求めている「肉体」を見つけること。

それは普通の人間ではだめらしい。どうやら我々人類は彼女たちにとってはよくない血を持っているようだ。しかし我々の知性たる「脳」は、彼女ら異形の存在にとって欲するところだった。

 だから彼女は地上で探した。人ではないが器として相応しい知性と力を持つ生命の器を。

 私の望みはシンプルだ。愛する人を再びこの世に造り出すこと。それには人外の力が必要だった。契約は成った。

 私と彼女は人の血を引かない「人」を造る。

 そのベースとなる遺伝子は私が提供した。彼女はあっという間に私の遺伝子を持つ「異形」を造り出した。もっとも、彼女は複製した遺伝子情報を長期間保有することは出来ないようで、その場で行動するしかなかったのだが。

 興味深いのは、その存在はあっという間に私と近い年齢に成長したことだ。それは僅か数十分ほどの時間だった。

 記憶に関しては、私は「私自身の存在」を複製することを拒否した。これに関しては、適当に操りやすい記憶を持っていそうな若者の脳の一部を拝借した。

肉体よりも知性や記憶の定着に時間が掛かっていた。それが元の脳の持ち主と同等にまで至るまでには、およそ十二時間が掛かった。それまでの間は動き回れるだけの肉体は持つが、人間のような高度な知性がなかった。

 不思議なことに、その異形の青年は、記憶を司る脳と肉体とで別の男性を用いているにも拘らず、人格は問題なく形成された。面白いのは、彼には過去は存在しないが、記憶があるために脳は過去を捏造し、さも二〇年以上の人生を歩んできた普通の人間のように振る舞ったことだ。これは肉体と記憶と人格がそれぞれ別の概念であることを示しているだろう。

 つまり、怪物共は彼の身体を奪う際に彼の記憶を同時に保有することになるのかもしれない。彼が私の遺伝子を持つ脳と青年の記憶を元に新たな人格を形成したように。異形の存在たちは脳も欲しがっていた。無闇に青年の脳を破壊することはできない。しかし、一方で彼に知性を持たせなければ、異形共の眠る海の近くへと新鮮な遺伝情報を導くことは困難だろう。万が一事故にでも遭い、青年の脳が破損したら、彼女は直ちにその複製を造る外ないと思われる。彼女には、常に青年の傍らで監視させる必要がある。

 私は、その異形の青年を、少女の同胞が眠る場所へと導く手助けをした。

 私は知人の男がミステリのサークルを創ると聞き、そのオフ会を提案した。そして、そこに少女と異形の青年を紛れ込ませることに成功した。少女に関しては容易いことであったが、異形の青年はやや苦戦した。

 ミステリ好きの記憶を使ったため、サークル入会への誘導は可能であったが、もし彼に「彼が肉体のコピーのための生贄にすぎない」ことを伝えたら、彼はそれを是としないだろう。記憶は別人だが、彼の脳は部分的に私なのだ。

 私は私を信用できない。私ならば何か手段を講じ、この状況を利用するかもしれない。

 以上がこの件の顛末だ。

 しかし、彼ら異形の者共もまた信用ならない。彼らは地上に蘇って何をしようとしているのか。それはおそらく「支配」ではないか。

私は、パンドラの箱を開けたのだろう。望みを叶えても、その前に世界は滅びるかもしれない。しかし私は、この世界を脱出する方法について考えがある。この世界が滅びても私には関係ない。


 私はただもう一度愛する人に会えればそれで良いのだ。


 哲学のプロムナード

二〇二〇年五月二〇日 阿良木 




 了






 あとがき


 読了感謝します。

 これは果たして面白いのか? とは自分でも思うところではありますが、少なくとも僕はいつも自分で読みたいものを書くことにしています。なのでこんな物語が好きな人もどこかにはいるでしょう笑

 さて、読者へ向けての幕間において、最後に記述した「五月頃にでもなれば散歩道にも桔梗が咲くだろうか」という文章を覚えているでしょうか。

 読者の皆様には「作中の人物は携帯電話もネットも使えないが、読者諸君は彼らと同じ環境で推理する必要はない」ともお伝えしています。従って、ネットで作中の「阿良木」が運営しているブログ「哲学のプロムナード」を検索していただき、実際にあるブログの内部検索で「桔梗」というワードを検索していただければ、二〇一七年五月の記事で、先行して本作の「エピローグ」を読むことが可能です。犯人当ての謎を解くには不要かもしれませんが、幾つもの思惑の中から「超常的な」思惑を事前に弾くことが出来たでしょう。それができれば、この作品の犯人当ては実に簡単な消去法しか用いられていません。

 ちなみに、彼が愛する人を失ったという話は拙作『オムファロスの密室』を御覧ください(宣伝です笑)

 そうそう、この作品は題材としてクトゥルフ神話を用いていると、分かる人には分かっていただけたでしょう。「ルルイエ」とは海底に沈んだクトゥルフの都市の名です。また「愛鞍布島」とは「愛くらふとう」そのままクトゥルフ作品の作者「ラヴクラフト」、「蛇禮須神社」はクトゥルフ神話を体系づけた「ダーレス」を指しています。

 もしかしたら、船を沈めたのはあの「ダゴン」だったりして……。

 そういったことを踏まえて、前半のハーメルンの笛吹き男、出雲大社のしめ縄、メアリー・セレスト号の失踪事件などを思い返していただけると楽しいかもしれませんね。

 ではまた、次の作品でお会いしましょう。


らきむぼん


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