第7話レイズ近衛騎士団長視点

 イーサン殿下にも困ったものだ。

 動けば動くほど、王位継承争いで不利になると言う事が分からないのだろうか?

 いや、動くことが悪いわけではない。

 思慮の浅いイーサン殿下が、下手に動かれるのが不利に働くのだ。

 イーサン殿下は、傳役と側近に任されるべきなのだ。


 国王陛下も、イーサン殿下が思慮の足りない事は重々承知されているのだ。

 だからこそ、王国でも一二を争う智勇兼備の貴族を傳役に選び、忠勇兼備の貴族を身分を超えて側近に抜擢されたのだ。

 それを、傳役と側近に何も相談せずに命令を乱発されるから、どんどん王位継承争いで不利な状態となられたのだ。


 第一王子なのだから、最初から大きく有利なのだ。

 有能な家臣を上手く使えばいいだけなのだ。

 まあ、傀儡にされると問題だが、国王陛下が選ばれた傳役と側近なのだから、王子の間は彼らの諫言に従い、戴冠されてからは、彼らと陛下の遺臣に任せれば、イーサン殿下でも国王陛下として十分統治できたはずなのだ。


 全てはメイソン子爵家のアメリア嬢のせいだ。

 あの悪女がリアム殿を誑かした事が始まりだ。

 事が起こってから、ノヴァや顔見知りの令嬢から話を聞いたが、アメリア嬢のような者を野放しにはできん。

 間違っても傾国の美女などと、後世で言わせるわけにはいかない。


 アメリア嬢が悪女なら、今度はイーサン殿下を誑かそうとするだろう。

 稀代の悪女なら、今までの男とイーサン殿下を結び付けようとするだろう。

 最悪の場合は、国王陛下まで誑かそうとするだろう。

 諫言せなばなるまい。

 イーサン殿下はもちろん、国王陛下のお耳にも入れておかねばならない。

 

 もう御存知だとは思うが、父上にも知らせておかねばならない。

 俺が近衛騎士団長の解任に抗うのは、決して地位に拘泥しているからではないと。

 二人の王子が争い、内乱を起こさないようにするためには、俺と父上が軍部をがっちりと固めなければならないのだ。

 そう国王陛下に奏上しよう。


 それに、まあ、なんだ。

 個人的な問題もある。

 ノヴァを虐めてた奴や、ノヴァを哀しませた奴を許す訳にはいかない。

 まだまだ甘えん坊で、令嬢としての立ち振る舞いができていないが、それでも大切な妹だ。


 ノヴァに恥をかかせたアメリア嬢とリアムは絶対に許さん!

 代闘人に勝って名誉を回復した程度では腹の虫がおさまらん!

 この手で叩きのめさなければ気が晴れん!

 罠に嵌めてでも戦いの場に引きずり出してやる!

 そう考えると、今回の件は内乱に発展するまで放置しておいた方がいいのかな?

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