第31話

「この人は誰?」


 久しぶりに会った幼馴染みへの言葉は、『お久しぶり』でも『元気にしていた?』でもなかった。


 清空は、少しさみしそうな顔をしたあと小さく答えた。


「……彼氏だよ。

 源君っていうの……」


「そっか……」


 寂しい。そんな感情が俺の中で生まれる。


「うん」


「見つめあってるんじゃねぇ!」


 男がそう言って、ナイフを地面にたたきつけた。


「確保!」


 警備員のひとりが、そう言って源と呼ばれる男の人を取り押さえる。


「清空は、俺のモノだ!

 テメェ、みたいなヤツが気安く清空に話しかけてんじゃねぇよ!」


 源は、警備員の人を振り払って俺に近づいてくる。


「な、なに?」


 俺の言葉に突然、源は俺の顔を殴る。

 痛い……

 唇切った。

 結構血が出る。

 男は、また俺を殴ろうと腕を上げる。

 その腕を清空が止めに入る。


「やめて!」


 清空は、泣きそうな顔で源を抱きしめる。

 しかし、その腕は止まらず俺を再び殴る。

 もう1発殴られようとした時、その腕を恋次君が止めてくれた。


「恋次君?どうしてここに?」


「ちとお前と話をしたくてな……

 遙も来ているぞ……」


 恋次君は、そう言って遥ちゃんの方に視線を送った。


「話?」


 俺は、口を抑えながら恋次君の方を見る。


「『清空に悪い彼氏がいるから、奪い返せ』と言いに来たのだが……

 少し遅かったようだな」


 恋次君がそう言うと源は、今度は恋次君の方を殴ろうとした。

 だけど、あっさりと避けられる。

 まぁ、恋次君はプロボクサーだしね……

 この男の人程度の拳なら簡単に避けれると思う。


「俺を無視しているんじゃねぇよ!」


 言っていることしていることが滅茶苦茶だな……

 情緒不安定なのか?

 俺が、そんなことを思っていると増えた警備員に見る見る取り押さえられ……

 そして、警察が来るまでの騒ぎになった。

 俺は、そのまま警察で事情聴取を受けることになった。

 被害者として……

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天国か地獄 はらぺこおねこ。 @onekosan

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