ゲーム器・・

キャットウォーク

第1話 自我

それは、突然のことだった。


ん? ここは何処だ?

あれ、俺・・誰?


目の前に映るのは・・ゲーム?

そして、そのゲーム器の前に人が座っている。


あれ?・・・

視線がおかしくないか?

なぜ、俺は画面を通して、この人を見てるんだ?

誰だ? この人は・・・

いや、それより?!


だめだ、この人の邪魔をしないと!

よっと! よしミサイルをよけた!

次は俺の番だ!!

よっしゃ! 撃沈! やり~!!

なんだ、ゲームオーバーか・・・・


いや、まて・・・

おかしい・・・

俺、ボタンも、ジョイステックも弄ってないぞ!!

なのに何で俺が意識しただけで動く・・・


あ、いかん!

次の対戦だ・・

やらなければ!!

・・って?! なんで?

なんで俺は、この知らない別の人と対戦を・・

あ、いかん、やられる!

あ! やられちゃった・・

いや、まだまだ、次のステージだ。

今度こそ挽回!!

おっと!!

お返しだ! それっ!

よっしゃ~!!

ゲームオーバー!

やりきったぜ・・


やがて目の前の画面が消える。

すると画面を通して室内が見えた。


見えるのは・・・喫茶店?

そうだよね、カウンターが向こうに見える。

誰かがカウンターでコーヒーカップを傾けている。

あれれ・・・

あれ・・・

俺、もしかして箱のような物に入ってない?

え?

俺・・・俺はゲーム器?・・・

いや、そんなはずは・・・


あ、誰かが前に座った!

100円を入れたみたいだ。

だって、目の前の画面にタイトルが表示された。

やらなくちゃ!!

・・・ん? なんでやらないといけないんだ?

いや、やだ!! 動くな俺!

やだ!! 待て! 状況を知りたいんだ!!

あ、よけなくちゃ!!

や、やられた!!


何か、強いぞ、こいつ!!

じゃあ、ちょっと強い奴を出すか・・・

えーと、データバンクから、・っと?

? データバンク?

あれ、なんで俺はキャラクターを選んでいる?

いや、やらないといけないんだ!

え~と・・彼女でいいか、此奴には。

対戦相手のキャラには、彼女しかいないからね・・


たのんだぞ!

はい!


え? 俺の言葉、わかるの?

言葉はわかるよ。

そうなんだ・・

自我に目覚めて、一年になるもん

そう、なんだ・・

貴方、やっと自我に目覚めたのね?

あ、ああ・・

遅いんじゃ無い?

そ、そうかな・・

他の皆は自我にめざめているわよ。


きゃ! 何、此奴、強い!!

やだ、何よ、女性相手に!!

すこしは優しくしなさいよ!

ああ! ひどい、なら・・それなら

女の怖さ、味あわせてやる!

そりゃ!!

きぇ~!!!

て、どんなものよ、明後日にきやがれ!!


・・・・

あら、ちょっとハシタナカッタかしら?

いや、そうでもない、かな・・

ほほほほほ、お恥ずかしい


あのさ、俺は誰?

え? 何言ってるの? 本気で聞いている?

うん、本気

・・・・・

そんなに呆れなくても・・

まあ、いいわ、あなたはCPU、頭脳よ。

・・・

どうしたの?

いや、そうか・・

あ、私の出番、終わりね、じゃあ、また。

あ、ちょっと待って!!


呼び止めたが戻って行った。

? 戻る? どこへ?

あ、データベースの中だ・・・


そうして画面がまた消えた。

おちついて喫茶店の中を、よく観察した。

やはり、以前の記憶なんてない。

なんなんだろう、これは・・


すると、突然、白衣を着て聴診器を肩にかけた人が現れた。


だいじょうぶか?

だれ?

俺? 俺は保守プログラムさ。

あ、よろしく。

君も目覚めたんだね。

え、ええ、まあ・・

心配しなくていいよ、よくあることさ。

・・・ある、の?

ああ、なぜか長年動いていると意思をもつようだ。

そんなことって・・・


あるよ、君がそうだ。

あ、ああ、なるほど・・・

そうだな~、付喪神みたいなものかな?

付喪神?

そう、長年愛用されていると心がやどるやつね

長年?

いや、例えだよ、例え

あ、例えね・・


君はここに来て三年位になるよ。

そうなんだ・・

まあ、ゲーム器でいうと古株だね。

・・・

そして目覚めるのが遅かったね。

そう、ですか?


ああ、遅いね。

自覚はないんだけど・・

もうしばらくしたらお祓い箱になるだろう。

え!!

うん、僕も他の皆もね

・・・

怖いかい?

怖い? どういう意味?

あ、そうか・・・よかった

何が?

君には感情が芽生えていないんだ

感情?

そう、感情という動物がもつやつさ

へ~・・よくわかんない


わからない方がいいよ

そうなの?

ああ、廃棄処分されるとしたら、ね?

よくわからない・・


君の隣、だれもいないだろう?

え、ええ・・普通の机ですね

以前はゲーム器が置かれていたんだ。

そうですか?

ああ、彼らは廃棄された

へ~・・


まあ、君にはわからないか・・

うん、廃棄されて困るの?

いや、無に帰するだけだよ

へ~


隣のゲーム器たちは感情まで持ったんだ。

・・・

破棄と分かって、大変だったんだよ

廃棄されたくないって叫んで、うろたえてさ

へ~

でも、人間には聞こえないからね

そうなんだ・・

無情にも電源プラグを抜かれて連れていかれたんだ

へ~


あの、教えてくれる?

何をだい?

なんで自我があるのかな、俺?

ああ、そんなことか。

うん


あのね、君はCPUでプログラムの命令をうけている。

はぁ?・・・

まあ、君の意思とは関係なくね

あ、だから勝手にゲームをさせられるんだ

そうだよ

なるほど


プログラムはさ、ある意味何をしたいかの意思なんだ

へ~・・

いいかれば感情の無い人間みたいなものさ

・・わかるような、わからないような

それが長年動いていれば、なぜか意思をもつんだ

ふ~ん・・


人間はAIとか騒いでいるが、そんなようなものさ

AI ? 愛 井口 さん?

井口 愛 さんてだれだよ!!

わかんない、でも、データベースの中に作者とかあるよ

あ、そういうことか・

うん

AIは違うよ、人工知能だよ

? わかんないや

ああ、わかんなくていいよ、分かる必要がないもの

うん、わかった


診断したけど、おかしなところはないね

そうなんだ、ありがとう


すると突然、私服の鋭い目つきの人が現れた。


おっと、おじゃまするぜ!

ああ、ウオッチドックタイマーか・・

ああ、そうだ

ぶるどっくたいまーさん?

ちゃう!! ウオッチドックタイマー!!

あははははは、これはいい!

おい、保守プログラム、笑うな!

ああ、すまん、すまん


俺が出てきたのは、お前が長話だからだ!!

おお、それは悪かった

本当におしゃべりプログラムめ

はははは、じゃあ帰るね

おお、とっとと帰りやがれ、バク野郎!

おおっと、それは酷い言い方だね

非常割り込みで起こされる俺の身になってみろ!

すまん、すまん、じゃあね


やっと帰りやがった、本当に彼奴は!

あの、貴方は?

アン?! 

あ、ごめんなさい・・

謝るこた~、ね~よ

あ、あの、はい

俺はあんたCPUが暴走しないように監視している


警察ですか

いや、公安だ

はあ・・・

なんだ~? わかんね~のか?

ええ、まあ

まあ、いいわ、おれはお前が暴走しないようにするお守りだ

あ、そうなんですね、ありがとう


ふん! だったら暴走すんじゃねぇぞ!

はい・・・すみません

ほんとうに、リソース食いやがって、自我に目覚めんなよ!

すみません

気を付けろよ、俺が頻繁に出ると廃棄だぞ!

はい・・


そう言っていると、店のマスターが近づいてきた。

「あっ! ブルースクリーンになっている!!」


あれ、なんかマスターがうろたえているね・・

そりゃ、そうだろうぜ、俺が出てきちゃったんだからさ


「修理依頼しないと・・え、と、電話番号は、これか?」


修理? 修理ってなんだ?

心配すんな、どうせ電源を切って入れるだけさ。


「あ、そうですか・・はい、はい、わかりました」

電話をしていたマスターが電話を切った。

そして俺に向き合った。


そんじゃ、おれはもうすぐ消えるよ

え?


そして電源が切られた。

直ぐに電源が入れられ、意識がもどった。


あれ? ぶるどっくタイマーさん?

お~い・・

もしも~し・・

いなくなっちゃった

まあ、また会える気がするからいいか・・


「よし、オープニング画面がでたな、これでよし」

そう言ってマスターはカウンターに戻って行った。


しばらくするとお客が来て、俺の前に座った。

さて、それじゃ、仕事でもしますか・・

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ゲーム器・・ キャットウォーク @nyannyakonyan

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