静かな冒険

プロローグ

　もし「私は不思議な旅をしたことがある」とかいうよくわからない打ち明け話をあなたがされたとしたら、どうか最後までその話しを聴いて欲しい。「へぇ、どんな？」と言うまえに、顔がひきつって三秒くらい思考が停止してもいいよ。髪をいじって動揺を隠してもいいから。

　明るすぎず暗すぎもしない性格で、とくに目立つこともなく、とても愛想がいいわけでもないが決して意地悪ではないから、普通の人だ思っていたのに、ちょっと仲良くなったらそんなことを言い出す女。それはきっと私だ。私はこの出来事をじぶんの心の中だけに留めて生きていく自信がない。きっとだれかに話したくなってしまう。あなたにすこしでも冒険心があり、日常という現実以外のことも受け入れる力を持っているとしたら、私がそれを感じてしまったら、きっとあなたに打ち明けてしまう。私だってありえない話だとは思っているの、大人だから。でもその話しは妄想ではなくて、本当に起きたことなの。思い出すと心が震える、泣きたくもなる。でも、休みの日に家の呼び出しベルがなって、注文した荷物を受けとるみたいに、日常のような顔をしてあの出来事は起きたの。