季節外れのカゲロウ

千丈峻士郎

第1話


「やりたいことなんてなんてどうやって見つけるんだよ。」

ただ流されて生きているだけの僕は最近そんなことを考える。やりたくもない仕事をして寝て起きて食べて寝て、何も楽しくない。 


生きてる意味なんかを考えてみる。


シワの少ない脳味噌でうんうんと悩むけれど、答えが出ないことなんて分かってる。

それでもやっぱり僕は何か答えが欲しいんだ。

せめてやりたいことが見つかれば。


みんな平気な顔して遊んで、勉強して、仕事して、恋愛して、子育てや家事をしているけれど、僕は内心馬鹿にしてしまうんだ。


なんで何も考えないで生きていけるんだろう。

僕はこんなに生きづらいと思ってしまうのに。


みんなは何を楽しみにして生きているんだろう。

会社終わりのビールや休日のドライブで満足してる人生は本当に幸せなんだろうか。

僕みたいに死にたくないから生きているだけなんじゃないのか。

みんな本音はどうやって思っているんだろう。

子供が生きがいと言う人は、生物として正しいと思うけれど、僕だったら僕のような親はごめんだ。

自分の無責任な行為で誰かを苦しめたくない。

親は子供に何をしてあげられるんだろう。


僕は自分の親のことをよく思っていない。

愛情を感じたことはあるけれど、産んでくれなくてもよかったなんて考える。

世間的にはやるべきことをやっていて立派な親なのだろうけど、1番身近な人間だからこそ生きていても死んでいても大差ないというか、そのまま死んでくれた方が楽なんじゃないかと思ってしまう。


暇だからこんなことを考えてしまうのだろうか。

時代がもう少し違ったら目的を持って生きられたのだろうか。

時代や親のせいにしてもしょうがないのだけど。



今日ベランダでカゲロウを見つけた。

なんでこの時期なんかに。

虫なんかもう滅多に見ないのに。

何もしないでじっとしていた。

部屋の中に入られても鬱陶しいから殺してしまおうかとも考えた。


まあいいや。

とりあえず放っておいた。

次の日、見てみるといなくなっていた。

死んでしまったのだろうか。

探そうともしなかった。

別にどうでもよかった。


ふと思った。

僕もあの虫と同じで、違う生き物から見たら生きていようが死んでいようが、頑張っていようが、悩んでいようがどうでもいいんだろうな。


虫ケラも人様も生きている意味なんかきっとないんだろう。

そう思ったら少し楽になった。


生きていてもいいことないし、やりたいことなんてわかんないし、一発逆転は狙えないし、寒い場所で凍えて耐えていることしかできないかもしれないけど、たぶん、それでいいのだろう。


次またカゲロウを見かけられるのは春だろうか。

それまではとりあえず、生きていようと思った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

季節外れのカゲロウ 千丈峻士郎 @natusaki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ