第8話ローガン王視点

 断腸の思いだ!

 高貴なる者の務めとは言え、実の我が子を殺さねばならないなとはな。

 イーサンが少しだけ愚かなのは分かっていた。

 だが弟たちが並の才能なら、それほど目立つほどではない。

 だがロバーツが優秀過ぎた。


 それがイーサンの焦りとなったのだろう。

 余がもう少し言葉をかけてやっていたら、こんな事にはならなかったのだろう。

 今さらだが、悔いが残る。

 イーサンだけが悪いのでも愚かなのでもない。

 余も愚かで悪かったのだ。


 だが事ここに至っては、厳しい処置を行わなければならん。

 イーサンを生かしておけば、必ず謀叛の芽となる。

 廃嫡にしても、イーサンを傀儡にして、王国を乗っ取ろうとする者が現れる。

 殺さねばならない。

 可哀想な奴だ。


 絶対に許せないのは、イーサンを追い込む原因となった者たちだ!

 リアムとアメリアは必ず殺す。

 普通女は修道院送りですませるのだが、アメリアだけは絶対に許さない。

 グラント公爵家とメイソン子爵家は潰し、一族一門皆殺しにしてくれる。

 イーサンの死出の案内をさせてやる!


 いや、それだけではすまさん!

 可愛い我が子を殺すのだ。

 とことん王国のために利用する。

 そうする事が、イーサンの手向けになるだろう。

 イーサンは無駄死にする訳ではない。

 王権強化のために、高貴なる犠牲となるのだ!


 だがせめて安らかに死なせてやりたい。

 苦痛や恐怖を感じることなく死なせてやりたい。

 それがせめてもの情けだ。

 くそ!

 リアムとアメリアには、苦痛と汚辱に満ちた死を与えてやる!

 生まれてきた事を後悔する死を与えてやる!


「レイズ。

 話は分かった。

 リアムとアメリアを殺す事を許す。

 グラント公爵家とメイソン子爵家は潰す事も許す。

 だが今直ぐではない。

 王家に叛意を持つ貴族士族家を全て炙りだせ。

 その者たちと一緒に皆殺しにするのだ」


「承りました。

 しかし危険が伴います。

 判断が遅れると、挙兵させてしまう可能性があります。

 完璧な判断が難しゅうございます」


「心配するな。

 挙兵させたからと言って、レイズやカレブの責任は問わぬ。

 それよりは、叛意を持つ者を残す方が問題だ。

 できるかぎり多くの謀叛人を炙りだすのだ。

 その事、書面にして約束しよう」


「有難き幸せでございます。

 必ず王家に叛意を持つ者を炙りだしてご覧に入れます。

 しかしながら、陪臣を助命する権限を頂きとうございます。

 あまり大きな内乱にすると、隣国に付け入る隙を与えてしまいます」


「分かった。

 潰した貴族士族の領地は王家の直轄領として、陪臣は王家直臣に加えよう。

 それでよいな」


「はい。

 有難き幸せでございます」

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