第9話ノヴァ伯爵令嬢視点

 アメリアは馬鹿でした。

 確かに魅力的な女性でしたが、全ての男が籠絡できるわけではないのです。

 アシェルを味方に加えようとしたのが失敗だったのです。

 気の重い話ですが、アシェルは私の事を愛しているのです。

 いえ、それを知っていたからこそ、誘惑したのかもしれません。


 アメリアは私より魅力的だと証明したかったのでしょう。

 でもそれが墓穴を掘ることになりました。

 一味に加わる振りをしたアシェルに、全てを知られたのです。

 リアムを筆頭に、過去にアメリアが関係した男が全て加担していました。

 残念ながら、イーサン殿下も加担されておられました。


 汚らわしい事に、アメリアは兄上にまで手紙を寄こしたのです。

 許せない節操のなさです。

 それに、兄上を馬鹿にしています。

 兄上が尻軽悪女に誑かされるはずがないのです。

 そんなことも分からない馬鹿なのです。


 結果は皆殺しでした。

 決起と集められたリアムたちは、準備万端整えた父上や兄上に奇襲をかけられ、ろくな抵抗もできずに皆殺しになったそうです。

 父上と兄上は、獅子奮迅の活躍をなされたそうです。

 アシェルも、新たに配下になったハンター男爵とタッカー男爵も、目覚ましい活躍だったそうです。


 陣頭指揮はロバーツ殿下が執られました。

 子弟が加担した貴族家士族家は、全て取り潰されました。

 領地は一旦王家が直轄領にされ、一部が活躍した家に与えられました。

 我がゴードン伯爵家は、侯爵に陞爵された上に加増もされました。

 子爵と男爵の従属爵位を拝領しました。


 しばらくしてイーサン殿下が病死なされました。

 そういう事なのだと思います。

 社交界でも、誰一人その話はしませんが、みな知っている事です。

 誰だって、子を殺さねばならなかった国王陛下の傷に触れて、家を潰したくはないのです。


 私はアシェルと結婚する事になりました。

 忸怩たる思いですが、仕方ありません。

 国王陛下直々に話があったのです。

 アシェルは活躍の褒美に私を陛下に願い出たのです。

 陛下にすれば安い褒美です。


 父上様も侯爵に陞爵して頂いた直後に、お断りはできなかったのでしょう。

 従属爵位を拝領する弟たちの事もあります。

 でも私だって、ただでは嫁ぎません。

 嫁がねばならない以上、産まれてくる子供のためにも、家は大きく豊かでなければなりません。


 私の持参金と台所領は陛下から賜りました。

 アシェルの任地について行く気もありません。

 私は実家に留まります。

 ロバーツ殿下もその方が都合がいいでしょう。

 私も兄様の側にいれさえすれば幸せなのです。

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伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。 克全 @dokatu

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